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生形真一×日向秀和×大喜多祟規×村松拓 最強4人による攻めのバンドサウンド


 
 
 
ELLEGARDEN活動休止をキッカケにギタリスト・生形真一が中心となって結成されたNothing's Carved In Stone。そのメンバーはストレイテナーなどで活躍するベーシスト・日向秀和、日向とともにFULLARMORのメンバーでもあるドラマー・大喜多祟規、そして生形がライブを観て一発で惚れ込んだというABSTRACT MASHの村松拓という最強のメンツである。その彼らの“音”はまだ音源を発表する前から、まだライブをやる前から、一部で話題となっていた。それは音楽コミュニティサイトMySpaceで発表された、たった2曲の楽曲によるものである。そのパワフルなグルーヴと強烈なサウンド、存在感のあるヴォーカルが、この曲を発見した物に強い印象を残した。そして初ライブはいきなりのソールドアウト。この日の会場はまさに集まったオーディエンスの期待感で溢れていた。そして、ようやくNothing's Carved In Stoneの全貌を記した1stフルアルバムが発表される。この何ものにも縛られないサウンドに音楽ファンは打ちのめされるだろう。Nothing's の首謀者・生形と注目のヴォーカリスト・村松に話を訊いた。
 
 
 

INTERVIEW SHINICHI UBUKATA + TAKU MURAMATSU #1
初ライブで見せた生形がこだわる“バンドの音”

 
 


「いろんなバンドをやっている人たちが集まってCDを作って出しましたっていうモノじゃなく、新しいバンドを始めましたっていう音にしたかった」(生形真一)


 
 
●代官山UNITで行った2/27のNothing'sの初ライブを観させてもらって、素直に感動できるものがありました。新しいバンドの誕生に立ち会えたという意味でも感動的だったんですが、何よりライブの中盤からすごく楽しそうにライブをやっているのが伝わってきたんです。
 
生形:あの日はとにかくすごく緊張してたんですよ。だから3曲目くらいまでは、自分たちのことしか考えられない感じだった。楽屋とか凄かったですもん。みんな緊張しちゃって、その空気も重い感じで。
 
村松:完璧なグレーの色になっていた(笑)。
 
生形:みんなが近寄りがたい感じ(笑)。でも、ライブ後半になってから、余裕じゃないんだけど、楽しくやることが出来るようになったんですね。俺にとっては久しぶりに体験する楽しさだった。まあ、2度と同じことはないんだけど、特に初ライブですからね。演奏の良し悪しじゃなく、俺らのエネルギーも凄かっただろうし。
 
●初お披露目ですからね。やはり気負う部分もあったとは思うんです。
 
生形:そうですね。しかも、嬉しい事なんだけどチケットが音源出す前にも関わらず売り切れてましたからね。だから、やっぱりお客さんの期待感は感じるじゃないですか。それに対する緊張が凄かったんですよ。でも、ライブの後半になるとステージから見渡したお客さんはみんな笑ってたし、それを見て良かったって思いましたね。
 
●お客さんは、まだ聴いたことがない楽曲にも関わらずダイブしてましたからね。
 
生形:でもね、ライブ始めた時に見定められてる視線っていうのも感じましたけどね(笑)。“どういうバンドなんだ?” “ライブでどういう風に動いたらいいんだろう?”って探ってる感じはあったと思うんですよ。だからお互いが探り合いな感じだった。それも面白いんですけどね。
 
●お客さんは当然、期待感を持っているわけですが、それと同時に初めて観るわけだから不安もあると思います。
 
生形:それは俺らも一緒なんですよ。期待もあるし、不安もある。そこは同じ気持ちなんですよね。だから、あの日のライブの始まりっていうのは異様な雰囲気に感じましたね。
 
●それが途中から楽しめるようになったのって何なんでしょう?
 
生形:それは途中から拓ちゃん(村松)がすごく楽しそうにしてたからですね。それを見て、俺ら3人も変な力が抜けたんですよ。
 
●やっぱり一番緊張することになるのは拓さんだと思ってたんですが(笑)。
 
村松:それはそうですよ(笑)。だって僕よりもキャリアのある3人がめちゃくちゃ緊張してるんですよ。
 
●ただ生形さんはライブをするのは久しぶりだったわけだけど、拓さんはABSTRACT MASHでずっとライブはしてきているわけで。
 
村松:わりと僕はアウェイ慣れはしてるんですよ(笑)。それは若さっていう部分でもあると思うんですけど、そういう意味ではあのライブでは一番強かったかもしれない。
 
生形:確かに、そうかもしれないね(笑)。
 
●生形さんとしては、久しくライブをやっていないだけに、やりたい気持ちは強かったんじゃないですか?
 
生形:もちろん。それで無理矢理、初ライブを組んだところもありますからね。やっぱり音源を出してからライブっていうのが通常の流れだと思うんですけど、去年の末の時点で音源を出せるのは早くても春くらいになるだろうっていうのは分かっていたんで、それまでにどうしてもライブをやりたいっていう気持ちがあったんですよ。それで無理矢理、2月にライブを入れたんですよね。
 
●そのライブをやりたい気持ちって何なんでしょう?
 
生形:それは色んな人に訊かれるんだけど、わかんない。ただ、バンドをやっている自分としてライブが好きっていうのがデカイんじゃないかって思う。半年間ライブをやっていなかったんですけど、やっぱり1日でも早くライブをしたいって思ってましたからね。ただ、そのためには準備もしなくちゃいけないし、そこでバランス的に考えたのが2月のライブだったんですよ。
 
●生形さんが始める新しいプロジェクトっていうことを考えたら、それは間違いなくライブバンドだと思うんですよ。ただ、ライブってやり続けることで保てる感覚っていうのがあると思うんです。だからライブが出来ないっていうこと自体が不安でもあったのかなって思うんですけど。
 
生形:やっぱり緊張したっていうのは、そういう部分もあったと思うんです。あまりにも久しぶり過ぎたから。だって1ヶ月でライブが1本もないってことなんて無かったですからね。
 
●そこで新しいバンドで1回ライブをやるってことは、すごく得られるものがあると思います。
 
生形:すごく楽しかったし、またすぐにやりたいっていう気持ちになりましたからね。手応えっていうか、ライブに来てくれた人たちがみんないい顔してくれているのがわかったし、俺はとにかくそれが嬉しかった。だから、これからのツアーが
楽しみなんですよね。
 
●2/27の初ライブの時点でアルバムは完成してたんですか?
 
生形:演奏の録りは終わっていて、後は歌録りだけって感じでしたね。歌録りは半分くらいは終わっている状態だったのかな。
 
●初ライブで披露したのは7曲でした。あのライブでNothing'sの全貌が見えたわけじゃないですけど、やろうとしていることはハッキリと指示されたと思います。このバンドのビジョンっていうのは、生形さんが新しいバンドを始めようと動き出した時点からあったんですか?
 
生形:それはないですね。メンバーが揃って、スタジオに入ったりして自然と出てきたものです。ただ1つだけ思っていたのは、バンドにしたいってことでしたね。それはソロとバンドの違いっていうことでもなくて、俺は“バンドの音”っていうモノが絶対にあると思うんですね。言葉では上手く説明できなくて何が違うっていうのは言えないんだけど、結果的にこのアルバムの音っていうのは“バンドの音”になったと思うんです。いろんなバンドをやっている人たちが集まってCDを作って出しましたっていうモノじゃなく、新しいバンドを始めましたっていう音にしたかった。それは音を聴いてもらって、みんなに良いと感じてもらえるのが一番良いと思ってるんだけど、俺はそれが出来たと思っているし、ライブでもそういう感じは出せたと思う。
 
●生形さんが中心となって、ゲストプレイヤーを呼んでアルバムを作ったというのでは、“バンドの音”っていうものにはならない可能性があると思います。それは生形さんのソロプロジェクトになるわけで。やっぱり“バンドの音”を作るために、メンバーとスタジオに入って音を作り上げていくっていうのはNothing'sを始めるにあたりこだわった部分なんですか?
 
生形:うん、そこは一番こだわったところですね。
 
 
 

INTERVIEW SHINICHI UBUKATA + TAKU MURAMATSU #2
セッションで生まれていった楽曲たち

 
 


「“なんてヴォーカル思いじゃないバンドなんだろ”って思った(笑)。でも、それで全然良いんですよ。このバンドはみんなが主役なんですよ。」


 
 
 
●Nothing'sの始まりはセッションだそうですね。
 
生形:最初はひなっち(日向)に声を掛けてっていうところから始まって、最初にスタジオに入る時にはひなっちがオニィ(大喜多)を連れてきていてくれていたんで、その時点で3人でセッションしたんです。そこで、既に良い感じだなって思った。
 
●ELLEGARDENの時ってメンバーとセッションってやったりしてたんですか?
 
生形:何もないところからセッションをしていくっていうのは殆どやったことがないですね。エルレは、まず歌があってバンドでアレンジをしていくっていうやり方なんで、Nothing'sの場合は曲の作り方が真逆なんですよね。まずギターのリフやベースのフレーズがあって、そこから曲を広げていって、最後に歌を乗せる。
 
●バンドをセッションから始めようと思ったのは?
 
生形:それにはいろんな理由があるんです。ひなっちはストレイテナーもやってるんだけど、ZAZEN BOYSもやってたし、今はEntity of Rudeっていうインストのバンドもやっていたりして、そのライブを観させてもらって、すごく刺激を受けたんですよね。フレーズすら決めないで、何かを思い付いた人がフレーズを弾いてライブが始まるっていう、本当にセッションのライブですね。そういう世界の音楽をやってみたいって気持ちもあったんです。
 
●そこがNothing'sのスタートなんですね。
 
生形:だから、うちの音はそういう風に作り始めているんですけど、そこで歌もメロディーがあるものにした曲として成立させているわけですけどね。
 
村松:僕は、初めはこの人たち何をしてるんやろって全然わからなかったですからね(笑)。最初はなんでこういうサウンドで歌わせるんだって思ってましたから。バンドとしてのコンセプトが、僕が元々やっているバンドとは違うんですよね。だからスタジオに入ったり、いざRECをするって時に“なんてヴォーカル思いじゃないバンドなんだろ”って思った(笑)。でも、それで全然良いんですよ。このバンドはみんなが主役なんですよ。
 
●確かにそうですね。Nothing'sの場合、まずグルーヴが強烈ですからね。
 
生形:オニィのドラムにしても、ひなっちのベースにしても独特なものがありますからね。ちゃんと自分のスタイルがある。それは俺もそうだし、拓ちゃんもそうなんだけど、このバンドではそれぞれが持っているスタイルっていうのをなるべく生かすようにしているんですよね。もちろんバンドとしては1つの塊になっているんだけど、個々のスタイルっていうのは所々に出していきたかった。
 
●3人で初めてやったセッションってどんな感じだったんですか?
 
生形:実は1曲目(「Isolation」)と2曲目(「Silent Shades」)はその時のセッションで出来てるんですよ。もちろん細部のアレンジはその後で仕上げたんだけど、原形はその日に生まれた。スタジオに入るたびに、とりあえず形にしようって言って、毎回1曲か2曲は作っていたんですよ。
 
●そのセッションのノリで、すぐに曲を作るモードになったわけですか?
 
生形:特に何も持ってこずにスタジオに入ってたから、そこで延々とセッションだけやっていても仕方ないんでね。ちょっとずつ形にしていこうって言いながら、曲を作る感じだった。まだ、その時はヴォーカルが誰になるかも分からなかったからメロディーは付けられなかったんだけど、サビのコードはこんな感じにしようってセッションしながら作っていきましたね。
 
●1枚目から13曲入りのフルアルバムだから驚いたんですけど、曲はかなりあったということですね。
 
生形:曲はかなり沢山ありますよ。
 
●最初に3人でスタジオ入った時から曲が出来たっていうことは、Nothing'sの土台はすぐに出来たということですね。
 
生形:ただ、そこからが長かったんですよ。やっぱりヴォーカルによって曲調が変わってくるし、ひょっとしたらヴォーカルによってはこれまで作ってきた曲が使えないかもしれなかった。それが拓ちゃんが入ることで、生かすことが出来たっていうのは凄く良かったんですよね。
 
●拓さんを見つけたのはMySpaceだそうですね。
 
生形:MySpaceのフレンドを見ていくと、どんどん色んなアーティストへと繋がっていくじゃないですか。そうやっていろんな人の音楽を聴いていたんです。それで、拓ちゃんのバンドを見つけていいなって思ったんですよね。
 
村松:だからタマタマですよ。
 
生形:でも、あんまり良いと思えるヴォーカルっていなかった。あと出来れば、あんまりイメージが付いていない人とやりたかった。それで見つけた3日後くらいに拓ちゃんがやっているABSTRACT MASHのライブに行ったんです。
 
●動きが早い(笑)。でもMySpaceで聴くのと生のライブでは当然違いますよね。
 
生形:今はレコーディングで何でも出来たりするから、特に最近は音源とライブのギャップが大きかったりするじゃないですか。だから、正直に言うとあんまり期待しないで行ったんですよ。
 
村松:そりゃ、そうですよ(笑)。
 
生形:でも、そのライブの印象がすごく良くてね。歌が上手いっていうのはもちろんあるんだけど、なによりも雰囲気が良かった。ステージに立った時の雰囲気っていうか、オーラみたいなものって、頭で考えて出せるものじゃない。だから、すぐに一緒にやりたいって思った。
 
●拓さんは、最初はビックリしたと思うんですけど。
 
村松:取り敢えず最初は怖かったですね(笑)。そのライブにはオニィと2人で来てくれたんですけど、オニィって普段はボーッとしていて目つきがめちゃくちゃ悪いんですよ。
 
生形:まあ、一見冷たく見えるよね(笑)。ほんとはあったかいんだけど。
 
村松:それで大きいのと小さいのが来たと(笑)。で、話を聞いてみたらELLEGARDENやってる人とZOOBOMBSをやっている人だと解って、最初はからかわれてるんだって思いましたけどね。でも、現実的に考えるとわざわざからかいに来るわけはなくて…。
 
生形:それで、その日は連絡先を交換して、その後で話をするんだよね。
 
●そこで誘われるってことは嬉しいことだと思うんですけど、一方で自分のバンドもあるわけで迷いもあったんじゃないですか?
 
村松:それは凄いありましたね。もちろんそれは生形さんにも相談したし、ABSTRACT MASHのメンバーにも相談した。でも、アブストのメンバーは“良い経験になるんだし、やってみりゃ良いんじゃないの”って感じだったんですよ。僕もヴォーカリストとして大きくなりたいって気持ちもある。僕はオアシスのリアム・ギャラガーが凄い好きなんですよ。彼は生粋のロック野郎ですよね。あの絶対的な存在感はすごい。それに近づくためにはどうすれば良いのかって悩んでいた時期でもあったんです。まあ、それにこのメンバーだったらそれなりのヴォーカルでも、それなりのバンドになるはずですからね(笑)。ただ、そこでなぜか自分もいけるだろって自信もあったんですよね。
 
 
 

INTERVIEW SHINICHI UBUKATA + TAKU MURAMATSU #3
この4人が好きなことをやって生まれたアルバム

 
 
 


「求められていることが何かなんて全然考えなかったし、この4人で出す音で一番良いものってこれなんじゃないかって、自然に出来たのが今回のアルバム」


 
 
 
●このアルバムの1曲目を飾る「Isolation」ですが、歌詞の世界もまさに新しいバンドを始める意思表明みたいなものが描かれているように感じました。なんとなく生形さんの心情が描かれているような…。
 
生形:これは正に俺が書いた歌詞ですね。1曲目ということもあり、バンドしてのスタンスを書いている。歌詞は拓ちゃんが大半を書いてるんですけど、そこで俺やオニィがちょこちょこと書いたりしている感じですね。
 
●「Isolation」に関しては生形さんが自分で書きたいって気持ちがあった?
 
生形:この曲に関してはそうですね。
 
村松:この曲の歌詞はとにかく前向きですよね。すぐにバンドがやりたかったんだっていうのが出ている(笑)。
 
生形:まあ、このバンドは前向きだね。アレンジとかが煮詰まってもネガティブになることはない。
 
●「Isolation」で歌われている“必要なものは全部揃えた あとはそこに魂を込めるだけ"っていう部分が、Nothing'sがバンドとして成立するためには重要だったんじゃないかなと思いました。
 
生形:俺の中にやりたいジャンルって特にないんですよ。ただロックがやりたいっていうか、ロックしか出来ないんですけどね。それでロックって何かって考えたんだけど、魂っていうか…魂って言い方もよっとクサイんだけど、でもそういう気持ちが入った音楽がロックだと思うし、そういう音楽ならジャンルなんて関係なく何でも自然に聴ける。俺は昔はホーンの音とか全然意味が解らなかったんですよ。でも、例えばジョン・コルトレーンのアドリブなんかを聴いていると、俺にとってはジミヘンやジミー・ペイジがギターでアドリブでソロを弾いているのと何ら変わらないって解ったんですよね。それくらい伝わってくるものがあった。今はそういう感覚なんですよ。それは魂が伝わってくるから、その音楽が好きなんだなって思うんですよ。
 
村松:俺が一緒にスタジオに入るようになって、最初の印象っていうのは結構みんな走ってるなって思ったんですよね。大人の人なんだから落ち着いてやってるのかと思ったりもしたんだけど、ウブさん(生形)のギターも走ってるし、オニィのドラムはめちゃくちゃなことになってるし(笑)。でも、それで熱くやっていいんだって思ったんですよね。そこが通じ合える部分だったというか。
 
●それでNothing'sのヴォーカルスタイルも見えてきた?
 
村松:そうですね。これから変わっていく部分もあると思うんですけど、とにかくこのバンドでは力強く歌うだけですね。とにかく声を出していかなくちゃいけない。
 
●楽器の音が強いわけですからね。
 
生形:でも、俺が今まで出会ったなかで拓ちゃんが一番声量があると思うんだけど。
 
●このアルバムですが、サウンドも多彩ですよね。4曲目に収録されている「November 15th」に打ち込みが入っていたのは、驚きました。
 
生形:これは生の演奏で作った曲に後から打ち込みを足した感じですね。今回のアルバムではいろいろやってみようっていう気持ちはあったんです。だから打ち込みとかシンセが入ってる曲もあるんですよ。
 
●そこら辺の音も生形さんが?
 
生形:いや、打ち込みなんかに関してはひなっちが多いですね。「November 15th」もひなっちがプログラムしてくれたのを入れている。みんなでアイデアを出して、それをひなっちが持ってくれる感じでした。
 
●じゃあ、曲をまとめるアイデアなんかも4人で出しているんですね。ちょっと、それは意外でした。
 
生形:4人でやってますね。みんなで作りながら話してまとめていく感じですよ。でも、そこで曲を作っていくスピードも実は速いんですよ。俺が“こういう感じが良いんじゃない”って言ったら、そこからいろんなアイデアが出てきて、すぐにまとまっていく。
 
村松:うん、それぞれ引き出しが多いんですよね。
 
生形:それを形にしていくってことで、自分たちでプロデュースしている。
 
●やはりセルフプロデュースでやろうって意識は強かったんですか?
 
生形:それは敢えて自分たちでやろうって意識でしたね。もちろんスタジオのスタッフにはかなり助けてもらってるんですけどね。俺はエルレの時にセルフプロデュースでやったことが無かったから、やってみたかったんですよ。それも、これを機会に新しいことにチャレンジしたかったことですね。やってみて凄く楽しかったですよ。大変なことではあるんだけど、好きなように出来るし、それがダメだったら自分の責任になるわけですからね。
 
●やはり生形さんが始める新しいバンドっていうところの期待ってあると思うんですけど、まずは自分がやりたいことをやるっていうことが大事だった?
 
生形:自分に何を求められてるのか、それはわからないです。それこそ客観的にならなくちゃ見えてこないことなんだろうけど、それを人に訊いても仕方がないことですからね。だから、求められていることが何かなんて全然考えなかったし、この4人で出す音で一番良いものってこれなんじゃないかって、自然に出来たのが今回のアルバムですね。
 
●アルバム自体のビジョンはあったんですか?
 
生形:それも特に無かったんですよ。最初は好きなことをやって、多少とっちらかっても良いくらいだった。俺たち4人がやっているんだから、よっぽど違うことをしない限りまとまるだろうと思っていたし。だから好きなように作ったアルバムでもありますね。
 
●とっちらかっても構わないっていうのは堂々と自分の信じるものを出せばいいっていう自信でもありますよね。
 
生形:そうですね。あと自分のなかでは、極端なことをやらないとカッコ良くないと思ってた。だから、とっちらかっているなら好きな曲を全部入れればいいし、そうじゃなかったら1つのコンセプトを決めて4人で作っていけば良いし、そのどっちかしかないとは考えていたんですよ。それで最初から決め事を多くしても仕方がないなって思ってたんで、好きなようにやれば良いって思ったんですよね。
 
●この作品の全体的なイメージとして、かなり攻めているって印象があるんですけど、そのなかで「New Day」っていうミドルテンポの曲もあったりして、そんなにとっちらかってるってイメージもなかったですよ。攻めっていう1本の筋がはっきりあると思います。自分で出来上がった作品を聴いてみたときの率直な感想はどうでした?
 
村松:結構、僕は歌録りが大変だったりしたんですよ。
 
生形:1日8時間歌いっぱなしが普通だったからね。
 
村松:だから青春っぽいんですけど出来上がったCDをかけてみて、涙が出るような感じでしたね(笑)。
 
●なるほど(笑)。生形さんはどうでした?
 
生形:単純に嬉しかったですね。レコーディングやトラックダウン、それこそデモの時から数えると嫌ってほど聴いてきた。でも、作品として出来上がって家に帰ってからも聴いちゃいましたからね。良く出来た作品だって想いはある。でも、俺は作品が出来たら、すぐに次のことを考えちゃうタイプなんですよ。だから自分のギターが録り終わって、マスタリングまでって結構時間があるので、次のバンドとしてのビジョンっていうのを考えたりしてましたね。
 
●もう次のビジョンなんですね(笑)。ツアーではワンマンが4本決まっているわけですが、そのライブではこのアルバムに収録していない曲をやったり、早くも次のNothing'sが見れたりするんですか?
 
生形:収録していない曲も是非やりたいですね。あとセッションもやりたいんですよ。実はツアーの小さな小屋でセッションライブっていうのもやりたいと思ってる。それが出来るバンドだし、ミュージシャンとしてそういうライブをすることで成長出来ると思いますしね。
 
 
 
 

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