音楽メディア・フリーマガジン

10-FEET 『ライオン』


 
 
 
 
過去の布石を確実に今に繋げ、現時点の彼らが100%自由に表現した新曲『ライオン』
今年の10-FEETは、もっともっとおもしろくなる

 
 
 


「全てはみんなと一緒に感動したいため」


 
 
 
 
●今回は2月にリリースされるワンコインシングル『ライオン』についてのインタビューです。
 
 
 
 
はい、どうも~。

 
 
 
●バンド名の由来を教えてください。
 
 
 
 
そっからですか!?

 
 
 
 
 
 
 
“腐った青春時代”みたいな意味を込めて。最初は“グラフィティー”やったんやけど、ステッカーを作る時に間違えて“グラフティー”にしちゃったんですよ。それで「このままいこうか」と。だから元々は“ロットングラフィティー”だったんです。

 
 
 
●重要なところで間違ったんですね。
 
 
 
 
しかも一番最初に作ったステッカーですからね。

 
 
 
●…でもそれはロットングラフティーの話ですよね。
 
 
 
 
「ライオン」の感想聞かせてくださいよ。

 
 
 
 
第一印象は?

 
 
 
●「これ、10-FEETの曲?」と一瞬思いました。でも、以前にTAKUMA君が取材で「もともと生まれつき優しさを持っている人間と、そうではなくていろんな悲しみや苦しみを経て優しさが出てきた人間がいる。俺は後者に興味がある」という話をしていたじゃないですか。
 
 
 
 
ああ~、言ってましたね。

 
 
 
●「ライオン」を聴いて、それを思い出したんですよ。歌詞の“優しさと弱さの間で叫んだ”という部分とか。決して“優しさと強さの間”ではないんですよね。この辺のヘタレ加減というか(笑)。昨年リリースしたアルバム『4REST』の「VIBES BY VIBES 」についても同じことを言ったんですけど、リアリティがある温かさというか、そういうものを音楽全体で表現している曲だと思いました。だから、今の10-FEETが詰まっている曲なんだなと。以前の取材でもライブのMCでも「究極のカウンセリングが出来るバンドになりたい」と言っていたじゃないですか。その想いがすごく強く出ている曲だと思ったんです。
 
 
 
 
嬉しいですね。めっちゃ嬉しい。

 
 
 
●10-FEETが進みたいと思っている方向に進んでいるんじゃないかなと思いますよ。
 
 
 
 
それは間違いないと思います。それよりも道がどんどん広がった。3人が普段聴いたり、やりたいと思う音楽はだいぶ違う方向を向いているんだけど、東西南北で分けたら一緒なんじゃないかと思っていて。それが今までよりも広がったから、みんなの方向が固まった。だからこれからどんどん面白くなっていくんじゃないかな。

 
 
 
●うんうん。
 
 
 
 
僕らの振り幅もちょっとずつ広がってきたと思うんですよ。今までちょっとずつ増やしてきたし。

 
 
 
●なるほど。アルバム『REALIFE』の頃は例えシングルでも今までの10-FEETとこれからの10-FEETを見せるような選曲をしてきましたからね。
 
 
 
 
はい。そういう布石を経て、いま現時点の僕たちとして出来ることは100%に近いくらい自由ではあるんですよ。

 
 
 
●ということは、「ライオン」はジャンルを考えずに作ったんですね。
 
 
 
 
そうですね。今までずっとジャンルを意識してきたけど、今回はほぼ意識していないですね。でも布石がたくさんあるおかげで結果的に意識したような作品になったので、それが一番嬉しいですね。今回、10-FEETっぽさというプライオリティの上に出てきたものではなかったのが、バンドにとって非常に大きいんじゃないかなと。

 
 
 
●曲作りもスムーズだったんですか?
 
 
 
 
最初にどういうテイストに仕上げようかというところだけは悩みましたね。実は一番最初の段階では「10-FEETっぽさを大事にしよう」と思って比較的速いビートでやっていて。でも全然進まなかったんです。「もともとはこういうテンポで曲が出てきた」という話をしたらKOUICHIが「全然そっちのほうが良いやん」と。で、実際それでやってみたらメロディーが生きてたんです。そこからはめちゃくちゃ速かったですね。

 
 
 
●静と動の起伏が大きかったり、微かにサイレンの音が入っていたりするのもイメージが出来ていたんですか?
 
 
 
 
そうですね。“Aメロ・Bメロ・イントロ・サビ・間奏という方向が決まった時点で全部明確なイメージがありましたね。

 
 
 
●ところであのサイレンのサンプリングはすごく珍しいと思ったんですが、曲の雰囲気を出すために効果的な使い方をしていますよね。一般的によくある手法なんですか?
 
 
 
 
いや、あのサイレンはあまり使わないかな。

 
 
 
●あの音を聞いたら、誰でも普通にドキドキしますよね。
 
 
 
 
緊張感の代名詞みたいな音で。

 
 
 
●胸がキュンとします。キュンと。胸キュン。
 
 
 
 
なんで3回も言うの?

 
 
 
●そんなことより作詞者としては作品に自分が伝えたいメッセージを込めるじゃないですか。そこで本当に自分が伝えたいことを限定してしまう場合と、色んな人に引っかかるように曖昧な表現をする場合がありますよね。表現者としてTAKUMA君はそのバランスをどう取っているのか訊きたかったのですが。
 
 
 
 
一時期分かる人にしか分からないリリックに正解感を覚えたことがあって。でも僕はなんのためにリリックを書いているかというと、やっぱりみんなに知ってもらいたいし、不特定多数の人を感動させたいということが最も重要なんですよね。そこに向かって何をすべきかと考えたら、今の僕にとっては分かる人にしか分からない音楽を作ることが大事なわけではなくて、分からない人にも届けることが大事なんですよ。

 
 
 
●なるほど。
 
 
 
 
やっぱり感動してほしいですよね。僕はそのためだったら何でもするという結果が今の姿ですね。そこで数字を叩き出してやろうなんて思っていないし。僕の詞は内容は一緒だけど、表現はどんどん変わっていっていると思う。どんどんややこしくなっている言葉もあれば、めちゃくちゃ稚拙になっていっている部分もある。

 
 
 
●はい。
 
 
 
 
でも今までの布石があるからこう聞こえるというものが増えていると思うんです。僕は確かに薄まった表現をしていることも多々あるんですね、詞にしても楽曲にしても。でもその先は自分が感動できるものと、みんなの感動できるものが重なることをゴール地点として見ていて。そのためにこの8年間、確実に一歩一歩進んでいると思ってやっていると思うんですよ。だから、全然恥ずかしいことではないと思っている。

 
 
 
●なるほど。ところで「ライオン」はTOYOTA BIG AIRのオフィシャルテーマとして書き下ろしたという経緯があったらしいですが、10-FEETとしては先にテーマがあった上で曲を作ること自体が始めてなんじゃないですか?
 
 
 
 
実は最初はビートを速くしようと思ったのは書き下ろしだったからというのもあったんですよ。TOYOTA BIG AIRだからめちゃめちゃ速いジャングルビートでいったらみんなで楽しくジャンプ出来るなと思ったから。でも結局、そっちを優先しようと思ったからメロディが生きてこないという結果になったんです。

 
 
 
●葛藤が生まれたわけですね。
 
 
 
 
メロディを生かす方向に変えるのは、やっぱり多少の葛藤がありましたね。「スノボの大会のテーマソングなのに、ゆったりしたメロディでいいのか?」と。でも僕らは良い活動をするためにやっているし、何よりいいバンドになりたいからやっているわけで。そのために一番最初にしなくちゃいけないことって、やっぱりいい曲を作ることなんですよね。

 
 
 
●はい。
 
 
 
 
それが僕らの役目なんですよ。だからいい曲を作って、あとはお任せしちゃおうと決断したんです。その時点から、この曲に対するパワーがめちゃくちゃ上がりましたね。一切妥協はなくなったし、とにかくめちゃくちゃ良い曲を作ろうと。

 
 
 
●なるほど。
 
 
 
 
タイアップのことを考えた結果、良くない曲を作ってしまう怖れがあってちょっと危なかったですね。そういう意味での書き下ろしは難しいと思った。「イメージは合わせられるかわからないけど、めちゃくちゃいい曲は書くんで。上手いこと合わせてもらえれば新しいイメージ…こんな音楽でも飛べるんだという音楽・ジャンルになるかもしれない。だから、よろしくお願いします」というのが僕たちのアティチュードというか、取るべき姿勢なんじゃないかなと。

 
 
 
●なるほど。よくわかりました。ところでなんで「ライオン」なんですか?
 
 
 
 
ライン・オンの略なんですよね。

 
 
 
●あ、そうなんですか。
 
 
 
 
…嘘です。ごめん。

 
 
 
●ちょっと! ジャングルライフをおとしめようとしてませんか?
 
 
 
 
(笑)。これはライオンですよ。デカくて力もあるねんけど、悲しくてあんまり吠えることが出来ない弱っちいライオン。すぐ泣いてまう、悲しいライオンなんです。ジャケがすごく悲しいライオンやねんけど、ホンマにそのイメージ。それでいて、カタカナ表記というのも新しい挑戦なんですよ。それは今までの10-FEETにはない曲調なんやけど、10-FEETやと納得してもらえる曲になったというのもあるし、カタカナで書いても意外とそんなに違和感がなかったからで、それも今までの布石の賜物ですね。

 
 
 
●『ライオン』と同時に2004年にリリースされたライブDVD『OF THE KIDS, BY THE KIDS, FOR THE KIDS! 』に“Ⅱ”を付けただけの手抜きなタイトルのDVDも出ますね。
 
 
 
 
うるさい。

 
 
 
●そもそも第二弾のDVDを出そうと思ったのは? やっぱり印税ですか?
 
 
 
 
そうですね(笑)。お金がないと何も出来ないので。お金を稼いだら半導体を作る工場とか3人でやろうかなと思っているんです。NAOKIはアルバイトで携帯電話の部品とか作っていたから結構工場の知識があるんですよ。だから、昨日もラーメンを食べながら「工場を建てようか」という話をしていて。

 
 
 
●10-FEETをやっているのは工場の資金作りのためなんですね。
 
 
 
 
そうですね。

 
 
 
 
 
そんなことよりDVDものメイキングはどうでした?

 
 
 
●エンドロールっぽくて、あれが最後にあるのとないのとでは全然違いますよね。映画を観ているようで、感慨深くて良かったですよ。
 
 
 
 
あぁ~、わかるわかる。ライブの感想も教えて下さい。

 
 
 
●ライブ全体の作り方がすごかったなと。全員が一緒になっているというか、会場全体がすごくピースフルな空気に包まれていて。さっきTAKUMA君が「自分の感動できるものとみんなの感動できるものが重なることをゴール地点として見ている」とおっしゃっていましたが、まさにそんなイメージ。
 
 
 
 
あの日のライブはめっちゃ良かったですよ。

 
 
 
●いつもみたいに小ネタみたいなこともあんまりやっていませんでしたよね。
 
 
 
 
いや、小ネタをやっている時間は同じなんだけど、いつもたるんでいたところがたるまないで出来たんですよ。小ネタが長く感じないライブが出来ていた。奇跡。

 
 
 
●カメラもたくさん入っていましたよね。10台くらい入っていました?
 
 
 
 
35…

 
 
 
 
 
 
 
(遮って)16台です。

 
 
 
 
 
 
 
1台は携帯のカメラやけどな。

 
 
 
●でも本当に良かったですよ。すごくいいライブだったし、今の10-FEETがよくわかるDVDだと思います。
 
 
 
 
それは自分でも思った。

 
 
 
●ツアーの最初のO-WESTを観たんですけど、あの時と比べてもかなり変わっていましたね。
 
 
 
 
違いますね。AXとは客席との距離感がデカ箱のノリじゃなかったですもんね。

 
 
 
●2階席に来られてたTAKUMAくんのお母さんの映像もあったり。
 
 
 
 
あれ、オカンじゃないんですよ。

 
 
 
●え?
 
 
 
 
一応近所の人だから縁はあるねんけど。めっちゃチビの頃から面倒見てもらっていたし、そういう流れだったし、画的にいいかなと思って。

 
 
 
●なんでそんな嘘つくの?
 
 
 
 
一同:(爆笑)。
 
 
 
 
というか、「なんでDVD作ったの?」という問いに対して、「工場を作るため」としか答えていないけどいいの?(笑)

 
 
 
●資金作りの他に何か理由があるんですか?
 
 
 
 
渋谷AXのライブは毎回カメラをまわしてもらっているんですよ。前のDVDもすごく評判が良かったので、作るチャンスはやっぱりココかなと。しかも今回はセミファイナルというポジションで、音以外の見えない感極まった波動みたいなものが前よりも録れるタイミングかなと思った。正解でしたね。

 
 
 
●タイミング的には前回よりも良かったんですね。
 
 
 
 
いやぁ、めっちゃいいですね。不思議なんですけど、前回のほうが時間が全然長く感じたのに、実際は今回のほうが長いんですよね。でも、全然長く感じない。大満足ですね。将来の息子・娘に観せることが出来る。

 
 
 
●その前に工場建てないとね。そして今後の予定ですが、3月にまたリリースを予定されているらしいですね。
 
 
 
 
はい。コラボレーションアルバムを出そうかと考えているんですよ。

 
 
 
●他のバンドと一緒にやるということですか?
 
 
 
 
一緒にやるのもあれば、僕らの音源を使ってリミックスを作ってもらったりとか、カバーしてもらったり、フィーチャリングで参加してもらったり。結構面白い作品が出来るんじゃないかなと。

 
 
 
●楽しみですね。では最後に2006年の抱負をそれぞれ教えて下さい。
 
 
 
 
思うことは毎年変わらないんですよ。前の年よりもいい年にしよう、いろんなことに挑戦しようと。今年も頑張ります。

 
 
 
 
 
 
 
今年もジャングルライフに載れるように頑張ります。

 
 
 
 
 
 
 
コラボアルバムとは別に、今年は今まで絡んできた人らとシーン作りというか、そういう活動をしていきたいですね。別に「マーケティングのシェアを…」とかではないんですけど、それが出来るくらいの。もっと世に出てもいいバンドも周りにおるから、みんなでスクラム組んで1~2年かけてなんかやれたらいいなと。みんなで計画を立てて、じっくり時間をかけてやりたいですね。

 
 
 
●居場所を作るというか。
 
 
 
 
そうですね。居場所もそうだし、それがコミュニティーではなくなるような存在にもしたいんですよ。それが簡単なことじゃないことも十分わかっているし、1回イベントをやるだけでもものすごく大変なことはいろんな人に教えて頂いたし。いろんなジャンルの人が集まって、なにか出来たらなと。

 
 
 
●楽しみですね。今日はどうもありがとうございました。
 
 
 
 
最後に一つ付け加えるとするならば、今日言ったことは全部嘘です。

 
 
 
 
 

7th Single『ライオン』
2006/2/8 Release
¥476+税 UPCH-5368
BADASS/UNIVERSAL J
 
1.ライオン

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj