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TëKMO+「サウンド設計室」第8回|教材は『Our Journey』 ――歩くようなテンポなのに、なぜこんなに前へ進む? 都会を旅する“ジャズファンク”の設計図

3rd Album『CONTINUE?』収録曲

今回の教材は『Our Journey』。

この曲をひと言で表すなら、

「自分の耳を信じて街を歩く、ジャズファンク×ヒップホップのアーバン・アンセム」

テンポは112 BPM。

これは、テンポが速い曲ではありません。ミドルテンポ、と呼ばれる速さ。

それなのに聴いていると、不思議なくらい前へ前へと進んでいく。

電車で一気に目的地へ向かうというより、イヤホンをつけて、自分の足で街を歩いているような感覚。

『Our Journey』では、その“歩き続ける感覚”を、リズム、ハーモニー、そして楽曲の空間そのもので作っています。

今回は、TëKMO+の中でも少し異色な「ジャズファンクとヒップホップの境界線」を紐解いていきます。

0|今月の問い

なぜ『Our Journy』は、速くないのに

「前へ進んでいる」ように感じるのか?

音楽で疾走感を出そうとすると、普通はテンポを速くしたくなります。

でも『Our Journey』はその逆。

テンポそのものは約112 BPM。

ちゃんと足元を確認しながら歩ける速さです。

それでも曲が止まって聴こえないのは、

ビートの中に細かな“前進する力”が仕込まれているから。

さらに、曲が進むにつれて音の景色そのものが少しずつ広がっていきます。

つまりこの曲は、

「速さ」で旅を表現しているのではなく、「グルーヴ」と「景色の変化」で旅を表現している。

ここが大きなポイントです。

1|結論:「歩き続けたくなる」3つの仕掛け

『Our Journy』の前進感を作っているのは、大きく分けて3つ。

① 112 BPMの中に仕込まれた、ジャズファンクとヒップホップのグルーヴ

② 明るさと少しの陰りを行き来する、大人っぽいハーモニー

③ 曲が進むほど音の景色が広がっていく、立体的なアレンジ

この3つが重なることで、

走ってはいない。

焦ってもいない。

でも、確実に昨日とは違う場所へ向かっているような、

そんな『Our Journey』独特の“旅の速度”が生まれています。

2|楽曲の構造を深掘りする3つの設計ポイント

設計ポイント①

リズム&ベース:「ドン・ドン」と進むのではなく、“隙間”で前へ進む

まず注目したいのがリズムです。

『Our Journey』は、大きな拍をしっかり感じとれるようになっています。

でも、その間に細かなアクセントが入ってくる。

これがジャズファンクやヒップホップでよく感じる、

「ビートの”隙間”が気持ちいい」という感覚につながっています。

ドラムが全部の場所を埋め尽くすのではなく、音を置くところと置かないところを作る。

そして、その隙間をベースが縫うように動いていく。

特に面白いのは、ベースがキックとずっと同じ場所にいるわけではないところ。

キックと一緒に地面を踏む瞬間もあれば、次の拍へ少し先回りするように動く瞬間もある。

この小さな“食い込み”が、「次へ行こう」という推進力を作っています。

テンポそのものを速くしなくても、16分音符の細かな動きによって身体は前へ進んでいく。

これが『Our Journey』のグルーヴの正体です。

 

設計ポイント②

ハーモニー:明るいのに、少しだけ影がある

もうひとつ、この曲に独特の都会感を与えているのがコードの響きです。

全体としては、D♭メジャーと、そのすぐ隣にあるB♭マイナーの色を行き来するような響きを持っています。

専門的に言えば、この2つは使っている音の多くを共有しています。

だから、「明るい!」

から突然、

「暗い……」

に変わるわけではありません。

明るい景色の中に、ほんの少し影が差す。

心地よいの温度変化を感じられると思います。

これが『Our Journey』に歌詞にもすごく相性が良くて、

「この道でいいんだろうか」と思う瞬間もある中で、

それでもまた歩く。

『Our Journey』のコード感には、そんな迷いと前向きさが同時に入っています。

ただ明るい応援歌にしなかったことで、曲に“大人のリアリティ”が生まれているんです。

 

設計ポイント③

アレンジ:曲が進むほど「街が広がっていく」

そして今回、音源を細かく聴いていて特に面白かったのがここ。

『Our Journey』は、曲が進むにつれて音の横幅が変わっていきます。

Aメロ付近では、ボーカルやリズムの中心が比較的まとまっていて、音像もタイト。

イメージするなら、

まだ狭い路地を歩いている感じです。

そこからサビへ向かうにつれて、鍵盤やギター、コーラスなどの音が左右へ広がっていく。

視界が開けて、街の景色が一気に広がるような感覚です。

さらに面白いのが終盤。

2:18前後からは、それまで以上に音の横幅が広がり、高い音域の成分も増えていきます。

単純に「最後だから音量を大きくする」だけではありません。

音を明るく、広くする。

だから最後の展開では、

「同じ場所をぐるぐる回っている」のではなく、

ちゃんと遠くまで来たように感じる。

イントロではまだ街の一角にいた主人公が、曲の最後には少し高い場所から景色を眺めている。

そんな映像すら浮かんできます。

タイトルが『Our Journey』であることを考えると、この音像の変化そのものが“旅”になっているんです。

3|歌とサウンド:「自分の耳が選ぶbeat」を信じる

この曲の核にあるのが、「自分の耳が選ぶbeat」という感覚。

周囲が選んだ正解ではなく、自分が気持ちいいと思ったビートを信じる。

これは、音楽の話だけではないと思います。

仕事でも、人生でも、活動でも、

「普通はこうする」

「この年齢ならこうする」

「成功するならこうする」

みたいな正解は、たくさんあります。

でも結局、自分の人生を最後まで聴いていられるのは自分だけ。

だから、自分がちゃんと身体を揺らせるbeatを選ぶ。

『Our Journey』では、そのメッセージを強く叫ぶのではなく、

少し力を抜いたグルーヴの上に乗せています。

そこがこの曲の格好いいところ。

「俺について来い」ではない。

「俺はこっちへ行くけど、一緒に歩く?」

くらいの距離感なんです。

4|今日の“懐かしい音”の正体

正体:90年代アシッドジャズの「都会を歩けるファンク」

今回聴き比べてほしいのは、

Jamiroquai『Virtual Insanity』

https://www.youtube.com/watch?v=4JkIs37a2JE

ジャズの少し複雑なコード感。

ファンク由来のベースとドラム。

そして、その上に乗る都会的でクールなボーカル。

こうした要素を「難しい音楽」としてではなく、ちゃんとポップミュージックとして聴かせる。

この感覚は『Our Journey』にもつながっています。

特に共通しているのが、

“グルーヴそのものが風景を作っている”

ところ。

ギターやシンセで派手な景色を描く前に、ベースとドラムを聴いただけで、すでに街を歩いている感じがする。

そこへジャズ的なコードの色彩が加わることで、

普通のファンクより少し知的で、

普通のポップスより少し路地裏っぽい。

そんなアーバンな質感が生まれます。

5|今夜の“耳トレ”――今回は「景色の広がり」を聴こう

曲の最初と、2:18前後の終盤を聴き比べてみてください。

チェックするのはひとつだけ。

「音の景色は、どちらが広く感じる?」

最初は音がタイト。ドラムとベースでリズム感を作っていますが、

終盤になると、グルーブの上に左右へ広がる音が増えて、景色が一気に大きくなります。

イヤホンで聴くと、より分かりやすいはずです。

音量ではなく、“音の広さ”を聴く。

これだけ意識して、もう一度聴いてみてください。

6|まとめ

『Our Journey』は、

猛スピードで夢へ向かう曲ではありません。

立ち止まることもある。

迷うこともある。

でも、自分の耳が選んだbeatを信じて、また一歩進んでいく。

その姿を、112 BPMのヒップホップ的なグルーブ感で、

ジャズファンクをおもわせるのベースとハーモニー、

そして少しずつに広がりを見せるアレンジで描いた曲です。

速く進むことだけが、前進ではない。

誰かが決めた道を歩くことだけが、正解でもない。

昨日より少しだけ先へ行けたなら、それも立派な旅です。

ドラムが足取りを作り、ベースが次の一歩を促し、

鍵盤やギターが街の景色を描き、その真ん中をボーカルが歩いていく。

そんな4人の音が重なって、『Our Journey』は今日も続いていきます。

自分の耳が選んだbeatを信じて。

次は、どこへ行こうか。

文:MAKIO (TëKMO+ Bass,Vocal)


作品とライブの案内

3rd Album『CONTINUE?』全国発売中!

『surface tension』『24/7』『navyblue』『くるりってさ。』『blind start』などを収録。

配信で聴く:
https://pcim.lnk.to/continue

販売元購入サイト:
https://pcimusic.com/s/pec/item/detail/TKMO-0003?ima=4016

タワーレコード:
https://tower.jp/search/item/T%C3%ABKMO%EF%BC%8B

楽天ブックス:
https://books.rakuten.co.jp/rb/18420063/?l-id=artistpage-item

 

ONE-MAN LIVE情報

2026年11月27日(金)

渋谷gee ge

「TëKMO+ サウンド設計室 -共同作曲編-」

https://www.tekmoplus.com/blank-6/tappuritekumovol-3-saundosekkeishitsu-kyodosakkyokuhen

 

2027年2月27日(土)

みなとみらいブロンテ

TëKMO+ ONEMAN LIVE
“RëLOAD”

~5TH ANNIVERSARY~

https://sieg-en.zaiko.io/ja/e/tekmoplus-reload

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