音楽メディア・フリーマガジン

~関東・東北地方音楽シーンの現状報告~ Vol.28

牛来美佳-mica goRai-

DSC_5502http://mica-gorai.jimdo.com/

2011.3.11-東日本大震災
福島県浪江町出身シンガーソングライター
「今、この“想い”を歌うから」

あの日から間もなく2年半が経とうとしている。この年月は一体どのくらいなのだろう…。突然の避難指示。帰れぬ故郷・浪江町から離れ転々と避難した後、今年小学2年生に上がった娘と群馬県内で現在も避難生活を送っている。
「突然、町から人がいなくなる…皆がバラバラに…この”想い”どうしたら伝わるの?」
悔しくて悔しくていつも涙が止まらなかった。ちょっと待った…こんな事が本当に起こり得るのだろうか…現実を受け入れる事なんてできず心の中はいつも葛藤の繰り返しだった。
そんな中、ふと背中を押された。一本の電話。「美佳、こんな時だからこそ音楽をやっていかないか…。」ある人の声だった。そこで気が付く、震災3日後に避難先で書いた詩。
「暖かい手が 止むこと知らずに 必ず繋がっていること 忘れないで 僕たちは絶対 生き続ける、繋がり続ける…」
私にはこの“想い”を伝える為の音楽がある、歌がある。
震災前に中断していた自作CDの制作が本格的に再開した。どんどん想いは熱くなる。同じ境遇の人に伝えたい、どんなに離れてても繋がってるって。そしてこの私の歌う姿をみて、どうか励みになって欲しい。そして被災地外にはこの震災を忘れないで欲しいと強く訴えたくて。
牛来美佳が今、伝えたいこと。今、目の前にあるごく当たり前に過ぎないこと…それがいかに尊く大事な事か。
ここに生きていて、家族がいる。仲間、友人や恋人に囲まれ過ごす日々。少し物足りなさを感じながら仕事をし、慣れた通勤路を走り自宅へと帰る。馴染んだ近所や商店街、そんなありきたりの環境で過ごすこの毎日。それが一瞬にして奪われるなんて想像すらしない、想像すらできない。しかし、そんな悲劇が起こってしまった。家族も仲間も友人も、あるいは恋人も…みんなバラバラになった。仕事もなくなり、慣れた道も環境も何もかもがなくなった…突然に。ただただ存在だけする住処に戻れる日は決して近くはない。生きる希望すら見えなくなって、存在する我が町にこの想いを叫んでも届かない。あの日に戻れるのならしがみついて故郷を離れたくなかった。ただあの場所に存在していた自分たちがありのまま過ぎて…どうしようもない。それでも生きてる私たちに生きる意味を持たせるなら…私は歌う、この歌で伝え続ける。

どうか、「忘れないで…」それでも生きている私たちがいることを。

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