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10-FEET 『VANDALIZE』

前アルバム『TWISTER』から約1年半。結成以来、ライブに全精力と情熱を注いできた彼らがまさに“痛快作”と言えるニューアルバムを完成させた。最初から最後まで懇親のパワーと躍動感に満ち、バンドとしての生命力が溢れんばかりの全12曲。昨年10周年を経た彼らの“今の心境”に迫るスペシャルインタビュー。
 
 
 
 


「今作はどの曲も最初に“ライブで盛り上がる曲を作りたいな”という想いがあったし、なんかほんまに自然体なアルバムを作れた気がする」


 
 

10-FEET

 
 
 
●2/27に待望のニューアルバムがリリースとなりましたね(モグモグ)。
 
KOUICHI:おにぎり食べてる!
 
NAOKI:前に俺らが取材中におにぎり食べたの根に持ってる!
 
●今作を聴いて「待ってました!」と思ったんです。単純に嬉しかった。
 
TAKUMA:というと?
 
●昨年にTAKUMAくんに喉の不調によって春の全国ツアーが延期になったり、始めての自主企画野外フェス“京都大作戦”が台風によって中止になったりしましたよね。もちろん10-FEETの3人は辛かったと思いますけど、ファンも辛かったと思うんです。だから早く安心させてほしかったというか、晴れ晴れとした気持ちになりたかった(モグモグ)。
 
TAKUMA:確かにそこで暗~いアルバム作ってもね(笑)。
 
KOUICHI:おにぎり食べながら言われてもね(笑)。
 
●それに小手先だけのアルバムだったとしたら「うーん」って感じだろうし。でも今作を聴いて、なんかモヤモヤが全部吹っ飛んだんです。本当にありったけをぶちまけているアルバムだと感じて。
 
TAKUMA:うん。ぶちまけてますね。
 
●だから何にも考えずに聴けたんですよ。このアルバムが聴けて本当に良かったなと。
 
TAKUMA:嬉しいですね。でもいつもそうなんですけど、アルバムが出来た直後は不安なんですよ。必死で聴いてミックス作業とか曲順決めたりとかマスタリングしているんですけど、それが人にとってどう響くかはいつもわからへんし。
 
●それはいつも言っていますよね。07年4月リリースのシングル、『STONE COLD BREAK』の流れから、バンドがライブの方向を向いているなという気がしていて。それまでも10-FEETは活動のメインをライブに置いていたバンドだと思うんですが、音源に関するライブへの志向性がより強くなったというか。
 
TAKUMA:そうですね。ライブのことばかり考えてレコーディングしていましたから。
 
●その流れがあっての今作だったので期待通りというか、想像していたよりも遥かに強くバンドを感じることが出来たんです。というのも、今作は基本的にシンプルじゃないですか。
 
TAKUMA:そうですね。
 
●10-FEETはアルバム『REALIFE』のツアーあたりからライブの完成度が格段に上がったと思うんです。会場全体を温かい雰囲気で包み込んで、その場にいる全員と同じ目線で、「俺もお前もすごいダメ人間やけど、今日だけは一緒に思いっ切り暴れて全部発散させようや」とぐちゃぐちゃになって全力でライブをするじゃないですか。音で聴かせるだけじゃなくて、会場に来たお客さんにマイクを通さずに伝えるMCや、ライブに挑む3人のスタンスも含めて。そういうライブは唯一無二のものだと思うし、観ててすごく伝わってくる。
 
TAKUMA:はい。
 
●ただそうなった時に、CDとライブとの差が出始めたとも感じるんです。特に最近は、CDでは絶対に表現できないことをライブでやっている気がするし。
 
TAKUMA:うんうん。
 
●意識していたかどうかはわかりませんけど、ライブで表現していたことを方法論的にCDでも表現しようとしていたのかもしれないんじゃないかと思って。
 
TAKUMA:それで今回は“ライブとの差を埋めようとする必要はない”と開き直った音源だと?
 
●そうそう。
 
TAKUMA:ああ~、それはあるかも。メタルやハードコアみたいな要素は今作にも入っていると思うんですけど、そういうのは僕らが昔から持ってたんですよね。でもそういう要素は出す分量を間違えたら怖い…いや、別に怖いというわけじゃないかもしれないけど…その加減をどうするのかが面白味であったりすると思うんです。言ってみれば、今作は今までのアルバムに比べてそういう要素が多いんですよね。「B.D.H」(M-2)しかり、「BLAME ME!!」(M-6)もそうですけど。
 
●確かに。
 
TAKUMA:今まではそういった音楽的嗜好性の強い部分は抑えていた意識があって。でも現時点で考えてみると、自分が考えるほどNGじゃないのかなと。
 
●うん、そうだと思います。
 
TAKUMA:それと今までの音源づくりでは「あ、10-FEET変わったね」と言われることを“悪”と捉えている部分があって、そうならないように気をつけていたんですけど、今考えてみると(そういう意識が)ちょっと強かったのかなって。反面、振り幅を広げたり、変化をつけることも常にやってきているのに。
 
●はい。
 
TAKUMA:でも自分がやりたいこと…下手すると“自己満足”と言われるものなんですけど…自己で満足が出来るようなパワーが生まれる音楽というのは、それが一般ウケするかどうかはさておき、良いものが生まれるんですよね。エネルギーの詰まったものというか。
 
●そうですね。
 
TAKUMA:そういう部分が今作では出たかな。作り終わってから気づいたというか、作っている時は全然意識していなかったんですよ。と言ってもマニアックな要素を僕らはそれほど持っているわけではないんですけどね。『STONE COLD BREAK』からの流れでもあるんですけど、今作はどの曲も最初に“ライブで盛り上がる曲を作りたい”という想いがあったし、時間が無かったことも良い作用になっていると思うんですけど、なんかほんまに自然体なアルバムを作れた気がするんです。
 
●うん、自然体なアルバムになったと思います。
 
TAKUMA:捻るのが嫌だったんですよね。今まで録り溜めてきたネタとかで繊密に作り上げるというよりも、“今、考えたものをやりたい”という衝動にものすごく駆られたんです。年末の振替ツアーで地方に行った時に、ホテルの周りを一人で散歩しながら「フンフン~♪」と鼻歌で出てきたものを曲にしてみたり。
 
●あ、そうだったんですね。
 
TAKUMA:今作は1年前くらいから準備に入って、シングルの『STONE COLD BREAK』と『goes on』の制作も並行そて進めていたんですけど、その準備に入った当初に作った曲もガッチリ収録しているんです。でも作曲に関して新しい考え方というか、プラスされたものがグアッとあったかな。だからレコーディングが終わってからもいろんなアイデアというかネタが出てきて。それはまだ形にはなっていないんですけど、でもそれで良いと思う。だから自分にとってはすごくプラスになったアルバムとも言えますね。
 
●なるほど。
 
TAKUMA:さっき「『STONE COLD BREAK』でバンドがライブに向いた気がする」と言ってくれましたけど、あの曲の存在がすごく大きかったんです。あのシングルを出した時、「マニアックで暗くて分かりづらい」という意見もすごく多くて。でも、今はライブで欠かせない曲なんですよね。ものすごくライブ映えするというか。
 
●うん。実際に観てそう感じました。
 
TAKUMA:『STONE COLD BREAK』を作ったときというのは、“明るい”とか“暗い”とか“キャッチー”とか一切考えずに、10-FEETが今までやってきたレゲエっぽいノリに、ライブでよくやっている2ビートとかミクスチャー的な要素を組み合わせて、とにかくライブでやることだけを考えて作ったんです。それが良かったというか。冷静になって考えてみると、全然曲調は違うけど「ライオン」なんかもそうですよね。あの曲は「ゆっくりすぎる」と言われていたけど、ライブでは定番の曲になった。あのときもライブのことばかり考えて作ったんです。それは「goes on」のときも同じで。とにかく去年は“テンション高めで行こう”というのが僕らのテーマと言うか、なんかよくわからないけど事あるごちに言っていた。それで一つの結果が出たと思うんです。
 
●結果というと?
 
TAKUMA:セールスとかそういう話じゃなくて、“ものづくり”という部分で。10-FEETというバンドにとっていい曲…ライブで盛り上がれる曲を作れた。そういう考えを軸に作っていったらいいんじゃないかという視点で、今回のアルバムを作ったんです。だからさっき「アルバムを作った直後で不安がある」と言いましたけど、でもなんかすごくスッキリしているんですよね。“これで良かった”という。
 
●10-FEETは以前から…例えば周りの評価を気にする気持ちや、今は無くしてしまった初心が欲しいと願うこと…そういった誰もが持つ“葛藤”や“弱さ”に対して自分がどうしたいか、どうするかを歌ってきたバンドだと思うんです。
 
TAKUMA:そうですね。
 
●こういうアルバムを作れたということは、そういった“葛藤”や“弱さ”に対して、自分なりの付き合い方が出来るようになった証だと思うんです。決して完全に克服したわけでもなければ、見ないふりをしているわけでもない。
 
TAKUMA:付き合えるようになった…うん、そうだと思います。今回、あんまり頭で考えなかったんですよ。感覚で作ったところが多いというか、バッと聴いた感じを大事にしましたね。例えば去年ツアーを延期したり、野外イベントが中止になったりしましたよね。でもあのことはいい意味で全然引きずらなかったんです。
 
●あ、そうなんですか。
 
TAKUMA:もしかしたら無意識のうちに心がささくれ立っていたかもしれないけど(笑)。周りが気にしてくださるほど僕らは引きずっていなくて。かといってポジティブに消化したと言う感じでもなく、アルバム作りに頭と心がフル稼働していたというのが一番大きくて。そういうことを考える暇も無かったし、もっと昔に歌いたかった事とかに自然と目がいっていたんです。
 
●なるほど。1年前くらいから準備に入ったということですが、アルバムの全体像が見えたのはいつ頃だったんですか?
 
TAKUMA:レコーディングが最終的に落ち着いたのは今年に入ってからなんですけど、本当に最後の最後ですね。一番最後の段階で「U」(M-1)と「BEAUTIFUL WORLD」(M-12)が出来たんですけど、そこで曲調がガラッと変わった。曲調とか全然違う2曲ですけど、最初と最後に収まることによって、1本筋が通った感じになったというか。
 
●なるほど。その曲は確かにアルバムの中でも際立っているというか。印象的だったんですけど、「U」はイントロのリフがものすごく強くてCDを聴きながら、イントロが鳴っただけで会場のお客さんが「ワーッ!」と盛り上がっている光景が目に浮かんだんです。
 
TAKUMA:それはね、やっぱり作っていてめちゃくちゃ考えましたね。イントロのリフとかで盛り上がれるというのは、僕らがヘヴィメタル/ハードロック世代だからだと思うんですよ。
 
●ああ、そうか。
 
TAKUMA:ハードロックって“リフ命”みたいなところがあるし、そういうルーツが自然に出たんでしょうね。というか、制作中はライブのことばっかり言いながら作っていたと思う。「これライブでこうなったらアガるやん」みたいな会話が多かったですね。
 
●そういう意味では、個人的にライブで一番楽しみなのは「BLAME ME!!」なんです。
 
TAKUMA:でもこの曲だけはライブがめっちゃ大変なんですよ。
 
NAOKI:うん、難しい。
 
TAKUMA:10-FEETはライブで僕とNAOKIの掛け合いが多いバンドなんですけど、そういうのが上手く出来たら盛り上がると思いますね。
 
●「思いますね」って他人事みたいに言ってますけど…技術が追いつかなかったら?
 
KOUICHI:ライブではやらへん。
 
TAKUMA:そんな曲作んなや!(笑)
 
●さっきから散々「ライブのことを考えて作ったアルバム」って言ってるのに…矛盾してるやんけ!
 
TAKUMA:だってノリノリで作ったんだもーん。
 
KOUICHI:めっちゃ楽しかったな。
 
NAOKI:うん。
 
 
 
 
 
 
 

TAKUMA

 
 
 
たくさんの愛情とたくさんの悲しみを音楽的衝動で音に昇華させる、唯一無二のバンドマン
 
 
 
●TAKUMAくんはそもそもなぜバンドを始めたんですか?
 
TAKUMA:METALLICAとMEGADETHに影響されたのが最初ですね。自分では“バンドはやらないだろうな”と思っていたんですよ。でもカラオケがめっちゃ好きで。親父がカラオケ大好きなんですけど、チビの頃からよく連れて行ってもらったりしていたんです。中学生の頃はクラスで一番歌える子だったと思う。全然上手くはなかったけど、一番マシというレベルで。
 
●なるほど。
 
TAKUMA:でもバンドでヴォーカルをやるとは思っていなかったんですよ。それで高校の頃、METALLICAとMEGADETHを聴いて好きになって、MEGADETHのモノマネをしたら「そっくりや!」と言われて(笑)。
 
●モノマネ(笑)。
 
TAKUMA:「MEGADETHのコピーバンドをやるから歌えや!」と友達に言われて。でもそういう地元の友だちとやっていたバンドは全然積極的じゃないし、具体的でもない。活動らしい活動もしないまま終わったんです。その後、FLAMEというヘビーメタルバンドでヴォーカルとして加入して。そのバンドは結構積極的に活動していたんです。
 
●はい。
 
TAKUMA:その後もいくつかのヘビーメタルバンドを経て、今度はNIRVANAに興味を持ち始めたんですよ。最初は“ヘビーメタルじゃないから”という理由で興味なかったんですけど、PVとか見て“さすがにこれはかっこいいなと。その後何故かヘビーメタル仲間がThe Smashing PumpkinsのCDとか持ってきて、聴いたら「かっこいいな」と。
 
●ヘビーメタル好きって結構保守的なイメージがありますけどね(笑)。
 
TAKUMA:最初はヘビーメタル以外認めないという感じだったんですよ。でもその辺から“もしかしたらヘビーメタル以外でもかっこいい音楽はあるんかな?”と思い始めて。それでGREEN DAYに出会って、めっちゃ影響を受けた。その時は4人のバンドだったんですけど、GREEN DAYとかThe Clashの曲をコピーしつつ、友達がやっているブランドの名前にちなんで「アポンチュ」というオリジナル曲を冗談半分で作ってみたんです。一緒に「PARTY」(『May I help you?』収録曲)という曲も作って。
 
●冗談半分で(笑)。
 
TAKUMA:でもそのオリジナル2曲をライブでやったら反応が良かったんですよ。それが自分では衝撃的だったんです。“GREEN DAYとか人様の名曲で盛り上がるのは当然かもしれないけど、冗談半分で詩文が作詞/作曲した曲で盛り上がるとはどういうことだ?”と。
 
●はい。
 
TAKUMA:オリジナルの曲でバンドをやるという概念が当時はなくて、周りにもオリジナル曲をやっているバンドはほとんどいなかったんですよ。でも盛り上がったから“これはオリジナル曲をやったほうが良いな”ということで10-FEETを発足したんです。その頃の10-FEETはヴォーカルが俺でベースがNAOKI。あと、めちゃくちゃうまいギターとドラムがいて。GREEN DAYを3曲くらいとオリジナル曲を何曲か作ってやっていましたね。
 
●ということは、10-FEETの最初のモチベーションは、自分が作ったオリジナル曲で人が騒いだり喜んだりすることに快感を覚えたから?
 
TAKUMA:うん。快感だったし、世界にない曲を自分で生み出して、それに人がノッて騒ぐということが“これはすごいことだな”と。自分がCDとかいろんなアーティストから受けてきた感覚を、規模は全然小さかったけど自分が作った曲でそれを受ける人がいるという事自体が奇跡だと思ったんです。
 
●それはいまの10-FEETのスタンスと繋がっている気がしますね。
 
TAKUMA:そうですね。それ以前、メタルバンドをやっている時にも何度かオリジナル曲にトライしたことがあったんです。家で何曲かオリジナル曲を作っていたけど、もう聴けたもんじゃない曲ばかりで。
 
●はい。
 
TAKUMA:「アポンチュ」と「PARTY」が“自分にも曲が作れるという自信に繋がって、そこからダーッと曲が出来た。最初に10くらい作って、デモテープにした。そのデモテープがすごく評判が良かったんです。その頃にはメンバーも変わって今の3人になってて。それで“どこまで行けるかやってみようか?”ということになり、2000年の上京に繋がるんです。
 
●TAKUMAくんがバンドをずっと続けていこうと思うようになったのは?
 
TAKUMA:1stアルバムの『springman』あたりかな? いつの間にか「俺ら音楽でやっていけるかな?」みたいな話をしなくなったんですよ。そういう会話をするよりも「次はどういう曲を作ろうか?」というようなことを考えたり、やっていくうちにどんどんツアーとかが始まって。素晴らしく素敵な意味で、音楽が日常になったんですよ。ミーティングをしていても、“次はどうするか”が100%くらいの話をしていたし、人生を賭けて意見を出し合うみたいな感じだった。
 
●なるほど。
 
TAKUMA:それに東京に来た時点で、僕らと同じように上京して頑張っている周りのバンドマンの熱量に巻き込まれていましたよね。
 
●確かに東京はそういうバンドマンばかりですからね。
 
TAKUMA:うん。もうみんなが「俺らは完全にバンドなんじゃ!」という感じでやっているし、めちゃくちゃバンドや音楽を愛しているし。そこで知り合う仲間もみんな大好きで、僕もあつかましい性格だからどんどんいろんなバンドと仲良くなっていって。
 
●はい。
 
TAKUMA:さっきも言いましたけど、何もかもが素敵に当たり前の日常になっていきましたね。その時知り合ったバンドはみんなCDを出していたし、全員が売れると思っていたし、全員が音楽で食っていけると思っていた。
 
●それが6年前くらいですね。『RIVER』以降、リリースのたびにインタビューをさせていただいてますが、10-FEETは…特にTAKUMAくんは…バランスというものをすごく重視してきたと思うんです。決して“楽しいから/自分が好きだから”という理由のみで音楽をやるわけでもなく、かといって売れるために媚びるわけでもなく。音楽を通して本気で人を助けたいと思いつつ、常にリスナーとは同じ高さの目線であろうとする。そのスタンスはずっと変わっていないんでしょうか?
 
TAKUMA:表現するときのそれぞれの度合いは時によって変わっているかもしれないですけど、音楽をやる理由というのはずっと変わっていないですね。僕にとっての10-FEETは、やっぱり“人が喜んでくれた”ことの衝撃が始まりなんです。決して“自分がこういう素晴らしい音楽を作れた”ということではない。
 
●そうでしょうね。
 
TAKUMA:もし最初の衝撃が“素晴らしい音楽を作れた”ということだったら、多分今とは全然違う方向に行っているだろうし。芸術を追求する方向というか。
 
●はい。
 
TAKUMA:でも僕はみんなが「うわー!」となること自体にものすごい“芸術”を感じたんです。一種の魔法だと思った。その想いはずっと一貫してるし、僕としては媚びているつもりはまったくないんですよね。
 
●うん、それはよくわかります。
 
TAKUMA:さっき「バランスを重視する」とおっしゃいましたけど、そのバランスの中に“ここまで振り幅を拡げたらマニアックになる”という部分もあるけど、“ここまでポップにわかりやすくしたら媚びるラインになる”ということも考えていたん部分もありますね。
 
●そうですね。過去のインタビューでもそういう話はありました。
 
TAKUMA:でもそれは媚びる/媚びないということが重要なのではなくて、“かっこいい音楽を作ること”を重視した結果であって。
 
●“媚びなければかっこいい音楽になる”という論理ではなくて、“かっこいい音楽を作るために媚びない”という論理ですね。
 
TAKUMA:そうそう。それでかっこよくて音楽的にも納得できる作品であってこそ、僕らが出す湿っぽいメッセージに説得力が出てくると思うんです。だから基本的には“音楽の追求”という部分にもモチベーションを持っているんですよね。
 
●なるほど。でもそういった“人が喜んでくれた”ということがスタート時点のアーティストって珍しいと思うんです。TAKUMAくんは初期の頃からずっとそういう話をしていましたが。
 
TAKUMA:自分がメッセージを発信することに関する自身やモチベーションや好奇心は全部お客さんからもらっていますからね。でも最近は、何かのメッセージを伝えたいと思うような精神状態ではあるんですけど、それよりも“ぶっ飛ぶようないい音楽を作りたい”という気持ちのほうが強くて。
 
●先程からの話の流れでは、メッセージ性と音楽性は相反する要素だという前提があるかと思うんですけど、でも10-FEETの場合はイコールだという気がするんです。
 
TAKUMA:そうだったら救われる気がしますね。
 
●『VANDALIZE』を聴いたからそう思ったんです。『TWISTER』はメッセージ性が高い作品だったと思うんですけど、対して『VANDALIZE』は音楽性が高い作品だと感じていて。
 
TAKUMA:はい。
 
●“10-FEETのライブ”は音で聴かせるだけじゃなくて、会場に来たお客さんにマイクを通さずに直接伝えるMCや、ステージに挑む3人のスタンスも含めて成立していると思うんですが、それは『VANDALIZE』から受ける印象とものすごく近かった。
 
TAKUMA:ああ~、それは嬉しいです。
 
●『TWISTER』を否定するわけじゃないんですよ。
 
TAKUMA:いやいや、それすごくわかります。おっしゃるように『TWISTER』はすごいメッセージアルバムだと思っていて、あれがあったからこそ『VANDALIZE』が出来たのかもしれない。この2枚のアルバムは“陰と陽”みたいな感じですよね。そういう意味ではやっぱり『STONE COLD BREAK』が現在までの流れを作るという意味で大きかったと思うんです。自分で今から考えても“よくシングルにしたな~”と思いますからね。どっちかというと暗いイメージで、シングルという感じの曲ではないし。
 
●そうですよね。ちなみにバンド11年もやっていたら、シーンから消えていくバンドもたくさんいるだろうし、逆にブレイクしていくバンドもいると思うんです。そういった音楽シーンに対してはどういう風に見ていますか?
 
TAKUMA:やっぱり気になりますね。周りの近いバンドは違いますけど、戦友として見なくちゃいけないと思うし、そういう風に見たほうがかっこいいし。例えば、ELLEGARDENとかマキシマム ザ ホルモンとかduntboxとかがそうで、もちろん他にもたくさんいますけど、バンドとしてはお互いかっこいいままで再会したいと思っている。それに純粋に友達として昔から知っているから、誰かがブレイクしたらガッツポーズして心の底から喜びたいという気持ちがありますね。
 
●そうでしょうね。
 
TAKUMA:あまり繋がりのない若手のバンドとかだと純粋にリスナーとして聴く感じだけど、そこで“若い子らでもこんなアイデアを持っているんや!”とびっくりすることも多いですね。“俺らも頑張らないと”と思いますよ。
 
●はい。
 
TAKUMA:それってありがたいことですよね。他のバンドから刺激を受けて音楽を頑張ろうとしているわけじゃないですか。自分で頑張ってもモチベーションが出ない時があるのに、そういう風に思わせてもらえるのはお得ですよね(笑)。そうじゃないですか?
 
●お得と考えられることが良いと思う(笑)。
 
 
 
 
 
 
 

NAOKI

 
 
 
 
新曲「my pet theory」で綴られた赤裸々な心情をステージで爆発させるどこまでもひたむきなベーシスト
 
 
 
●10-FEETを始めたのは今から約10年前くらいで、NAOKIくんが20歳の頃ですけど、当時は今の10-FEETの姿を想像出来ていましたか?
 
NAOKI:いや、まったく想像出来ていませんでしたね。正直、音楽で生活していきたいという願望が最初は無かったんです。というかはなから無理だと思っていた。
 
●趣味みたいな感覚?
 
NAOKI:そうですね。そういう感覚で普通の仕事をしながら10-FEETを始めたんですけど、でも次第にバンドの比重が大きくなっていったんです。
 
●半導体の工場に勤めていたんでしたっけ?
 
NAOKI:そうそう。仕事をしながらもバンドの方をすべて優先して。誘われたライブは全部OKして、仕事が終わったらリハ無しでライブをしたり。だから工場側から残業を頼まれても「すみません、前からライブがあると言っていたので無理です」と断った。
 
●嫌な社員(笑)。
 
NAOKI:まあそうですけど(笑)。一度OKしたライブは断れないですからね。だから一番最初の目標としては、CDを一枚出したら僕はもうバンドを辞めていい、くらいに思っていたんです。
 
●ああ、なるほど。
 
NAOKI:CDというものを残したかった。音楽で食っていける人なんて本当に一握りだと思っていたし、昔から基本的に考えが堅い考えの人間なので、無難に就職して、無難に結婚してという。
 
●それはちょっと意外ですね。
 
NAOKI:だから10-FEETの結成当時は、仕事を辞めてまでバンドをするなんてまったく考えていなかったんですよ。
 
●その後、どうやってモチベーションが変わっていくんですか?
 
NAOKI:僕らは2000年の12月に上京するんですけど、その辺の時期に変わっていったというか。その頃は京都だけじゃなくて、地方でもよくライブをするようになっていたんです。デモテープも3本くらい作っていたし、そこで自分の中でちょっと手応えを感じたんです。
 
●はい。
 
NAOKI:色んな人がデモテープを買ってくれて、曲を覚えてライブに来てくれる。そういうことで少し手応えを感じて。ある時、ストリートアパレルブランド「MOBSTYLE」の田原さんに、「デモテープ聴いたけどかっこいいし、お前ら絶対に東京でやったほうが良いよ」と言われて、それを真に受けて上京したんですよ。その田原さんがいろいろな人のツテを経由して、インディーズ時代に在籍していたレーベル・BUDDYと知り合って。
 
●それは有名な話ですよね。田原さんが初期のCDの帯で散々書いているし(笑)。
 
NAOKI:でも上京するということは仕事を辞めるということだったので、僕は3ヶ月くらい考えたんですよ。
 
●結構長い間考えたんですね。
 
NAOKI:そう。ずーっと悩んでいた。うちの親も頭の堅い人間だったので、頭ごなしに反対されていたし会社にも止められていた。でも結論としては“このまま東京に行かなかったら後悔しそうだな”と思ったし、やれるだけやってみたいという気持ちがあった。それで親に「どうしても東京に行きたい。どうしようもなくなったら自分でケツを拭くし」と言って、2年間で目処が立たなかったら辞めるという約束をしたんです。
 
●あ、そうなんですか。
 
NAOKI:そういう感じで上京して、もう必死で。京都でそこそこ名前が売れていても、そんなことは東京の人は全然知らないし。
 
●はい。
 
NAOKI:でもシーン全体が盛り上がっていた時期だったし、早い段階で仲のいいバンドが増えていったというのが大きかったんですよね。今考えたら、僕らは恵まれていたと思うんです。それぞれイベントを組んで、お互いを呼び合ったりしていた。そういう状況で少しづつ人が増えていった。
 
●ご両親との“2年間”という約束はどうだったんですか?
 
NAOKI:ギリギリで目処がついたというか。親とそういう約束をしているということは、メンバーや周りの人には言ってなかったんですよ。それを言うことによって焦らせるのも嫌だったし、“それまでに売れなきゃいけない”という感覚でバンドが曲を作るのも嫌だったから。それで上京してちょうど2年経つ寸前くらいに『RIVER』をリリースしたんです。
 
●2000年12月に上京して、『RIVER』を出したのが2002年10月ですね。
 
NAOKI:だからギリギリだったんですよ。「RIVER」が、有線とかラジオでもガンガンかけてもらえたり、パワープッシュ選んでもらったりする状況になってきたんです。そこでようやく目に見える形で手応えが出てきたというか。それで親に「先が見えてきそうな感じになったから」と言った。
 
●それから5年半くらい経ってますけど、10-FEETというバンドを通して自分が変わったという自覚はありますか?
 
NAOKI:以前と比べて、いい意味でも悪い意味でも考えるようになったんですよね。以前はあまりそういうものが無かったんですよ。昔はすごくしょうもないこと…例えば彼女に振られて悩んでいる程度だったんです。でも今は逆に、考え事のほぼ10割がバンドのことで。特にここ最近で考えたことで言うと、4thアルバム『TWISTER』で始めてCDに収録されている曲、「the guide」を書いた時なんです。昔、デモテープ時代の頃に1曲書いたことはあったんですけど、CDになるのはこれが始めてだったんです。
 
●はい。
 
NAOKI:曲が出来た時、めっちゃ手応えはあったんですよ。自分の中で“すごく良いものが出来た”と。それでレコーディングが終わってすごく満足していたんですけど…アルバムの発売日までの間がもう地獄みたいな日々で(笑)。
 
●評価が気になったということ?
 
NAOKI:もちろんそれも大きかったし、もっと言えば「10-FEETっぽくない」と思われるんじゃないかと。
 
●ということはNAOKIくんにとって「the guide」はかなり大きかったんですね。
 
NAOKI:そうですね。実際にアルバムが出て、「いいやん」と言ってくれる人も多かったんですよ。それでも「本人を目の前にして“悪い”と言う人なんておらへんし」と考えていたくらいなんです。まあでもライブでやりだしてから、ちょっと楽になったかな。
 
●それはちょっと意外ですね。
 
NAOKI:基本的にネガティブですからね(笑)。それが例えば1~2枚目だったらちょっと違うと思うんですけど、『TWISTER』は4枚目のアルバムで、“10-FEETはこういうバンド”というイメージがかなり固まっていたと思うし。
 
●なるほど。
 
NAOKI:『TWISTER』以降にも色々考えていた感じがしますね。僕、個人的にはライブでの精神的な波がすごく激しいんです。
 
●あ、そうなんですね。
 
NAOKI:その日のテンションに波がある感じなんですけど、そんなのお客さんには全く関係ないじゃないですか。だから一旦ステージに上ったらガーッとテンションをあげないといけない。でも精神的には凹んでいるときもあるんですよね。
 
●それはどうやって解消したんですか?
 
NAOKI:結局ライブは生モノなんだから、ステージ上で凹んでいるときがあってもええやんと思えたというか。それが人間臭さなんだろうし。そう思えるようになってちょっと楽になれた気がします。
 
●めちゃくちゃテンションが高くないとダメだと自分で決めつけていたところがあったんですね。
 
NAOKI:そうですね。じゃないとお金を払って楽しみに来てくれているお客さんに申し訳ないと思っていて。常に良いものを見せたいけど、自分で“今日のライブはめちゃくちゃ良かった”と満足しきれるのは1年間で数えるくらいしかない。でも、“今日はあかんかったな”と自分で思うライブであっても、お客さんが“あかんかった”と感じるようなライブは絶対にしたらダメだと思うんです。
 
●確かにそうですよね。でもそういう悩みはライブをやる限り尽きないと思うんですが。
 
NAOKI:そうなんですよね。答えがずっと出てこなくて常に考えている感じ(笑)。考えすぎるようになったのが、自分が変わった中での悪い部分というか、悩ましい部分ですね。
 
●なるほど(笑)。
 
NAOKI:他に変わったところで言うと、許容する幅が拡がったという部分もあるんですよね。昔だったらめちゃくちゃストレートに嫌だと思うことはすぐに感情として出していたんです。キレやすかったというか。
 
●ヤンキーや(笑)。
 
NAOKI:(笑)。でも最近はそういうことも無くなったし。いい意味で「まあええか」と思えるようになってきた。…でも考えてみると、さっきのライブに関して考えすぎる部分で「まあええか」と思えたら一番良いんですけどね(笑)。
 
●確かに(笑)。それと今作『VANDALIZE』にもNAOKIくん作詞作曲の「my pet theory」が収録されていますが、歌詞はかなり自分の内面をさらけ出していると思うんです。
 
NAOKI:そうですね。最初パッと書いた時に自分の歌詞を見て、“ここまでさらけ出して書いたらあかんのかな?”と不安になったんです。ちょっとネガティブな言葉は使わないほうがいいだとか、いい言葉をもっと探すべきなのかとか。
 
●はい。
 
NAOKI:でもそうやって書くと作り物みたいになってしまうと思って、そのままにしたんです。“この歌詞を読んでどう受け取られるのかはわからないけど、これが僕なんだからしゃーない”という感じ。嘘を書くのも嫌だし、飾るのも嫌だから。
 
●そうやって自分自身をさらけ出すことが、さっき言っていた“考えすぎる部分”を少しは解消しているんじゃないですか?
 
NAOKI:ああ~、それはあるかもしれないですね。書いた時は“プラスなことを書かないといけないのかな”と考えたりしたけど、でもこうやって曲が出来てみて、“無理にプラスにしなくても思っていることを書いたら良いんだ”と自然に思えるようにはなりましたね。「my pet theory」の歌詞ではネガティブな言葉も使っているけど、最終的には“こうなりたい”という願望で終わっているし。その中で「共感できるよ」と 言ってくれる人がいたら嬉しい。それでいいと思えるようになったんです。
 
●それは成長ですよね。では今、NAOKIくんが10-FEETをやっている理由を教えて下さい。
 
NAOKI:始めたきっかけはみんな同じだと思うんですけど、“楽しい”とか”ライブが気持ちいい”というところだったんです。対して今は人生=音楽になっていて、たくさんの人に聴いてもらうこと自体が嬉しい。それに、例えば僕は高校の頃にGUNS N’ ROSESを聴いていて、それがもう生活の一部にすらなっていたんですけど、それと同じような感覚で僕らの音楽を聴いてくれている人もいるわけで。そういうのが嬉しいし、音楽をやる原動力にもなっている。
 
●はい。
 
NAOKI:それに特に最近は“始めてバンドを組んだ頃の新鮮な気持ちを思い出したい”ということが音楽をやる理由になっているという自覚もあるんです。
 
●え? 音楽に対する初期衝動を思い出すことが、音楽をやる理由にもなっているということ?
 
NAOKI:そうなんです。僕はステージに立つと、自分がやりたいだけのことは出来ないんですよ。お客さんが楽しんでいるかどうかも考えてしまうし、楽しくなさそうな人がいたら気になってしまうんです。でもバンドをやり始めた頃なんて、そんなことはまったく考えていなかったんですよ。極端に言えばオナニーと一緒だったんですけど、わけがわからない勢いがあったと思うんです。
 
●そういうことを歌っている歌は10-FEETには多いですしね。
 
NAOKI:そうなんです。“勢い”が多少欠けてきている部分はあって、それは経験を積んでいく上では自然なことなのかもしれないですけど、やっぱり取り戻したいですね。
 
 
 
 
 
 
 

KOUICHI

 
 
 
ステージ最後方から2人の音を支え、会場いっぱいのオーディエンスを仰ぐ彼の目には何が見えていたのだろうか?
 
 
 
●KOUICHIくんはバンドをやりながらも、保父になるつもりだったんですよね。
 
KOUICHI:そうですね。でも今考えたら保父になりたいというのもそこまで本気じゃなかったんですよ。
 
●あ、そうなんですか。
 
KOUICHI:高校3年生の時に“保父になりたいな”と思って、福祉学科がある大学を受けようと思ったんですけど、受けるための資格が無かったんです。要するに受験資格として、高校の時の成績が基準に足りていなかった(笑)。
 
●スタート地点にも立っていなかったという(笑)。
 
KOUICHI:もちろんなりたかったですけどね。音楽をずっとやろうと思っていなかったし、仕事として選ぶんだったら誰かのためになるようなことをしたいなと。
 
●合コンで「保父やっています」と言ったら「え~!? 子供好きなんですか~!?」って女の子ウケ良さそうですしね。
 
KOUICHI:(無視して)だから僕、持っていたスネアとかを全部売ったんですよ。その後にTAKUMAとNAOKIに「10-FEETに入らないか?」と誘われて。
 
●それでどうしたんですか?
 
KOUICHI:音楽を辞めるつもりで売ったし、やっぱり悩みましたよ。でも、その時にもらったデモテープが本当に良かったんです。「アポンチュ」と「PARTY」が入っていたんですけど。
 
●それで加入を決めた?
 
KOUICHI:そうですね。デモテープ聴いて「あ、ええやん!」と。軽い気持ちで10-FEETに入ったんですよ。まさか今まで続くと思わなかったけど。
 
●いつ頃から本気になったんですか?
 
KOUICHI:つい最近。去年の4月に『STONE COLD BREAK』を出したあたりから、「じゃあそろそろ本気でやってみようかな~!」と……アハハハ(笑)。どれだけ時間かかっとんねん!(笑)
 
●いつ頃から本気になったんですか?
 
KOUICHI:…東京に出てきた頃です。
 
●それは3人とも共通していますね。
 
KOUICHI:あれは僕の中でも大きかったですね。小川珈琲というところで準社員として働いていて、そこを辞めて上京したということもあったから。
 
●東京に来て3人で共同生活をしていたわけですよね。実際のところはどうでした?
 
KOUICHI:やっぱり最初は不安でしたね。東京に出てきたものの、ライブを演って受け入れられるかどうかとか。実際最初のところは全然で、お客さんが座っていることも多かったし。そんな中でも自分たちが京都でやっていたことを続けていただけなんですけど、“このままでいいんかな?” 路線変えなくてええんかな?”と不安になりましたね。
 
●不安になって、KOUICHIくんはそこでどういう結論を出したんですか?
 
KOUICHI:“大丈夫やろ”と(笑)。
 
●楽観的すぎる(笑)。
 
KOUICHI:基本的に楽観的なんですよ。だから当時はTAKUMAに「おまえ、もうちょっとプロ意識を持てよ」と言われたこともあるんです。そう言われてから納得して少しづつ変わっていったし、音楽に対してもちゃんと向き合うようになった。
 
●なるほど。
 
KOUICHI:やっぱりTAKUMAにそう言われたのはすごく覚えていますね。自分なりには一生懸命やっていたつもりだったんだけど、そこまで伝わっていないというのがショックでちょっと落ち込んで…すぐ立ち直ったけど(笑)。
 
●アハハハ(笑)。
 
KOUICHI:それは『RIVER』を出した頃だったんですけど、そのあたりからやっと10-FEETを続けていく覚悟が出来た気がします。ちょっと話が逸れるかもしれないですけど、今の時点で「僕は音楽のプロです」と言い切れるかというと、一概にそうとは言えない部分があって。
 
●というと?
 
KOUICHI:個人的な話ですけど、自分はその道のプロなのかどうかと考えた時に、自信を持って「プロです」とは答えられないなと思って。受け止められないというか、自分に自信がないからだと思うんですけど。10-FEETとして、というわけではなく個人的に。
 
●ああ~、なるほど。ドラムとかの場合は個人としてもスタジオワークやライブサポートみたいな依頼が来て始めてプロミュージシャンと言える、みたいなところがありますからね。
 
KOUICHI:そうそう。バンドとしてはプロなのかもしれなけど、個人としてはどうなのかなと。音楽を趣味で始めて、最初はその延長線上でやってきて。いつしかそれがプロに切り替わるじゃないですか。その切り替わる瞬間というのはいつなんだろうと。
 
●“昨日の自分と何が変わったのか?”と。自分では何も変わっていないつもりなのに、お金が貰えるようになったりして。
 
KOUICHI:そうそう。まあ意識の違いだけだと思っているんですけど、お金を貰えるようになったことを最初は上手く消化出来なかったんですよ。ドラムを叩いて自分のパートは考えますけど、“果たしてどこまで貢献出来ているのかな?”と。なんか申し訳ない気持ちというか。
 
●KOUICHIくんは『REALIFE』のツアーの時に腱鞘炎になって休んでいた期間がありましたけど、あの頃とかはどうだったんですか?
 
KOUICHI:あの時は本当にめっちゃ考えましたよ。正直なところバンド辞めようかなと思いましたもん。
 
●10-FEETを初めて以来、個人的には最大のヤマだったと?
 
KOUICHI:そうでしたね。「このままやっていたらドラム叩けなくなるよ」と医者に言われたらさすがにビビるじゃないですか。いくら楽観的な僕でも“なんとかなるやろ”とは思えずに、ツアーの前半を休ませてもらって治療したんです。
 
●右でしたっけ? 左?
 
KOUICHI:真ん中です。
 
●(無視して)左でしたよね。休んでいた間はどんな心境だったんですか?
 
KOUICHI:“叩けなくなったらどうしよう”という不安が大きくなって、そこまで無理をするなら10-FEETを辞めて、京都で仕事をしながら趣味でゆっくりバンドをやる姿とかを想像してみたり。
 
●はい。
 
KOUICHI:でもやっぱり後の2人のことが気になるんですよね。“2人でちゃんと出来ているかな?”とか考えたり。結構イライラしていた記憶がありますね。そうやって色々悩んでいたんですけど、とにかく治療に専念して。
 
●ツアーの半ばくらいから復帰したんですよね。
 
KOUICHI:そうですね。復帰してからも肘がすごく気になって、全然余裕が無かった。叩き方とかスティックの持ち方も全部変えたんですよ。違和感がなくなるまで苦労したのを覚えています。
 
●一方、昨年の春にはTAKUMAくんが喉の不調で休みましたけど。
 
KOUICHI:あいつも辛かったと思いますよ。
 
●ツアーが全て延期になりましたが、KOUICHIくんの心境的にはどうだったんですか?
 
KOUICHI:それまでずっとリリースとライブを繰り返していて、そこでポンッと間が空くわけじゃないですか。それで“お客さんはどう思うかな? 忘れられないかな?”と不安にもなりましたけど、すぐに“大丈夫や”と思いました。
 
●なぜそう思えたんですか?
 
KOUICHI:楽観的だから(笑)。
 
●(笑)。
 
KOUICHI:まあ真面目な話、不安でしたけど、あまり考えても仕方がないなと思って、自分のやれることをやっていた感じですね。個人練習をしたり。
 
●“RISING SUN ROCK FESTIVAL”で復活した時はどうでしたか?
 
KOUICHI:嬉しかったですね。ライブが出来るということが、心から嬉しかったです。
 
●それと、僕が昨年12月の振替ツアーで札幌のライブを観に行った時、KOUICHIくんは「今度のアルバムはめっちゃ良いですよ」と言っていましたよね。あの頃はまだ『VANDALIZE』の制作期間中だったと思うんですが、すごく印象に残っていて。
 
KOUICHI:言ってましたね。それだけ自信があったというか、素直な気持ちかな。本当に良いと思っていた。僕、制作期間中にそういうことを人に言うのってあまり無いんですよ。
 
●あ、そうなんですか。じゃあなぜ今回はそう言ったんですか?
 
KOUICHI:なんででしょうね。曲的にも自分のプレイ的にも満足していたからかな。別に今までが満足していないという話じゃないんですけど、今回は個人的に表現したかったことが出来たというか。今までは“ここはこうしよう、ああしよう”といろいろ考えて叩いていたんですけど、今回はTAKUMAが持ってきたデモに対して、まず最初に思い浮かぶフレーズを基本的に作りあげた。言ってみたら、自分の身体に入っている感覚に忠実だったというか。
 
●なるほど。
 
KOUICHI:あえて考えてそうしたわけじゃないんです。でも『VANDALIZE』は出来上がった直後もめっちゃ聴いていて。普段はそういうことってあまりないんですよ。作った直後だと自分らの音源を客観的に聴けないので。でも今回はめっちゃ聴けてる。
 
●何が違うんでしょうね?
 
KOUICHI:ライブを意識して作ったということが大きいんでしょうね。実際、10-FEETのライブを『VANDALIZE』から感じることが出来ると思うし。満足していますね。
 
●なるほど。10-FEETは今年で11年目になりますけど、KOUICHIくんが現時点で10-FEETをやっている理由は何だと思いますか?
 
KOUICHI:あまり意識したことがないですけど、やっぱり10-FEETの曲が好きだからだと思いますね。TAKUMAが作る曲、NAOKIが作る曲が本当に好きだからじゃないですかね。ワクワクするし、いつもどんな曲を持ってくるのか楽しみです。TAKUMAはいつも曲を書く時にその時の心境を詰め込んでくるタイプで、落ち込んでいる時は本当にそういう曲が出てくる。それに作詞作曲、アレンジ含めて才能があると思う。だから期待しているし、ワクワクしていますね。僕は曲が書けないし。
 
●書こうとしたことは?
 
KOUICHI:ありますよ。ありますし、書きたいとも思っているけど、まだバンドでやるようなレベルじゃない。だから僕が10-FEETでやらなくてはいけない役割というのは、曲を徹底的に支えるドラムを叩くことだと思っていて。僕はドラムだから演奏も聴いてもらいたいけど、歌が好きというか、やっぱり歌を聴いてほしい。メロディがいいし、歌詞もいいと思うから。
 
●なるほど。
 
KOUICHI:だから個人的には自信をもっとつけないといけないと思うんです。別に自信が無いわけじゃないですけど、“10-FEETのドラムは俺じゃないと”というのをもっと意識してやらないといけないと思いますし、そうすることでもっと10-FEETが良くなると思う。
 
●それがKOUICHIくんにとって、10-FEETに対するモチベーションになっている?
 
KOUICHI:うん。きっと繋がるんでしょうね。
 
 
●ところでKOUICHIくんはドラムということもあるでしょうけど、他のメンバー2人を客観的に見ているなと感じるんですが。
 
KOUICHI:僕、めっちゃ2人のこと見ていますよ。僕から見たNAOKIは…ヤンキー(笑)。
 
●(笑)。
 
KOUICHI:まあイメージですよ(笑)。いい意味で頑固な部分もあるし、ピュアな部分も持っているし、優しい面も持っている。それにやっぱり僕ら2人は年上だから気を遣っている部分もあると思うんですよね。でもここまで一緒にやっているから年齢の差なんて気にすることないだろうし、そういう話をしたこともありますけど。
 
●あ、そうなんですね。
 
KOUICHI:TAKUMAはよく気を遣うし、すごく優しい性格なんです。そういう気持ちが強すぎて空回りすることもあるんですけど(笑)。それがあいつのいいところなんですよね。