音楽メディア・フリーマガジン

~関東・東北地方音楽シーンの現状報告~ Vol.18

VELOCITY 坂本(Ba./Vo.)

北から南、西から東へと、見渡せどやはりここは僕が生まれ育った町。形は変われど僕は一生この場所を愛し続けます。

元気を与えに行った地元で、逆に希望と勇気をもらいました。今僕らにできることは、大好きな音楽を精一杯楽しむこと。それが僕らにできるせめてもの恩返しだと信じています。

 

 

東日本大震災におきまして、被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
僕の実家は福島県いわき市、海岸線に位置する江名という、福島原発から南へ35キロの小さな港町です。現在、津波の被害で取り壊された近隣の跡地は草木に覆われ、閑散とし、やはり訪れるたびに津波という自然の猛威に驚かされると同時に、身の引き締まる想いを抱きます。
北から南、西から東へと、見渡せどやはりここは僕が生まれ育った町。形は変われど僕は一生この場所を愛し続けます。
BAND活動停止中に復興祭と題された隣町四倉町のお祭りに半ば強引にアコースティック弾き語りとして参加させてもらったことがあります。何かに突き動かされるままに、自分が持っているありったけの想いを歌に乗せました。勇気を運びに来たはずが、逆に与えられ、まだ瓦礫の残るその町で人々はとても力強く生きていました。帰り際に、「今日は楽しかったなあ、また来てなあ」と立ち去る近所のおばあちゃんの後ろ姿はどこか寂しげで、とても感慨深い気持ちにさせられました。
3月11日、もしかするとそれは、もう二度と思い出したくない過去なのかもしれません。
今、いわきは着々と復興を遂げています。海岸線の植え込みに咲くきれいな花、新しく建設中の建物、商店街での小さな会話の中にも、浮かぶは希望の二文字です。たくさんのチャリティーイベント、いわきに元気を送ってくれたBANDの皆様、今物凄く活発的、精力的にイベントを発信する我がホーム“いわきソニック”!! 本当に本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。地元のいわきに限らず、震災で弱った町全てが、ゆっくり、少しづつ、力強く、着実に復興していくことを心から願います。
最後になりますが、僕達は“福島”を決してあきらめません。

VELOCITY website / http://www.velocity-rock.com

 

 

 

Date fm パーソナリティ 庄子久子

泣きたくても泣けない人を泣かせてくれるのも、
笑っていいのかと迷う人を笑顔にさせてくれるのも音楽なのだ。

 

甚大な被害の前で無力感に苛まれながらマイクに向かっていた震災の後。リクエストが届きはじめる。ある人は、まだ見つからない家族が大好きな曲を。復旧作業に向かう背中に送る歌を。想いをのせてラジオから再び音楽が流れ始めたあの日。時を同じくして、駐車場、体育館、広場、そしてライブハウスから音楽が聴こえてきた。

 

 

 

 

震災から一年半が経ちました。悲しみが癒えるにはあまりにも短く、悲しみの中で生きるにはあまりに長い時間です。同時に、人の必死で長い一年半は、地球にとってどれだけ短いのだろうと沿岸部に足を運ぶたび思います。
あの日以来、私自身も味わったことのない時間の流れを感じてきました。震災後の混乱の中、つとめて冷静にマイクに向かいながらも甚大な被害の前では無力感でいっぱいでした。
しかし、震災から20日ほど経った日、番組に見慣れたラジオネームでリクエストが届き、私はある決意をしました。そのメールは、「時間だけが私の気持を癒すものかもしれないけれど、私が前向きになれるまで、“前向きにがんばろう”と言い続けてほしい」という内容でした。その方はお母さんを亡くされ、大変苦しい思いをされていました。
思い返せば、震災後から指針をくれたのはすべて番組を聞いてくれるひとの声でした。かける音楽も最初はインストナンバー、次に静かな洋楽をかけていて、いつからかリクエストが届きはじめます。それはいまだ行方不明の家族が好きな曲だったり、会えていない恋人へ届ける歌だったり、復旧作業に向かう背中へのエールであり、鎮魂の祈りでもありました。何度も聴いてきた曲の歌詞が、震災以前と同じに聴こえることはありませんでした。
たくさんのアーティストが東北を応援してくれています。どのような形であれ、曲は音楽家にとって命です。その命を通して応援してくれることに感謝と尊敬を。大きな発信力をもったミュージシャンが長いスパンでの応援を宣言してくれていることは私たちにとって、大きな励ましになります。
震災後、ライブハウスで、泣きたくても泣けない人を泣かせてくれるのも音楽ならば、笑っていいのかと迷う人を笑顔にさせてくれるのも音楽なんだと心から思うシーンが何度もありました。
以前「あなたにとって音楽は?」という質問に、「空気や食べ物と違って、なくても生きていけるけれど、ないと、生活に色気も味気もなくなると思います」と答えたことがあります。でも、食べ物やきれいな空気のありがたさが身にしみてわかったからこそ、番組に届いたリクエストのひとつひとつを噛み締めてこう言えます。「あなたにとって音楽は?」「人生になくてはならないもの。」
音楽と人をつないで、人と人をつないで、人と街をつないでいく仕事がしたいと日々マイクに向かっています。

http://www.datefm.co.jp

 

 

 

 

 

渋谷SONGLINES ブッキング担当 長田江梨子

http://song-bird.net/songlines/

執筆者プロフィール
19歳の頃よりアルバイトでライブハウスに勤める。その後、舞台担当として表参道FAB(現勤務先 ソングバード)入社。‘08年 SONGLINESオープン時よりブッキングを担当。

現状
震災後は、公演の中止を決断せざるをえない状況でした。節電の問題もある中、ライブを開催していいものか…。被災地では明日をどう乗り越えるかという状況の中、本当に音楽は必要なのか…。とても悩みました。しかし、予定通り開催した公演にいらっしゃったお客様より、「開催してくれてありがとう。久々に笑うことが出来ました」という言葉をいただいたのです。その一言で、音楽の力、そして復興に向けて、今、私に出来ることがはっきりと見えたような気がしました。
その後、チャリティイベントも開催させていただきました。「こんな時だから歌を届けたい」、「少しでも力になれれば」と多くのアーティストに賛同いただき微力ながら義援金として被災地の方へ届けさせていただきました。
震災から1年半が経ち、全てが同じではありませんが、以前と変わらない日常が戻ってきております。もちろん、あくまでお店のある東京・渋谷での話であり、被災地の方では復興に向けてまだまだ長い月日も必要で、問題も山積みだと思います。1日も早い復興を心よりお祈りするとともに、私が今この場で出来ること、音楽の意味を感じながら復興支援を行なっていきたいと思っております。

メッセージ
SONGLINESは皆様のおかげを持ちまして、10月で4周年を迎えることが出来ました。ライブハウスとしてはまだまだ新参者ですが、アーティストとともに成長しつつ、居心地の良い空間を提供出来るお店として頑張っていきたいと思っております。今後ともよろしくお願い致します。

 

 

 

 

新潟GOLDEN PIGS 店長 石塚 翔

http://www.goldenpigs.com

執筆者プロフィール
GOLDEN PIGS立ち上げより3年目。地元が大好き。人間が大好き。酒が大好き。よって、打ち上げでバンドと飲むのが何よりの生きがい。自身も「言葉 翔」として弾語りをしています。尊敬しているのは友川カズキさん。

現状
街自体は大きな影響がないので皆平和に暮らしていますが、やはり各個人で震災を風化させないようにとイベントをしてるアーティストは沢山います。
本当の情報がわかりづらい世の中、真実を求めて発信してるアーティストが増えました。
僕もイベントで8月15日に終戦記念日の企画をしました。やはりきっかけになったのは3.11の震災でした。
平和に暮らしてはいますが、意識は変わってきているんだと思いました。

メッセージ
地元にライブハウスがあることは当たり前ではないと思います。有名ではなくてもかっこいい音楽を奏でているアーティストはいっぱいいます。ライブハウスにはそこでしか起きない奇跡が詰まっています。地元のライブハウスを大切にしてほしいと思います。

 

 

 

 

LIVE HOUSE SHIZUOKA Sunash 店長 朝比奈ふさ子

http://sunash.info

執筆者プロフィール
入社14年目です。音響以外はなんでもやります。

現状
東日本大震災で被災された皆様に深くお見舞い申し上げます。
3月11日当日はリハーサル前で、バンドが会場入りした位の時に地震が発生しました。建物や機材の破損も特になく、その日は通常通りの営業をしましたが、地震発生直後から大津波警報が出たため、東名高速、国道1号線が全て通行止めになってしまい、翌日からの営業をどうするべきか、散々悩みました。
その後はイベントのキャンセルが相次ぎ、原発問題が発生し、様々な情報が入ってくる中、“ライブハウスはどうあるべきか”、“何をやっていくべきなのか”、スタッフの中で何度も話し合いの場を設けてきました。募金箱の設置、地元バンドのチャリティイベントなどを行い、自分達が出来る所から始めようと思いやってきました。1年半経った今も変わらず続けています。
震災で人との繋がりの大切さを実感しました。音楽の情報を発信する場所として真剣にやっているアーティスト、バンドの応援、協力をし、来てくださるお客様に居心地のいい楽しい空間を作っていけるよう日々精進しております。

メッセージ
皆様のおかげで、今年で14周年を迎えることができました!
来年の15周年に向けてさらに頑張ります!! 常時出演者募集中です!

 

 

 

 

LIVE HOUSE 仙台FLYING SON 店長 佐々木章宏

http://www.flyingson.com/

プロフィール
高校卒業後、陸上自衛隊に入隊し二任期満了退職。その後、上京し新宿ロフトで2年アルバイト。仙台に戻り、現職。

現状
あれから、1年6ヶ月が経ちました…。
FLYING SONは仙台駅から徒歩5分の位置にあります。周りの大きなビルの外壁工事がやっと落ち着き、歩いている人の話し声が聞こえるようになりました。仙台駅周辺に限っては、元の姿に戻ったかのように思います。
震災直後、イベント中止の確認の為、繋がらない電話をかけまくりました。やっと繋がるとみんな同じ意見でした。「どう考えても無理っすよね」と。
ライフラインが戻ってきても、自粛ムードが襲いかかってきました。こっちを指さし、「ライブハウスやってんのかよ、自粛しろよ」と呟いて、隣の居酒屋に入って行った男たちを俺は忘れません。
そしてすぐに状況が変わりました。「音楽が必要だ」と復興イベントが行われ、県外からもたくさんのアーティストに来て頂きました。少し戸惑いを感じつつも、すばらしいイベントに関われて大変うれしく思いました。
これからとしましては、常に危機感を持ち、安心してライブを楽しめる空間づくりを心がけたいと思っています。

メッセージ
震災からすぐの4月、私が大好きなミュージシャンがFLYING SONに来てくれました。MCは一言、「やるしかねえんだよ」と。その言葉に歓声が上がった。私は、津波で死んでしまった音楽が大好きな友達の分まで「音楽を楽しんでやるしかねえんだよ」って。そんな気持ちでライブハウスをやり続けます。

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