みんな夏が好きかな?
特にこれといった理由なんてないんだけど、俺はあんまり好きじゃなくて。
そんな夏のいつだかの思い出。
数ある街の中でも低レベルな街に旅をした。
目的なんて無いようなものだったけど、夏の暑さは頭を溶かし俺を連れて行った。
花火の音も照りつける陽の光さえも消えてしまいそうな喧騒の中、ひとつひとつ言葉を拾い集め、確認し、インプット。
その上でまた、暑さを言い訳に気に入った酒を呑む。
娯楽の上に成り立った憂鬱が顔をのぞかせる。
そんな訪れてしまった瞬間も言葉で隠したのは、君とした約束を果たしたかったからなのだろう。
夜が更けた街には、強欲な人々と侵された人々が交錯していた。
今夜泊まる宿まで少し距離があった、けどあえてさらに遠回りをする、蠢く街と過ぎては消えるヘッドライトが俺をどこまででも連れて行く。
怪しい中国人の女や、明らかに堅気ではない人達の波を潜り抜けて歩いた。
抜けた先には小さな公園があって、美しいとは思えないような光景の中に身を委ねた。
世界の終わりと言うにはあまりに低俗で、人間の本質の集まりと言うにはとてもじゃないが浅はかな場所。
君の大きな瞳には俺が見た景色はどう見えるのだろう。
夜の果てに君と出会う。
肩まで伸びた艶やかな黒い髪と混じりっ気のないその目は全てを飲み込んでしまいそうなほど綺麗で、また目的のない街に旅をした。
本当の声を聞いた。
そして組み交わされる言葉の中に君を見つけた。
君のために選んだ言葉が海馬を通って胸に届く、俺のために選んだであろう言葉が真っ直ぐに胸に刺さる。
虫の声も聞こえない、星の輝きさえ見えないそんな夜なのに、そんな場所なのに、ここが到達点なんだと錯覚してしまうような時間が流れて消えた。
時折り見せるアンニュイな君と夜の隙間に逃げていった。
目が覚めてしまえば、悪い夢でも見ていたかのような朝が来る。はずだった。
でも、紡いだ言葉と握り合った手がまた俺たちを次の旅に連れて行った。
36℃。溶けてしまうような気温。もういっそ溶けて一つになれれば、なんて考えもスピードを上げた小さな車が置き去りにする。
走らせた車の行き先なんて興味はなくて、君と過ごす長編小説のような瞬間に恋をした。
低レベルな街から20分ほど行けば、木々の木漏れ日や静かに強く流れる川に辿り着く。
たまにスピードを緩めたり、それぞれに映る景色に名前をつけたりして、時計の進みがもっとゆっくり進めと神様に初めてのお願いもした。
ちょっと多すぎでは?と思うくらいのアキアカネ、秋もちょっと顔を出しているね、と笑っていた。
小さなコンビニで買ったアイスコーヒーは一口だけ飲んでもうぬるくなっていた。
旅の先に辿り着いたのは小さな田舎町。
高い建物なんてなくて、ネオンライトも光らない。
田畑を見よう、そう思い立って近くの展望台に行く、昨日とは真逆の景色に困惑しながら地平線まで続く段々畑を並んで見た。
その展望台には小さな鐘があって、鳴らせば億万長者になれる、と。
これを鳴らしてお金持ちになったらなにがしたい?なんて他愛もない話にすら、聞こえなかったはずの虫の声や自然の音が今日は色を付けた。
廃れた町並みを歩く、もうなかなか出会うこともない駄菓子屋に入って大人買いをしたり6畳くらいの小さな古本屋に入って、本を買ったりした。
町並みの終わりにはアイスリーム屋があって、気に入った物を買う。
1番美味しいところ食べていいよ、と君が差し出す、既に溶け行くアイスクリームと君の笑顔に駆られて"1番美味しいところ"食べた。
そんな小さな、すぐ溶けてしまうアイスクリームを食べながら小道に入ればハグロトンボが妖艶に飛ぶ。
雨模様が怪しくなってきた空、さよならの合図。
火照った体と君が吸うタバコの香り。
そして、遠くなる背中。
悲しくなんてないぜ。
寂しくなんてないぜ。
また小さな田舎町から半端物の勝負が始まる。
石川蓮 (いしかわ れん YAPOOL ヴォーカル)
昨今世を賑わす若手ロックンロールバンドYAPOOL(ヤプール)のヴォーカリスト。
2021年結成、激しいライヴと、メロディアスな楽曲に定評がある。
都内を中心に全国でライヴ活動中。
2026年9月に2ndアルバム「東京スクラップ・アンド・ビルド」をCD&配信リリース。
リリースツアーも予定。
2026年11月25日渋谷CLUB QUATTROでワンマンライヴ。
“YAPOOL ONE-MAN LIVE” at SHIBUYA CLUB QUATTRO
🎫tickets🎫
前売 ¥4000 / 前売り非売品Tシャツ付チケット¥7500
ローソン:https://l-tike.com/yapool/
ぴあ:https://w.pia.jp/t/yapool-t/