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CULTURES’ BackPacker vol.23「好き、似合う、作れる、やりたい」

 あたしの考える楽曲制作における大切なポイントは、「好き」「似合う」「作れる」「やりたい」。これを理解することで、一番フィットする曲を作ることができ、企画やステージ、アーティスト自身をコーディネートできると考えています。

 

 まず、「好き」。これは活動を永く、健康的に続けていくために最も重要なポイントかもしれないです。

   好きな気持ちがあれば自然と興味が湧き、自分に血潮(ルーツ)にその音楽を宿すことで再現性やマナー、更には新しい調合(組み合わせ)の発見までつながる可能性があります。

 CHiLi GiRLにとっての「好き」は、渋谷系(渋谷派)、R&B、アシッドジャズ、HIP HOP、ソウル、サンバ、映画音楽から派生するイージーリスニングオーケストラおよびサウンドトラック。これら全てが少しずつ、好きゆえにCHiLi GiRLの曲に宿り、調合され、完成されています。

 

 次に「似合う」。これはセルフプロデュースの上での最重要ポイント。これを理解するためには、自分の性格、声質、言葉のチョイス、顔付きや体型、服装、考え方、ステージでの振る舞い方など、内外問わず自分を形成するもの全てとのフィット感を考えることにもなります。 

 

 先に紹介した「好き」がしっかりしていれば、言葉や声量、ファッション、振る舞い、総じての雰囲気が自分の中に根付き身にまとうことができ、「似合う」に近付いていくのもそう難しくはないはずです。それなりの時間や研究、トライアンドエラーは伴いますが。

 

 ただし、趣味はあるけど別にこれといって自分を形容する何かがあるわけではない人も当然いるわけで、「これといって好きなものはない」人でも、「似合う」は第三者の力を借りて見つけることだってできるわけです。キャラクター付けしてもらって活動するアイドルや、ほかにも「美人すぎる〇〇」として得意なものに形容を加えてもらって個性を強くしていくアーティストなんかもそれではないでしょうか。

 

 続いては「作れる」。これはまさに作家向きなポイント。「作れる」から「好き」でも「似合う」でもないので、自分のプロジェクトというよりは、職業作家として必要そうなポイントに見えるかもしれませんが実はそうでもないのです。

 特に日頃から好んで積極的に聴くわけではないのだけれど、良いものだということは判るし、構造も理解できる、よって「作れる」というわけです。

 

  長く活動していれば、自分の作曲の癖が見えてきて、作るのも聴くのも、時にマンネリ化する場合があります。こういう場合に「作れる」音楽が多いと役に立つことがあります。

 例えば、元気で明るい曲ばかり「好き」だし「似合う」からといってたくさん作ってくると、90分のワンマンライブでは展開に変化がなくなってしまいます。そこで、メロウでスウィートな曲を「作れる」という実績が少しでもあれば、普段の「好き」で「似合う」ものに少々掛け算し調合してみて、新しい音楽を生み出すこともできるのです。 更にその調合がうまくいくと、全くのオリジナルカラーになります。「作れる」とは、その作り手の知識の深さと調合センスをも意味しています。

 

 川嶋志乃舞時代の楽曲では、かなりこの「作れる」を実践してきました。今でこそ「作れる」曲の中から「似合う」をセレクトできるようになってきたのですが、三味線を持ってポップスシーンの土俵に立っていた初期、「作れる」曲が多かったからこそ、ブッキング難民にならずに食い下がってこれたと振り返ります。

 

 そして最後に「やりたい」。「好き」でも「似合う」でも「作れる」とも違う、自分自身の強い意思。これぞアーティストの醍醐味!重要ポイントですね。

 「好き」だし「作れる」のに「似合わない」、こんな寂しいことで曲を諦めるのは自分の可能性を自分で潰してしまうことにもなります。さんざん「好き」「似合う」「作れる」と紹介してきましたが、何よりもこの「やりたい」が大事なはずです…!

 「やりたい」から「似合う」ように努力するし、「作れる」ようになったり、「作れる」人にお願いしたりして、自分の意思を叶えていく。何よりこれが永く音楽を楽しむために必要なことではないでしょうか。

 

 CHiLi GiRLは音楽制作においては、とんとんと自分の「好き」で「似合って」「作れる」、つまり「やりたい」と言わなくても叶えてきてしまったと自負しています。間違いなく、お願い事を叶えてくれる素晴らしい仲間たちのお陰です。

 しかし、いざライヴとなると今まで別に「やりたい」と強く思わなくても叶ってきたこととは変わり、「この人と”やりたい”!!」「この編成で面白いことを”やりたい”!!」という気持ちが前に出てくるのです。

 

 「やりたい」という意思はそれだけ、自分を含めて人を動かす力を秘めていると思います。しかし「やりたい」に出逢うには、じっとしていては見つからないし、湧いてこないのです。外に出たり、調べたり、とにかく見聞を得て初めて見るものに刺激を受けた時に「やりたい!」が湧いてくるのではないでしょうか。「好き」で「似合う」をサラリとこなしてきているだけでは、「やりたい」と思わなくても「できちゃう」ものです。それも刺激的ではないのも事実。

 でも、この衝動的で機動力抜群の「やりたい」と思う感情をサイクルしていければ、この先いくつになっても、どんな職業でも、豊かで楽しく過ごしていけると思うのです。

 

 それで今回、ライヴ以外でも「やりたい」な感情が久しぶりに湧いてきた新曲が5/21(水)にリリースになります。

 今年は、昨年大変お世話になったCHiLi GiRL×MPC GIRL USAGIの共同アメリカツアーは作品をもっと温めてからより良いものにしようという話し合いの元、2026年内への延期にて現在ふたりとも、制作を鋭意進行することにいたしました。

 ただ、やっぱりこのところ世界中の人がCHiLi GiRLを楽しみにしてくれている、わからない日本語も理解しようと歩み寄ってくれているのを日々実感します。

 でもどうしても、歌詞に英訳を全てつけているわけじゃないから、本当の意味まで理解するのが難しいという声もあり、私ももどかしい気持ちになります。

 そんなわけで、だったら英詞ver.を作っちゃおう!世界中にもっと届く形でレコーディングを「やりたい」と湧いてきて、同曲ながら日本語ver./英語ver.でリリースしちゃおう!と決めました。

 「Recalculate」、日本語で”確かめ算”という意味の新曲。あと10日と少しです。どうぞお楽しみに♡

 

 

 

◆リリース情報◆

2025.5.21(水)リリース

NewSingle「Recalculate」CHiLi GiRL

M1 Recalculate

M2 Recalculate(English ver.)

作詞(日・英)/作曲/編曲:Shinobu Kawashima

編曲/演奏:友重悠

英語詞添削:Michael Potter

アートワーク:亀井桃

 

  https://CHiLi-GiRL.lnk.to/Recalculate 

 

2025.5.10

川嶋志乃舞( CHiLi GiRL ) 著


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