音楽メディア・フリーマガジン

怒の百二十四 「アワーズルームとは?」

春めいて来ると、いろんな人が蠢き出します。陽気に誘われて日頃表に出ない人が外をふらつき始めるのでしょう。この前も、地下鉄の中央線で切符を買ってたら、後ろでダミ声がする。

「あんた、本町やから200円でええんやで」
「あら、270円出してもうた」
「アホやな。駅員に言うたるわ」

そんな会話を交わしていました。その声が「犬神家の一族」のスケキヨかAVのマグナム北斗みたいに濁っていたのです。結局、そのオバサン達は駅長室へと乗り込み、「ちゃんと本町までは200円って書いといて!」と大きな声で理不尽なことをがなっていました。まるで喉もとに天竜チョップを食らったような声だなと思っていたら、オバサン2人とも典型的な天竜パーマでした。まあ、春になるとこんな妖怪もどきが巷を闊歩し始めるわけです。少ししみじみしながら、僕が向かったのは肥後橋でした。そこに「アワーズルーム」があるのです。

アワーズルーム……それは、僕の新しい拠点。そこで夢を育み、そこで実務をこなし、そこから創作物を発信する。2年前に株式会社アワーズを立ち上げ、月に10数回トークライブをやってきました。その時からずっと思っていたことがあったのです。ジプシーのように、ライブ会場を彷徨うのではなく、自分達のルームを持ちたい、と。その思いが叶ったのは、去年の暮れでした。アワーズルームのオープン。忘れもしません。去年の12月25日。およそ80平米の部屋にライブスペースとバースペース、それと事務所を兼ねた僕達の部屋の誕生です。さあここから僕達の第一歩が始まる……テンションはマックスでした。

しかし、アワーズルームは決してスムーズにオープンを迎えたわけではありません。12月25日の直前、およそ1週間前までは、そこは麻雀屋だったのです。床には雀卓用のコンセントが雨後のタケノコのように顔を出しています。天井にはダサい蛍光灯が100本ほど並んでいます。キッチンカウンターは、タバコのヤニと炒めモノの油でベトベトでした。ここを1週間でライブスペースに? 不可能としか言いようがなかったのです。僕達は、ライブスペースを持つにあたって、居ぬき物件を探していました。新たに内装とかをする予算が無かったからです。不動産屋から「いい居ぬきがあるよ」と言われて契約したのがここだったのでした。僕達からしたら、昨日まで麻雀屋だったのを、今日からライブスペース兼バースペースにするしかないのです。無理にでも。不動産屋が預かっているスナックやバーの古い備品をいただき、夜逃げした事務所の備品をいただき、僕の手持ちのコレクションを運び込み、かつてやっていたラジオ番組のイベントの設営をしてくれた人にほぼロハで内装を頼み、かつてのスタッフに破格でPAを仕込んでもらって、12月24日になんとかカタチになったのでした。

1ヶ月のうち、20数回はトークライブをしています。そのすべてが竹内義和がらみです。つまりほぼ毎日、僕が喋っているわけです。僕が面白いと思ったことを喋り、それが単行本や映像になり、それがアワーズ発として世に広まる……これこそがアワーズルームのコンセプトなのです。地下鉄四ツ橋線の肥後橋から徒歩1分、地下鉄御堂筋線の淀屋橋から徒歩5分。僕達の夢の拠点に、是非来てください。今日も僕は、アホなこと、面白いこと、興味深いことを喋っているはずです。運がよければ、地下鉄で天竜パーマオバサンと会えるかもしれませんよ。

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