音楽メディア・フリーマガジン

橋爪もも

鬱積した感情をポジティブな力に変え、迷える人々に歌を届けるロリータ・シンガーソングライター

PH_momo日常の鬱積した感情を歌詞に押し込めたようなダークな歌から、物語を紡ぐような繊細なバラードまで幅広い楽曲をロリータ・ファッションに身を包んで歌う異色のシンガーソングライター、橋爪もも。そんなシリアスな歌とは別世界のひょうきんなMCを披露するライブも、1つの大きな魅力となっている。その不思議なキャラクターを気に入られ、NOTTVの音楽情報番組「MUSIC にゅっと。」のレギュラーにも抜擢。そして番組が立ち上げたnyt recordsから、ミニアルバム『終わりよければ』のリリースが決定した。プロデュース陣に出羽良彰(amazarashi、大森靖子など)、渡辺善太郎(Chara、Salyu、森山直太朗など)という強力布陣を迎え、橋爪ももの世界を形にした新作に迫るスペシャルインタビュー。

 

「“散々”だとしても最終的に良い方向に転がったらいいなと」

●去年5月に初の全国流通盤となる1stシングル『青のワルツ』をリリースしたわけですが、それ以降で何か変化は感じましたか?

橋爪:そこからは音源を作るよりも、音楽に興味のあるお客さんにどれだけ会えるライブをやれるかというところで模索していた気がします。あとは日に日に衣装製作の仕事が増えてきて、時間の余裕がなくなったかな…。

●衣装製作の仕事が増えてきたんですね。

橋爪:不思議と増えてきましたね。…いや、不思議じゃないか。「にゅっと。」(※「MUSIC にゅっと。」)のおかげかな。

●そういえば「にゅっと。」のオーディションに出るも、予選敗退したそうですが。

橋爪:そうなんですよ。しかも予選でまず落ちて、敗者復活戦でもまた落ちているんです(笑)。1回目の時も持ち時間が5分で1曲歌ったら終わりのところを、いきなり5分くらい喋っちゃって。スタッフさんの印象も悪かっただろうなと思っていたら、なぜか敗者復活戦にも出させてもらったという…。

●逆にキャラクターを気に入られて、なぜか番組では占いコーナーのレギュラーに選ばれたんですよね。

橋爪:言われた瞬間に「あ、音楽じゃないんだ!」と思いました(笑)。でも「にゅっと。」に出るようになってから、色んな人と知り合えたので良かったですね。

●そういった経験が曲に影響した部分もある?

橋爪:影響はありますね。「こういう子に聴いて欲しい」とか「こういう層に向けて曲を書こう」ということを考えて作るようになりました。今はできるだけキャッチーな曲を書こうと思っていて。これまでは自分の好きなようにやらせてもらっていたんですけど、今は耳に残るフレーズとかを意識して書こうとしています。

●今回は「にゅっと。」のMCを務める日高央さん(THE STARBEMS)から新曲の書下ろしを命じられて、作ったりもしたそうですね。

橋爪:9月に発売予定なのに春の曲を作ってきて、1回目はボツになりました(笑)。それで2回目に書いてきたのが、M-2「散々」ですね。

●この曲は何かテーマがあったんですか?

橋爪:普段のライブでよくやっている曲は、Aマイナーで始まるものが多いと指摘されて。日高さんから「Aマイナーを使っていない曲を書いてみろ」と言われたんですよ。でも使っちゃダメだと意識しすぎたら、逆にAマイナーがふんだんに入った曲ができちゃったという(笑)。

●逆効果だったと(笑)。

橋爪:今は「散々」というタイトルなんですけど、仮タイトルは「Aマイナー」だったんです。それを最初に日高さんに伝えた時は、呆れていましたね(笑)。でも日高さんが何でも受け止めてくれるので、「これを持っていったらどんなリアクションをしてくれるかな?」という気持ちはありました。「にゅっと。」では「自由にしていいよ」と言われているので、毎回すごく楽しんでいます。

●普段のライブのMCを見ていても、自由さは感じますけどね(笑)。

橋爪:自由です。本当に自分が喋りたいことだけを、喋らせてもらっています(笑)。ある意味、ステージに上ったら独壇場なので、自分の好きなほうに進めていくだけというか。

●そこはずっと変わっていない?

橋爪:変わらないと思います。そのままなので。

●今回の制作ではアレンジャーとして出羽良彰さんや渡辺善太郎さんが参加されたわけですが、そこでの変化はありましたか?

橋爪:曲作りの部分では変わっていないんですけど、前回と違って「こういうアレンジにして下さい」というのは明確にお伝えしてやってもらいました。前回はアレンジャーさんに曲を渡して、あとは「好きなようにやって下さい」とお任せしていたんです。

●今回は自分のイメージを伝えてからやってもらったんですね。

橋爪:前回はお任せしたことで良いところと悪いところがあったので、今回はもっと自分の意見を言ってみようと思ったんです。1曲1曲にイメージがあって、自分の曲なんですけど「こういう人が歌っていたらカッコ良いな」というイメージで書いているんですよ。だから今回は自分が好きなバンドのサウンドに近いものを、まず最初にお渡ししました。

●アレンジャーさんとの実際の作業はどうでしたか?

橋爪:今回は目の前で意見を言える機会が何度もあったんです。(メール等のやりとりで)文字にすると簡潔にしようと思って、本当はもっと言いたいことがあっても「ここだけ」という感じで省いてしまうんですよね。でも実際に対面で喋れることで相手の苦い表情とかも見えるので、「あ…自分は今、無茶を言っているんだな」というのもわかって(笑)。

●苦い表情にさせることもあったと。

橋爪:ヘヘッ(笑)。

●“ヘヘッ”って(笑)。今回は自分のイメージどおりの仕上がりになっている?

橋爪:なっています。やっぱり自分が「こうしたい」というものを完全に具現化できたらそれはそれで満足なんですけど、今回は色んな人の意見が混ざりつつもそれをちゃんと受け入れられたので、とても良いものになったという自信はあります。自分が1人で考えているよりも、絶対に良いものになったと思います。

●他人と一緒にやることでの良い面が出た。

橋爪:元々、整理ができないタイプなんですよ。やりたいことがあると全部に手を付けようとして、結局は全部が中途半端になっちゃうというか。今回はちゃんと1つ1つを片付けてから次のものに移るように、みなさんに指導して頂きました(笑)。もし私がやりたいように「これも入れたい、あれも入れたい」とかやっていたらゴチャゴチャのままだったと思うけど、今回は何となく統一感があると思っていて。

●作品全体での統一感を出そうと意識していた?

橋爪:具体的に「こうしよう」と決めたわけではないですけど、選りすぐっていったらこうなったという感じですね。あと、テイストは全てロック調で固めました。

●基本的に今作はバンドサウンドがメインですよね。

橋爪:全部、バンドでやりました。たとえば自分が通勤中に聴くと想像したら、バンドサウンドのほうが朝からテンションが上がるというか。弾き語りを聴かせて、朝からしんみりさせちゃうのもちょっとなと思って(笑)。

●サウンドでテンションが上がることはあっても、歌詞の世界観的にはそこまで明るくないような…。

橋爪:そうですね。方向性としては、落ち込んでいる時に聴いて欲しいです。

●自分自身が歌詞を書いている時はどんなテンションなんですか?

橋爪:歌詞や曲を作る時って、何か外からの刺激があった時で。たいていは落ち込んだり、嫌な気持ちになった時のほうがエネルギーは出てきますよね。

●曲名からして「散々」ですからね(笑)。

橋爪:でも最近ちょっと心境に変化があって。今作のタイトルも『終わりよければ』ですけど、“散々”だとしても「最終的に良い方向に転がったらいいな」というメッセージは全曲に入っている…はずです(笑)。

●確かにどの曲も最後は前向きな言葉で終わっている。そういうふうに変わったのはなぜ?

橋爪:作品作りをしている中で「ただ落ち込むだけの歌詞を書いていても、聴いているほうがつらくなっちゃうのかな?」と思ったし、みんなに最終的にはちょっとでも前向きになって欲しいなと思って。落ち込みたい時もあると思うんですけど、そういう時は以前の曲を聴いて頂ければと(笑)。今は自分も精神的にちょっと成長したのかなと思いますね。「明日を生きろ!」とかじゃなくて、「ちょっと良い感じになったらいいよね」っていうくらいのイメージがあります。

●落ち込んでも、最終的には良い方向に進もうと。

橋爪:M-1「M」は夢に向かって頑張っている人に向けた曲なんですけど、そういう人はつらいできごとが起きたとしても前向きになるエネルギーのほうが強くなると思うんですよね。さっきも言ったとおり、マイナスのできごとのほうがバイタリティやエネルギーになるというか。メチャクチャに批判されたりしたほうが「ナニクソ!」っていうパワーも出やすいから。

●反抗心が生まれるというか。

橋爪:「みんなつらいこともたくさんあるだろうけど、どうにか切り替えてね」というメッセージが入っています。それを楽しめるくらいになったら、きっと楽しいと思うんですよ。

●前作『青のワルツ』よりも、歌詞の言葉が生身に近付いた気がします。

橋爪:難しいことを言わなくなりましたね。『青のワルツ』の時って、“後悔ソング”ばかりなんですよ。過去のことを後悔している曲というか。今回の曲はわりと現在進行形で「今はまだゴチャゴチャしているけど、いつか良くなれば…」というものだったり、“これからの未来”に向けた歌のほうが多いですね。

●曲を作った時はそういう心境になっていた?

橋爪:今回の曲は作った時期で言うと最近のものが多いんですけど、古いものはかなり古いんですよ。だから今の心境に合わせて、そういう曲が集まったということでしょうね。

●ちなみに古い曲というと?

橋爪:M-3「おとしもの」ですね。これだけは2年前くらいに書いた曲で、他はどれもここ1年以内に書いたものだと思います。

●M-5「謝罪文」も最近書いたもの?

橋爪:最近です。そういえば、これは後悔ソングですね。今作の中では一番、まだ前進できていない人の話というか。

●主人公は男性ですが、自分自身の経験を重ねていたりもするんでしょうか?

橋爪:実体験も入っています。でも言いたいことを一番伝わりやすく書こうとしたら、主人公を男性にしたほうがやりやすかったというか。たとえば職場のライバルが先に出世したことへのモヤモヤした気持ちとかで表現しても良いんですけど、“恋人”を対象にすると劣等感だけじゃなくて独占欲も発生するのでわかりやすいなと思って。やっぱり人を妬んだり羨ましがったりする気持ちは誰もが一度や二度は抱いていると思うので、その対象がこの男性にとっては恋人だったっていう。

●実体験にフィクションも織り交ぜている。

橋爪:全くの嘘を書いても仕方がないので、聴いた人に対して説得力がちゃんとあるようなものにしたいんです。聴いてくれた人の9割くらいが「ちょっとは経験したことがあるかも」と思えるような内容で書けたらなと。

●どの曲も誰もが心のどこかに引っかかりのある内容になっているのかなと。

橋爪:今はどれだけお客さんに共感してもらえる曲が増やせるかということを考えていて。みんなどこかに思うところがある曲だと思うので、より多くの人に聴いてもらえたらなと思っています。

Interview:IMAI

1stシングル『青のワルツ』リリース時のインタビューはこちら!

 
 
 
 

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