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京都大作戦2016 ~吸収年!栄養満点!音のお野祭!~ 参戦後記

京都大作戦2016 ~吸収年!栄養満点!音のお野祭!~ 参戦後記

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2日間で4万人が太陽が丘に集まり、全身全霊で…まさにスポーツマンシップのごとく…ライブキッズ魂を爆発させる僕らの夏の風物詩が今年もやってきた。9周年を迎え、出演者とスタッフとオーディエンスが同じ目線と同じ気持ちを持って音楽とフェスを楽しみまくった2日間。今年も全力で走り続けました。

 
 
 
 

2016年7月2日(土)晴れ

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 源氏ノ舞台、記念すべき初日1番手を務めたのは、初出場のFear, and Loathing in Las Vegas。M-1「Acceleration」ですさまじいOiコールが沸き起こり、いきなり30度を超える快晴の暑い夏の日をさらにアツくさせる。エレクトロサウンドとバンドサウンドが融合し、クラブナンバー的なノリのよさと生音の力強いグルーヴ感が合わさって最強のアンサンブルを生み出している独自の音楽性。昨今のピコリーモブームに火を点けた一端は、間違いなく彼らが担っているだろう。暴れ足りないとばかりにステージで側転を決めるKey.Minamiや、カメラに向けて尻を振るお茶目なG.Taikiのパフォーマンスなども含めて、全シーンがハイライトと言えるほど見どころ満載の35分間だった。
 
 
 
 
ヤバイTシャツ屋さん (3 - 20)

 牛若ノ舞台の初陣を飾るのは、いきなり自分たちが住んでいる喜志駅(近鉄長野線)周辺の地理関係の説明を始めたヤバイTシャツ屋さん。言わずもがな1曲目は「喜志駅周辺なんもない」で、初っ端からオーディエンス全員がOiコールを始めてダイバーが続出。全国流通盤のCDをリリースしていないバンドとは思えないほどの一体感と爆発力。宇治市出身、太陽が丘は地元、毎年“京都大作戦”を観に来ていたという彼らの「夢は必ず叶う!」という言葉は説得力の塊で、客席エリアからもうもうと土煙が起こるほど盛り上がった。
 
 
 
 
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 源氏ノ舞台、RHYMESTERは2MC / 1DJというスタイルで、枠に囚われない自由度の高い表現力を発揮。1曲目「ONCE AGAIN」に始まり、メロディアスなサビで聴かせる「STILL CHANGING」などヨコノリの心地良い音楽で揺らしていく。続いて挨拶がてら自己紹介ラップをかまし、センスとユーモア溢れる言葉で勝負。また途中で10-FEETのTAKUMAが乱入し、撮影班の大きなカメラを奪い、メンバーのベストカットを収めていく場面も(笑)。彼らはライムに乗せてたくさんの主張を発信している。だから楽しみながらも“考えることの大切さ”を教えてくれる。きっとそこに込められている想いが“キング・オブ・ステージ”と称されるほどの凄みを持たせているのだ。
 
 
 
 
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 G.原田が牛若ノ舞台でギターを歪ませる。Vo.茂木の「2016年7月2日、京都大作戦…」という語り&ジャムからライブを始めたG-FREAK FACROTY。太陽の下で茂木が客の上に身を乗り出して歌い始めた「Too oLD To KNoW」では、オーディエンスが一斉に腕を振り上げて客席エリアが肌色に染まる。さらにジャムからの「日はまだ高く」、「Unscramble」とライブはどんどん加速度を増し、観客の興奮度も比例するように増していく。言葉の1つ1つがグッサリと胸に深く突き刺さる新曲「ダディ・ダーリン」、そして最後は全員が顔をくしゃくしゃにして茂木と一緒に歌った「EVEN」。観る度に違う彼らのステージは、この日も最高だった。
 
 
 
 
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 昨年は牛若ノ舞台1番手を務めた04 Limited Sazabysが、遂に源氏ノ舞台へ!「monolith」が始まると、早くもダイブ&モッシュの嵐! メロコア的速度感で疾走する「climb」、歌が際立ちながらもダンサブルなリズムを刻む「Chicken race」などでは、サークルやスカダンスが至る所で発生。そしてVo./G.GENが心から尊敬する10-FEETへの感謝を告げ、「10-FEETにはもらってばかり。夢をもらって育ててもらった、それを返すには最高のライブをするしかない」と内に秘めた想いを語り、オーディエンスの胸を躍らせる曲だけを差し込んでいく。MCで「憧れの向こう側にやってきました」と言っていたが、丘を越えてきた彼らが、この1年で何を得てきたのかが垣間見えた気がする。
 
 
 
 
 テンション高く牛若ノ舞台に登場したのは“京都大作戦”初登場のPOT。軽快なコール&レスポンス、土煙が舞うほどに観客を踊らせるそのステージングは、彼らの人柄とバイタリティの賜物だろう。「Hustle night」「Hustle on the beach」と立て続けに披露されたアッパーチューンはダイバーを乱発させ、「Hustle carnival」でとどめを刺すかのごとく肩車から数えきれないほどのダイブを誘発。最後の「Terminal」までダイバーとモッシュは途切れることなく、観客は終始笑顔で、汗にまみれて音を鳴らす4人はサービス精神旺盛&現場掌握能力が抜群だった。
 
 
 
 
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 壮大なSEと共に源氏ノ舞台に登場したMONOEYESは、「My Instant Song」から始まった。柔らかさのあるミドルナンバーで、暖かみを感じさせる名曲だ。続いて鋭いギターリフが突き刺さる「Like We've Never Lost」、ダークな雰囲気をまとう「Cold Reaction」などでオーディエンスを熱狂させる。また中盤を過ぎると、Ba.スコットがボーカルを執り、彼が活動している別バンド、ALLiSTERの「Somewhere On Fullerton」を披露! 聴かせるところは聴かせ、飛ばすところは飛ばす…そんなメリハリのある展開が味わえるのも、1曲ごとの完成度の高さゆえだろう。“名曲”と呼ばれるものは様々あるが、それらは得てして万人に広がっていく力があるように思う。そういう意味で、Vo./G.細美は名曲を続々と生み出すメロディーメーカーだ。
 
 
 
 
キュウソネコカミ (29 - 31)

 初出演のキュウソネコカミは牛若ノ舞台に颯爽と登場し、「MEGA SHAKE IT!」で1曲目から爆発的な盛り上りを見せる。「良いDJ」では“ディスクジョッキー”コールとスクラッチのポーズ、「KMDT25」では“ご先祖様”と叫んでからの盆踊りサークル、「DQNなりたい、40代で死にたい」の“ヤンキー怖い”の大合唱などなど…キュウソのコール&レスポンスや振り付けの中毒性は他に類を見ない。さらに「今日しかできないライブをする」と名言したG./Vo.ヤマサキが、肩車をしているオーディエンスに「一緒に大作戦しようぜ!」と語りかけると、客席に飛び込んで肩車をしている人たちの上に乗り、組み体操さながらのタワーを作ったのだ。初出演にて抜群の存在感を示していった。
 
 
 
 
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 ライブ前のサウンドチェック、10-FEETの「goes on」でひと盛り上がりさせたROTTENGRAFFTY。源氏ノ舞台に立ったVo.N∀OKIが「いよいよ来たぜ、この時間が!」と吠え、G.KAZUOMIが殺傷力の高いリフで「世界の終り」をスタートさせる。日中でいちばん温度が上がる時間帯に、いちばん熱量の高いやつらのライブ。重く太く鋭いサウンドとめまぐるしく変化する展開、爆発力を持ったサビが強烈な新曲で魅せ、会場を祭りに染めた「響く都」、全員を踊らせた「D.A.N.C.E」、無数のクラップとダイバーが埋め尽くした「This World」、大合唱を作り出した「金色グラフティー」と一瞬も休ませない貫禄のステージ。ROTTENGRAFFTYもオーディエンスも、全員が“京都大作戦”の楽しみ方を知り過ぎている(笑)。
 
 
 
 
 田我流とカイザーソゼは、ラッパーの田我流によるバンドプロジェクト。雰囲気のあるジャジーなサックス、エスニックなコンガのようなクラシカルな楽器に、近代的なデジタルサウンドを生み出すPCが組み合わさっているのが印象的だ。牛若ノ舞台で、そんな新感覚を教えてくれる田我流とカイザーソゼの音楽を聴くと、せせらぎのような清涼感が全身に染み渡り、ライブで火照った体を潤してくれる。特に流麗なピアノのイントロから始まる「坂」は、涼しげで開放的な音が心より自由にするようだった。空に溶けていくような美しいグッドミュージックと、何気ない日常の飾らない感情を描き出す才能に歓声が送られた。
 
 
 
 
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 世代違わず、太陽が丘に居合わせた全員がその音に触れた瞬間から楽しそうに身体を揺らし、音楽に身を任せる。2年ぶりの参戦、東京スカパラダイスオーケストラが源氏ノ舞台に登場。「ルパン三世'78」「DOWN BEAT STOMP」でオーディエンスをノリにノセた後、10-FEETのTAKUMAとNAOKIを招いて「hammer ska」、更にROTTENGRAFFTYのVo.NOBUYAとN∀OKIが参加した「閃光」と、フェスならでは垂涎のコラボ。そしてB-Sax.谷中が「この人と一緒にここでやるのが夢でした」と言って招いたのはKen Yokoyama。Kenと共に「道なき道、反骨の。」「Punk Rock Dream」を披露し、観客は大喜び。そして最後は「空に壁が作れないように、音楽に国境は無い」と言って「Paradise Has No Border」。さすがのスカパラ、最初から最後までメインディッシュが並びまくるようなステージ、思いっ切り満喫した。
 
 
 
 
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 牛若ノ舞台に登場し、「2年前ここに立ったときは、初めてのフェスでめちゃくちゃ緊張して出し切れなかったのが悔しかった。今日は全員を虜にして帰る」と宣言したのは、2014年以来の出場となるDizzy Sunfist。夏空と同じくらいに清々しい、とにかくポジティブで激しい楽曲を次々と鳴らしていく様は、止まったら死ぬ回遊魚的な勢いを感じさせる。その熱はオーディエンスも伝播していき、フロアじゅうの人が頭から終りまでトップギアで走り抜ける様はいつ見ても爽快だ。正直2年前に観たときもその力強さに惹かれたのだが、そのときの衝撃を軽々と飛び越えた素晴らしいステージだった。
 
 
 
 
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 日の丸の旗を肩にかけて源氏ノ舞台に登場したKen Yokoyama。「Maybe,Maybe」で幕を開け、「Punk Rock Dream」でスカパラのコラボに引き続いてダイバーを乱発させる。客席エリアの端、ダイブした人たちが客席エリアに戻っていく通路脇で観ていた筆者の前を、いったい何人が通りすぎて行ったことか。圧倒的に暴れさせた後の「Beautiful Song」では存分に魅了し(というかまるで歌に飲み込まれるような感覚だった)、最後は「Pressure Drop」。「京都大好きだぜ。日本大好きだぜ。10-FEETが作ってくれた場所をみんなで守るんだよ」と、屈託のない笑顔で言うKen。その知名度やキャリア、数多くの出演者に与えてきた影響などを一切感じさせず、1人の人間として今の想いを歌う彼のステージは、とてつもなく眩しかった。
 
 
 
 
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 SUPER BEAVERは牛若ノ舞台に現れると、まずメンバーがドラムの元へ集う。そして精神統一してから、Vo./G.渋谷がこう言った。「おそらく飛べないし、踊れもしないけど、日本語の本気を見せにきました」。その言葉に胸を打たれた人間がどれほど多かったことだろう。例えば“愛”、例えば“夢”、“ひとりじゃない”とか“そのままの君でいい”等々…前向きな言葉は大事なものだとはわかっていても、まっすぐには受け入れられないことがたくさんあると思う。しかし、心ない薄っぺらいものじゃなくて、心の底から本気で想ってその言葉を贈っているんだと感じられたとき、暖かい前向きな言葉が奥深くとても大切なものに感じられるのだ。SUPER BEAVERが発す言葉というのは、まさに“大切なもの”そのものだった。
 
 
 
 
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 源氏ノ舞台にSEが鳴り始めた途端、数えきれないほどの10-FEETタオルが掲げられる。10-FEETが登場し、3人が呼吸を合わせる。「goes on」でライブがスタート。
 客席エリアの各所でサークルが生まれ、全員が歌う。ステージからではなく、前後左右から歌が聴こえてくる非現実を目の当たりしに、今年も“京都大作戦”に参戦したことを実感する。更にサークルモッシュが増えた「4REST」、大阪籠球会がゲストとして参加した「super stomper」。どの曲もみんなで歌い、みんなで跳び、みんなで暴れまくる最高の時間。TAKUMAが「なるべくみんなに嫌なことがなかったらいいなと思います。100%楽しめたらいいなと思います。もしなんか嫌なことがあったら、俺らに免じて許してくれ」と言って始めた「Freedom」、大合唱が沸き起こった「nil?」、客席エリアのテンションが前から後ろまでギュウギュウのライブハウス状態になった「1sec.」。めまぐるしく展開する最高の連続に、全身で楽しさを表現するオーディエンス。この感覚は、ここでしか味わえない。
 そしてTAKUMAは「悲しいことが今日の楽しさを照らしてくれるはずや!」と叫ぶ。「諦めへんかったから今日こうやって一緒に笑えます」…そう続ける彼の叫び、いつしか叫びじゃなくて歌になっていく。この不思議な感じ、なんだろう? TAKUMAは「全部言いたいときがあるけど、でもきっと、全部言ったら逆に伝わらなくなる」と言い、いつしかその言葉は新曲「アンテナラスト」に変わっていった。
 彼らが4年ぶりに発表した「アンテナラスト」、この曲はヤバかった。初めて聴いたときから“京都大作戦”で聴きたいと強く思っていた。10-FEETらしくて、人間らしくて、聴いた瞬間にギュッと心を鷲掴みされるような、優しくて温かくて強い曲。来年も再来年も、ここで聴いていたい曲。心がぶるぶると震え続けた。
 ステージからの照明が笑顔で歌う2万人の顔を照らし、異常な数のダイバーが空を舞った「RIVER」で本編終了。アンコールではROTTENGRAFFTYのNOBUYAとN∀OKIが参加した「その向こうへ」、そして最後は「風」。ただ激しいだけじゃなく、ただ楽しいだけじゃない、とても10-FEETらしい締め括り。“京都大作戦2016”、1日目が無事幕を閉じた。

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2016年7月3日(日)晴れ

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 「2016年7月3日、10-FEETプレゼンツ、京都大作戦2016、吸収年! 栄養満点! 音のお野祭! WANIMA、開催しまーす!!」というVo./Ba.KENTAのかけ声で始まった源氏ノ舞台のWANIMA。「ここから」「夏の面影」とキャッチー全開のパンクチューンを連発し、のっけからオーディエンスを暴れさせる。大きな大きなコール&レスポンス、Dr./Cho.FUJIの爆笑MC(長渕剛モノマネ)、とにかく彼らは客を巻き込む力が凄まじい。オーディエンスは朝から本当に楽しそうに彼らの音に身を委ねる。オーディエンスと共にライブを作り上げていくWANIMAのスタイルは、まさに“京都大作戦”向き。「10-FEETへのリスペクトを込めて」と10-FEETの「VIBES BY VIBES」をサプライズでカヴァーすればTAKUMAがギターを持って乱入。最初から最後まで温かくて熱いステージで、2日目のトップバッターを見事に飾る。
 
 
 
 
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 バンドロゴがプリントされた巨大なフラッグを堂々と振り、荘厳なオーラを纏う5人。それが2日目の牛若ノ舞台、先陣を切ったCrossfaithの第一印象だった。ズシリと腹に響くドラムの重低音が病み付きになる「Monolith」、ザクザクと刻まれるギターリフとPCから生み出されるデジタルサウンドの絡み合いが絶妙な「Devil's Party」など、そのスタイリッシュさやアレンジセンスはあらゆるミュージックラバーが認めざるをえない。楽曲のクオリティもさることながら、一挙一動が絵になるくらいキマッていて、メンバーひとりひとりのスター性・カリスマ性がズバ抜けているのも彼らが支持される大きな理由なのだろう。
 
 
 
 
 今年、花団の血を受け継ぐ男たちが源氏ノ舞台に登場するという一報を聞き、筆者の胸はざわついた。そのバンドの名は四星球。これは事件である。
 
 
 
 
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 10-FEETメンバーを巻き込んだ小芝居で持ち時間を大幅に消費し、更に1曲目の「運動会やりたい」ではオーディエンスを巻き込んだ運動会を敢行。登場と1曲目が終わった時点で既に10分以上が経過。なんだこれ。
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 と思えば、シンガー&作詞の康雄が「売れるタイミングも辞めるタイミングも逃してきた四星球が、このタイミングだけは絶対に逃さないために!」と熱いことを言って「Mr.Cosmo」を始め、彼らの奥義“笑いの先の感動”で泣かせるのかと思いきや、「運動会延長戦!」と言って客にサークルモッシュ対決させ、「京都の大好きな先輩(花団)に向けて」と言って始めた「コミックバンド」で熱く締め括るのかと思いきや、「ちょっと(持ち時間が)巻いたのでもう1曲やります」と言って10-FEETの「RIVER」を3秒だけカヴァー。最後は大玉転がしよろしくドラム&雑用のモリスが「僕を1回も地面につけずに牛若ノ舞台まで転がしてくれ〜」とか言って客席に突入し、“モリス転がし”で大団円。後にモリスに聞いたところによると、マジで1回も地に足をつけないまま観客がモリスを牛若ノ舞台まで運んでくれたという。バンドもバンドなら、客も客だ。
 彼らが“京都大作戦”でやったことが多すぎるため、他の出演者と比べてレポに割いた文字量が明らかに多くなってしまったが、とにかく四星球は深い爪痕を僕たちの心と思い出の1ページに残していった。コミックバンドとしての誇りを貫き通したその姿は、(変な格好をしているけど)かっこよかった。
 
 
 
 
 SKAを超越したSkhaotic(SKA+chaoticの造語)を提唱するFEELFLIP。リハでは10‐FEETの「hammer ska」をカバーするなど、バンドへのリスペクトも忘れない。本番を迎えると一瞬でスカダンスが始まり、砂埃が大量発生する。ひたすら踊らせるほどのパーティー感を生み出しつつも、ミッドテンポの部分では2Saxという珍しいブラス編成から生み出されるムーディーな空気感が、また違ったグルーヴを作り出している。そんな大人な音を聴かせたかと思うと、突然客席に飛び出したりステージ上を駆け回ったりするから、予測不可能な展開からとにかく目が離せない。
 
 
 
 
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 源氏ノ舞台ではHOME GROWNによるジャムが始まった。ビシビシと肌に突き刺さる音に乗せて4人が現れる。FIRE BALL with HOME GROWNの登場だ。
 彼らのライブをここで観るたびに痛感するのだが、ダンスホール・レゲエのエネルギッシュなステージは、太陽が丘の空によく映える。「FIST & FIRE」「ヤーマン刑事~大炎上」と、オーディエンスを巻き込みながら目まぐるしくステージを展開させ、「俺らはレゲエという音楽に生かされて、レゲエという音楽を愛しています」と「STOP THAT TRAIN」「YOU CAN GET IT IF YOU REALLY WANT」で魅せた後、「BAD JAPANESE」「BRING IT ON」と重ねてどんどん熱を上げていく。会場の熱がピークに達したところで最後は「共感しましょう」と「ONE LINK」。同曲の大きな一体感が広い太陽が丘をひとつにした。
 
 
 
 
 Day tripperの曲は速い! とにかく速い! 演奏中は手元が霞んで見えるくらいの早業だ。MCもそこそこに、ブレーキのない1300ccバイクのごとく、超高速な曲をひたすら突き刺していく。ライブハウスで培ってきたものを凝縮してすべてぶつけようと、バチバチに気合いの入ったメンバーたちには鬼気迫るものがある。だからこそ「これからもチョッパヤのメロディックパンクをやる」と宣誓したVo./G.石田の言葉には、どんな場所であろうと自分たちのやることは変わらないという意志を感じた。最後にはすべてを出し切って倒れ込む石田。ストイックなまでに、どこまでもバンドマンとして貫き通す姿勢が何よりもカッコいい。
 
 
 
 
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 Vo./G.ホリエアツシの「1,2,3,4!!」という声からの「From Noon Till Dawn」でライブをスタートさせたストレイテナー。G./Cho.大山のギターに合わせてクラップが沸き起こり、テンションが上がったホリエが「京都大作戦、すばらしい!」と叫ぶ。
 瞬く間に源氏ノ舞台はストレイテナーが作り出した独特な色に染まり、エッヂィなサウンドと鋭いリズムに魅了される。音とリズムに酔いしれたダイバーが次から次へと打ち上がり、スケール感が大きい「DISCOGRAPHY」ではクラップが客席を埋め尽くす。ホリエが「周りに流されることなく、自分の色を大切にしている…そんなあなたに作りました」と告げて始まった「原色」、「俺たちも精一杯の愛をこのステージに込めたいと思ってやって来ました」と言って始めた「Melodic Storm」など、4人が作り出す唯一無二の時間と空間は、2万人の心を強く強く惹き付けた。
 
 
 
 
 揺れるビートとうねるグルーヴで踊らせて、極上の空間へと誘うSABANNAMAN。理屈はわからなくても、彼らの音楽を聴けば肌感覚で「いい音楽」とはどういうものなのか理解できるだろう。思わず騒ぎ出したくなる気持ちの良いファンクミュージックを全身に浴びたかと思うと、ヘヴィなサウンドと鋭いリリックで胸を震わせるような楽曲もあり、ミクスチャーバンドの懐の広さを見せつける。2012年結成の若手でありながらベテランも顔負けのいぶし銀な実力を存分に発揮し、決して名前負けしない雄大なスケール感を持っていた。
 
 
 
 
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 “京都大作戦”のメロディ番長、皆勤賞3組のうちの1組、dustboxが今年も源氏ノ舞台に現れた。イントロの時点でサークルモッシュが多発した「Hurdle Race」で颯爽とライブスタート。ダイバーの笑顔がハンパない。
 「Rise Above」のコール&レスポンスで充分に熱くなっているオーディエンスの身体を更に熱し、「Riot」では多数のクラップを沸き起こさせて準備は万全、Vo./G.SUGAが「もっといこうぜ!」と煽りに煽り、名曲「Try My Luck」で大爆発。ダイバーと肩車でステージが見えなくなる。更に勢いはグングンと増し、JOJIが「京都と言えばこれです!」とマイクを手に。10-FEETのNAOKIがベースを持って「Neo Chavez 400」へ。JOJIによる怒涛のヴォーカルで源氏ノ舞台を興奮の渦にした後、最後はSUGAが何度も何度も「京都大作戦、ありがとう!」と言いながら歌った「Tomorrow」。今年もdustboxのライブは素晴らしかった。よく考えたら、彼らの悪いライブは観たことがない。
 
 
 
 
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 「僕らは10-FEETにそんなに思い入れがありません。だから何で誘われたのか考えていました。たぶん始まりのキッカケをくれたんやと思う」…それがTHE ORAL CIGARETTESの第一声だった。自分たちが今日この場所に立つ意味を真剣に考え、どうすべきか覚悟を決めてきた、そんな人間のライブが素晴らしくないわけがない。10-FEETのように後輩をしっかり見ているバンドがいるから、オーラルのようにその先輩を超えようという気概のある若手がどんどん出てくるのだろう。そして「この曲で先輩をぶっつぶす!」と宣戦布告して繰り出されたのは、常勝無敗のキラーチューン「Mr.ファントム」。会場を沸き立たせる様子は、新世代の顔に相応しいと思わせるに十分だった。
 
 
 
 
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 京都大作戦、皆勤賞3組のうちの1組、Dragon Ash。昨年もこの源氏ノ舞台でカヴァーした10-FEETの「under the umber shine」でTAKUMAとNAOKIが乱入して最高の幕開け。Dragon Ashはいろんなフェスで観てきたが、彼らが素晴らしいのは、音楽はもちろんのこと、どんな現場でも120%必然性を感じさせる熱い想いがビシビシと伝わってくること。最高の音楽と最高のパフォーマンスで盛り上げるのはもちろんのこと、Vo./G.Kjの「俺らもクソみたいなことはあったけど、諦めないでやり続けて、この京都のフェスで皆勤賞で続けることができて、良かったです」という言葉や、「百合の咲く場所で」の曲中に言った「ロックフェスは俺らのもんじゃねぇ。金払って来てるお前らのもんだ」という言葉でもオーディエンスの心に火を点けまくる。最後はKjが客の上で歌った「Lily」で終了。今年もDragon Ashに魅せられた。
 
 
 
 
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 NAMBA69は高速2ビートが際立つ「TRUE ROMANCE」でアクセルを踏み抜くように勢いを加速し、「21st CENTURY DREAMS」で牛若ノ舞台を更なる熱狂の渦に叩き込む。そしてVo./Ba.難波が「夏が来たから、夏の曲を」と期待を高めたところで「SUMMERTIME」! もうキッズたちのボルテージは留まるところを知らず青天井だ。このステージの山場は、何と言っても「MY WAY」。「勇気があるやつは上がっておいで! 一緒に歌おう!」と難波が呼びかけると、数十人ものキッズがステージへと上がりメンバーと共に歌い出す! 会場がひとつになって生み出す、1×1=∞のエネルギーこそがこの場所の醍醐味であることを改めて実感。
 
 
 
 
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 1曲目から源氏ノ舞台をタオルで埋め尽くした湘南乃風。ダイナミックなそのステージ、HAN-KUNの見事なヴォーカル、RED RICE・若旦那・SHOCK EYEが重厚に畳み掛けるリリック。一瞬もオーディエンスの心を離さずに「Earthquake」「Born to be wild」とキラーチューンを連発。若旦那が「今日の主役は俺たちじゃない。10-FEETじゃない。お前たちだろ!?」と叫んで大歓声が沸き起こる。4人の呼吸がぴったりで、一切隙がないソリッドなステージにどんどん惹き込まれていく。「バブル」「純恋歌」でさんざん盛り上げた後、最後の「睡蓮花」ではダイバーが多発。10-FEETの3人が乱入して一瞬も熱は途切れず、一秒も勢いは止まることなく駆け抜け、メンバーが客席にまで入り乱れて終了。湘南乃風の底力を見せつけられたような凄まじいライブだった。
 
 
 
 
THE BONEZ (20 - 42)

THE BONEZ (36 - 42)

 今年、数千人にとってはThe BONEZこそがオオトリだった。ライブが始まり数曲を披露したところで、突然音が止まってしまう。なんと電源トラブルで全ての楽器やマイクが使えなくなってしまったのだ。声を届けることさえ困難な状況でいったいどうするのか…と固唾を呑んでいると、Vo./G.JESSEがステージに立ち、フリースタイルでリアルなメッセージを放っていく姿に感銘を受けた。暫くすると流石に進退窮まったのか、悔しそうな表情を見せるJESSE。すると、舞台袖にいたアーティストが続々とステージに上がっていく。ROTTENGRAFFTYのN∀OKIとHIROSHI、CrossfaithのKoie、G-FREAK FACTORYの茂木等々…仲間たちがその場を繋いでいく姿に、暖かい震えが止まらなかった。約30〜40分後だろうか、ついに電源が復旧すると、スタッフの粋な計らいでもう一度頭からライブをやり直すことに。大きなトラブルではあったし、バンド自身も悔しかったと思う。だが間違いなく、この日は後世に語り継がれる伝説の1日になった。
 
 
 
 
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 SEが鳴り始めただけで目を真っ赤にする人、肩車されてタオルを高く掲げる者、ドリンクブースやエコステーションのスタッフもタオルを掲げ、両手を挙げてそのときを待つ。“京都大作戦2016”、2日目、トリ、10-FEET。源氏ノ舞台に現れた3人が拳を合わせる。TAKUMAが「最後にあとちょっとだけ勇気を貸してくれ!」と叫んで「hammer ska」。ステージ前はもちろんのこと、シートエリアまで揺れるほどの地響きが起こる。FIRE BALLとの「STONE COLD BREAK」はサークル多発、残った僅かな体力を燃やし尽くすオーディエンスと10-FEETの3人。息をつく暇もなく「1sec.」で爆発的な盛り上がり。

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 TAKUMAはMCの延長線のまま「男も女も諦めの悪いやつになれよ、俺らは幸せになるためにここ太陽が丘へ来たんだ」と「2%」へ入り、湘南乃風とのスペシャルコラボで魅せる。後方のシートエリアでゆっくり観ていた多数の観客がいたたまれずにサークルの中に次から次へと飛び込んで行った「RIVER」ではKjが参加して自身のバースをバンドサウンド無しですべてオーディエンスに歌わせ、「VIBES BY VIBES」ではWANIMAが乱入と、スペシャルなコラボの連発。

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 TAKUMAが「とーちゃん、かーちゃん、じーちゃん、ばーちゃんにはまだまだ到底追いつけねぇや!」と叫んで「アンテナラスト」、「忘れたいけど忘れられへんこと、忘れられへんけど忘れなくちゃいけなこと…その向こうへ!」と叫んで「その向こうへ」。この辺から3人も2万人も、全員が興奮状態に突入したような不思議な感覚に包まれる。オーディエンスは汗だくの笑顔で暴れ、TAKUMAは感極まったのか曲中に「好きやで!」と何度も叫び、NAOKIはステージの上を走り回るように演奏する。ここまでフルテンションな10-FEETを観るのは、もしかしたら久しぶりかもしれない。
 アンコールでは、牛若ノ舞台のTHE BONZのトラブルを説明し「JESSE、次のリベンジは源氏でやってくれ!」とTAKUMAが言う。そして「蜃気楼」と「CHERRY BLOSSOM」を残る僅かな体力を振り絞って全力で楽しんだ後、最後は3秒バージョンの「RIVER」(10-FEETをカヴァーした四星球のカヴァー)で終幕。

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 振り返ってみると、初めて観た出演者ももちろん居たし、今まで何度も観たバンドも多かったのだが、全出演者が全力で前のめりで、おそらく自分たちが今までやってきたライブの中でも1・2を争うほどのテンションで、自分のステージを全うしたに違いない。
 大げさかもしれないけれど、ここはバンドマンやミュージシャンにとってオリンピックのような場所で、みんなが全力で、それを観ている我々も1年間でいちばん楽しみにしていた2日間だからこそ全力で楽しくて…バンドマンとみんなにとって、そんな場所になっているのかもしれない。
 来年はいよいよ10周年。みなさん、また太陽が丘で会いましょう。

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TEXT:山中毅、森下恭子
PHOTO:HayachiN、JON、みやざきまゆみ、青木カズロー
 
 
 
 
 
 

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