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あけまして、しょっぱい話の巻

2012年、あけましておめでとうございます。ってもう2月だけどさ。でもいいじゃん、昨年は辛いことがありました。でもまあこうして腹立ったり泣きそうになりながらも年を越えることができた、と。皆さんにとって今年は悲しみや怒りより喜びや笑いがいっぱいありますように。といいつつ、今回もちょっとしょっぱい話を書くんだけどね。

一昨年くらいから徐々に自分の中の音楽に関わる仕事内容を変えつつありまして。それはどういうことかと申しますと、まあこれまではバンドとかシンガーソングライターの人に関わって、インディレーベルでCDを作ってみたりライヴでいっしょにいろんなところに行ってみたり、という仕事をしてきたんだけれども、数年前から「今までの仕事内容だけじゃきっと今後駄目だろうなあ」と思ってきたのであります。もちろんとはいうもののインディレーベルやメジャーのバンドとかの音を聴くのは好きでCDを買ったりはしてるんですけどね。でも自分でやる仕事は方向性を変えていきたいなあ、と思った。
で、一昨年から曲も詞も書かない、いわゆるヴォーカリストの子に目を向けるようにし出したんです。最初は慣れぬことなので“なんじゃこれは?”とか“ドーしたらええんよ!”なんてことも思ったりしてたんだけど、ちょっとずつコツみたいなものとか考え方や捉え方を学ぶようになりました。今までの僕を知っている人からすると、「そんなことしてたんですか!」とびっくりされるんだけど。でもヴォーカリストの子と関わるようになって、学ぶことも多いんですよ。歌手になりたい、と志望する人はそれこそたくさんいて、そんな中で飛びぬける子はやはり貪欲なんですよね。自分を認識させるために必死。ヴォーカリストなんだから歌だけで勝負すればいいじゃないか、というのは甘くって。それだけではなかなか飛びぬけられない現実があったりします。上手い子だったら実はそこそこいっぱいいるんですよ。その中で飛びぬける子は話しているとどんどん引き付けられるんですよね。話し方や表情や話す内容においても“ああ、なるほどなあ”と思います。さらに僕はあまり多くのお付き合いはありませんが、いわゆるローティーンのアイドル志望の子とか、“この歳でこのしっかりした考え方はなんじゃ!!”とか思いますよ、ホント。いわゆるヴォーカリストのみ、ではないんですが、去年知り合った12歳の女の子は歌以外にもギターで弾き語って、ダンスも踊って、演技の勉強もして、それを親がやらせているわけでもなく、自分で通いたいと言ってやってる、っていう。まーすごい。話をすると将来のビジョンをちゃんと持っててねえ。何してたよ、12歳の時のオレ! 鼻垂らして赤とんぼ追っかけているようなもんでしたわー(笑)。
そんなヴォーカル志望の子にソングライターチームが曲を書き、プログラマーであったりミュージシャンであったりがトラックを作り、そのオケで歌って、という作業(まあそんな完成形のところまで僕はやってませんが)を今まで僕はあまり意識して仕事して来なかったわけですが、そんな音楽制作の現場にいらっしゃる会社の人たちとここ最近でお知り合いになってお話を伺っていると、これがとても勉強になりますね。今週中に曲を、とクライアントから言われたら今週中に複数の曲を用意するのが当たり前。しかもメロだけじゃなく、ある程度アレンジも完成した形で。なかなか曲が上がらないバンドマンやシンガーソングライターにとっては耳の痛い話ですが、それが彼らの仕事。できなかったらもちろんお金は発生しないし次からの仕事が来ない場合もある。かなり厳しい仕事ですが、一様にみんな熱を持ってお仕事をされていらっしゃいます。素晴らしいなあと思いましたよ。
そんなあれこれを経験し、勉強した上で思ったことは、だいたいバンドの子と接していると考え方がバンド的と言いますか、『自作自演が基本、オリジナリティ至上主義』みたいなものになりがちじゃないですか。でもその思想が実はとても偏っていて、当たり前だけどそうじゃないパターンもいっぱいあって。で、実は“いわゆるバンド志向のみで物事を考えてるほうが今後どんどんマイナーになっていくんじゃないの?”という考え方になってきたんですよ。
最近アルテスパブリッシングから発売になっている『文化系のためのヒップホップ入門』という本を読ませていただいたんですが、これが面白くて。もちろんこの本が元々意図するヒップホップってなんなのよ!? という部分で入門書としてかなり面白い内容ではあるんですが、同時に現状いかにロックの分が悪いか、ということを痛感するんですよね。そしてこの本で書かれていることが今僕がバンド志向に対して考えていることほとんど同じなのです。日本におけるヒップホップの意味合いがこの本で語られるアメリカのシーンとは違うのですべてを当てはめることはできないのですが、それでもロックという音楽に関する考察は日本の現状とかなり当てはまるんですよね。詳しくどうの、というのはこの本を読んでいただいたらよい、という話でもあるんですけど(笑)、僕が思ったのはどんどんそのオノレの志向によって個の音楽であるロックは、小さいコミュニティになりつつあるんだなあ、と。時代とずれを生じているかも、と。2010年11月に新書『未来型サバイバル音楽論』が発刊になって、あの時は僕もこのページで取り上げたけど、たった1年で状況はまた変化していて、今になって思えばあの本はあくまでバンド志向、自作自演する人に向けて書かれたものであって、あの前後から出てきたアイドルブームや個々完全分業制で作品を作り上げている同人音楽やVOCALOIDといったものに対してはそぐわない部分もありますよね。ネットも、“あの本以降に一気にUstreamで自己表現しているバンドが増えたか?”といえばさほどでもないし。自作自演をしている人はなんとか損しないようトントンにしていきましょう、という部分では今でも全然有効でためになるとは思うけど、音楽で生活をし、大きくしていくという意味では別のやり方もあるんじゃないかなあ。全て自作自演で考えなくてもいいんだから、というのが今の僕の考えです。もちろんこれは音楽の質の話では全然なくて、ロックのマイナーだろうとメジャーだろうといいと思える作品はいっぱいあるし、今後もリリースされるでしょう。すでに別にお仕事をしながら生活の基盤を作り、すばらしい作品をリリースしているバンドもいますしね。そして無論今後もバンドの中でも多くの人を引きつけるものは出てくるだろうけど、こと音楽をお金に還元し生活を続けていくことをしたい、という話なら従来のバンド的な考え方のみで行動というのはハードルをどんどん上げる要因になるでしょうね。じたばたしないとたぶん難しい。ここまで書いてきてバンドの人の中には「じゃあ何? 音楽で生活しようと思ったらバンドなんてヤメれ、ということ?」と腹を立てる人もいるかもしれないけど、ヤメろ、というより、今やっている形態で活動を続け生活基盤を確保して暮らして行きたいと考えるのなら、まず自分達を巡る環境はどういう状況になっていて、それを理解した上でどう活動していくか考えて行動したほうがいいんじゃないのかなあ、というお話かと。たとえば複数のバンドが出演するイベントばかりに出ていれば全体の上がりがバンド数で等分されるし、さらにバンドはメンバーが複数いるわけで、ライヴで稼いだお金はさらに等分される。結局楽器運搬のために車とか使ったらマイナスとかよくあるお話。それはどうなのか考えたほうがいいですよね。ライヴハウスでのバンドもしくは職業イベンターではない人による企画(僕もかつてはかなりやってました)が当たり前のようになって早幾年ですが、お友達だから、とかじゃなく何のために出るのかをちゃんと考えたほうがいいよなあ、と思いますね。ワンマンやったほうが確実にギャラはあるんだから、ワンマンへの導線のためにどう活動するのかを考えないといけない。そんな当たり前のようなことから、さあマネージメントをどうしようとか、作品はどうしようとかそんなことまで今までよりもっともっとシリアスに考えないとまずい時代になってるよ、と思います。
先日旧知の元ライヴハウスのスタッフさんで現在はバンドのお世話をされている方と茶飲み話をしていて、つくづくバンドの人は10年以上前からあまり考えが変わっていないんだなあ、と思いました。その話の中で「バンドメンバーが『やっぱりCDをプレスして流通に乗せたいんですよね、だって他のバンドになめられるから』と言ってるんですよ」と言っていたので、状況が整っていないのに、今やレコード店も昔と違って厳しいから「なめられるから」とかそういう理由でプレスして流通に乗せてもね、全然商品を取ってくれないし、幸運にも取ってくれたとしても売れなかったらその数はパソコン上に記憶され、次回作の時に手厳しい初回数をつけられますよ。自分で自分の首を絞めているんですけどね、それ。と答えました。未だにそんな感覚なのかーと逆に驚いたくらいですわ。以前ならとりあえず1枚、という注文数が今や1枚取るくらいならゼロにして注文にしなさい、と店長や本部からお店の人は厳しく言われているのにねえ。自分を取り巻く環境を考えると、もうこの環境下でインディレーベルでCDを、というのはあまり考えていないし、個人的にはインディ・バブルはとっくにはじけてる、と思っています。注文数も以前よりずっと少ない。これからCDを流通させてお店に置いてもらおうと思っているバンドの人は(初めてCDをリリースするという意味で)新人というだけでもうリスキーな時代なんだということは認識しておくべきですよね。「じゃあどーすりゃいいの?」という質問には個々のジャンルもあるし、活動状況もあるので一概には言えないんですが、今後はアマチュアバンドの中にも格差がどんどん生まれてくるとは思います。失礼な言い方ですが、できるチームとできないバンド。「できる」というのはきっとバンドじゃなくてチーム。できるバンドはバンドだけじゃなく、友達やファンの関係じゃない冷静な判断をする人がスタッフとしてついてたりするパターンが多いと思うのでチーム、と。そして申し訳ないですが、そうじゃないバンドは他に定職を持ってあくまで趣味としてバンド活動を続けることも考えの中に入れておいたほうがいいかもしれません。だってもうできるチームでさえその全てが経済的に潤うかと考えると疑問だったりするので。自作自演の、バンドという形態はどんどんシビアな状況になっています。きっと皆さんが思う以上に。
いやー今回はしょっぱい話だったでしょ。でもそう思っています。そして、世の中さらにややこしいことになってきているのですが…それはまた次回、かなあ。

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