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CULTURES’ BackPacker vol.25「ジャムセッションにおける型破り」

ジャムセッションが好きでよく行きます。仲間に気軽に会えて飲めるし、見るのも演るのも面白いからです。

通う頻度は多いときで週1〜2回、全然行けないときは1か月ほど空くこともありますが、仲間がセッションホスト(ジャムセッションを主宰するバンドやプレイヤー)をやっているときは、ほぼ演奏しなくても顔を出しに行きます。私にとっては馴染みのバーといった感覚です。

 

ジャムセッションに行く理由は人それぞれ。たとえば演奏がとにかくしたい人、自分の技術を高めたい人、仲間が欲しい人、さらに派生してバンドメンバーや仕事のチャンスに巡り合いたい人など。慣れてくると、私のように友達の顔を見に、前の現場が終わって演奏できるか微妙な時間でもふらりと顔を出す人もいます。

いわば、音楽を通した交流の場なのです。

 

頻度が増えればなんでも慣れてくるもので、弾けるレパートリーも増え、緊張せずに弾ければ一人前です。が、そうすると自分自身に飽きてくるのがCHiLi GiRL。

セッションホストを次の10月で10回目迎えるのですが、ホストもできるようになってくる頃には「いつものあの感じ」ではつまらないし、こなしてしまっているので成長も感じられない時期がやってきます。その原因を考えていたら、自分はセッションで多くの曲を「型無し」でやってしまっていたことに気づきました。

ーーー型があるから型破り

おそらくいくつかある型のうち、ひとつの型破りはすでに“三味線でグルーヴしてセッションにいる”ことで果たせています。セッションスタンダードと呼ばれる曲は、参加しようと思えば参加できるキャッチーでかっこいいものが多い。耳でメロディを覚え、何度も通うことで構成を覚え、時々アレンジされるリズムやニュアンスチェンジも対応できるようになってしまったのです。

そう、“できるようになってしまった”のがいけないんです。

セッションで覚えたスタンダードナンバーを、原曲という"型"を知らないまま身体で覚えてしまい、覚えた気になっていました。とはいえ、見た感じおそらく多くのセッションマンはこのケースで演奏しているのも現状です。

学校の課題や、よっぽど原曲が好きで根本的に聴き込んできた人でない限り、なんとなく身体と現場で覚えたそれらを私も同じように覚えた気になっていたのです。

 

型がある人は堂々としているし、曲へのリスペクトもあるし、遊び心もある。この守破離こそがプレイヤーの輝きなのではないかと考えました。

 

私が今取っている「できちゃった」や「それっぽい」を抜け出すための方法は、ずばり歌うこと

インスト曲で演奏されているものも、原曲や他バージョンでは歌が収録・実演されていることがあります。そこから覚え直すことで曲の構造や背景、ふさわしいテンションやグルーヴを見つめ直そうと思いました。

 

歌は、楽器でリードメロディを弾くよりもずっと事前の仕込みが必要です。英語の発音や譜割りはごまかしが利きにくい。知らなければ歌えないし、なにより歌は楽器よりもずっと、自信がなければその分だけ表に出てしまうので、なおさらごまかせません。誰も守ってくれないのです。

それが今の自分にとって一番必要な修行だと思いました。三味線でいつも通りセッションするのも飽きてきた頃で、めちゃくちゃ歌いたいと思っていたし、インプットするには絶好のタイミングでした。型を知り、その型で何度もチャレンジしているのが現在です。

 

ではここからどのように型を破っていくのか。

それはもう続けて鍛錬や研究を詰むしか無さそうです。そもそも自分の曲では無いのですから、世界中で愛されるスタンダードナンバーを自分のものにするのは簡単なことではないはずです。

さらに「CHiLi GiRL ver.」化していくには、歌い込み、身体をほぐし、遊べるようになって型に馴染んできた後、自分らしさが最も出るキー、リズム、テンポを見つけていくことかもしれません。これこそが型破りではないでしょうか。

先にも言ったように、本来無いところに三味線で入ってきて型を破ってきたわたしです。三味線という武器がない歌での型破りへの獣道を、今はざっくざっくと進むしかないのですが、一応人前で演奏しているので、今ある力で堂々と楽しむことを決して忘れないようにしたいです。

そこから三味線でも歌でも「これはCHiLi GiRLらしいね!」と印象付けられたら、ただセッションに参加するよりも、これからも変わらずずっと楽しいはず。

 

長くセッションを楽しむためにも直結する話ですが、セッションマンには大きく分けて2つの立ち位置があると考えています。

合っている曲、テンポ、キーを見つけて提案し、ブランディングしていくアーティスト型。そのプレイヤーやシンガーの織り成す音楽に参加したいと周りを巻き込んでいく力も発揮します。

逆に、どの曲・どのキー・どのテンポでも歌えるようにするサポート型。こういう人がいると本当に助かりますし、安心して音楽を楽しめます。

また、アーティスト型にはサポート型の存在が必要不可欠で、CHiLi GiRLのCLG BANDはこういった支えて盛り上げてくれる人たちに助けられています。もちろん、今井晴萌ちゃんや和久井沙良ちゃん、カワノアキちゃんのようにアーティスト型を兼ね備えた聡明で大胆なメンバーもいます。(私もそういう存在でありたい。)

 

自分が何者かを見つけることで、ジャムセッションで仕事や仲間との出会いに繋がる可能性もあります。とはいえ、何者かわからないからジャムセッションにみんな来るわけですし、そもそもそんな厳しい気持ちで通わず、セッション“バー”なので、人と人との交流ができてこそ長く音楽を楽しめるのではないでしょうか。

何が言いたいかというと、ジャムセッションが好きです。

 

◆リリース情報◆

2025.5.21(水)リリース

NewSingle「Recalculate」CHiLi GiRL

M1 Recalculate

M2 Recalculate(English ver.)

作詞(日・英)/作曲/編曲:Shinobu Kawashima

編曲/演奏:友重悠

英語詞添削:Michael Potter

アートワーク:亀井桃

https://CHiLi-GiRL.lnk.to/Recalculate

 

◆イベント情報◆

チケット情報▶︎https://clg-tokyo.bitfan.id/schedules/menu/34068

 

2025.8.10

川嶋志乃舞( CHiLi GiRL ) 著

 

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