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ゆらめきエアー

ハマったら最後、ゆらめきエアーの中から抜けられない

187_ゆらめきフィリピンパブに入り浸り、そこで夜な夜な歌い踊り狂った原体験から音楽を始めたという野村幸平。サラリーマン生活を続ける傍ら、ふと思い立ったようにゆらめきエアーという名義で音楽活動をスタートさせた彼は、まるで料理を作るように曲を書き、まるで料理を食べるように歌う。自分に合うもの、自分がいちばん心地いい状態になることを優先して生きてきたゆらめきエアーによる、記念すべきデビューミニアルバム『ゆらめきエアーの中で』。ハマったら最後、僕らはゆらめきエアーの中から抜けられない。

「お医者さんをやってる友達が“オペ室でオペをしながら流してた。すごくいいね”と言ってくれて。嬉しいなと思いつつ、大丈夫なのかな? とも思った」

●野村さんがサラリーマンだということは公表しても大丈夫なんですか?

野村:あ、大丈夫です。「趣味とかサイドビジネスは、どんどんやりなさい」っていう会社なんで。

●理解のある会社ですね。なぜそんな髪型してるんですか?

野村:僕、もともとはずっとロン毛だったんですよ。そしたら“熱いなあ”ってなりますよね? それでどんどん短くなって、こうなりました。前はこんな感じだったんですよ(免許証を取り出す)。

ゆらめきエアー・ロン毛

ゆらめきエアー・ロン毛

●わ、全然違う! 本人を前にして失礼ですけど、今の方が全然清潔感がありますよ。

野村:ふふふ(笑)。

●ところで資料によると20代前半はフィリピンパブに入り浸りの人生を送っていたらしいですね。実際今作にもM-5「フィリピン」という曲もあったりするし。

野村:昼はちゃんと仕事を真面目にして、夜は遊びに行ってただけです。フィリピンパブは別にいやらしい感じではないんですよ。真ん中にデカいステージがあって、お客さんが1人ずつその上に上がって、お店の子とカラオケを歌いながら踊るんです。それが楽しくって。朝まで遊んだあと、そのまま仕事に行ったりしました。その時はまだ一切音楽をやっていなかったんですけど。

●音楽はいつ始めたんですか?

野村:今の会社に入ってからなので…7年前くらいですね。大学を出て、仕事を始めて初任給を貰ったら“何かを買ってみようかな”と思いますよね。そこで、弾けないけどギターを買ってしまったんです。たまたま友達のバンドを観に行ったとき、“リッケンバッカー”というギターを使っているバンドがいて“かっこいいな”と思って。でも弾けないから2年くらい放置していたんですけど、友達で何人か音楽をやっている人がいたから「1回くらいライブをやっておこうよ」と言われて「じゃあやろう」と。

●軽いな。

野村:飲み会で隣にいた女の子に「ドラムやる?」って訊いたら「やる」って言ったから、やってもらいました。素人だったんですけど。あとは大学の友達にベースの上手い子がいたので、最初はその3人で始めました。それが25歳の頃です。自分がギターを持って歌うなんて考えてもいなかったんですけど。

●なのにライブをしたんですね。不思議ですね。

野村:僕も今、とても不思議です。バンドマンというよりサラリーマンなので(笑)。まだこういうことに慣れていないので、日々疲れます。最近は疲労度がすごいんですよ。お店に営業に行って「こんなCD出します」っていう話をしているんですけど、その度に自分の説明をしなくちゃいけないくて。それがすごく疲れます。慣れてないし、自分だし、バンドマンだし…脇に汗かきますよね。今もかいてます。

●子どもの頃はどんな子だったんですか?

野村:勉強も運動も…(※幼稚園から大学までのことを聞いたが、特におもしろいエピソードはなかったのでカット)。

●音楽を聴いたりはしなかったんですか?

野村:ほとんど聴いてなかったですね。20歳くらいのときに付き合っていた彼女が音楽好きで、いろいろ教えてくれたんですよ。「こんなCDあるよ」って持ってきてくれて、部屋を掃除しているときになんとなくかけてみたんです。それがたまたまゆらゆら帝国の『3×3×3』で。掃除機をかけながらだったからあまりよく聴こえなかったんですけど、4曲目「ドックンドール」に入った瞬間、爆音になって“何だこれ!?”と。そこで興味を持ったのは事実ですね。そこからロックはちょっとずつ聴くようになりました。先輩のバンドとかも“何か面白いことがあるかもしれない”と思ってひとりでよく観に行ってたんです。バンドマンってなかなか苦労してやっている人が多いんですよね。僕はあまりわかんないんですけど、「趣味」と言うと誤解されるかもしれないけど、音楽を始めたきっかけは、自分で聴きたい曲を自分で作ったというだけなんです。料理みたいなものですね。僕は突き詰めたらやれなくなっちゃうんです。2〜3個のことを同時に進めていないとダメになっちゃう。仕事は好きなので、仕事をやって、バンドもやる。だからバンドをするときは100パーセントを注いでます。

●このバンドって正式メンバーは野村さん1人なんですよね? 他のメンバーは流動的なんですか?

野村:最近は割と固定しているんですけど、それまではいつでも辞められるような感じでやっていたから、あえて固定する必要もないかなと思っていたんです。対バンしたり、友達の友達に聞いて「やりたい」という人がいたら「やってみようか」と。今はまずCDを売らなきゃいけないので、もうちょっと続けようと思っていますけど。

●不思議な人。なぜ“ゆらめきエアー”という名前にしたんですか?

野村:“万が一CDを出すことになったら、ゆらゆら帝国の隣に並ぶかもしれない”という考えが一瞬よぎったんです。それを当時の彼女に話したら「それイケるね!」と。

●さっき「自分が聴きたい曲を作っている」と言っていましたけど、ずっと自分が好きな音楽を自分で作っている感覚なんですか?

野村:そうですね。頭に風景というか景色が浮かんでくるから、それに合うものを作るだけです。“ここにこの音が欲しい”っていう細かいものはないんですけど。それを突き詰めていきます。例えばラーメンを食べたときに、“もうちょっと塩こしょうが入ってたらな…”とか思うことがあるじゃないですか。そういうのを自分の曲でしようかな、というスタンスです。音楽に限らず、“自分に合うものがないかな?”といつも思って探しています。仕事も、選ぶ基準として給料や勤務時間とかがありますけど、僕はまず嫌いじゃないものを仕事にしようと思って。自分に合うものを優先して生きているというか。

●だから音楽も自分の好きなものを作るというスタンスでやっていると。なるほど。彼女も、自分に合う彼女を探してきたと。

野村:最近はあまり探してないです(笑)。忙しくて手が回らなくて。さらっとご飯を食べに行くくらいならいいんですけど、なかなか付き合ったりするのは大変だなあって。

●今作はどの曲もギターが曲のスパイスになっていますよね。基本的に柔らかいメロディが多いと思うんですが、その対極でギターが鳴っている。少し狂気じみている感じ。

野村:そうですね。何か狂気な部分を持っているんですね。それがギターに出ているのかもしれない。ギターの人に「もっと狂気じみた感じを出してほしい!」と言いますので(笑)。

●どの曲もそんなにテンポが速いわけではないけれど、そこに異物を入れたいという感覚なんですか?

野村:僕は辛い食べものが好きなんですけど、僕の曲にはそれが足りないなと思って。“唐辛子が好きなのに辛い部分がないから入れたい!”というだけですね。

●食べ物の例えが多いな。

野村:音楽に対してフラットな状態でやっているので、何も難しい事を考えずに“嫌か嫌じゃないか”とか“好きか嫌いか”を考えているんです。

●でも例えばM-6「45度の光の中で」のギターは、激しいだけではない繊細なタッチというか。キラキラした光のようなものをギターで表現していますよね。

野村:感覚的には、キラキラというよりはギラギラに近いかな。

●曲毎にアレンジのイメージはあるんですね。

野村:この曲は、サラリーマンの頭を見て“ハゲとるな”と思って作ったんです。

●そういう曲だったのか。

野村:“ハゲ頭に光が当たって反射したらこんな感じだろうなあ”と想像して。“これがどんどん大きくなって、地球をぐるっと一周しちゃうのかな”とか。そういうことを考えていたら出来ちゃいました。妄想です。妄想が曲になることが多いですね。

●「バンドマンじゃなくてサラリーマンだ」と言ってましたけど、こうやってCDを出すわけじゃないですか。そのことは、自分の中ではどういう出来事だと捉えているんですか?

野村:ワクワクもしていますし、責任重大だなとも思っています。やっぱりすごく嬉しいんですよ。ただ、嬉しい前に照れくさいなっていつも思う。CDを買ってくれた人たちからメールが来るんですけど、“○曲目の曲が好き”とか“仕事中流してる”とか言ってもらえるのが照れくさいです。お医者さんをやってる友達が「オペ室でオペをしながら流してた。すごくいいね」と言ってくれて。嬉しいなと思いつつ、大丈夫なのかな? とも思ったり。

●オペしながらは大丈夫じゃないと思う(笑)。

野村:正直CDを出すにあたって不安もありました。今まで“評価なんてされなくてもいい”と思って作っていたんですよ。自分が好きで食べているものを「そんなマズいもん食べてんじゃねーよ」って言われたら嫌じゃないですか。でも、それはしょうがないかなと思ってすぐにふっきれたんですけど。

●「CDを出すことが嬉しい」と言ってましたけど、なぜ嬉しいんですか?

野村:自分でいつでも聴けるから嬉しいんです。今まで自分で録ったもので満足していたけど、“こんなにクリアに聴こえるんだ”って。更に最近は“聴いてもらえるものが出来た”と思えるようになって、それが嬉しいです。出来たばかりのときは“恥ずかしいな”と思っていたんですよ。人に対して「僕のCDです」っていうのも恥ずかしいし、声を聴かれるのも恥ずかしいなって。でもだんだん慣れて、バンドマンモードに入ってきてるかもしれない。自分の思っていることを、人に届けられるのが嬉しいなと最近思えてきたんです。

●CDを出したことによって、野村さんの中でだんだん変化が起きているんですね。

野村:音楽について考えている割合が、仕事を越えていますからね。仕事はそこそこ安定してくれているので、“どうやってCDを売ろうか”ということをずっと考えている。

●ところで野村さんは、あまり感情を表に出さないですね。

野村:キャッホーイ! …こんな感じですか?

●それもそうですけど、嫌な方向のテンションも。

野村:そうですね。嫌なことがあっても、“明日いいことがあるだろう”と思ってやっているので、そんなに引きずらないです。全部が全部そういうわけじゃないですけど、小さいことは引きずらないです。

●ライブでもそうなんですか? 極端に感情が上がったりはしない?

野村:上げてますけど「上がってない」って言われます。

●野村さんって不思議な人ですね。まさにバンドマンというよりサラリーマンっぽいし、でもすごく感覚的に音楽をやっているし、音楽を始めるいちばん最初の動機でずっと続けているというか。

野村:そうですね。

●バンドという形式にはこだわっているんですか?

野村:いや、実はいろんな形態をちょくちょく試していて。最初にやっていたベースの人はジャズをやっているから、ウッドベースが弾けるんですよ。その2人でライブをやったりとか、その人に敢えてピアノを弾いてもらったりとか、いろいろ変えながらやっていて。別にエレキにもこだわりはないです。

●ロックバンドの編成にこだわっているわけでもなく、曲次第だと。

野村:曲次第ですね。だからこれからも、周りに居るメンバーが出来る範囲内でいろいろやって行こうかなと。それが今後広がればとてもいいですよね。

●いろんなことを試して、自分に合う表現を見つけたい。

野村:リミックスバージョンみたいに、いろんなパターンのものが聴けたらおもしろいと思うし。

●もともと自分の妄想から出来た音楽かもしれないけど、その表現方法がたまたま今はこういう形なだけで、もしかしたら別の表現方法だったら、より妄想に近い音楽ができるかもしれませんね。

野村:そうですよね。それは実際にやってみないとわからないので、なるべく対バンやイベントは観に行って、ほかのバンドをちゃんと観て“いい人いないかな”と探してます。

●メンバーを探すんですか?

野村:はい。そこで新しいアイディアを見つけたいっていうのもありますし。“この人にはこういう風にやってもらえるかもしれない”とか、新たな可能性を見つけたいです。

interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:森下恭子