音楽メディア・フリーマガジン

~関東・東北地方音楽シーンの現状報告~ Vol.5

オルフェウスレコーズシニアマネジャー / 王子 聰

東東京から、音楽文化の中心小岩を拠点にインディペンデントミュージックを提供する㈱オルフェウスレコーズは、リハーサルスタジオ、レコーディングスタジオ、ライブハウス、楽器・PAレンタルオペレーティングサービスと音楽に関わる全てのサービスがグループ内で完結できるとして知られておりますが、東日本大震災によって被ったグループでの損害は目を覆いたくなるような状況でした。唯一、震災当日にグループ内スタッフ、お客様に怪我等がなかった事が救いです。

2011年3月11日 14時46分、この瞬間に起きた忌まわしい出来事が、日本に残した傷は根深く、誰もが一生忘れる事のできない惨事となって記憶に刻まれました。震災直後から、音楽業界のみならず、多方面で議論になってきた「不謹慎」、「自粛」といったイベント等に対する捉え方、世論。「音楽」は特に娯楽志向が強いとされている為、グループ内でも随所にその影響を感じております。

グループ内のライブハウス「ライブシアターオルフェウス」では震災後、ライブイベントの中止が相次ぎ、現在は徐々に回復傾向にはありますが、世論の自粛ムード支配からチャリティー形式でのイベントが増えた為、収益には直接結びつかない事も多く困惑しました。楽器・PAレンタルオペレーティングサービスに関しても同様で、対外的な音楽系ライブイベントの中止が相次ぎ現場の数が激減してしまっている状況です。
グループ全体では現場のスタッフ数を最小限にし、営業時間の短縮を行い、節電営業をしながら乗り切っています。そんな中、未だに解決の糸口が見えない福島原発事故や計画停電等の電力問題等、音楽に携わる私達(株)オルフェウスレコーズが少しでも被災地の皆様に対してできる事はないのかと、協議を重ねてきました。音楽は自分自身のメッセージを直接伝える事ができ、それにより誰かの心を癒したり、温める事ができる手段の一つという事から「音楽と人をもっともっと近づけよう!」と前向きに張り切っております。
その事から今現在、東日本大震災から約半年、国内外を問わず多くの方々から支援の輪が広がりつつある中で、私達オルフェウスレコーズでは「東日本大震災・復興支援オムニバス」の企画、制作を行っている最中です。これは、グループ内レコーディングスタジオでアマチュアミュージシャン、インディペンデントアーティストの「復興応援ソング」の音源を無料でレコーディングし、それを配信し、それにより得た収益の50%を日本赤十字社を通じて、東日本大震災の復興支援義援金としてお送りさせて頂く、という内容になります。
私達オルフェウスレコーズにできること。それはアマチュアミュージシャンの方々からいただく温かい義援金はもちろんなのですが、やはり音楽に携わるものとして、「ミュージシャンの皆さんがミュージシャンとしてできること…」としてのお手伝いをさせて頂きたいと考えております。被災地の皆さんのみならず、日本国民の気持ちを癒し、愛と勇気を持って復興していくための力になれれば、と考えております。メジャーアーティストに負けない音楽魂を持っているアマチュアミュージシャンやインディペンデントアーティストの皆さんのエネルギーをひとつの形ににして東日本大震災の災害復興支援オムニバスとして発信していきたいと考えております。http://www.orpheusrecords.jp/

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Yenflation sole (エンフレイション ソロ) / Suzuki Motonori

あれから半年が経ち、あの日を機に俺のまわりでは音楽を辞めるってヤツが何人もいる。それくらい価値観が変わる日だった。多くの人は職を失い、モノを失い、人を失い、放射能におびえる。
音楽は「夢見がちなヤツの道楽」に変わった。

3月11日、少しずつ大きく揺れる地震に「これ以上大きくなったら世界が終わってしまう」と思ったのを憶えている。向かいにあった電信柱の下で談笑していた少女達がムチのようにしなる柱に怯え普段なら無礼とも感じる下品な笑い顔が叫び声と共に泣き出した頃には本当に「今までとは違う何か」が起きてしまった事を実感した。

実際に現場にいると携帯もTVも情報源が無く、震源地はどこなのか? こんな事になっているのがここだけであって欲しい。そんな事を考えていた。
しかし現実は厳しく、現在地茨城県から遠く離れた東北地方が震源地であった事を後から知り、この数倍もの恐怖をあじわった宮城、福島の人達に心が痛んだ。
でもその夜は全てが真っ暗で不謹慎ながらほんとに星が綺麗だったんだ。俺は何度も繰り返す余震の中ギターを弾いていた。バッテリーの切れかけた携帯電話に映しだされる小さなテレビの映像を見ると心が壊れてしまいそうだった。
あれから半年が経ち、あの日を機に俺のまわりでは音楽を辞めるってヤツが何人もいる。 それくらい価値観が変わる日だった。多くの人は職を失い、モノを失い、人を失い、放射能におびえる。音楽は「夢見がちなヤツの道楽」に変わった。
もちろんそれだけではないのかもしれないが「自分に本当に必要なもの」と「そうでないもの」が少し解ってしまうような日だったのかもしれない。未だ世界は薄暗く、それでも毎日、世界の誰かが歌っているのが本当に心強く同じミュージシャンとして誇らしく感じた。音楽はとまらないんだなって思ったら涙がでた。
俺はまだ歌いたい。音楽は光だ。この薄暗い世界を照らす光なんだ。本当は一歩先だってよく見えない。だから「俺はここにいるよ」って必死に光る。もし明日、世界が真っ暗になってもそのいくつもの小さな光は足元を照らしてくれる。
俺はひとりじゃないね。キミもひとりじゃない。声が出るなら歌うんだ。さあ、もう一度ギターを持てよ。そこに商業的な音楽の成功など必要あるかい?
東北関東大震災で被害にあわれた皆様、本当に心よりお見舞いを申し上げます。そして亡くなった方々にはお悔やみ申し上げます。ほんの少しでも明日に繋がるような希望や、これまでと同じ顔で笑える様にオレ達はこれからも支援を続けていきます。本当の復興に向けて共にがんばりましょう。

LIVE HOUSE Mag-Net 店長 / 高取宏樹

執筆者プロフィール

酒の量は減ってきました。あいかわらずS.P.NPOWERというバンドもやっております。

現状

この度の東日本大震災発生時、弘前市を含む津軽地域の直接の被害は少なく、停電が約一日続いた程度でありました。当店もそれなりに揺れはしたものの、建物被害もほとんど見当たらなかったです。たった一日の停電でしたが、沿岸部の惨状・原発事故の情報が与えた動揺を、十二分に加速させました。震災直後は、ツアーバンドや地元バンドのキャンセルも相次ぎましたが、なんとか乗り切り、今に至っております。
地元音楽関係者の間に、当初広がった心の動揺(ふさぎ込みや悲観論)も、ある程度の落ち着きを見せ、心の傷との戦いが続いております。他方、震災により浮き彫りになったそれ以前までから横たわる様々な課題とも、対峙せざるをえなくなり、音楽を奏でる意味・ライブハウスの存在意義、をより深く考えながら実践していくことが、求められております。

メッセージ

津軽の城下町・弘前は、本州の北辺に位置する、こじんまりとした街です。そんな小さな街にある、天井が高くて(映画館を改装しております)、ガラーンとドデカイ空間を有する、ちょっと怪しい雰囲気の店が当店です。多種多様な地元バンドが、日夜切磋琢磨しておりますので、どうぞ遊びに来てください。

LIVE HOUSE UNITY なでしこJAPAN / GK三河貴美子

執筆者プロフィール

独身2?才。「どすこい! テキーラ!」仮免許中!

現状

この度の東日本大震災発生時、弘前市を含む津軽地域の直接の被害は少なく、停電が約一日続いた程度でありました。当店もそれなりに揺れはしたものの、建物被害もほとんど見当たらなかったです。たった一日の停電でしたが、沿岸部の惨状・原発事故の情報が与えた動揺を、十二分に加速させました。震災直後は、ツアーバンドや地元バンドのキャンセルも相次ぎましたが、なんとか乗り切り、今に至っております。
地元音楽関係者の間に、当初広がった心の動揺(ふさぎ込みや悲観論)も、ある程度の落ち着きを見せ、心の傷との戦いが続いております。他方、震災により浮き彫りになったそれ以前までから横たわる様々な課題とも、対峙せざるをえなくなり、音楽を奏でる意味・ライブハウスの存在意義、をより深く考えながら実践していくことが、求められております。

メッセージ

津軽の城下町・弘前は、本州の北辺に位置する、こじんまりとした街です。そんな小さな街にある、天井が高くて(映画館を改装しております)、ガラーンとドデカイ空間を有する、ちょっと怪しい雰囲気の店が当店です。多種多様な地元バンドが、日夜切磋琢磨しておりますので、どうぞ遊びに来てください。

Thunder Snake ATSUGI 店長&ブッキングマネージャー / 長島 啓介

執筆者プロフィール

ペイース。店長の長島です。優しく暖かく、縦社会を継承したいと思ってます(笑)嘘です。下克上歓迎!! MINOR LEAGUEのギターもやっております。

現状

3/11はリハーサル中で、揺れが凄かったので一時中断しましたが、その後の余震もありその日は公演は中止にさせて頂きました。ライブハウス自体には特に被害はなく営業体制は整ってましたが、相次ぐキャンセル・計画停電などによりライブが出来ない状態でした。計画停電のない日はPAや照明を使わずフロアライブなど、電力を抑えるライブを行ったり電飾などを消しての営業でした。特にうちは計画停電に悩ませられました。一番心残りなのが3月なので卒業ライブイベントなどが中止になった事でした。自分自身も石巻の被災地に出向き現状を見てきましたが、元通りに戻るのはまだ時間が掛かると思います。しかし被災地域の人達はこちらが思っているより元気でたくましく、こちらが自粛ムードでは申し訳ない感じです。なのでサンダースネイクは今やれる事を徹底的にやろうとスタッフ一同心がけております。

メッセージ

いつも東名高速で厚木インターは知っているけど降りた事はないであろう『本厚木』ですが、今年は勇気を出して(笑)降りてみて下さい。案外、都内から近い本厚木。遠いイメージはありますが旅行気分でロマンスカーに乗って遊びに来て下さい!! 厚木はシロコロ、家系ラーメンだけじゃない!!

秋田 CLUB SWINDLE ブッキング / 白鳥 大介

執筆者プロフィール

PA、照明、他、マルチにこなします。秋田のロックバンド"黒"でも活動中。

現状

3/11の地震発生時は幸い目立った被害はありませんでした。しかしその後3月中のイベントは軒並み中止となり、4月以降も影響しました。ただ4月~5月頃までにかけて空いた日程は地元のバンドの力で埋めて頂きました。秋田は決してバンド人口が多いとは言えませんが、地震で秋田が元気を無くしているときに地元のバンドが元気をたくさん発信し、募金等も積極的に呼び掛けてくれました。あのとき力をくれた秋田のバンドには本当に感謝しております。復興には多大な時間がかかると思います。復興ムードも一時のブームで終わることがないよう、音楽を通じて引き続き呼び掛けていきたいです。

メッセージ

ライブを見たときの“かっこいいな”とか“楽しいな”とか、そういうシンプルな感動や興奮は間接的でも絶対に人のパワーになると信じています。そして復興を行うのも全て人の手です。元気がないときは是非ライブハウスに遊びにきてください!!

秋田 LIVESPOT2000 オーナー店長 / 岩谷 さえこ

執筆者プロフィール

秋田生まれの秋田育ち。生粋のあきたこまち(ドや)。うふっと笑うと全てうまく行ってた頃がなつかしいお年頃。

現状

現状は震災前とほぼ変わりません。最初から自粛はしませんでしたが、2回の停電には参りました。 今、普通に営業出来てることに感謝してます。
地震後の津波、福一の事故と大きな打撃を受けている日本ですが、当初は『自分のできることをやろう』という想いだけでした。その気持ちを共有出来る秋田のバンドマン達とスタート出来たことを誇りに思ってます。世界の終わりのような映像が日々アップされる中で、今、ここはライブが出来るではないか。自分がもし被災した立場だったら、東北全域がヘコンでたらもっと悲しいだろう。元気な場所があったらそれは希望につながるだろう。と思ったわけです。そのまま突き進みました。

メッセージ

ライブハウスは♪音&音♪というインディーズ専門のレコード店がスタートになり、今に至っております。いろんな方々にお世話になり、ご迷惑もおかけしました。今は箱だけの営業をさせて頂いております。 ぜひ、遊びに来て下さい。

本八幡THE 3rd STAGE まさかの副店長 / 岡島壮士

執筆者プロフィール

2008年からこの世界に。右も左も分からず副店長になりました。

現状

3/11当日は高校生の卒業イベントでした。続行するか否か話し合い決行に踏み切りました。ライブ当日に向け練習を重ねてきた子達にライブをやらせてあげたかった。ただそれだけでした。キャンセルはもちろん、計画停電、店舗ビルの水道管に亀裂が入りステージ上の水漏れ…。2月~3月に改装工事をし3/8にライブハウスと併設のスタジオがOPENにもかかわらず、相次ぐ二次災害。出演者、イベンター側と話し合い何をすればいいのか考えていました。こんな時に…と多くの批判や賛同がありました。それでもバンドマンは最高のライブをする。ライブハウスは最高の1日を提供する。やれることはひとつなんですよね!

メッセージ

現在はすっかり通常通りの営業に戻っています! 個人的なことですが陸前高田に実家があり、今回の震災で跡形も無く流されました。実際現地にも行きました。何も無い。だけど元気なんですよ! こんな時だからこそ! 元気な地域がやらないといかんです!!

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