音楽メディア・フリーマガジン

怒の百十九 「語る――ということ」

知っている人は知っていると思うのですが。この僕は、21年間に渡って週に一回ラジオで喋っていた人間です。それは某放送局の深夜番組でした。期間は、 30代の半ばから50代の半ばまで。考えてみれば自らの人生のかなりの部分、「喋る」ということに費やしたと言っても過言ではないでしょう。

その習慣が、ある出来事で突然途絶えてしまったのでした。予告なしの番組終了。
「何故?」
それがその時の僕の気持です。僕自身、その事実をうまく認識出来なかったのですから、リスナーからしたらもっと「寝耳に水」だったと思います。何にしろ、 番組は終了しました。何年にも渡って積み上げてきた梯子をいきなり外された感じとでも言えばよいのでしょうか。しばらくは、体調も悪くなり、何をする気も おきませんでした。
が、時間と共に事実を受け入れる余裕が生まれ、それと共に「喋りたい」意欲が増してきたのでした。意欲というよりも、衝動に近いと言った方がいいのかも しれません。テレビを見て、新聞を読んで、週刊誌を買って、レンタル屋さんに行って、友人と飲みに行って――そういった日常の行為が、実は週に一回喋るた めのネタの仕込みになっていた事に気付いたのでした。あの日以来、ネタの発表の場が無くなりました。だけども、その日常は続けられていたのです。だから、 ネタは、日々脳内に蓄積され続けたのでいた。発散することのないままに。

喋る場――つまり媒体がないことで溢れるネタの処理に困った僕は、ある結論に達したのです。なければ作ろう。地上波で番組を持つことは難しいのかもしれ ませんが、今の世の中ネットもあればユーストもあるのです。やろうと思えばいろんな方法が考えられる。で、僕が選んだのは、ライブハウスでラジオをという ものでした。千日前にある美園ビルに、たまたま知り合いがやっている「白鯨」というお店があり、そこでやろうと。トークライブですが、気持ちはラジオ。と りあえずは、ユーストで中継はしますが、会場に来てくれている人に対してネタをぶっつける、それを基本にしよう。そんな気持ちで始めたのが、「オレラジ オ」というイベントだったのです。もちろん、ラジオ番組という体ですから、週イチでやることにしました。木曜日の夜7時半からおよそ二時間に渡るトークで す。

「オレラジオ」を始めたおかげで、溜まっていたネタを処理することが出来るようになりました。塩谷瞬は、「ハリケンジャー」より、「バイオマン(つま り、オマンが倍ということで二股)」に出るべきとか、「飲まない便秘薬」という言い方で「浣腸」をオシャレっぽく表現してるCMがあるが、なら飲む便秘薬 は、「尻に注入しない浣腸」なのかとかといったネタの発表が可能となったのです。興味深い芸能ニュース、突っ込めるCM、街で見かける奇人変人に出会う度 に、「これはネタになる」と思えるようになったのです。
「オレラジオ」は、会場を少し大きい「紅鶴」に変えて今も続いています。まるまる二年半も語り続けているのです。少なくとも100回以上、語り続けてい ることになります。ある人は、毎週二時間も喋って疲れないかと心配してくれます。でも、そんな心使いは不要です。僕にとっての「語り」とは、溜まったもの を吐き出す行為なので、逆に語れない方が疲れるのです。最近は、もっともっと語りたいということで、毎週月曜日にも「マンデーナイトアワーズ」というトー クイベントを開催することにしました。僕にとって、日常がネタです。だから僕が生きている限り、ネタが枯渇することはないのです。

会場に来れない人、ユーストの中継だけでは我慢出来ないファンの方から、「オレラジオ」のCD化の要望がありました。それを受けて、僕は「ぼくらレーベ ル」を立ち上げました。イベントのCD化をはじめ、音楽、映像等のCD、DVDをそのレーベルで積極的に商品化していくつもりです。第一弾として『オレラ ジオ白鯨編』の発売が決まりました。

興味のある人は、是非とも株式会社アワーズのHP(hourz.co.jp)にアクセスしてください。

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