音楽メディア・フリーマガジン

Nothing’s Carved In Stone Vo./G.村松拓 連載 続・たっきゅんのキングコングニー Vol.30:編集長がNothing’s Carved In Stoneの「Go My Punks!!!!」を好きな理由の巻

続・たっきゅんのキングコングニー Vol.30:編集長がNothing’s Carved In Stoneの「Go My Punks!!!!」を好きな理由の巻

2015/10/18@Zepp Tokyo “MAZE × MAZE Tour”

SPECIAL ONE-MAN LIVE“BEGINNING2020”が新型コロナウィルスの影響で延期となり、3/27(金)から始まる“Hand In Hand Tour 2020”が無事開催されることを多くのファンが熱望しているNothing’s Carved In Stone。同バンドのVo./G.村松 拓が様々なことに挑戦したり、プロモーションとは関係のないところでぺちゃくちゃおしゃべりしてきた当連載『続・たっきゅんのキングコングニー』のVol.30は、かねてよりJUNGLE LIFE編集長が「大好き」と公言し続けてきた「Go My Punks!!!!」について、なぜ編集長が同曲をこれほどまでに愛しているのかをつらつらと書き連ねるだけという、前代未聞のたっきゅん未稼働回。果たして編集長はなぜ「Go My Punks!!!!」が好きなのだろうか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
こんにちは。JUNGLE LIFE編集長の山中です。Nothing’s Carved In Stone Vo./G.村松拓さんの連載『続・たっきゅんのキングコングニー』ですが、今月号は拓さんの稼働はなく、『Vol.30:編集長がNothing’s Carved In Stoneの「Go My Punks!!!!」を好きな理由の巻』というタイトルで僕がつらつらと文章を書くだけの回です。これは、僕から拓さんに“僕がなぜ「Go My Punks!!!!」をこれほど好きなのか、その理由を連載内で細かく説明させてほしい”とお願いし、実現したものです。よって今回は拓さんが未稼働となりますこと、何卒ご了承いただけましたら幸いです。

 
 
 
 
注意!!
今月の続・たっきゅんのキングコングニーはたっきゅん不在!!

 
 
 
 
 
 
 
 

第一章:Nothing’s Carved In Stone「Go My Punks!!!!」とは?

Nothing’s Carved In Stone 「Go My Punks!!!!」

 
「Go My Punks!!!!」はNothing’s Carved In Stoneが2015/9/16にリリースした7枚目のアルバム『MAZE』に収録されている楽曲。同アルバムは「Gravity」「YOUTH City」「The Poison Bloom」「Milestone」「Perfect Sound」などライブで盛り上がる名曲が多数収録されている一方で、「デロリアンを探して」「Discover, You Have To」などかなり個性的な楽曲も名を連ねる作品。その中でも「Go My Punks!!!!」は、『MAZE』以降のアルバムも含めて彼らの音楽の中でも“異質”とも言えるような肌触りがある曲といえます。
 
 
更に同曲は『MAZE』のリリースツアー“MAZE×MAZE TOUR”の全国7公演でのみ演奏されており、これ以降は1度たりともライブのセットリストに組み込まれていません。
 
 
 
 
 
 
 
 

第一章のポイント
“MAZE×MAZE TOUR”以降は
1度たりとも演ってない。

 
 
 
 
 
 
 
 

第二章:編集長は「Go My Punks!!!!」がめっちゃ好き

 
『たっきゅんのキングコングニー』フリークの方であればご存知かもしれませんが、僕は「Go My Punks!!!!」が大好きで、ことあるごとに拓さんに(ときにはうぶさんにも)「Go My Punks!!!!」演らないんですか? とアプローチしています。『MAZE』のインタビューではうぶさんと拓さんに「Go My Punks!!!!」は完璧ですと二度伝えたのですが、その際の2人とのやり取りは以下のようなものです。
 
 
 
 

●あと、今作でいちばん衝撃を受けたのはM-9「Go My Punks!!!!」なんです。

生形:ポップですよね。

●この曲は僕、完璧だと思うんです。

村松:マジすか?

●今までのNothing's Carved In Stoneのパブリックイメージを覆す明るさがあるし、バンド自身のことを歌っている歌詞だし、歌詞としてのおもしろさも携えてて。すごくポップな曲ですけど、僕の解釈としては涙を流しながら笑っているような曲で。めちゃくちゃ落ち込んだときに聴きたい曲。

村松:ちょっと気が楽になりますよね?

●うん、めちゃくちゃ楽になります。しかもこの曲5分もあるのに、まったく長いと感じさせないんです。終わり方も潔いというか。

生形:ああ〜。うんうん。

●もう1度言いますけど、この曲完璧ですわ。

2人:アハハハハハ(笑)。

 
 
 
 
『MAZE』のインタビューの後も、僕はいろんなタイミングで「Go My Punks!!!!」が好きということをアピールしてきました。できればもう1回くらいライブで観たい…そんな淡い期待がありました。
 
 
 
 

2017年7月に行った当連載の企画“『続・たっきゅんのキングコングニー』ザ・サバイバル! チャリで樹海まで行って野宿!”では、世田谷区から樹海まで往復した自転車に「ゴー・マイ・パンクス号」と名付けました。
 
 
 
 

2018/8/24に代官山LOOPで開催した『たっきゅんのキングコングニー』のトーク&弾き語りイベントでは、ライブの本編で演るのが難しければ、武道館ワンマンのときに「Go My Punks!!!!」をSEで流して4人で行進しながらステージに登場してはどうか? と拓さんに提案しましたが、「だったらオニィがドラムセットごとホバークラフトに乗って登場したらおもしろいよね」と上手く流されました。
 
 
 
 

 
そのトークイベントでも放映した“『続・たっきゅんのキングコングニー』ザ・サバイバル! チャリで樹海まで行って野宿!の動画編”では、移動シーンのBGMに「Go My Punks!!!!」を使いました。
 
 
 
 
 
 
 
 
そして今回、たっきゅんの連載なのに“僕が「Go My Punks!!!!」が好きな理由を連載内で細かく説明させてほしい”と詰め寄り、その理由をとことん語る機会を得ました。みなさんわかりますか? 僕はこれほどまでに「Go My Punks!!!!」が好きなのです。「Go My Punks!!!!」が他の曲とはかなりタイプが違うので、ライブのセットリストにはなかなか組み込みにくい。そんなこと、僕はとっくにわかってます。
 
 
 
 
 
 
 
 

第二章のポイント
とっくにわかっている。

 
 
 
 
 
 
 
 

第三章:「Go My Punks!!!!」が出来た経緯

 
うぶさんと拓さんに対して行ったアルバム『MAZE』のインタビュー中、「Go My Punks!!!!」が出来た経緯についても触れています。その際の2人の発言を振り返ってみましょう。
 
 
 
 

村松:Nothing's Carved In Stoneでこういうサウンドアプローチは新しいんですけど、でもずっとメンバーの中にあったものですね。

生形:Battlesだよね。あの感覚。だからこの曲ができたときには“すごく新しいものができた”っていう手応えがあって。これだけポップなのにサイケで、ロックでもあるっていう。

村松:そう。本当に色んなものを含んでる。

 
 
 
 
ここで1つヒントが出てきています。「Go My Punks!!!!」の音楽的な要素はもともとメンバーの中にあったものとのことですが、うぶさんの発言の中に「Battles」というバンド名が登場します。
 
 
 
 
ウィキペディアによるとBattlesは2002年にアメリカで結成されたエクスペリメンタル・ロックバンド。日本にも過去8回来てライブをしています。生演奏とデジタルを融合させ、常に革新的な音楽を発表してきたBattlesは、Nothing’s Carved In Stoneのメンバーにも刺激を与えたのだろうと推測できます。
 
 
 
 
Battles - Atlas

 
 
 
 
うぶさんが“あの感覚”と言っていたのは、おそらくこの「Atlas」辺りかと思われます。あくまでも僕の推測ですが。そして同曲は、ひなっち(日向)が持ってきたベースフレーズがきっかけになっているといいます。
 
 
 
 

生形:これはね、ひなっちが「こういうベースがあるよ」って持ってきて、そこから作ったんです。ギターもその場で閃いて付けたフレーズですけどね。

村松:俺がイントロで弾いてるギターも、ひなっちが「こういう音なんだけど」って何となく口で言ったりして。

生形:俺らとしては、ポップなんだけどマスロック的なイメージが強くて。だからかっこいいなと思って。

 
 
 
 
2人が「すごく新しいものができた」言うように、「Go My Punks!!!!」はそれまで我々がNothing’s Carved In Stoneに対して抱いていたイメージを覆すポップな印象を与えてくれます。ではなぜ、このタイミングでこのような楽曲が生まれたのでしょうか。次の章では、「Go My Punks!!!!」を含む『MAZE』が生まれたタイミングを振り返ってみましょう。
 
 
 
 
 
 
 
 

第三章のポイント
「Go My Punks!!!!」はすごく新しい。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

第四章:「Go My Punks!!!!」が生まれた時期と前後の活動との関連性の考察

 
アルバム『MAZE』は2015年9月にリリースされましたが、インタビューの内容によると、同作の制作時期は2014年の年末くらいから始まりました。まず最初に「YOUTH City」「Thief」を録ったということですが、この時期のバンドはどういう活動をしていたか、整理してみましょう。
 
 
 
 

2014年末〜2015年前半のバンドの主な活動

2015/1/14 シングル『Gravity』&Live DVD&Blue-ray『No Longer Strangers』リリース
2015/1/15 LIVE Gravity(ワンマン)新木場studio coast
2015/1/17 LIVE Gravity(ワンマン)福岡DRUM LOGOS
2015/3/10 Monthly Live at QUATTRO Vol.1 "1×4=衝動"
2015/4/08 Monthly Live at QUATTRO Vol.2 "2×5=感触"
2015/5/14 Monthly Live at QUATTRO Vol.3 "3×6=構築"

 
 
 
 
「YOUTH City」「Thief」を2014年の年末に録ったということは、既発シングル曲「Gravity」以外のアルバム収録曲の制作時期は…僕の手元に『MAZE』のサンプル盤が届いたのは2015年7月であり(PCにとりこんだ音源データの作成日付を参照)、3ヶ月連続ワンマンの後は夏フェスまでしばらくライブ稼働が無かった事実から想像すると…おそらく2015年6月中にはレコーディングは終わっていたのではないでしょうか。要するに、「Go My Punks!!!!」が生まれた時期は渋谷CLUB QUATTROでの3ヶ月連続ワンマンライブとカブるのです。
 
 
 
 
渋谷CLUB QUATTROでの3ヶ月連続ワンマンライブは、それまで彼らがリリースした6枚のアルバム収録曲を披露するという企画でした。前述した『MAZE』のインタビューで僕は2人に、
 
 
 
 

「我々リスナーからすると、過去にリリースした6枚のアルバム収録曲を3回にわけて演るという“Monthly Live at QUATTRO”があり、8月にはベスト盤とも言えるライブアルバム『円環 -ENCORE-』のリリースがあって。要するに我々は、アルバム『MAZE』が出る前に、Nothing's Carved In Stoneのこれまでを全部おさらいしてるんです」

 
 
と言ったのですが、我々リスナーと同じく、メンバー4人も「Go My Punks!!!!」を作る直前にNothing's Carved In Stoneのこれまでを全部おさらいしたと考えられないでしょうか(※註:筆者の推測です)。
 
 
 
 
おさらいしたメンバーの心理が「今までこういう曲も作ったな。ああいう曲も作ったな」「よし、じゃあ今度は今までにないものを作ろう」となることは容易に想像できます。アーティストはもちろん、誰だって今までと同じことばかりしていれば退屈してしまいます。バンド内にこのような気運が高まっていたからこそ、4人は「Go My Punks!!!!」を完成させたときに「すごく新しいものができた」という達成感を味わったのではないでしょうか(※註:筆者の推測です)。それでは次の章では、「Go My Punks!!!!」の歌詞の内容について迫りたいと思います。
 
 
 
 
 
 
 
 

第四章のポイント
Monthly Live at QUATTROで
4人も6年間をしっかりとおさらいした。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

第五章:「Go My Punks!!!!」は4人の曲

 
拓さんが書いた「Go My Punks!!!!」の歌詞には、Nothing's Carved In Stoneの4人を想起させる表現が冒頭に出てきます。
 
 
 
 

車輪の4つある
陸海空どこへでも
風になれる新しい車で出かけよう

 
 
 
 
「車輪」とはNothing's Carved In Stoneの4人のことです。この曲が生まれたのは2015年ですので、それまで6年間一緒にバンドを続けてきたメンバーそれぞれを車輪に例えたことになります。車は四輪車ですので、どれか1つが欠けても車は前に進みません。これは、Nothing's Carved In Stoneは4人が対等であり、この4人じゃなければこれまでもこれからも前に進めないという意識と覚悟と宣言の表れなのです。間違いありません(※註:筆者の推測です)。
 
 
 
 
そして実は、この引用した箇所とこの直後に続く一節に、決して看過できない言葉が使われているのです。その部分の歌詞を2行あわせて引用します。
 
 
 
 

陸海空どこへでも

宇宙ならどこへでも

 
 
 
 
要するに冒頭では「陸の上も海の中も空もとべる。宇宙ならどこへでもいける車で出かけよう」と歌っているのですが、このような表現は、Nothing's Carved In Stoneの歌詞に散見される“鉄の塊感”とでも言いましょうか、男の子がワクワクするような物の代名詞として使われます(※他にも車をモチーフにした曲は「TRANS.A.M」「デロリアンを探して」などがあります)。
 
 
そして「陸海空」とは文字通り「陸上」「海中」「空中」のことです。宇宙は「そら」と発音しています。この表現はアニメ作品『機動戦士ガンダム』が元になっています。「陸海空」と聞くと奥田民生の「愛のために」を思い浮かべる人が多いと思います。「愛のために」は1994年に発表された楽曲であり、拓さんがユニコーンや奥田民生を好きなことから考えると、同曲がヒントになっていると考えられなくもないですが、インタビューで拓さんははっきりとこう言っています。
 
 
 
 

村松:なんかね、かっこいいものを探しているっていう感覚があるんです。俺たちは作っている立場ですけど、常にかっこいいものを探している感覚があって。例えば車とかは、しっくりくるんですよね。ガンダムとかも。

 
 
 
 
ちなみに、Uta-Net(https://www.uta-net.com/user/index_search/search2.html)というサイトの歌詞検索で「陸海空」を検索してみると29件がヒットするのですが(※近しいところではストレイテナーの「Wonderfornia」にも「陸海空」というフレーズが登場します)、「陸海空 宇宙」で検索すると一気に減ってヒット数は5件になり、ロックバンドの楽曲は「Go My Punks!!!!」以外ありません。
 
 
なぜ「Go My Punks!!!!」の歌詞のモチーフが『機動戦士ガンダム』なのか。次の章で解説したいと思います。
 
 
 
 
 
 
 
 

第五章のポイント
車とガンダムはしっくりくる。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

第六章:「Go My Punks!!!!」と『機動戦士ガンダム』の関係

 
『機動戦士ガンダム』は言わずとしれたロボットアニメの名作です。テレビでは1979年から放送され、再放送はもちろん、続編やシリーズ作品は数多く発表されていますが、ここでは“初代ガンダム”のことを指しています。
 
 
『機動戦士ガンダム』は、地球連邦軍とスペースコロニーに国家を置くジオン公国との戦争が描かれています。作中には“モビルスーツ”と呼ばれる有人兵器が登場し、ガンダムは地球連邦軍が技術の粋を集めて開発した新型モビルスーツです。
 
 
 
 
ガンダム(連邦の白いヤツ)

 
 
 
 
ガンダムはスペースコロニー・陸上・海中(海辺)・宇宙という様々な場所を舞台にし、ジオン公国のモビルスーツと戦闘を繰り広げるのですが、アニメとはいえモビルスーツは万能ではなく、主人公が乗るガンダムでさえ空は飛べませんし、水中ではうまく移動できません。それはジオン公国のモビルスーツも同様で、「水陸両用モビルスーツ」としてゴッグ・アッガイ・ズゴック・ゾックが登場しますが、これらは水中では素早い移動が可能ですが、地上ではあまり早く動けないというデメリットがあります(水陸両用モビルスーツは水の抵抗を減らすためにフォルムが丸い)。
 
 
 
 
ゴッグ(マッドアングラー隊所属)

 
 
アッガイ(カツ、レツ、キッカ、アッガイの上を走る)

 
 
ズゴック(ジムをひと突き)

 
 
ゾック(前も後ろもビジュアル同じ)

 
 
また、黒い三連星によるジェットストリームアタックでガンダムを苦しめたドムはもともと陸戦用であり、宇宙での戦闘に使用するために改良する必要がありましたし(リックドム)、最終話でガンダムと死闘を繰り広げるジオングは、どう見ても宇宙での使用を前提に作られています(脚がない)。
 
 
ドム(ガイア、オルテガ、マッシュ、三位一体)

 
 
ジオング(あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ)

 
 
 
 
更に、初代ガンダムに登場するモビルスーツは空を飛ぶことができません(後のシリーズは観ていないのでわかりません)。劇中ではモビルスーツを空輸するための輸送機(ガンペリー、ド・ダイYS、ガウなど)や、パーツ(Gファイター、Gアーマー)が登場しますが、モビルスーツ単体では飛行能力がありませんでした。
 
 
ガンペリー(カイとミハルの物語)

 
 
ド・ダイYS(グフの土台)

 
 
Gファイター(悲しいけどこれ戦争なのよね)

 
 
 
 
そして『機動戦士ガンダム』の作中では、「宇宙」と書いて「そら」と読む表現が登場します。もっとも顕著な例は、劇場版3部作の第3作『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙(そら)編』です。余談ですが、第1作主題歌「砂の十字架」、第2作主題歌「哀 戦士」、第3作主題歌「めぐりあい」はどれも名曲です。
 
 
 
 

 
 
 
 
長々と『機動戦士ガンダム』について書きましたが、陸海空はのみならず、宇宙(そら)へも行け、風になれる車とは、要するに“真の自由”のメタファーなのです。このバンドならどこへでも行ける。風になれる。彼らがNothing’s Carved In Stoneに見た“希望”の大きさ、“光”の輝きの強さが、歌詞に使われたこれらの言葉から伺い知ることができるのです。そういった言葉のチョイスに、『機動戦士ガンダム』直撃世代の僕はぐっと胸が熱くなったわけです。
 
 
長くなりましたが、次の章では歌詞についてもう少し掘り下げてみましょう。
 
 
 
 
 
 
 
 

第六章のポイント
陸海空&宇宙の全部で
風になれるモビルスーツは
存在しない。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

最終章:「Go My Punks!!!!」で描かれている苦悩と葛藤、そして毒

 
「Go My Punks!!!!」は“真の自由”がメタファーとして描かれているとはいえ、希望が溢れているだけのポップソングではありません。歌詞を読んでいただければわかると思いますが、どこにでも行ける新しい車を手にした彼らが、
 
 

空(から)の車 飛べないままなんだ

そんな当たり前の事が出来なくて

 
 
と苦しみ、葛藤している様が描かれています。
 
 
 
 
この歌詞について、拓さんは『MAZE』のインタビューでこう語っていました。
 
 
 
 

村松:でも歌詞はすごく時間がかかりました。最初にできたとき、歌詞の完成度が高い割に毒が足りないんじゃないかなって。もうちょっと言葉が少なかったんですよ。そういうバランスは気を使いました。単にポップなだけで終わらせたくなかったから。最初に真一に歌詞を見せて「絶妙なバランスのところにいきたいね」っていう話をして、そこから微調整をして。そこは意識しました。

 
 
 
 
更にこの発言は、2015年1月にリリースしたシングル『Gravity』に関するインタビューでのうぶさんの発言とも符号します。
 
 
 
 

生形:ただ明るいものとかただポップなものっていうのが、どうしても好きになれなくて。アルバムの中に1曲あるくらいだったらいいんですけど、ただ明るいものとかポップなものだと、別に俺らがやらなくてもいいんじゃないかっていう気がする。毒が欲しいというか。

 
 
 
 
2人のこの発言から、こういった表現はNothing’s Carved In Stoneというバンドとしての精神性だと受け取れます。しかし、「Go My Punks!!!!」に於ける“毒”とはいったい何なのでしょうか? 前述した“苦しみ”や“葛藤”を、彼らはどのように昇華させるのでしょうか? その答えはサビにありました。
 
 
 
 

言葉の裏に潜んだ悪魔笑わせてさあ笑うんだ

日めくりの裏に芽吹いてる女神笑わせお前も笑うんだ

 
 
 
 
ここで書かれた「悪魔」とは、おそらく「皮肉」や「妬み」など負の感情です。拓さんと僕は以前占い師に「2人とも楽しいか楽しくないかで物事を決めるタイプで、サラリーマンに向いてなくて、“なに考えているかわかんない”ってよく言われる人。だから感性的にはウマが合うし、波長も合ってる」と言われたのですが、2人とも世の中や人をちょっと斜めから見ている性質があり、似ている部分があると僕は思っています。僕は自分の言葉の裏はもちろんのこと、他人の言葉の裏に潜んでいる「悪魔」の存在を常日頃から感じていますし、その「悪魔」に悩まされ、人間不信に陥った経験もあります。
 
 
その「悪魔」を笑わせ、自らも笑う。そう歌い切った表現に、「悪魔」に怯え続けてきた僕は驚きました。
 
 
 
 
また、女神が笑うのはどういうときでしょうか。「勝利の女神が微笑む」という慣用表現がありますが、これは古代ローマ神話に登場する女神・ウィクトーリアが元になっており、ウィクトーリアはVictory(勝利)の語源だといいます。
 
 

ウィクトーリア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 ウィクトーリア あるいは ヴィクトリア(Victoria) は、古代 ローマ神話に登場する勝利の 女神であり、その名は ラテン語で「勝利」を意味する。

 
 
「勝利の女神が微笑む」という表現は、文章をそのまま解釈するならば、「微笑む」の主語は「女神」で、女神に微笑みを向けられた者が勝者となる、という意味です。それに対して「Go My Punks!!!!」では、自らが女神を笑わせ、そしてお前も笑うんだと歌っています。「女神」の微笑みをどこかでずっと待ちながら日々を送っていた僕は、ここでまたまた驚きました。「な、なんてこと歌うんや! わいと同じ種類の人間やと思ってたのに!」と心から感動したのです。
 
 
 
 
 
 
うぶさんも拓さんも「ポップだ」と口を揃えた同曲のサウンドは非常に爽快で明るく、それまでのNothing’s Carved In Stoneのイメージを覆すものでしたが、歌詞には“自由”や“希望”に伴う“苦悩”や“葛藤”が重要なテーマとして描かれています。歌詞の内容をそのまま受け取るのであれば、2015年の時点では彼らは未だ飛ぶことすらできていませんが、それを笑い飛ばそうとする精神的な姿勢を汲み取ることができます。チャップリンは「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である」と言ったらしいですが、未だ飛ぶことができていない現状を明るいサウンドで描き、自らを叱咤激励した「Go My Punks!!!!」は、完璧だと僕は思うのです。
 
 
 
 
 
 
 
 

最終章のポイント
なんてこと歌うんや!
わいと同じ種類の人間やと思ってたのに!

 
 
 
 
 
 
 
 

最後に

 
「Go My Punks!!!!」は2015年に発表された曲ですが、その4年後となる2019年、彼らはSilver Sun Recordsを設立し、車輪の4つある車で出かけました。これは偶然なのでしょうか。
 
 
 
 
 
 

車輪

車輪

車輪

車輪

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『続・たっきゅんのキングコングニー』まとめページ
 
 
 
 
 
 
 
 
 

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj