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ラックライフ Vo./G.PON ソロインタビュー アルバムに詰め込んだ9年と28年

ラックライフ Vo./G.PON ソロインタビュー アルバムに詰め込んだ9年と28年

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「散々ツアーをやってきて、それぞれのツアーも楽しかったし嬉しかったけど、今回は乗り越えたものがすごく大きかった」

●ラックライフはライブを重ねるごとにどんどん変わってきた印象があるんですが、『風が吹く街』リリースワンマンツアーファイルの渋谷WWWはどうでした?

PON:ライブで何度も歌っていくうちに曲が変わっていくという感覚があるんですが、渋谷WWWはそれの究極形みたいな形になっていたというか。「風が吹く街」という曲がこのツアーではすごく変わってきていて、最初と最後ではもう全然違う曲になったんです。それにすごく感動したライブでした。

●変わるとはどういうことですか?

PON:最初に「風が吹く街」を書いたときは、自分に言い聞かせるように作ったんですよ。今までもらった言葉を忘れずに、「自分の中に持ってちゃんと生きているよ」「生きているはずだ」って、悲しみが8割ぐらいのつもりで作ったんです。

●はい。

PON:だからライブで初めて演ったときはすごく悲しい顔をして歌っていたんです。悔しいし寂しいし悲しいけど、自分の中では無理矢理前を向いているぐらいの印象だったんですけど、でもこのツアーでやっていくうちにどんどん変わってきて「大丈夫だ。ちゃんと忘れていないし、今あのときの言葉と一緒に生きれている自分になれた」という確信に変わったというか。

●なるほど。

PON:そのことに気付けたのは、行く場所行く場所で曲を受け取って聴いてくれている人たちがたくさんいて、“みんなの顔を見ていたらすごく幸せだな”と思った瞬間がたくさんあって。そう思うと、あのときもらった言葉にちゃんと胸を張れるようになったというか。“ちゃんと一緒に生きているな”、“生きていられるから大丈夫やで”という気持ちで歌えるようになりました。

●悲しみ8割だったのが変化したと。

PON:悲しみ2割、幸せ8割ぐらいになりましたね。

●大逆転ですね。

PON:全然気持ちが変わりました。最初の方はこの曲を演るのがめっちゃ複雑やったんですよ。曲自体は好きやけど、悲しい気持ちや、あのときのこととか、もう一緒にいられなくなったことを思い出して、すごく心がグチャグチャになるような感じがしていたんです。だけど今は笑ってというか素直に、歌詞の通りに歌えるようになった。そういうツアーだったので、すごく嬉しい気持ちでいっぱいでした。

●いいツアーだったということですね。

PON:めちゃめちゃいいツアーでした。“こんないいツアーって今までにあったかな?”と思うぐらい。散々ツアーをやってきて、それぞれのツアーも楽しかったし嬉しかったけど、今回は乗り越えたものがすごく大きかった。「風が吹く街」という曲を素直に歌えるようになったということで、すごくテーマ性のあるツアーだったなと思いました。

●なるほど。ツアーで印象的なことはありましたか?

PON:北海道に5年ぶりぐらいに行ったんですけど…。

●めっちゃ久しぶりですやん。

PON:そうなんですよ。でもSOLDOUTしたんです。ほぼ初めましての人ばかりで、もう出ていったら「キャー!!」って言われたんですよ。

●え? 黄色い声援ってこと?

PON:「おいおいおい! 誰に“キャー!”って言ってんねん!」と思って。ちょっと調子に乗ってしまった(笑)。

●ハハハ(笑)。

PON:地道にライブハウスで這いつくばってきた人間からすると、お客さんに「キャー!」と言われることなんて今までないから。

●モテ慣れていないという。

PON:お客さんに会っても「おー! PON久しぶり!」みたいな感じで接していたのに、「キャー!」と言われて動揺してしまって、もう笑けてもうて。「自分ら、間違ってない?」と思いながら(笑)。俺、北海道で3ヶ月間1人で、毎週1時間の生放送のラジオをやらせてもらって。

●え? MCや構成作家もなく1人で生放送?

PON:ディレクターがスパルタな感じの人で(笑)、1人で1時間生放送でずっと喋るのに台本が真っ白とか、打ち合わせもせずに世間話みたいな感じでやったりとか(笑)。すごく楽しかったんですけど、縁もゆかりもない土地で“誰が聴くんやろう?”と思っていたんですよ。そしたらメッセージが番組宛にだんだん届くようになったんです。

●ほう。

PON:ちょっとずつ反応が出てきて、俺が1人でインストアライブをやりますとなったときにはたくさん集まってくれて、“こんなに届いてたんや”と感動したり。北海道で応援してくれている人たちがすごくたくさんいて、それのおかげで北海道に対する想い入れが他のメンバーと比べて20000倍ぐらいになりました(笑)。

●他のメンバーと比べて北海道愛がハンパないと。

PON:だからアンコールで爆泣きするっていう事態が発生しまして(笑)。

●え? まじか。

PON:結構泣いていましたね。アンコールで呼ばれて、自分では訳わからんぐらい涙が出てきて。番組で言っていたんですよ。「北海道に全然来たことがないですけど、12月にライブで来るから、このラジオを聴いている人でいっぱいにしてメンバーをビックリさせてやりたいな」って。そのことを思い出したらめちゃくちゃ泣けてきて(笑)。「いっぱいになったー! すげー!」って。

●それは感慨深いですね。

PON:ラジオ局の人とかCD屋さんの人とかも観に来てくれていたりして、そういう人たちの顔を見たら、こりゃ泣けるわと。すごいなと思って感動しちゃって。それでできた曲がM-12「赤い糸」という曲なんです。

「メジャーデビューしてからそういうことを知るきっかけが改めてあったりして、だからこの曲はすごく大事な曲になりました」

●「赤い糸」は、このアルバムの中でいちばん突き刺さる印象があったんです。PONくんはいつもインタビューで「歌うのが好きなんです」と言ってきましたけど、その理由がすべてこの曲で表現されているような気がして。“何の為に歌歌うのか/僕が救われたいだけだった”という歌詞がありますけど、こことかグッとくる。

PON:きっと、ラックライフが長い間ずっとメンバーも変わらずやれてきた理由というのは、この歌にあるんですよね。いちばん大きな理由。音楽うんぬんかんぬんじゃなくて、結局人が好きで続いてきたバンドやと思っているんですけど、多分それに関してはメンバーも同じ気持ちだと思うし。わかってはいたんですけど、改めて気づいたというか。

●この曲は北海道でラジオをやっていたときに色々感じたことを曲にしたんですか?

PON:そうですね。ラジオは今までもキャンペーンとかで色々やらせてもらったりしたけど、こうやって毎週同じ場所で同じ時間に喋るということはやったことがなかったんです。あと、ライブと違ってその場ですぐに反応が見えるものではないじゃないですか。

●はい。

PON:でもやってみたら、毎週反応があるんです。最終回のときに「この番組を終わらせない為にFAXやメールくれよ!」とか言っていたら、ものすごい反応が来て。「寂しいです」とか「また帰ってきて下さい」とか、そういうのを目にしたとき、音楽や言葉が届いていたんやと思って、すごく感動して。

●実感したんですね。

PON:こんなにも目にみえないところで自分たちの言葉や音楽が飛びまくっていて、それをキャッチして自分の側に置いてくれて、またそこから会いに足を運ぶという過程を想像したら、めっちゃ震えたというか、“なんちゅうエネルギーや!”と。それって本当にすごいことじゃないですか。今までライブハウスで当たり前のように観に来てくれる人がいて、それも素晴らしくて素敵なことやと思っていたんですけど、ライブハウスではないところでそういうことを目の当たりにしたときに、こんなすごいことをやっていたんやと。「もうお手上げだぜ!」みたいな(笑)。なんて美しいんだと。

●人と人との繋がりが形になったというか。

PON:メジャーデビューしてからそういうことを知るきっかけが改めてあったりして、だからこの曲はすごく大事な曲になりました。聴いてくれている人がいるってわかったら、その人の為に歌うことが今の自分の為に繋がるし、そういう人がいなければ生きていけないような、いなければ歌えないような感覚になっていますね。その感覚はずっと大事にしたいなと思います。

●メジャーデビュー当初はちょっと力が入っていたというか、“メジャーに行っても変わらないぞ”みたいな気持ちがあったと思うんですけど、メジャーで活動する意味を実感できたんでしょうね。

PON:そうなんですよ。これはメジャーデビューしてなかったら絶対に感じていないことだった。

●そんな大切な曲「赤い糸」が収録されたアルバム『Life is beautiful』ですが、全体的なイメージはあったんですか?

PON:特に全体的な構想はなかったんですけど、まず最初にM-8「素晴らしい世界」、M-3「view」、M-4「shutto」のアップテンポな3曲ができたんです。シングルに入っている既発曲5曲を収録することは決まっていたので、その曲たちに負けへんガッ! としたやつを作らなあかんわ、という意気込みがあったのと、今までのリード曲はバラードっぽかったりクールな雰囲気のものが多かったので、アルバムとして攻める姿勢がほしいなと。そういう感じで作っていたら「えっ? 結構速いのばかりじゃない?」みたいな曲が最初に出来たという(笑)。

●M-3「view」とかめっちゃ速いですよね。

PON:めっちゃ速いです。あの曲は鼻歌発信だったんですけど、どんなギターが合うんやろうと思ってギターを弾いていたら、思ってたより倍くらいのテンポになって(笑)。自分でもびっくりしましたけど、それでいくしかないなと。俺らは速い曲の方がどちらかというと書くのが苦手というか、明るくて速い曲の方が難しいという意識があるんですよ。明るいメジャー進行で、サビの頭がキーのコードから始まったりとかするとすごくボテっとして、アホっぽく聴こえたりするんですけど、それで始まるのがめっちゃ難しくて。要するにM-8「素晴らしい世界」みたいなタイプの曲がすごく苦手なんです。

●そうだったんですね。それに「shutto」は歌いにくくないですか?

PON:歌いにくいですよ。

●どうやって歌をつけたんですか? この曲、譜割りがすごいですよね(笑)。

PON:“みんなはなかなかこの曲歌われへんやろうな”と思いながら、俺もめちゃくちゃ時間がかかりました。息継ぎの場所を覚えられない(笑)。

●ハハハ(笑)。

PON:これはわかりやすさというよりも、自分ともう1人の自分がいて、その2人でボソボソ喋っているイメージがあったんですよね。

●え? どういうこと?

PON:バンドの仲間とかが人気が出て売れていくじゃないですか。それを腕組みして「あいつらかっこええしがんばってたもんな」って1人のPONが言う。その横でもう1人のPONが「いやいや、そんなん言うけど自分らは売れてへんやん」みたいに、リアリティを突きつける。そういうイメージ。歌というか喋りに近い感覚なんですけど。

●だからこんな譜割りになったのか。

PON:周りが売れていくときって「悔しがったらダサい」みたいなところがあるじゃないですか。

●ありますね。バンド界隈の価値観として。

PON:だからちょっと偉そうにして、「良かったやん。あいつらがんばってたし」みたいに。自分は売れてないのに。でも、“それじゃあかんよな”と思うところがあって。そういう自分がめっちゃダサいと思って、もうホンマにちゃんとしたいと思っているけど、口ばかりでがんばっている気になっているからそうなっているんでしょ? みたいな。だからホンマにちゃんとしなくちゃいけないと思うばかりで…(笑)。

●ハハハ(笑)。その「shutto」や、後はM-9「ラブリープリティーミュージック」などは、サウンド面でアルバムの幅を拡げていますよね。

PON:そうですよね。アルバムならではというか。ちょっと面白おかしく、こんなことやってみようの気持ちが入っているというか。

●もともとラックライフはそういう側面を持っていましたけど、「ラブリープリティーミュージック」はブラックミュージックの要素が入っている曲で。

PON:これも遊び心ですよね。バッキングギターがあってメロが乗っかって、みんなで「4つ打ちとかやってみる? 踊れるんじゃない?」みたいな感じで取りかかりました。よく考えたら俺は「踊れ!」とか言うタイプじゃないな、みたいなことを思いながら(笑)。

●ハハハ(笑)。

PON:踊れる感じの曲を作っているけど、みんなみたいに「今日は踊って忘れようぜ!」と言うようなタイプじゃ全然ないなと思って。“ちょっとそういうバンドばかりで嫌だわ”みたいな気持ちも少しは入っているんです。今流行りの人たちみたいなことはできないけれど、でもみんながそんなに踊りたいなら無理して俺も踊ってみようかな、という人間性丸出しの曲なんですよ(笑)。

●だから“まんまの自分でいられるように”と歌っている。

PON:そうですね。“柄じゃないけど踊るのも悪くない”って。でも“ダンスダンス踊りはしないが”ってサビで歌ってますもんね。なんせ踊らないんですよ結局。

●これは即興性がある曲だと思うんですが、メンバーと一緒にアレンジを作って行ったんですか?

PON:そうですね。セッションというか。バッキングが鳴って、「キックが4つだったらベースはこうなるかな?」みたいなことを言いながら。これはめっちゃ恥ずかしかったんですけど、“みんなで歌うところがあったらいいかな”と思ったので、曲作りのときに他のメンバーに「“ラブリープリティーなミュージック”って歌ってくれへん?」って頼んだんですよ(笑)。みんな「え? なんて!?」って(笑)。

●ハハハ(笑)。

PON:ラブリープリティーなミュージックって何やねんと(笑)。

「28年間生きてきて、全然うまいこといってないけど、グネグネ遠回りしてはサボって休んだりしてきたけど、それでもやっぱりこの人生で良かったなと思えた」

●アルバムのリード曲はM-1「サニーデイ」ということですが、この曲にはホーンとかピアノなどのバンド外の音も入ってますよね。この曲はどういうきっかけでできたんですか?

PON:最初に速い曲を3曲作ったと言いましたけど、途中で「あれ? リード曲は?」みたいな感じになったんです。「忘れてた!」と。

●忘れてたんか(笑)。

PON:それでリード曲候補として作ったのが「サニーデイ」とM-6「君の匂い」と「赤い糸」なんですよ。

●リード曲を作ろうという意識は、作る曲にどういう影響が出るんですか?

PON:リード曲でやるなら明るい曲がいいなと。作っていくうちに「サニーデイ」が出来て、これがリード曲になりました。

●手応えというか、感触があった。

PON:確信に変わった出来事があったんですけど、バンドのオケが完成したときぐらいにプロデューサーから「この曲にホーンセクション入れたらどう?」みたいな提案があって。

●ほう。

PON:でもこっちにはホーンセクションを作る脳みそがないじゃないですか。この曲にどんなものが付くんだろう? と半信半疑で、「入れてみて良かったら全然いいですよ、嫌だったら嫌ですけど」みたいな感じで。

●バンドの核がブレるようなことはしたくないと。

PON:そんな感じでいざやってみたら「おお!! そんな作戦があったんや!」みたいな。バンドのいいところを残しながら、ピアノもホーンも入って華やかさと言うか、パーティー感が増したという感じがあって、歌詞も相まって明るい空気が出た。「いいね!」って言ってトントンといきましたね。最初はもっとゴネるかと思ってたけど。

●今まで経験したことがないものを受け入れる器の広さと言うか、度量みたいなものを身につけたのかもしれないですね。

PON:そうなんですよ。

●メジャー2ndシングル『初めの一歩』では、アレンジャーさんにシンセを入れてもらったことがあったじゃないですか。そういう経験を経て、何をしても自分たちは変わらないということがわかってきたんじゃないですか?

PON:そうなんですよねきっと。ホーンを入れてくれた人もバンドのことを考えてやってくれたし、かっこいいものをNOとは言えない、みたいな。いいものはいいからしょうがないか、かっこええやん、みたいな感じでGOサインも出まして。この曲はアルバムの象徴みたいな曲だと思いますね。

●歌詞は「赤い糸」ともちょっと通ずるものがあるというか。ラックライフの確信的なところ…歌詞に“あなたの心の中に/どれだけの人が住んでいますか/あなたが一人じゃない証”とありますけど、結局ずっと前からPONくんは人との繋がりを大切にして音楽にしてきましたけど、それが象徴されている曲ですよね。

PON:そうですよね。これでもかっていうぐらいに真っ直ぐでもいいかなと。振り切れている感というか。「それは無理やわ」とか「それは偽善やわ」「24時間テレビとかチャリティーとかどうなの?」みたいな風潮にすごく疑問があって。

●そういう風潮に対しての疑問?

PON:いいことやのに、みたいな。

●美しいこととか綺麗とされていることに対して、素直に受け入れられない風潮?

PON:そうなんですよ。「なんでそんなこと言うんやろ? 本気やったらめっちゃいいことやのに」みたいな。

●確かに本気だったらめっちゃいいことですね。

PON:ですよね。でも本気かどうかはわからないですけども、本気じゃなかったとしても別に言わなくていいことというか。だっていいことやし。なんかそういうことをすごく思っていて、バンドの業界としても、誰かをディスっているとか刺があったり尖っているメッセージ性の曲がすごくいっぱいあるなと思ったんですよね。

●うんうん。

PON:それはそれで面白いしかっこいいし、でも自分がやるのは違うなと。自分が思っているのはシンプルに“みんなが幸せになれたらいいな”ということで、そんな小学生の夢みたいなことを、本気で28歳の男が歌ったらどうだろうか? と。聴く人が聴いたら「なんやこの薄っぺらい歌!」と思われてもおかしくないと思いながら、でもこれが俺のホンマやから仕方がないわと。

●そのままを書いていますもんね。“綺麗事、理想なんとでも言えよ/ほんとにそう思うから歌うのさ”って。

PON:もう言わずしていいことを言っちゃった、みたいな。これ言わない方がかっこいいのに(笑)。

●いや、これを言っているところがPONくんらしいですけど。

PON:ハハハ(笑)。ホンマやしええかなと。ずっと前から言い続けていることですけど、改めて思ったことがあって。

●何かあったんですか?

PON:『風が吹く街』の取材のときにそういう話になって、「なんでみんな叩いたり真っすぐに受け入れられないんですかね? みんな幸せになったらいいのに」みたいな話をしたんです。「ラブアンドピースがいちばん最高ですよね!」とか言っていたんですけど、それがずっと頭に残っていて、あのとき話してたことはホンマにそうやなと思って。それを声を大にして言おうじゃないかと。「がんばれよ! みんな幸せになれよ!」って歌えばいいやん、ホンマに思っていることなんやから、と。

●それは本気で思っているかどうかがすごく重要なのかなと。

PON:「何が悪い?」って言うぐらいのことですよね。思っているし誰がどう見たってその方がいいに決まっているやんと思うことを、何でみんなは歌わないんだろう? これだけ音楽が溢れ出ていてメッセージ性が強いバンドがこれだけいる中で、こんなにシンプルに、「みんなが幸せになろうぜ」って歌っているバンドって、意外と全然いないなと思います。

●1つの側面として、本気で思っているかどうかが重要ではなくて、J-POPの王道スタイルとしてのそういう方向性の歌が溢れた時期があったことが理由かもしれないですね。

PON:俺は正直、そういう歌に励まされてきたタイプなんです。“これホンマに思ってたらめっちゃ最高やな”と聴きながらめっちゃ思っていたし、現にそういう歌が流行ったのは、そういう音楽に支えられている人がたくさんいるからだし、全然間違いじゃない。そういうことを胸を張って歌える自分でいれたらいちばんいいに決まっていると。書き出したころは少し怖かったですけどね。

●ストレートに真っすぐ表現することが?

PON:そうですね。“みんながみんな幸せになれるように/歌うのさ”というフレーズが、自分の中ですごくハードルが高かったんです。「みんながみんな幸せになれたらいいね」だったら言えるけど、「なれるように自分が歌う」って、すごく責任が伴うというか。

●宣言でもありますからね。

PON:すごく勇気が必要なポイントでした。

●でも、今までもPONくんはそう思って歌ってきましたよね。

PON:そうです。だから大丈夫。ホンマに思っているから大丈夫と思って書いて、歌ってみて、レコーディングをして、音源を聴いて、ライブで歌うときも…やっぱりここがいちばん自分の中でグッとくるんです。

●本当にそう思えているから。

PON:そうなんです。大丈夫余裕やわ(笑)。全然俺は本気やと思いながら歌えるから良かったなと思っています。

●「赤い糸」で歌っている気持ちと繋がっていますね。

PON:そうですね。今まで書いてきた曲とも、どれもこれも繋がってます。

●アルバムタイトル『Life is beautiful』は、制作の最後に決めたんですか?

PON:最後に決めました。全部出来上がって、曲順も決まったその通りに聴いて考えたんです。メジャーデビューしてから、冗談で「アルバム出すなら『Life is beautiful』とか『Wonderful life』とかそういう系かな〜」みたいなことを言っていて。

●ほう。

PON:それで今作が出来上がったとき、改めて13曲を頭から聴いてすごく色んなことを思い出したんです。“あんなことあったな”とか“この曲を書いたときはこうだったな”みたいなことを鮮明に思い出せた13曲だったんですよね。こうやって上がったり下がったりしながら、色んなことを感じながら28年間生きてきて、全然うまいこといってないけど、グネグネ遠回りしてはサボって休んだりしてきたけど、それでもやっぱりこの人生で良かったなと思えたというか。改めてラックライフとしての9年間と、自分自身が生きてきた28年間を肯定できたというか。

●ふむふむ。

PON:うまくいくことばかりじゃないけど、すごく充実していて、自分が自分で良かったなと思えたというか。そういうことに改めて気づけたとき、人からじゃなくて自分から人生を振り返ったものがアルバムタイトルに相応しいなと思ったんです。それがとてもキラキラして見えたので、『Life is beautiful』というタイトルにしました。

●このタイトル、PONくんらしいと思いました。

PON:ですよね。こんな勇気が必要なタイトルというか(笑)、パンチ力のあるフレーズ。“けどやっぱりそうやもん”って。“何か文句ある?”ぐらいに思って付けました。

interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:Fukushima Tetsuya
 
 
 
 
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