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10-FEET 『STONE COLD BREAK』

アルバム『TWISTER』を昨夏にリリース後、ライブやイベント出演で精力的に活動を続ける10-FEET。彼らの発するサウンドやライブは既定の枠を超え、唯一無二の絶対的空間を作り出している。日々苦悩し、「僕はダメだし、女々しいやつですよ」と自らのコンプレックスを自覚する彼らだからこそ出来ること。今作は、不器用な彼らにしか出せない温かさが詰まったシングルだ。
 
 
 
 


「大丈夫大丈夫、わかるわかる。俺もそうやで」


 
 
 
●昨年8月に『TWISTER』をリリース、年明け1月にはPV集DVD『OF THE ビデオ, BY THE ビデオ, FOR THE ビデオ!』をリリースし、去年から今年にかけてずっとツアーやフェスで忙しかったと思いますが、そんな中、シングル『STONE COLD BREAK』が出るんですよね。
 
TAKUMA:ライブは相変わらずずっとやっているんですけど、制作がいつもギリギリなんですよね。今回も押しに押して。
 
●最近はリリースごとに「ギリギリでした」という聞くんですが、おそらく自分たちが曲を生み出すときのOKラインが毎回上がってきているからという理由だと思うんです。それがいやらしい話じゃなくて”自分たちが次にどういう一歩を踏み出すか”ということに、今まで以上に神経を使っているんじゃないかなと。もともとそこにはすごく神経を使うバンドだと認識しているんですが、だからこそ制作時間もだんだん長くなってきているという。
 
TAKUMA:うんうん。
 
●勝手な憶測ですけど、おそらく曲がなかなか出来ないと思うんですよ。”ネタがない”ということではなくて、今までの積み重ねが自分たちの中にあるからこそ”今までにない”というハードルが高くなり、それまで以上に考えに考えないと自分たち自身でも納得がいかなくなってしまっているのかな、と。
 
TAKUMA:…それ、僕が言ったことにしてもらっていいですか?
 
●あ、わかりました。上手く書いておきます。
 
TAKUMA:その辺はいつものようにうまくお願いします…。でも正直、やっぱり考えますよ。ぶっちゃけ、やりたいことというのは本当にたくさんあるんです。その時にやりたいことを音源として出していくバンドもいると思うんですけど、例えば世界的に有名なアーティストであってもどのタイミングでどういう雰囲気の曲を出すかによって、そのアーティストのイメージがガラッと変わってしまう。そういうことを考えると“お客さんに媚びている”というように取られがちだけど、自分たち自身を素晴らしいアーティストにするためには、“どう見せていくか”ということはしっかり考えないといけないことだと思うんです。
 
●はい。
 
TAKUMA:それは商業的な意味だけじゃなくて、芸術的な観点から見ても。そういう意味では、最近はすごく苦しんでいます。
 
●やっぱりそうだったんですね。
 
TAKUMA:例えばバンドで言うと、“バラードの曲をリリースした後は、勢いのある曲でお客さんを安心させよう”という考え方はよくあることだと思うんです。でも10-FEETの場合は、“前はこうだったから次はこうしよう”という考え方も大事ですけどそれよりも、“10-FEETは現時点でこういうものを見せたい”というものを出してきた。今回の表題曲はそういうつもりで攻めている曲を選んだし、ただ自己満足だけにはならないでおこうと思ったし。
 
●なるほど。そういう過程を経た「STONE COLD BREAK」ですが、10-FEETの硬派な部分がすごく出ている曲ですよね。“激しい”ではなくて“硬派”という感じなんですけど、こういう曲をシングルにすることによって“バンドとしてずっとやっていく”という強い意志を感じたんです。
 
TAKUMA:まだ自分では全然客観的に聴けていないんですけど、10-FEETらしさを意識しすぎじゃないかな? いろんな要素を詰め込んでいるので。
 
●いや、過剰な感じはしないですよ。この曲で“10-FEETはバンドなんだ”ということがすごくわかる気がする。
 
TAKUMA:最初は2曲目の「a new frontier」を表題曲にしようと言っていたんですよね。
 
●良い悪いの話ではなくて、『TWISTER』からの流れを一番わかりやすくするには「a new frontier」が適していたのかもしれませんね。
『TWISTER』にはNAOKIくんのメインヴォーカルの「the guide」という曲がありましたけど、「a new frontier」はその流れを汲んだウインヴォーカルの掛け合いが特徴的な曲だし。
 
TAKUMA:うん。自分たちの強力な武器の一つだと思うので、ツインヴォーカルは今後も活かしていきたいと思っているんですけどね。
 
●10-FEETはライブを活動の中心に据えたバンドじゃないですか。だからライブを強く感じることが出来る「STONE COLD BREAK」が表題曲になったことで、僕はバンドの意志を感じたんです。
 
TAKUMA:たしかに「STONE COLD BREAK」はライブで演っててめっちゃ楽しいんですよ。作った時に「この曲はライブで映えるな」というのはみんな感じていたんです。最近リリースした曲の中には、ライブでガンガンにのれる曲が少なかったというのももちろん理由の一つなんですが。
 
●なるほど。
 
TAKUMA:でも今回はシングルというより、最初からアルバムを作る勢いでやってきたので、自分たちでは(表題曲を)選べないというのが正直な気持ちですね(笑)。合宿でパーツも含めて候補曲を20曲くらい作ったし、この3曲には全部満足している。
 
●もしかしたら「STONE COLD BREAK」は意外性が無いという意味で「えっ?」となる人もいるかもしれませんが、でも逆にこういう曲は息が長いと思うんです。
 
TAKUMA:そういえば表題曲どれにしようか考えている時に、マネージャーのMASAが「果たして2年後3年後にその曲を演っているか。10年後にその曲を演っているかな」とボソッと言ったんです。それを聞いてドキッとしたんですよね。「その選び方は間違えてないな」と。
 
●たしかにそういう曲だと思う。
 
TAKUMA:表題曲になっていないけど、ずっとライブで演っている曲ってあるじゃないですか。そういう曲を選べば良いんですよね、きっと。いつもシングルとか考えたら肩に力が入って「少しはヒットすることも考えないとアカンのかな」とか思うけど、今回はそれ以外の部分でかなり考えましたね。
 
●あと歌詞についてですけど、「STONE COLD BREAK」は全編英語詞ですよね。内容的には世の争いごとについてとか、結構重いことを歌っていますけど、これはわざと英語詞にしたのかなって。
 
TAKUMA:僕らは重いことを軽やかに明るく、でもグッと気持ちを込めて歌いたいんですよ。だからこの曲は日本語で歌いたいのは山々なんですけど、サウンドがそこまでポップという感じではないから、日本語で歌ったら重さだけが出て逆に伝わらなくなると思って。
 
●うん、そうですね。
 
TAKUMA:英語詞にした理由としてはそれ以外に、まずサウンド的にかっこよくて説得力がないとダメだと思っていて。そうやって組み立てたサウンドが英語詞を呼んでいたということもあります。10-FEETはおっさん臭いことを前から歌っていますけど、それは若々しいサウンドがあるからこそ成り立つことだろうし、“かっこいいと感じるサウンド×おっさん臭い歌詞”というような、掛け算するパーツのチョイスは間違えてはいけないと思っているんです。
 
●僕も最初は歌詞とか気にせずに聴いていたんですよ。で、ふと歌っている内容が気になって英語詞をじっくり読んでみて「うわっ!」と(笑)。「めっちゃ重たいこと言ってる!」とすごく突き刺さってきたんですよね。それは全編英語詞の「a new frontier」も同じだったんですけど。
 
TAKUMA:だから歌詞の日本語訳もブックレットに乗せるつもりなんです。英語で歌って歌詞の意味を説明しないというかっこよさもあると思うんですけど、10-FEETはそういうバンドじゃないと思うんですよね。もっと泥臭い(笑)。
 
●前から言っていますけど、スタンスは一般的にいう“音楽”の枠を超えていますよね。10-FEETが発するメッセージは今までの積み重ねがあったからこそ活きてくるし、すごく大変な道を選んでいると思うんです。音楽を通して、本気で誰かを助けたいと思っている。
 
TAKUMA:僕は今でも本当に病んでいるし、日々辛いことがある。同じように病んでいる人、もしくは僕よりももっと病んでいる人の気持ちをわかってあげられるような歌…僕が実際にわかってあげられるかはさておき…「大丈夫大丈夫。わかるわかる、俺もそうやで」という温かみを感じるような歌を書き続けたいんですよね。
 
●実際、僕の周りでも10-FEETの曲に助けられたと言う人は多いですよ。「10-FEETに会ったらありがとうと言っておいて」とか言われますもん。
 
TAKUMA:もう…めちゃくちゃ嬉しいですね。「ありがとう」なんて絶対に言わせへん。こっちのセリフですよ。
 
●(笑)。
 
TAKUMA:かっこ悪い話ですけど、辛いことがあった時はその言葉だけが救いなんです。(苦笑)。僕のダメっぷりとか女々しいところとかは自分でも自覚しているから、基本的にはそこにはすごいコンプレックスを持っているんですよね。だからどんなにいい曲を書いたとしても、感謝された時に「俺なんて感謝されるには値しない人間や」と思う自分ががっちりいる。いじめられっ子資質というか、劣等感みたいなものを良い格好して隠すんじゃなくて、僕はコンプレックスとしてしっかりと持ってしまっているんです。
 
●はい。
 
TAKUMA:コンプレックスって、抱きしめて「大丈夫だよ」と言われるとめちゃくちゃ嬉しいじゃないですか。聴いてくれた人から「ありがとう」と言われるのはそういう気分なんですよね。甲斐あったなと思う。…珍しく嬉しいこと言ってくれますね。
 
●あとでサービス料もらおうと思って。
 
TAKUMA:おい! 表で出ろ!
 
●3曲目の「SHOES」は日本語詞と英語詞が混ざっている曲ですが、前述の2曲と共通する響きがあるんですよね。明るくてポップなサウンドと重い歌詞という。初めて聴いた時に「なんでこんなに暗いことをここまで明るく歌っているんだ?」と思った(笑)。歌詞の“「愛がこれっぽっちも無くて薄情な切れ端が実は本当の僕なんだ」って/目を覚まして寂しさに驚いて明かりも点けずに泣いてた”という部分とか。
 
TAKUMA:これ、内容的にはどうしようもない状態ですよね(笑)。でも。僕はこういうことを明るく歌う歌が必要だと思うんです、絶対に。
 
●必要とは?
 
TAKUMA:「なんも面白くないし、明日学校行きたくないし、あ~もう死んでしまおうかな」と思っている人がこの曲を聴いて「うわ! 俺と同じ奴おった! しかもめちゃくちゃ明るく歌ってる! なんやこいつ?」と思ってくれたらOKかなと。
 
●ああ、なるほど。
 
TAKUMA:僕はしっかりした人を救えるほどしっかりした人間ではないけど、逆にとことん落ちている状態の人は、自分にしか救えないくらいの気持ちでやっているんです。だから歌詞については僕ららしくやろうと思って、かなり素のまま書いたんですよね。
 
●そうなんですね。
 
TAKUMA:僕は、悲しいこととか怖いことに慣れてしまいたくないんです。“愛がこれっぽっちも無くて薄情な”状態にはなりたくない。でもそういう自分に…悲しいことに慣れてしまって本当の自分を出せないでいる自分に気づいて絶望したことがあって。『TWISTER』をリリースする前後の話なんですけど。
 
●それでどうしたんですか?
 
TAKUMA:『TWISTER』に入っている「kokoro no naka」で歌っているんですけど…“人の一生なんて結局は誰かの記憶でしか無いよ”という。その延長線上で、たとえ愛が無くても薄情だと自分で感じても、それでも人に愛を与えるような行動をとっていこう、自分が死んだ時に葬式に来てもらえるような生き方をしなくてはいけない、と思ったんです。それはきっと“恩を与える”ということじゃないんですよね。どんなにものを与えようが、何かの尻拭いをしてあげようが、葬式に来ない人は来ないと思うんです。
 
●はい。
 
TAKUMA:例えば僕が「あの人がもし死んだら絶対に葬式に行かなアカン」と思っている人は、愛されたくて人に愛を与えているのか、それとも勝手に身体が動いて自覚なく人に愛を与えるのか、もっと言えばなぜ僕がその人をそう思えるのか…僕にはよくわかんないです。でも、結局は自分がとった行動が人の記憶となって、人にとっての自分になっていく。
 
●なるほど。確かに「SHOES」は「kokoro no naka」と繋がっている。
 
TAKUMA:だから“愛はなくても薄情であっても、人に愛を与えるような行動をとろう”と。生き方として100%正解かどうかはわからないけど、今の未熟な自分が出した一つの答えとしては間違っては無いと思ったんです。どんなに“愛がこれっぽっちも無くて薄情な”自分だと思っていても、一瞬何かのきっかけで取り乱したりとか感動したりすることってあると思うんです。だから、いつも冷徹な強い自分で生きている人って世界中にたくさんいると思うんですけど、「あの取り乱した自分こそが本当の自分なんやで!」と言いたいんです。…難しいことかもしれないけど、僕はそういうことを音楽で表現したいんですよね。