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10-FEET 『Life is sweet』

2009年7月、バンドが企画した音楽イベントとしては異例の規模、出演者やスタッフも含めて参加した全ての人達が最高のモチベーションと最高のテンションで開催され、大成功を収めた“京都大作戦2009”。そしてその直後にリリースされた“今”の10-FEETを象徴するような圧倒的熱量を誇るシングル『super stomper』。オーディエンスと最も近い視点で、オーディエンスをどこまでも遠くへぶっ飛ばしてくれるバンド10-FEETがついに待望のアルバム『Life is sweet』を完成させた。たくさんの経験を積み、様々なノウハウを蓄積しつつ、常に“自分たちらしさ”を忘れずに走り続けてきた3人が後ろをまったく振り返ること無く命綱をぶった斬って全てを注ぎ込んだ名盤だ。
 
 
 
 

アルバム『Life is sweet』に至るまで

 
 
 


「最後まで焦らずに取り組むことが出来たんです。だからといって常に冷静だったかというとそういうわけでもなく、最後まで勢いがあった」


 
 
 
●ここ最近は毎月取材させてもらってますけど、今回は不本意ながら表紙ということで。
 
KOUICHI:ありがとうございまーす!
 
●7月に“京都大作戦2009”があり、直後にシングル『super stomper』をリリースされましたが、懲りずに今度はアルバムを出すらしいじゃないですか。
 
TAKUMA:はい。
 
KOUICHI:クッククック~♪の日(2009/9/9)に出ます。
 
●今回のアルバムは『Life is sweet』といタイトルですが、、この“Life”はJUNGLE★LIFEの“Life”という認識で良いんですよね?
 
KOUICHI:はい。
 
●このアルバムまでの流れを振り返ってみると、シングル『1sec.』とシングル『super stomper』は思い切り攻めているシングルで、正直なところ「キャリアもかなんりあるのに、まだ攻めるのか?」と驚いたんです。
 
KOUICHI:はい。
 
●で、今回のアルバム『Life is sweet』を聴いて更に驚いたんです。今作は…
 
(スタッフが牛丼を3人の前に並べ始める)
 
3人:いただきまーす!
 
●10-FEETのスタッフは本当にすごいですよね。うちの取材の時、絶対にご飯買ってくる。
 
KOUICHI:いいですよ。答えますから何でも訊いてくだモグモグ。
 
●個人的な話で恐縮なんですが、僕は圧倒的な音楽やライブに触れたら無口になってしまうんです。圧倒されてボーッとしてしまうというか。だから“京都大作戦2009”が終わった時、すぐにメンバーのところに行って「良かったやん!」とか言えなくて。一人客席でボーッとしていたんです。
 
KOUICHI:アハハハ(笑)。そうやったんや(笑)。
 
●で。前号の取材の時にマスタリングスタジオにお邪魔したじゃないですか。その日は今作『Life is sweet』のマスタリングの日で、たまたま居合わせたということでアルバム全曲を3人と一緒に聴かせてもらって。
 
TAKUMA:そうでしたね。
 
●その時も、聴いた直後は圧倒されてボーッとしてしまったんですよね。すぐ取材なのにどうしようかと焦っていた(笑)。
 
TAKUMA:表面上のテンションとか楽曲の表現というのは前アルバム『VANDALIZE』とそんなに変わらなくて共通点も多いんですけど、でもなんか根本的な何かが違う気がするんでよね。エンジンが違うというか。
 
●V8がV10になった、みたいな?
 
TAKUMA:うん。でもV8がV10より劣っているという話じゃなくて、パワーとかスピードとか、何か隔たってる場所が違う気がするんです。
 
●それは作っているときの印象?
 
TAKUMA:いや、振り返ってみてですね。
 
●去年の秋、初のアメリカ西海岸ツアーに行ったじゃないですか。今回はあそこがスタート地点だったりするんですか?
 
TAKUMA:いや、スタートという意味では“京都大作戦2007”くらいからですね。シングル『STONE COLD BREAK』とシングル『goes on』あたりというか。
 
●はいはい。
 
TAKUMA:シングル『STONE COLD BREAK』は要するにアルバム『VANDALIZE』の始まりじゃないですか。『VANDALIZE』では、無意識で本能のまま音楽を楽しみ、音楽に震えて、音楽に酔っ払って、ライブをすることと曲を作ることをきっと学んだんですよ。で、あの時に学んだことを思いきりやったのが今回のアルバムなんです。
 
●そういうことか。
 
TAKUMA:だから今回は“何かを学ぼう”ということはしていないんです。もちろんより素晴らしい音楽を作ろうとはしていたけど、横に広げるとか、新しいことをしようということはそんなにしていなくて。
 
●確かに聴けばその話はよくわかる。
 
TAKUMA:だから新しい球を磨くというより、得意球を片っ端から全部思い切り投げていった感覚ですよね。なおかつ、そうしようと意図的にやったわけでもない。
 
●以前、アメリカ西海岸ツアーから帰ってきて創作意欲がすごく湧いているという話があったじゃないですか。で、その時にTAKUMAくんが「特にビジョンが見えた上で”じゃあこういう曲を作って、次はこういう曲が必要で…”という感じではない。ビジョンが見えた上で曲を作ったほうがいいとは思っているけど、最近は前ほど頭が固くない」と言っていて、今作はそういう曲作りのモードだったんでしょうか? 頭で考えて作るというわけではなくて、身体で作る、みたいな。
 
TAKUMA:そうですね。さらに今まで頭を使ったりしてきたことが原動力になっているということを明確に感じています。
 
●というと?
 
TAKUMA:アルバム『4REST』、アルバム『TWISTER』、そしてアルバム『VANDALIZE』。それぞれ鍛えている部位は違うけど、あの3枚というのはそれぞれ突出しているところが違う気がするんです。頑張って幅を拡げたり、新しいことをやりつつも、ライブ感と音楽の楽しさとメッセージを大事にして3枚を作りことが出来たからこそ、今回は“アルバム作り”という事自体にあまり力まなかった。「とにかく気にせんでええからとりあえず思い切り投げてみて」と言われて投げた時に、ちゃんと球が配球されていた感じ。ストレートだけじゃなくて、色々な球を思い切り投げることが出来たんです。
 
●収録曲の制作はいつ頃から始まったんですか?
 
TAKUMA:去年の12月くらいですね。
 
●ということは「1sec.」の制作あたりから。
 
TAKUMA:そうですね。ただ当時はアルバムを意識していなかったと思うんですよね。その頃から今作に収録される曲は作られていっているんですけど、「1sec.」に関しては作りたくて仕方がない状態で作ったし。「super stomper」のときもそこしか見ていなかった。
 
●「super stomper」は“「1sec.」超え”がテーマでしたよね。
 
TAKUMA:うん。各シングルに完全に集中できていた。もちろんアルバムを出すことは見据えていたから、その周辺で「なるべく多く曲を作れたらいいね」とは言っていましたけど、アルバムを意識するまでもなくやりたいことがいっぱいあって。しかもその“やりたいこと”というのがややこしいものじゃなかったんですよね。その結果として曲は結構たくさん出来たし、今回はボツになった曲もいっぱいあったくらいで。
 
●あ、マジですか。『TWISTER』くらいまでは曲が全然出来なくてヒーヒー言いながら苦しんでいたのに?
 
KOUICHI:こいつホンマ一言多いな。
 
TAKUMA:(性根が)腐敗しとる。
 
●要するに今作は曲作りも含めてスムーズだった?
 
TAKUMA:そうでしたね。弾き語りで大雑把なビート感とコードとメロディで1コーラス的な原曲をいっぱい作って、その中から選ぶときも「これがいい」というのがメンバー内でほぼ一致していて。そこからみんなが持っているイメージでアレンジしていくという。完成までの流れもすごく勢いがあったし、ほとんどブレずに作ることが出来た。
 
●なるほど。
 
TAKUMA:元々曲が持っていたチャームポイントというか、面白い部分がどの曲もわかりやすいものばかりで、そこを活かすのが僕らの得意分野でもあった。そこに対して“ありきたりにならないように”とか無駄なことも考えなかったし。
 
●「こういう曲は今までもあったから」みたいな考えも無く?
 
TAKUMA:うん。レコーディングするにあたって、そういうことはあまり誰も言っていないですね。勢いが出た大きな要因の一つはそれかもしれない。
 
●なるほど。
 
TAKUMA:でも今まで散々拡げたり新しいことに挑戦してこなかったら出来なかったことだと思うんです。
 
●意識はしなかったけど、今までの経験が活きたと。
 
TAKUMA:後付けでそう思ったんですけどね。勉強したり鍛えたりしたことがあったからじゃないかな。それに常に“10-FEETっぽさ”というのを中心にして枝葉を伸ばしたり幹を鍛えてきたからこそ、今までの経験や蓄積が何らかの形でこのアルバムに出ていると思う。
 
●端から見ていると、中止になった“京都大作戦2007”くらいから全部が繋がっている感じがするんです。活動とか、作る曲とか、1つ1つのライブとかも含めて。“予想がつく”という話ではないんですけど、10-FEETを見ていたら納得できるというか、全部繋がっている感じがします。
 
KOUICHI:よく考えたら結構ライブも観てくれていますよね?
 
●メジャーデビューに頃からずっと観ているし、全作品について取材させてもらってますからね。でも毎回驚きがあるんですよ。「1sec.」の破壊力にも驚いたし、「super stomper」は攻めに攻めている姿勢に驚いた。と思ったら、今回のアルバムはわけもわからないくらいに圧倒されて。さっき「“予想がつく”という話ではない」と言いましたけど、活動を見ていて“次はこうなるのかな?”という期待があったとして、常にこちら側が抱く期待以上のものを見せられている気がするんです。そういうことは考えて出来るものじゃないと思うんですよね。前号の“京都大作戦2009”に関するインタビューでも「“こういうライブを作るんや”じゃなくて“こういうライブにするんや”という感覚で一生懸命ライブしました」と言っていたじゃないですか。そういう感覚が今回のアルバムにも滲み出ている気がする。マスタリングスタジオで一通り聴かせてもらって、“あのシングル2枚の後にまだこれだけのパワーを持っていたのか”と思ったらすごく嬉しくなった。良かったです。
 
TAKUMA:では、読者の皆さんに向けてメッ…
 
●まだインタビューは終わりじゃないんですけどね。
 
TAKUMA:「夏終わりくらいの時期にもし間に合ったらアルバムを出そうね」という話で進んでいたんですけど、実際のところはスケジュール的にシビアだったんですよ。スケジュール的な問題で8曲とか9曲くらいのボリュームになるということは僕ら的ににはナシだと考えていて。
 
●はい。
 
TAKUMA:だから「絶対に間に合わせてくれ」と言われていましたし、自分たちも間に合わせたかったんですけど、でも最後まで焦らずに取り組むことが出来たんです。だからといって常に冷静だったかというとそういうわけでもなく、最後まで勢いがあった。ずっと集中していたし、1曲作っている間に他の曲について“あれどうしたろかな~?”という感じで楽しんでいたし。
 
●過去のアルバム制作と比べても違う?
 
TAKUMA:うん。今までの制作は勢いや音楽を楽しむ傍らで、“次はどんな筋肉が必要かな?”ということをずっと考えていた気がする。でも今回は“新しい筋肉”という部をまったく考えることが無くて。
 
●あ、そうなんですね。
 
TAKUMA:だから“音楽的な横の拡がり”という部分は、今回よりも『VANDALIZE』のほうがあるような気がするんです。今回はそういう思い切りがありましたね。
 
 
 
 

10-FEET史上初が満載の最高傑作アルバム

 
 
 
 
 


「僕、何の前触れもなく、ライブで新曲を演るということはしないんですよ。でもなんとなくふわ~っと“やってみようかな”と」


 
 
 
●今作『Life is sweet』は最初から息をつく暇もなく最後まで攻めているじゃないですか。その中でも印象的なのが“京都大作戦2009”の1日目のアンコールでTAKUMAくんが少しだけやったM-3「風」で。初めて聴いた時にグッと来たんですよね。
 
TAKUMA:それは京都で聴いた時の話ですか?
 
●いや、京都じゃなくて宇治で聴いたときの話です。
 
TAKUMA:…宇治は京都ですけどね。
 
●初めて聴いてグッと来たので、アルバムを聴いた時に“あの時の弾き語りの曲だ”とすぐわかったんですよね。それくらい力があるというか、一度聴いたら忘れられないような浸透力があるなと。
 
TAKUMA:この曲、元々は『VANDALIZE』に入る予定だったんです。
 
●え? マジで?
 
TAKUMA:はい。あとM-9「under the umber shine」とM-11「Mr.bullshit」もそうです。『VANDALIZE』の制作の時、この3曲は曲のイメージとアイデアがあったんですけど、スケジュール的に完成まで持っていけなかったんです。
 
●そうだったんですね。
 
TAKUMA:「under the umber shine」と「Mr.bullshit」は『VANDALIZE』の時にある程度見えていたんですけど、「風」はほとんど完成像が見えないままの状態だったんですよ。みんな何も見えないまま、僕の頭の中だけでひとり立ちしていて、時間切れになった。
 
●はいはい。
 
TAKUMA:この楽曲は乗せるメロディによってゆっくりしたイメージの曲にもなるし、ロックしている速いイメージの曲にもなるという、どちらにも転がり得る曲だったんですよね。だからめっちゃ時間がかかると思っていたんですけど、今回取りかかってみたら歌詞とか歌詞の乗りとかニュアンスとかはめっちゃスムーズに出てきて。結果的に『VANDALIZE』を作っていた時に僕が頭の中だけで思い描いていたイメージとバッチリ合う形になったんです。
 
●なんかこの曲は不思議なんですよね。醸し出している雰囲気とか刺さってくる言葉とか。一度聴いたら忘れられない感じ…陳腐な表現で例えるなら“キャッチー”ということかもしれないですけど、もっと強烈な雰囲気がある。焼き付けられるというか。
 
TAKUMA:僕、何の前触れもなく、「今度出る新曲です」とかの説明もなくライブで新曲を演るということはしないんですよ。
 
●あ、たしかにそうですよね。
 
TAKUMA:“京都大作戦2009”の何日か前、突発的に僕が「この曲出来れば演りたい」と言ったんですよ。当日の成り行きでしたね。
 
●歌いたかった?
 
TAKUMA:あの日のライブ中に“よし、演ろう”とか思っていなかったし、もっと言えば“演らないでおこう”くらいに思っていたんですよ。
 
●でもアンコールでステージに出てきて少しだけ演ったのは?
 
TAKUMA:なんとなくふわ~っと“やってみようかな”と。グダグダでしたけどね(笑)。
 
●確かに(笑)。でもなんか鮮明に覚えています。
 
TAKUMA:あと、これは他の雑誌の取材でも言っているんですけど…。
 
●え? 他でも言っているんですか?
 
TAKUMA:はい。だから同じこと載りますよ。
 
●ええー!
 
TAKUMA:「風」とM-5「STRIKE!!」のベースがめっちゃ良いんです。出来た時からめっちゃ言ってるんですけど。
 
●ベース頑張った?
 
NAOKI:この2曲はかなり頑張りましたよ(笑)。最初に曲が出来た時点で“この曲はベースにめっちゃ時間かかるな”というのと、“これはすぐにイメージ出来るんじゃないかな”というのに分かれるんですよ、自分の中で。
 
●それは前から言っていましたよね。
 
NAOKI:で、「風」と「STRIKE!!」はざっくりと曲が出来た時点で“これは時間がかかるぞ”という感じがあったんです。
 
TAKUMA:この2曲のベースラインを聴いていたら、「LICENSE」とか「SHOES」とか「log」みたいなスカとかレゲエの要素が入った楽曲から全部栄養を貰って来てポーン! と出たみたいな感じがするんです。
 
●なるほど。
 
TAKUMA:いつもそういうベースラインを作るときってイチから…なんかアイデンティティごと作るような感じだから、出来たらツヤがあってピカピカな印象があるんです。でも今回のベースラインはなんかツヤ消しぽくって、渋いんです。
 
●ああ~、なんとなくわかる。
 
TAKUMA:いつもはベースの中にちょっとギターっぽいトリッキーな要素が入って、“NAOKIっぽいな”と感じることが多いんですけど、この2曲は“ベースっぽいな”と。
 
●“時間がかかるぞ”と思っていて苦労はしたけど、結果として良いグルーヴが出たと。
 
NAOKI:そうですね。特に「風」の方は、今TAKUMAが言っていたギターっぽいトリッキーな要素を入れてしまうと、悪い意味で年齢が下がると思ったんですよ。
 
●ふむふむ。
 
TAKUMA:ああ~、そうや。何年後かのNAOKIのみたいなベースフレーズやもんな(笑)。
 
KOUICHI:アハハ(笑)。
 
NAOKI:俺は元々ベースっぽいベースが苦手で、幼いベースが得意だったんですよ。渋いベースというのがずっと苦手だったけど…。
 
●味があるベースが弾けるようになった?
 
NAOKI:うーん、弾けるようになったというよりも、この曲に関しては弾かざるを得なかった(笑)。
 
●アハハ(笑)。でもそれがハマっているということは、意識している/していないに関わらず、今までの経験が実っているということですよね。
 
TAKUMA:めちゃめちゃハマっていると思いますよ。ベースがもうセピア色みたいやもん。ピックで弾いているけど、指みたいな温かさが出ているし。
 
●それは感じた。というかピックだったんですか?
 
TAKUMA:NAOKIは指弾きはしないので。
 
NAOKI:うん。
 
●指弾きには興味もない?
 
NAOKI:興味はあるけど、しない。
 
●出来ない?
 
NAOKI:いや、しない。
 
●技術的に出来ない?
 
NAOKI:しないです。そこを間違えるとだいぶニュアンスが違います。
 
●出来ない?
 
NAOKI:出来ない(笑)。
 
●アハハ(笑)。
 
TAKUMA:でもあのベースライン、めっちゃ前に出てきますよね。でも他の音に対して邪魔してないという。多分それが“ベースっぽい”ということなんですけど。
 
●そういうところを含めてこれは名曲ですよね。
 
KOUICHI:シャワー浴びながら気がついたらこうですもん。(と言って口笛で「風」のメロディを吹き始めてる)
 
TAKUMA:という感じで、無意識に口ずさむくらいですからね。
 
●今の口笛、ちょっとメロディ間違えてましたけどね。
 
KOUICHI:アハハハ(笑)。
 
●10-FEETの曲は構成が複雑で、どうやって作ったのか想像がつかないことが前からよくあったのですが、M-1「What’s up?」はその極みだったんです。すごく勢いを感じたんですけど、どうやって作ったのかが想像つかない。
 
TAKUMA:この曲は3コードの曲調じゃないですか。3コードを覚えたての時ってブワーッと曲がいっぱい出来たんですよ。もう楽しくて仕方がなかった。
 
●ふむふむ。
 
TAKUMA:で、「What’s up?」はドロップDチューニングなんです。「super stomper」もそうなんですけど、ドロップDでまだそんなに曲を作っていないんです。今まで使っていた一番下のコードはEなんですよ、レギュラーの。それ以下の音が2つある中で曲を作るのがめちゃくちゃ楽しいんです。
 
●なるほど。
 
TAKUMA:もうリフだけで曲が出来ていくくらい、今はドロップDが気持ちいいんです。だからレギューラーでやっていたようなリフを今ドロップDで弾いたら別の曲みたいに出来上がっていくし。そこを遠慮なくやっていますね。「What’s up?」はリフが出来て、その次のコードが1個出来た時点で“もうこれでいい”と思ったんです。
 
●そういうことか。
 
TAKUMA:A・B・C・サビというのがあまりしっかりしていない曲にしたほうが、リフの勢いを減衰させることなく走りきれると思って。
 
●ということはあまり考えることなく出来上がった?
 
TAKUMA:というか、逆に考えないようにしました。
 
●今まではパーツをいくつか組み合わせて曲を作るパターンが多かったじゃないですか。でも「What’s up?」はそういう作り方じゃなかったんですね。
 
TAKUMA:そうですね。むしろ後からパーツを消していった感じ。音を減らす度に誰かが「これも無いほうがいい」とか言って。結果的にKOUICHIのフィルとかオカズがいっぱい無くなりました。
 
●アハハハ(笑)。
 
KOUICHI:笑い過ぎや。
 
TAKUMA:減らしたパーツはほとんどがドラムのおいしいところだったんです(笑)。
 
KOUICHI:一生懸命録ったのに…。
 
TAKUMA:ベースはいつもギリギリセーフで残って、ドラムだけアウト(笑)。
 
●それでこんな名曲が出来たんだ(笑)。
 
TAKUMA:消した時、たまたまKOUICHIはいなかったんですよ。で、次の日のKOUICHIがスタジオに来て、その曲を聴いて「あれ? 無くしたん?」「うん、ご、ごめんな」って。それでめっちゃ曲が良くなったんです。NAOKIも「これしかないやろ!」って(笑)。
 
NAOKI:エンジニアさんも「絶対こっちのほうがいい!」って(笑)。
 
●要するに引き算の曲だと。主にドラムの。
 
TAKUMA:結果的にそうなりましたね。
 
KOUICHI:かなり引かれた…。
 
●でも今までの経験が活きているからこそ、最初の段階でしっかりとした曲の骨子が出来ていたということですよね。
 
TAKUMA:本当にそうなんですよ。減らしていったけど、一番最初に出来た時から曲の印象は全然変わっていないんですよね。レコーディングの最後に録った曲で時間的にもかなりタイトだったんですけど、いい感じになりましたね。
 
●あ、一番最後に出来た曲なんですね。
 
TAKUMA:厳密に言うとM-7「F.E.E.T」が一番最後に出来た曲なんですけどね。スタジオ退出2時間前に着手して完成した曲。
 
●「F.E.E.T」は曲と言っていいんですか?
 
TAKUMA:ちょっとだけ言葉に気をつけてもらっていいですか?
 
KOUICHI:アハハハ(笑)。
 
●でもこの曲は掛け声と手拍子と足踏みと…何をしたかったのかはすごくわかりますけど、なんだこれ? と思いました。
 
TAKUMA:ずっと前からこういう曲を作りたいと言っていたんです。何かあった時にオーディエンスと一緒にウワーッと出来るものがあったらいいと思っていたし、練習したら一人でも出来るんですよ。キック、スネア、声で。
 
NAOKI:でも実際にやってみないとわからないですよね、難しさが。
 
●僕やってみましたよ。難しくて出来なかったけど。
 
NAOKI:でしょ? キックが食っているんですよ。
 
TAKUMA:キックが食っているというのもすでに難しいですからね。
 
●キックが食っているというのもすでに難しいというのも難しいですからね。
 
3人:…。
 
●その次に収録されているM-8「joker stomper」もびっくりしたんですけど、この曲は「super stomper」と歌詞が同じなんですよね。
 
TAKUMA:そうそう。「歌詞を使いまわそう」というコンセプトで作ったんです。というか、「joker stomper」のほうが先に出来あがったんです。
 
●え? マジで?
 
TAKUMA:うん。最初は「joker stomper」をシングル『1sec.』に入れる予定だったんです。でも4曲も入ったらちょっとお腹いっぱいになるかなと思って。
 
●あ、そうだったんですね。こっちが先というのが意外。
 
TAKUMA:「super stomper」が最初出来かけた時に、「joker stomper」の歌詞でラップしてみたんですよ。そしたらドッカーンとハマったからこれでいこうと。で、「super stomper」が出来上がったあとに「joker stomper」を聴いてもやっぱりかっこいいと思ったから「裏super stomper」みたいな感じでアルバムに入れたら面白いかと思って。
 
●ライブで聴きたくなる曲ですよね。あと、M-2「チャイニーズ・ヒーロー」もおもしろかった。歌詞で何故か“ジャッキー・チェン”と言っている曲。
 
TAKUMA:この曲はNAOKIが高い声出るからその感じで思い切り歌って、オールドスクール、ハードコアパンクをやったらどうなるか、というアイデアが始まりなんです。
 
●なるほど。
 
TAKUMA:今までは僕がハードコア系を歌ったらNAOKIがメロを歌うというのがパターンだったんですけど、NAOKIがハードコア系を歌う曲は出来ないのかなと。で、NAOKIのヴォーカルラインのクセとか声が一番張るところとか、めっちゃ細かく研究して作ったんです。
 
●ああ~、なるほど。NAOKIくんとTAKUMAくんのヴォーカルのコントラストがすごくハマっていますよね。
 
TAKUMA:うまくいきましたね。
 
●この曲は全部英語詞じゃないですか。でもサビはよく考えたら日本語詞の方が絶対にハマるメロディなんですよね。そこを英語で歌うことによって出る独特の雰囲気が良かった。
 
TAKUMA:今言われて思いました。そうですね。メロディラインがすごく日本語っぽい。
 
●ただ、あそこを日本語にしたら全然曲の印象が変わると思うんです。
 
TAKUMA:変わる変わる。これは英語にして正解だと思うんですけど、日本語がバシッとハマるキャッチーなメロディではありますよね。
 
●うん。そのハマり具合が良かった。
 
TAKUMA:それに多分ビート感で言うともっと速い曲は他にもあると思うんですけど、この曲のスピード感は最速かもしれないですね。そういう感じのきょくになったと思います。
 
●ヴォーカルが目まぐるしく変わるし、展開も速いですからね。ところで速いと言えばM-13「back to the sunsset」は10-FEET史上最高速らしいですね。
 
KOUICHI:もう速いどころじゃない。
 
NAOKI:最初のスネアのロールなんて、もう線になってる(笑)。
 
●こういうアルバムの終わり方って良いですよね。今の10-FEETを象徴しているような気がする。
 
TAKUMA:僕ら、ライブはだいたいの曲が速くなるんですよ。
 
NAOKI:そうそう。だからライブはこれよりも速くなると思います。
 
●え? これよりも?
 
TAKUMA:だからライブではKOUICHIが消えると思います(笑)。
 
●アハハ(笑)。BPMだとどのくらいなんですか?
 
NAOKI:多分230前後くらいですね。
 
●すごい(笑)。
 
KOUICHI:今回のアルバムは全体的にスピードが重要でしたね。
 
TAKUMA:ドラムはそうやな。年取っているのにどんどん速くなってきてる(笑)。
 
●でもメロディもすごくキャッチーだし、Bメロも一瞬横ノリになるじゃないですか。あの意外な展開がすごく面白かったし、速いという印象をまったく受けなかった。
 
TAKUMA:あのBメロは肝だったんですよ。デモの段階から“最速”というのと、“Bメロで違うバンドみたいな感じを出す”という2つのテーマがあったんです。イメージとしては、ファストコアのバンドからいきなりセルジオ・メンデスみたいな人が出てきて、またファストコアに戻るという感じ。なおかつ、歌は普通の速さで聴こえる感じにしたかったんですよね。
 
●確かに歌は普通の速さですよね。それも速いという印象を受けなかった理由の一つだと思う。
 
TAKUMA:普通の速さで聴こえる歌の後ろで、ドラマーが想像もつかないような顔をしているんです(笑)。
 
●アハハ(笑)。
 
NAOKI:Bメロもこのテンポですることじゃないですしね(笑)。
 
KOUICHI:頑張るしかないです。
 
 
 
 

今までがあったからこその変化

 
 
 
 
 
 


「最初のスタート地点でもあり、最終目標でもあり、そのゴールは無いものなんだと思って年老いていきながら音楽をやっていけばいいんじゃないかな」


 
 
 
●ところで歌詞についてですが、特に「風」とかから今まで以上の説得力みたいなものを感じたんです。”嫌なやつの方が純粋さを知っているのさ”という部分とか。今回のアルバムで、歌詞はどのように考えたんでしょうか?
 
TAKUMA:歌詞を書く時に大事にしていることは、まず“共感”なんです。色々な人の曲を聴いたり歌詞を見て感動をしたとき、“この人なんで俺の気持ちわかんねん?”という気持ちに散々させられてきたんです。“この人が歌詞を書いていた時に思い浮かべていた映像、多分俺、同じのが浮かんでいるわ”みたいな。そういう“共感”があって初めて、それ以外の誰もが歌っているような言葉が入ってくると思うんです。
 
●うんうん。
 
TAKUMA:それが無ければただのありふれた言葉になると思うから、「ありがとう」という言葉一つにしても、なにかでまず共感がないと、“この人の「ありがとう」は実は「ごめんなさい」やったんやな”みたいな解釈をしてもらえないと思うんですよね。
 
●そうですね。
 
TAKUMA:そういうことを僕は何年もかけて結構積み上げてきたと思うんです。で、そういう時期に「風」みたいな歌詞がフッと出てきて、これを歌う決意と覚悟があったし、今だったら伝わるかなと思ったんですよね。
 
●なるほど。
 
TAKUMA:これもずっと言ってきたことですけど、強い人が弱い人に「強くなれよ」と言ったところで「あんたは強いしいいやん」で終わってしまうんですよ。そうじゃなくて、本当に突き刺したり分かってもらえたり、染み込んでほしいから常に弱いまんまでいたし、今でもそこは持っているんですけど、ちょっとだけそこから踏み出したほんの一部が「風」だと思うんです。
 
●ああ~。
 
TAKUMA:あと「What’s up?」の一部、“深い理解なんて無いぜ”という一文も自分ではそう認識しているんですよね。“深い理解なんて無いよな~”というキャラはいても、“別に理解されないけど俺は頑張る”というキャラは今まで無かったんです。
 
●言われてみれば確かにそういう視点は今まで無かったかも。
 
TAKUMA:そこまで多分伝わらないと思うんですけど、自分的にはすごく勇気のいる表現なんですよね。
 
●僕はアルバム全体から“つべこべ言わずに進んでいく決意”みたいなニュアンスを感じたんですよね。歌詞というより曲調とかから。
 
TAKUMA:ああ~、そうですね。「What’s up?」みたいな節々のちょっとした言葉からというより、全体の曲調とか勢いにそういう心境の変化は出ているかもしれないです。
 
●うんうん。
 
TAKUMA:これからもずっと続いていくんですけど、いかに下世話じゃなくてかっこいいバンドでいるかというのが、最初のスタート地点でもあり、最終目標でもあり、そのゴールは無いものなんだと思って年老いていきながら音楽をやっていけばいいんじゃないかなと。現時点ではそう思います。
 
●いいアルバムだと思います。ではKOUICHIくん、最後に何かおもしろいことを言って締めてください。
 
KOUICHI:えー、本当にすごくいいアルバムが、メンバー、事務所、メーカー、含めて、みんなが思っているので、是非、買って、聴いて、ライブに、足もとが、悪い中、来ていただいて、本当に、ありがとうございます。と書いておいてください。