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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第12回

私が客員講師を務める茨城音楽専門学校で開催している『SOUND PRODUCE&PROMOTIONセミナー』今年は10月25日に、perfume、きゃりーぱみゅぱみゅ、capsuleなどの制作に関わっておられる音楽プロデューサー中脇雅裕氏を講師にお迎えして行われました。第一部は中脇氏による講演、第二部は私も加わった対談形式で、中身の大変濃い大充実の内容でした。

前回、前々回と2回に渡りお送りしてきたエンジニア萩谷真紀夫氏との対談、後編です。

hagiya

樫村(以下、樫)レイテンシーがなくてバランスの良いモニター環境が構築出来たら、次はクリックがポイントかな?

萩谷(以下、萩)クリックをテーマとして取り上げたら、興味を持つ人が結構いるんじゃないですか?

樫)バンドのマルチレコーディングでは必ずクリックを使うと思っている人が多い気がするけど、本当に必要かなぁって思うことがたまにある。

萩)同じくです。

樫)クリックを使ったほうがリズムが安定するのは言うまでもないけど、必死にクリックに食らいつくんじゃなくて、余裕で合わせられるくらいのレベルじゃないとね。演奏が正確でも守りに入った感じになって、結果として、おとなしいこじんまりした音源になる傾向がある。

萩)バンドの雰囲気とか、方向性とか、ジャンル、スキルも含む経験値によっては、かえって使わないほうが味のある音源になることも多い気がします。

樫)アンダーグラウンド系のレコーディング、例えばオールドスクールのハードコアとか初期パンク、R&R、ロカビリー、サイコビリーなんかは、バンドと相談してわざとクリックなしで録ることもぼちぼちあるね。

萩)僕も昔、パンク系のロックバンドでドラムやってたんでわかります。駆け出しの頃、樫村さんのスタジオで録ってもらった時は、クリックなしでしたよね、確か。

樫)ああそうだったっけ、なつかしいね(笑)その音源の勢いは相当あったように憶えてるな。

萩)普段の練習、バンドでも個人でも、クリックをじっくり使った徹底的な練習をしたあとに、本番ではあえてクリックなしで臨むバンドもいます。全員が身体にしみこむまで徹底してクリックと向き合ってるから、相当なグルーヴを醸し出してる。

樫)熟練の技だよね。逆に、クリックを使っててもグル―ヴィーな演奏が出来るバンドは、録っていても本当に気持ちいいんだよね。

萩)こういう場合は、かぶりなしの3リズム一発録りで、後で歌入れしてもノリの良いテイクが録りやすくなりますね。

樫)音楽的でかつ攻めのRECね。プロとアマの差が出る。

萩)同期系のバンドについてはどうですか?僕はワンパートずつのバラ録りで、ノリや雰囲気を出すのって意外と簡単じゃないと思ってるんです。特に自宅録音で、ベースやキーボードのラインものを録る場合。

樫)同期の作り方も含め、一番こだわりたい部分だね。年々ジャンルを問わず、同期を取り入れてるパターンは増えてるから。

萩)ドラム打ち込みの場合まで含め、ライブでも生バンドと混じりにくいんですよね同期って。レベルも本当にピンキリで。PAに頼る前に、よっぽど上手に作りこまないとね。

樫)アレンジとか音色がしっかりしてても、オーディオ化する時に差がつくね。そしてセルフRECにおける第一関門って、録る時の「ディレクション」だと思う。

萩)当然といえば当然だけど、経験値は大きいです。プロの現場を経験してる人がいるのと、いないのとでは差がでますね。作業の進行具合とか、アーティストのメンタルケア、演奏力や録り音の限界の見極め、楽器の状態やチョイスの仕方とか、細かいところなんですけど結果大きな差になる。

樫)本格的なレコーディングを経験しないとわからない点なんだけど。だからこそ、こういう時代でもレコーディングスタジオの存在意義はまだまだあるんじゃないかな。

萩)最近はドラムだけレコスタで録って、あとは自宅で録るっていうのも多いです。僕もやりますけど。
こういうパターンもセルフRECと呼んでよいのか迷いますが。

樫)何にせよ「録り」が良ければMIX、マスタリングも絶対楽になるし、編集も最低限で済むと。

萩)本来のレコーディングの姿ですよね。

樫)可能であればだけど、少しでも有名なバンドのレコーディング現場を見学するのが一番勉強になるね。

 

【今月のちょいレア】
Symetrix 「528E VOICE PROCESSOR」

kongetu-rea

90年代前半に発売されたマイクプリ、EQ、ディエッサー、コンプ、エキスパンダーまで装備しているチャンネルストリップ。英国の有名アーティストも本番で使用している、知る人ぞ知る隠れた名機。当スタジオではモディファイしてさらにパワーアップしています。Vo.はもとよりスネア、ギターなどのRECにも効果大。特にコンプとディエッサーの効き方はワイルドさの中にもジェントルな質感が残る、他のどの製品にもないワン&オンリーな特徴を持つ逸品です。

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオ チャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター。
レーベルWhirlpool Records(ワールプールレコード)、brittford(ブリットフォード)主宰。
専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

 

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

niente「unlace」
niente
ポーティスヘッドやチャーチズ、J-シューゲイザー要素が加味された雰囲気のポストロック、ニューウエーブバンドのマキシシングル。ギターよりもキーボードの押し出し感が印象的。

Quartet of Death「Sorrow of Darkness」
Quartet of Death
北欧シンフォニックメタル+南米デスメタルが合体したネオラウドスタイル。ハイトーンのKOZAWAの存在感がすごい。世界20か国同時発売のラウドコンピレーションアルバムにも参加している。

後藤優子「HIKARI」
gotoyuuko
仙台在住の女性シンガー。JAZZ、クラシック、ポップスの名曲を、時代を超えてハイモダンに再 現。ソプラノながらワン&オンリーな声質が特徴。SHIZUKA氏の知的なトラックメイキング力も随所から感じられる秀作揃い。

Retorighter「蒸気ランプ」
retolighter
エレクトロを取り入れたガールズギターロックバンドのアルバム。曲のバリエーションはもとより、大担なシンセアレンジが最大の聴きどころ。サカナクション、テレフォンズ好きにおすすめ。

shabby「それでも、咲くのを待っている。」
shabby
定番のギターロックサウンドに、Vo.EHARAの独自の声質と歌の世界観がカレイドスコープのようにカラフルに絡む。初々しさの中に多大な可能性を感じる一枚。無心で楽しんで欲しい。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延のセルフRECはプロRECを越えられるか? -第11回-

―――前回に引き続き『神聖かまってちゃん』などのエンジニアリングを手掛ける萩谷真紀夫氏との対談です。

hagiya

樫村(以下:樫)ただ個人的に、RECにおけるプロとアマの差はまだまだあるなあ、と気づく部分が何点かある。

真紀夫(以下:真)それは何ですかね?だいたい予想は出来るんですけど。

樫)まずは目の前でなっている音を「そのバンドの雰囲気を出しながら、曲調に合わせてどれだけリアルに収録出来るか」ということかな?

真)非常に当たり前のことですが、レコスタで録っても意外と簡単に出来そうで出来ない所ですね。

樫)そう、だからセルフRECではもっと難しくて。機材が使いこなせれば良く録れるはず、と思っている人が多い気がする。

真)僕なんかはProtoolsHD、HDX、高級アウトボードなんかをいろんなレコスタでふんだんに使って作業することも多いんですけど。バンドの理想形をとことん深読みして、ようやく彼らのストライクゾーンに入る感じです。逆にプライベートスタジオでは、樫村さんもおっしゃってたヤマハのAWシリーズを使って作業したりしますね。

樫)録り音と演奏の雰囲気をいい感じで収録するって、ハードルは決して低くないんだよね。ここをきちんとクリアしていかないとMIX、マスタリングなんかの後処理では対処しにくくなるから。

真)録り・MIX・マスタリングの全工程を一貫した流れとしてとらえるべきで、一つ一つを別作業と考えないほうがいいですね。

樫)その方がいい結果を生むことが多いね、基本的には。プラグイン100個差して、100時間MIXしても及ばない部分もあると思う。録り音がなんか違うなぁと思っていながらも、MIX・マスタリングで何とかなるだろうという発想は極力避けるべき。

真)そうです、録りは非常に重要です!

樫)プロレベルの録り音に近づけるには高級マイクプリアンプを最低一台、出来れば複数台用意したいところだね、MANLEY、VINTECH AUDIO、Millenia、TUBE-TECHクラスの。中古でも10万円以上することが多いけど。

真)ADコンバーターと同じくらい重要な「音の入り口」の部分ですもんね。それに加えてマイクケーブルや電源なんかも当然こだわりたい。予算は結構かかるけど妥協できない点です。

樫)あと、録る場所もとても重要だよね。セルフREC前提で考えると、リハスタ、学校の部室あたりが一番可能性として高いでしょう?どこでやるにしても、最低12〜13畳以上の広さと、2.5メートルの天井高は必要かな。反響も少なめの方が取り組みやすいことが多い。ドラムセットの下に吸音マットを敷いたりするのも試す価値はありだね。

真)僕もたまに、リハスタでインディーバンドのRECを手伝うことがあるんです。

樫)機材を持ち込んで録るから、こだわるポイントは決まってるよね。

真)ええ、その場合メインの機材は意外にシンプルで、ProtoolsLeか、ヤマハのAWだったり。電源やヘッドホン周りのモニターセクションは逆にいろいろこだわります。

樫)演奏の雰囲気を出すには、なんといってもミュージシャンが気持ちよくプレイできる環境づくりが第一だからね。プロとアマの差はこんな部分でも出るんだよね。

真)セルフRECだと、レイテンシーも含めて、モニターバランスが取れないで無理やり演奏しているってことも多そうですね。

樫)無理やり演奏してグルーヴとか雰囲気とか味が出るわけがない。オペレーションする人と、プレイヤー用のモニターは、それぞれ個別に取れたほうが良いね。ヤマハのAW2400は、まさに独立したモニターセクションが2つあって、レイテンシーもないし、電源やマイクケーブルにこだわれば音もなかなか良いし。PCよりも使いやすいというバンドマンもいるよ。

真)わかります、僕も2400ではないけどAWシリーズを2台持ってるんで。周辺機器を強化すれば本チャンでも十分通用すると思います。

樫)あと、出来ればモニターセクションにキューボックスも用意したいね。今、あんまり選択肢はないんだけど。

真)モニターの返り方一つで、演奏のダイナミクスも全然変わります。

樫)後処理では成し得ない「素晴らしいテイク」は、こういうことの積み重ねから生まれるんだと思う。

―――次号に続きます!

 

【今月の逸品】YAMAHA Subkick
yamaha-subkick
非常にユニークな形の、超低音収録用マイク。
バスドラはもとより、ウッドベース、ジャンベ、コンガ、ボンゴなどのパーカッション類の低音成分を収録するのにうってつけ。残念ながら最近生産終了になってしまいました。
個人的には是非、後継機種を出してほしい!

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター。Whirlpool Records(ワールプールレコード)主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

 

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

たなま『はじめの一歩』
tanama
ルーツにYUIを感じさせるシンガーソングライター「たなま」満を持しての1stミニアルバム。バックにomoinotakeを従え、シティーポップやAOR、ギターポップ色もさりげなく感じられる好盤。Shakarabitsも所属するNEON RECORDSより首都圏を中心に発売。

after the greenroom『Like a Blanket』
afterthegreenroom
アシッドマンを輩出したNormadic Recordsが放つ、洋楽の匂いを感じるオルタナポップバンドのフルアルバム。Vo.のYAMAMIを中心に全パートがセンス良く、同じベクトルで絶妙に絡む名盤。全国発売中。

蒼鷺は死なない『幸か不幸か』
aosagi
いなせな女性Vo.を前面に打ち出した、エモ・オルタナ色を含んだロックバンドのミニアルバム。曲のバリエーションが実に様々で「蒼鷺ワールド」をしっかり形成している。椎名林檎や大森靖子あたりが好きな人にもおすすめ。

ムーファ『Syndrome×Syndrome』
mu-fa
曲によってVo.が変わる多面性をもった、神奈川在住のギターロックバンドのミニアルバム。ルーツに少し欧米のR6R、モッズが感じられ、類を見ないキャッチ―なポップテイストを真摯に取りこんだ自信作。

ARUKANATA『Alchera』
arukanata
ハイトーンボイスが非常に特徴的なエモギターロックバンドのマキシシングル。アンダーグラウンド系から四つ打ちポップまで幅広い内容が純粋に楽しめる。全パートの変幻自在なサウンドスケープも追い打ちをかける、緻密かつまとまりの良いプロダクションがすごい。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延のセルフRECはプロRECを越えられるか? -第10回-

 

月日の経つのは早いもので、この連載も10回目を迎えることが出来ました。そこで今回・次回とゲストをお迎えして、特別対談形式でお送りします。

萩谷 真紀夫

対談をお願いしたのは『神聖かまってちゃん』のエンジニアリングを中心に、最近では『オワリカラ』の音源制作にも関わっているエンジニア / DJ / サウンドクリエーターの萩谷 真紀夫(はぎや まきお)氏です。

樫村(以下:樫)お久しぶりだね。

真紀夫(以下:真)こちらこそ。

樫:最近はレコーディング雑誌を中心にメディア露出が増えてますます勢いづいてるけど、寝る暇ある?

真:一応ありますよ。

樫:最近の仕事の話を聞いてると、REC、MIX、マスタリングは当たり前で、楽曲提供やPAまでやったり、ギターもサポートで弾いたり本当に大活躍で。

真:いやいや、仕事の種類と時期がいい感じでバラケてますから。たまにパンクしそうになりますけど。

樫:真紀夫くんの場合はスキル、センスだけじゃなくて、人間として柔軟性があるからクライアントが増えるんだと思う。とにかく頼みやすいオーラが全身からにじみ出てる(笑)。

真:そうですかぁ?(笑)。

樫:ところで今、セルフRECをやってる人がプロ・アマ問わず本当に多いよね。

真:年々すそ野が広がっていますよね。アプリでもそれなりのセルフRECが出来る時代ですから。

樫:環境によっては、プリプロと本チャンの差がなくなってきているのは確かだし、演奏のテイクもプリプロの方が良くて採用される場合も、昔より増えてきてる気がする。

真:僕が関わってる仕事も、そのパターンが増えています。

樫:プロのミュージシャンが本気でプライベートスタジオを作ったら、レコスタで録るよりも味のある音や演奏がゲットできる可能性が確実に増えてきてる。

真:そうですね、電源やハイグレードなマイクプリ、モニタースピーカーの環境整備や、部屋鳴り、メインDAWの充実、というポイントを押さえるスキルと予算があれば。あとはマニアックな機材やアマチュア用の機材を好きにモディファイして使う人も結構いますよね。

樫:プロだとそういったポイントをしっかり押さえて、好き勝手やる人は多いね。

真:僕も意外と高価じゃない機材で作業することも多いですよ。

樫:だけど結果として、プロの音になる。いろんな経験を積んで来てる点と、周りにプロフェッショナルな人材が豊富にいるから出来る部分もあるよね。もちろん例外もたくさんあると思うけど。

真:とりあえず僕の周りには、チープな環境でもここをこうすれば悪くならない、といったポイントをたくさんつかんでいる人が多い気がします。

樫:まさに、この連載を読んでる人たちが一番知りたい部分(笑)。

真:でも樫村さんもよく言ってるように、RECはマイクの種類や立て方なんかも重要だけど、その“前”の部分。例えば当たり前ですけど、演奏力、作曲・アレンジ力、楽器の状態やチョイス、配置、チューニング、音作り、部屋鳴り、電源なんかの環境を、あるレベル以上にクリアしていないと。後処理ではどうにもならないことが、まだまだ存在するということですね。

樫:そうなんだよ、今は機材が発達しすぎているから、MIXやマスタリングといった後処理でどうにでもなると思ってる人が限りなく多い。

真:昔よりは確実にツブシが効く部分が増えていて、後処理でやれる幅も格段に向上している部分もありますが。

樫:特にドラムと歌なんかは顕著だよね。

真:数あるプラグインでピッチを直したり、トリガー系ソフトでドラムの音を差し替えたり、波形もずらすテクニックが年々充実してきてますよね。

樫:ただ、個人的にRECにおけるプロとアマの差は、まだまだあるなあと気づく部分が何点かある。

真:それは何ですかね?

 

――――続きは次号で!

 

コラム第一回でもご紹介したバンド「marigold」只今、最強のメンバーで新音源を制作中。

 

【今月の逸品】コンデンサーマイク SE Electronics SE2200aⅡ

名称未設定

予算5万円以下で一押しのコンデンサーマイクは?と聞かれたら、迷わずこのマイ

クをお薦めします!プリアンプ、マイクケーブル、電源環境次第では、20万円以上

の高級マイクと比べても音質的には何ら遜色ありません。コストパフォーマンスが

高い逸品です。実勢価格3万円台でありながら単一指向性だけではなく、無指向性、

双指向性に対応しているマルチパターンの優れモノ。ボーカル録りはもとより、ピア

ノ、アコギ、ドラムのアンビエントなど幅広く対応します。

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオ チャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター。
専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
2015年10月25日(日)13:00~ サウンドプロデュース&プロモーションセミナー開催!
今回はperfume、capsule、きゃりーぱみゅぱみゅ、三戸なつめなどを世に送り出した音楽プロデューサー中脇雅裕氏をゲストにお迎えします!参加は無料ですが、参加人数把握のため予約をお願いしています。
予約は、会場の茨城音楽専門学校(茨城県水戸市)まで。
予約電話番号 TEL 029-248-0521(茨城音楽専門学校)  受付時間 9:00 - 19:00 【土・日・祝日を除く】

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

tokage「LOVE THE LIFE」

 

 

tokage『LOVE THE LIFE
メジャー出身のSAKI、Eiriを中心に結成された、MTV的洋楽っぽさもあるJ-POPROCKバンドのミニアルバム。透き通る声質に力強さが加味された歌と、楽器の音域の棲み分けが好印象。TV神奈川を始めとするラジオ、雑誌などメディアへの露出も多数あり。全国発売中。

Firmament「空色」

Firmament『空色
直球爽やか系ギターロックバンドのミニアルバム。ギターのリフをはじめ各パートの音色やフレーズの凝り方が、さりげなく核心をついているのが面白い。リズムパターンや声質と、歌詞との絡み方が絶妙です。

 

Hello Music「hello hello hello」

Hello Music『hello hello hello
 天然のボカロとアニソン声が真っ先に耳に飛び込んでくる、女性ボーカルのギターロックバンド。ボーカルエフェクトいらずの独自の質感と、ファンタジーな曲調の絶妙な組み合わせがいい感じ。声優好きの人も要チェックの音源。

 

BLACK MINDS GROW「DIVE!」

BLACK MINDS GROW『DIVE!
エモロック、パワーポップをベースにしたギターロックバンドのシングル。爽やかさの中に、力強さや頼もしさを感じるストレートなロックを前面に展開。倍音が豊かな歌声と、歌詞の奥深い世界観が売り。はじけるライブも魅力的。

新村けんぞう「シルクハット リアリティー」

新村けんぞう『シルクハット リアリティー
ジェリーフィッシュ、チープ・トリック、ポール・マッカートニー&ウイングス、クイーン、ラーズ等ポップスの巨頭に多くの影響を受けているシンガー、新村けんぞうが放つ最新アルバム。洋の東西を問わないポップスの黄金律がぎっしり詰まった自信作は、良い意味で聴き手を選ばない。

S.H.E「ScHrödingEr」

S.H.E『ScHrödingEr
千葉テレビ『応援美女子』エンディングテーマであるリード曲を含む、渾身の4thアルバム。東北屈指の音楽フェス“いしがきMUSIC FESTIVAL2015”にも出演など話題に事欠かない。Tasting heads productionとbrittfordのダブルネームで2015年10月全国発売。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延のセルフRECはプロRECを越えられるか? -第9回-

 自分の周りのミュージシャン、アレンジャー、エンジニアの間で、プレミアムオーディオインターフェイスを購入する人が増えています。具体的にはAPOGEE Ensemble、RME Fireface802、UNIVERSAL AUDIO Apollo8などで、価格帯は20~30万円台といったところでしょうか。見た目の高級感はもとより「インプット、アウトプットの充実度」「マイクプリやAD/DAのクオリティーの高さ」「レイテンシーの少なさ」などアナログ、デジタルを問わずどれをとってもプロレベルな内容です。
 
 先日、知り合いのサウンドクリエイターのプライベートスタジオで、ある検証をさせてもらいました。
題しまして

【ハイエンドMTR vsプレミアムオーディオインターフェイス!】

 彼のプライベートスタジオは約20畳のブースに加えて約10畳のコントロールルーム、そしてAKAIのハイエンドMTR DPS24(前回のコラムでも取り上げました)とAPOGEEのEnsemble+DAWの両方を所有しているというすばらしい環境です。今回はあえてこの20畳のブース内に録音機材を持ち込み、リハスタで録るのと同じような条件でドラム録りを決行しました。
ドラムのセッティングは1タム、1フロアタム。キックにSHURE Beta52、スネアの表・裏にSHURE SM57×2、タムにE/V 468、フロアタムにE/V 868、オーバートップにAKG 451×2、ハイハットにジョーミークJM27、
ライドシンバルにAudio Technica AE3000、アンビエントマイクにノイマンU87 Aiの合計マイク数10本で、マイクケーブルにはすべてWhirlwindを使用します。

 まずは【AKAI DPS24】と【APOGEE Ensemble+Protools12】でそれぞれ同じ曲を録ってみました。
両方とも24Bit 48Kという条件です。
【AKAI DPS24】はマイクプリが12ch分搭載されているので、本体だけでそのまま録音。【APOGEE Ensemble+Protools12】はマイクプリが8ch分なので残り2chはUNIVERSAL AUDIO 710を追加で使用しました。
モニターにクリックと仮ギター、仮ベースの音を返すので、キューボックスはコニシスを使用。ヘッドホンはCADのドラマー用ヘッドホンDH100を使いました。

 第一印象は「レイテンシーが双方ともほとんどない」ということ。演奏に協力してくれたドラマーも、キューボックスのバランスさえうまく取れれば非常に快適にプレイできると言っていました。

 気になる音質は【APOGEE Ensemble+Protools12】の方が低音から高音のレンジが広く、少し勝っている感がありました。中音域の密度の濃さや存在感は【AKAI DPS24】の方がロックぽくて好きかもというのが、現場にいた3名(樫村、スタジオ所有者であるサウンドクリエイター、演奏してくれたドラマー)の評価です。

 スネアとシンバル系のきらびやかさについては、キャラの違いはあれど双方ともに高級感がありました。このように、現行品におけるトップレベルのインターフェイスの【APOGEE Ensemble+Protools12】ともいい勝負をする【AKAI DPS24】は、ハードウエアMTRの完成形の一つである、と言ってもよいのかも。

 次回は「神聖かまってちゃん」や「オワリカラ」の制作に携わる、エンジニア萩谷 真起夫氏との対談を掲載予定です。

headphone

【今月の逸品】CAD DH100
 現存する録り専用ヘッドフォンの中では、イヤモニに匹敵するトップクラスの遮音率を誇る「次世代ヘッドフォン」。
ドラマー用にチューニングされており、低音がやや強めな設計となっている。MIX向きではないが、クリックの音漏れを気にせずプレイに専念できるのは非常にうれしいところ。価格帯も1万円を切るロープライス!ギターアンプ、ベースアンプを大音量で鳴らしても、音の回り込みが少なく演奏しやすいので、ギタリスト、ベーシストにもおすすめです。

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオ チャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records(ワールプールレコード)主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。

きゃりーぱみゅぱみゅ、perfume、capsuleなどを世に送り出したプロデューサー、中脇 雅裕氏をお迎えして「サウンドプロデュース&プロモーションセミナー」を開催します。
日時:2015年10月25日(日)13時~
会場:茨城音楽専門学校(茨城県水戸市)
参加料は無料です!
詳しくはスタジオチャプターハウス ホームページhttp://www.chapter-trax.com/をご覧下さい。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
 
カイザーストロングバーツ
カイザーストロングバーツ『ベアナックル』 
70年代を中心とした米・英国パワーポップへのオマージュが深く感じられる、現代版リアルロックの超推薦盤。ライブのテンションも最高。                
 
ライトニングブリザード          
ライトニングブリザード『Look Back Inside』
メロコア、スクリーモ、ハードコアの中間の立ち位置にいる、ラウド系バンドのマキシシングル。低音域から高音域までの各パートの音色と、音域の分け方が素晴らしい。メロディーラインの良さが楽曲全体のクオリティーを押し上げている。   
 
国吉亜耶子and西川真吾Duo 
国吉亜耶子and西川真吾Duo『momently』
超実力派アコースティックデュオのセカンドアルバム。フジテレビ「Non-Fix」のエンディングテーマになった(M)6を含む大作。前作に加えてエレクトロな要素も入っている。全国発売中。
 
水鏡
水鏡『夕掛け』
プログレを中心としたシンフォニックロックの決定盤。国内だけでなくフランスを中心とした欧米でも評価が高い。プログレの大物バンドとの対バンも数多い。日本、フランスで同時発売中。
 
Plat Home Nine
Plat Home Nine『adagietto』
ゆったりとした空間に激情的なサウンドスケープがさりげなく共存する、童謡オルタナティブロックバンドのマキシシングル。ジャケットデザインも含めてアート性の高いこの作品は、アンダーグラウンド系ロックバンドのちょっとした理想形かもしれない。全国発売中。
 
かげわたり
かげわたり『Light Behind the noise of night』
ドイツ人のミヒャエルをメンバーに含む、ポストロックバンドのアルバム。シガーロス、ヨラ・テンゴに通じるオーセンティックな雰囲気が実に心地よく、リピート聴きしたくなる。全国発売中。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? -第8回-

travers

TraversRoss Produced by BErgamot

オーストラリア出身のアーティスト・ミュージシャン・ダンサー。そのパフォーマンスは音楽と感情豊かな表現などを通して多くの人達を魅力し、SNOOP DOGG、PHARREL WILLIAMSなど様々なアーティストやミュージシャン・ダンサーと共演している。現在は"SUPER SONIC SHAPE SHIFTERS OF AWE"を結成し、チャプターハウスにて新作レコーディングを行っている。

最近海外のクライアントとの仕事の際、話題になるのが「アナログ盤を本気で作るミュージシャンが、プロ・アマ問わず増えてきている」事です。カセットテープも再注目されており、デモ音源はカセットでリリースするアーティストが欧米、特にアメリカ西海岸で急増しています。

アナログブームは音楽機材業界にも影響を与えており、ヴィンテージになりつつあるデジタルハードウエアなどのレアな商品に、プレミアがついて以前より価格が急騰しています。例えばローランドのリズムマシンTR808、909、イーミュレーターのサンプラーSP1200、AKAIのサンプラーMPC2000シリーズ、MPC3000シリーズなど。

今回取り上げる録音機器は、AKAIが2002年に満を持してリリースしたハイエンドデジタルMTR DPS24です。この機種は以前の連載でも取り上げたKORG D32 XDやYAMAHA AW2400と肩を並べる最高級品で、当時DPSシリーズの最高峰と言われていました。発売当時は約50万円と、最高峰の名にふさわしい価格でもありました。専用機に匹敵する12ch分のマイクプリアンプ、同じくAKAIサンプラーの名機MPC4000以上の高品位ADコンバーターは秀逸で、ProtoolsHDのインターフェイスと比べても遜色ないクオリティーを保っています。

ADコンバーターとは、アナログ(ANALOG=A)信号をデジタル信号(DIGITAL=D)に変換する重要なパーツです。マイクやラインインプットの内側に装備され、このパーツのクオリティーで音質の大部分が決まります。逆にDAコンバーターはデジタル(D)をアナログ(A)に変換するパーツで、オーディオインターフェイス、デジタルミキサー、デジタルMTR、デジタルキーボードのメインアウト・パラアウト・ヘッドホンアウトの内側に装備されています。

話をDPS24に戻しましょう。DPS24は当然レイテンシーもほとんどなく、どんなに速くて細かい演奏でも的確に録音できます。又、オプションのデジタルカードが装着されていれば、同時に24トラック録音出来てしまうところが断トツにすごいところです。ライブレコーディングであっても、よほど大編成のバンドでなければ対応できると思います。24ビット96Kにも対応しているのでハイレゾRECも可能です。(この場合は12トラック録音・再生)

S.H.E

S.H.E[Struggle-Head,Emergence] 2015年10月末にTASTING HEADSと当スタジオレーベルの新ブランドbrittfordからダブルネームで全国リリースする音源を制作中。

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】

STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオ チャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records(ワールプールレコード)主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。

スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

音楽制作専門誌SOUND DESIGNER 2015年2月号に、コンプレッサーについての記事が掲載されています。

http://www.sounddesigner.jp/contents/2015/02/01/index.shtml

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

Omoinotake
Omoinotake 『Yourbs

最先端のシティーポップに独自の解釈を施して、オンリーワンな世界を創り出しているニューカマーバンドのマキシシングル。山下達郎、小田和正や渋谷系好きにおすすめの一枚。アナログ盤も発売予定。

colorcolor
ColorColorCrown 『Craft

同期をふんだんに取り入れたEDMギターロック、パワーポップバンドのミニアルバム。女性Vo.と、ボコーダーを使った男性Vo.によるツインボーカルの歌い回しと、歌詞・アレンジが実にカラフルなバリエーションを紡ぎだす。多彩なライブパフォーマンスも実に魅力的。

櫂
『櫂歌集』

ナイアガラトライアングル+くるり+サニーディサービス風なファンク・フォークロックバンドのマキシシングル。シティーポップやAOR風の曲もあり。リード曲「ヨット」は名曲中の名曲。

GEEKS
GEEKS 『PUNKLASSIC

以前の作品ではINCUBUSのプロデューサー、ジム・ワートを起用したGEEKS。メジャー第一弾となる今作は、クラシックの名曲達がスキャンダラスによみがえった、本人達いわく「超問題作」。パンクロックの新たな可能性が堪能できる。全国発売中。

Slow Peak Life
Slow Peak Life 『the bridge for tomorrow a girl from the past

東北最大規模のライブホール、RENSAマネージャー菊地氏の運営するADVANCE RECORDSが放つSPL、2ndアルバム。前作よりもソウル、ファンク、AOR色が強化された意欲作。全国発売中。

PINK MOON BABIES
PINK MOON BABIES Rock’a Moonlight』 

ベルギーを始めとするヨーロッパツアーも盛況に終わり、ますます波に乗るPMBの2ndアルバム。従来のポップR&R、ロカビリー色に歌謡曲テイストがふんだんに加味されて、全世代に届きやすくなった推薦盤。全国発売中。

the Carmin
the Carmin 『The Man With The Crimson Gun
真っ赤なスーツがトレードマークのR&Rバンドthe Carminの20曲入りフルアルバム。10数年のキャリアを持つ彼らの集大成と言うべきこの作品は、ガレージサウンドをベースに、ギターロック、4つ打ちエモロックなどを盛り込んだ幅広い内容となっている。全国発売中。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延のセルフRECはプロRECを越えられるか? – 第7回-

 リハスタでセルフRECをする際、多くみられる「ノートパソコン+インターフェース+DAW」の組み合わせ。納得いく機材を一揃えするにも費用が…と悩む方も多いと思います。そこで選択肢にぜひ加えて欲しいのが、前回からご紹介しているハイエンドMTRです。「MacbookPROクラスのノートパソコン+16INのインターフェイス+ProTools12クラスのDAW」を全てそろえる金額の10分の1程度で、手に入ります。あくまでも中古市場で運よく見つけることが出来たら、の話なのですが…。ヤマハAW2400をはじめとする中古のハイエンドMTRのほとんどが、当時の定価の2〜3割程度になってきています。状態さえ良ければ、今が購入の狙い目ではないでしょうか?
 
 パソコンベースのDAWが当たり前になってきている今、なぜ生産終了になっているハイエンドMTRをおすすめするのか? 「現在中古市場ではとにかく安い」のも理由の一つですが、その他にも利点はたくさんあるのです。AW2400を例に挙げてみます。
 
1・ レイテンシーがほとんどない。16トラックを同時録音しても変わらない。
2 ・ヘッドホンなどのモニターセクションが充実している。
3 ・デジタルミキサー、MTRなどを使ったことのある人なら直感的に操作しやすい。
4 ・24トラックをフルに使用しても、飽和状態になりにくい。
5 ・ホスピタルグレードの電源ケーブルを使用すると、音の密度が濃くなり音質が向上する。電源ケーブルのメーカーや品番によって、音のキャラクターを多少変えられる。
6 ・内蔵CDドライブが優秀。バウンスしても変化がほとんどない。
7 ・内蔵エフェクターのクオリティーが高い。中にはプラグイン以上のものも。
8 ・ライブレコーディングに使用することを考えると、環境によってはPCより動作が安定し、落ちにくい。
9 ・素材の取りこみ方にもよるがライブで同期を使用する際、会場の音響次第でバンドサウンドになじみやすい。
 
 しかしながら約10年前の機材だけに「バージョンアップができない」、「ネットに接続できない」、「アプリが使えない」、「タブレットに接続できない」といった欠点もあります。他にも「画面が小さく編集しづらい」、「トラック数が24まで」、「シーケンス機能がない」など、パソコンを使った作業に慣れてしまった今では不自由さを感じる部分も。そして現在主流の機材と比べると、数字上のスペックが低いことも否めません。
 
 長所、短所を具体的に並べてみると一長一短です。しかしパソコンベースのシステムには成し得ない「使い勝手の良さ」と「音質のクオリティー」は、セルフRECに真剣に取り組んでいる皆さんに是非体験してほしいと思います。これはあくまでも個人的な意見ですが【録りをAW2400で行い→リアパネルのUSBポート(2.0)からWAVデータをPCに送り→DAWでMix、マスタリング】といった流れがおすすめできる方法です。
 
 余談で非常にマニアックな使用方法を。【DAWでMixしたファイルをAW2400にインポートもしくはREC→AW2400でマスタリングして内蔵ドライブでマスターを作成する】これだと、DAW内でバウンスしてPCの内蔵ドライブでマスター作成する通常のやり方よりも飽和感がなく、バランスの変化も少なく音に粒立ちがあり、立体感も維持できますよ。
 

先日当スタジオでレコーディングを行った、5人組ポップロックバンドllenChrome

先日当スタジオでレコーディングを行った、5人組ポップロックバンドAllenChrome

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオ チャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records(ワールプールレコード)主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
音楽制作専門誌SOUND DESIGNER 2015年2月号に、コンプレッサーについての記事が掲載されています。
http://www.sounddesigner.jp/contents/2015/02/01/index.shtml

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
 
The Muddy Dogs
The Muddy Dogs 『MEMPHIS』
メンフィス、ニューオーリンズがルーツのR&R、ロカビリーバンドのミニアルバム。ヨーロッパのテイストも少し含まれた豊かな音楽性が売り。先日、イギリスツアーも成功させ、今後の活躍がますます期待される。
 
滑稽のドア
滑稽のドア『貘』
ハードコア、オルタナ、ガレージが混じった究極の2ピースロック。ベースレスでも、極限までいろいろな可能性を探求しているロックの進化系。  
 
大村みのり
大村みのり『七つの子』
音大卒業後に女優になり、その後童謡の弾き語りシンガーに転身というユニークな経歴をもつ。活動10周年という節目に完成した、15曲入り1stアルバム。特にピアノアレンジが秀逸。
 
しまほっけハーフ
しまほっけハーフ『WE ARE しまほっけE.P.』
ファンクとソウルを基調とした、J-POP系バンドのマキシシングル。卓越した演奏力とファンキーな声質、コミカルな歌詞がバランスよく融合。
 
Infinity∞Throat
Infinity∞Throat
ボーカルとピアノの2人組女子ユニットのマキシシングル。あうんの呼吸が織りなす一体感が心地よい。歌とピアノという非常にシンプルな構成ながらフレーズの引き出しが多彩で、駆け抜けるように聴けてしまう爽快な一枚。 
 
CANDELASTAR
CANDELASTAR『SPACE AND TIME』
New OrderやCUT&PASTEあたりを彷彿とさせる、エレクトロユニットのシングル。NEW WAVE、ブルックリン勢、チルウエーヴ、オルタナティブを昇華させた独自の空気感を持った意欲作。
 
空の音
空ノ音『l∞p/My Treasure』
男女ツインヴォーカルを前面に押し出した、少しポップパンク要素も入ったギターロックバンドのシングル。演奏の雰囲気、楽曲のバリエーション、ツインヴォーカルの声質が絶妙なマッチング。総合力で勝負のニューカマー。
 
COMezik
COMezik『無修正の感情』
少年ナイフ、ゼルダ、シーガルスクリーミングに通じる世界観を醸し出しながらも、既存の枠組にはまらないネオ・オルタナガールズバンドの1stミニアルバム。全曲に通じるハイテンション感、深読みしたくなる歌詞などスリル感たっぷりの一枚。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか?-第6回-

 第5回の「バウンスと光学ドライブ」の話に予想以上の反響があり驚いています。メディアを使わずネット上でデータをやり取りすることが当たり前になってきた中、圧縮・解凍すると音質、画質が変化してしまうことが多くみられます。重要なマスターデータほど細心の注意を払うべきです。現在のところ、一番音質・画質の変化を少なく抑える方法は「信頼できる光学ドライブとメディアの使用」が有効な手段の一つだと思います。
 
 今回は約10年前に発売されたYAMAHAの最高峰デジタルMTR「AW2400」を取り上げます。この製品もやはり生産完了品であり残念ながら中古市場で探すしかないのですが、他のAWシリーズとは一線を画するプロ仕様でお勧めポイントが多数あります。
 
 表面上のスペックは「アナログカード増設、16bit使用時で最大16tr録音/24tr再生、24bit使用時で8tr録音/12tr再生」と、最新機材と比べると見劣りする印象は否めません。しかしお気づきの方もいらっしゃるでしょう。「民生機の24bit/96k」よりも「プロ機の16bit/44.1kの方が、音が太く感じられるケースもあるのです。電源や周辺機器(ワードクロックなど)を強化すると特にそう思います。
 
 こちらの写真は私の所有している実機です。

YAMAHA 「AW2400」のリアパネル部分。10年前の機材とは思えない充実のインプット、アウトプット群。特に1、2chのインプットはキャノン、フォーン入力だけでなくインサートの入出力まで装備。コアキシャルのデジタル入出力やMIDI/IN/OUT、パソコンとWAVのやり取りをするUSB2.0といったかなりの重装備。DAW環境では実現しにくいフットスイッチ出力の存在があることにより、REC、ライブ両方に対応しやすくなっている。

YAMAHA 「AW2400」のリアパネル部分。10年前の機材とは思えない充実のインプット、アウトプット群。特に1、2chのインプットはキャノン、フォーン入力だけでなくインサートの入出力まで装備。コアキシャルのデジタル入出力やMIDI/IN/OUT、パソコンとWAVのやり取りをするUSB2.0といったかなりの重装備。DAW環境では実現しにくいフットスイッチ出力の存在があることにより、REC、ライブ両方に対応しやすくなっている。


 モニターセクションが2系統(ヘッドホン用・モニター用)あるので、オペレーターとプレイヤーがそれぞれ独立したモニターを聴きながら作業することが出来ます。更に、オムニアウトという「様々なトラック信号を任意でアサイン出来る」便利なアウトプットが4系統あります。これにより「ステレオマスター1系統」と「個別のモノラル4系統」を、プレイヤーのキューボックスに自由自在に返せます。結果、演奏のクオリティーがアップし、音楽的なテイクが録りやすくなります。

 例えばG./Ba./Dr.のトリオ編成ファンクバンドで、3リズムを一発録りするとしましょう。仮ギターはライン2系統(クリーンの生音とアンプシミュレーターで作った音色)で、2トラックを使用します。

リアンプ図

 この方法だと、一発録りで同時録音可能な16トラックのうち、実質12トラック分をドラムの為に使えます。使用するマイクとプリアンプを良いものにすれば、後は録音する技・ドラマーのスキル・楽器の状態・部屋鳴り次第で相当なところまで持っていけます。私の持っている機材の中から一つ、tfpro p2(写真)などはこのようなRECに最適なプリアンプと言えます。

 2003年発売、電源部とインプット、アウトプットを極限までモディファイした、当スタジオのメインアウトボードの一つ。NEVE、SSL、APIなどのいいとこ取りしたようなキャラクターが万能な一台として常に活躍中。

 2003年発売、電源部とインプット、アウトプットを極限までモディファイした、当スタジオのメインアウトボードの一つ。NEVE、SSL、APIなどのいいとこ取りしたようなキャラクターが万能な一台として常に活躍中。

 話は戻って今回の主役、デジタルMTR YAMAHA 「AW2400」なら16tr同時録音してもレイテンシーは発生せず、ギターの16ビートカッティングなどもリズミカルに弾きやすくなると思います。この点に関してはインターフェイス+DAW(ネイティブ環境)の組み合わせよりも優れている可能性があります。つまりヘッドフォンやキューボックスに返ってくるモニターバランスの良さと、レイテンシーが発生しないことが、後での編集では出しにくい「グルーヴィーで有機的な演奏と空気感」を生み出す第一歩なのです。
 
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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
チャプターハウス 樫村
STUDIO CHAPTER H[aus]代表/レコーディングエンジニア/サウンドクリエーター/Whirlpool Records主宰。全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。スタジオチャプターハウスについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
 
★第一回目でCD紹介した『S.H.E.』
3月レコーディングの新曲「マリーゴールド」が、千葉テレビ『応援美女子』(毎週火25:30〜)のエンディングテーマとしてオンエアされています。視聴地域の方、チェックしてみてください。
 
★第二回目でCD紹介した『THE SALA』と『Cuicks』の楽曲が、音楽制作専門誌SOUND DESIGNER 2015年6月号の特集「音を大きくする曲の仕上げ方」でサンプル曲として使用されています。
http://www.sounddesigner.jp/contents/2015/06/sp/index.shtml
 
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
 
Coo
Coo『囚われの身e.p』
楽曲、演奏力、ステージング、キャラクターと、どれをとっても非常にバランスの良いギターロックバンド1stシングル。16ビートのシティーポップ風な曲もあり、バリエーションも豊か。今後の動向をチェックしたくなる要素が満載。
 
DARUMA7
DARUMA7『響』
滋賀出身の歌謡ハードロックバンドのミニアルバム。Vo.里田氏のハイトーンボイスと、アメリカを中心としたハードロック要素、和風のメロディーラインが激しく絡み合うニュースタイルなラウド系。一度観たら脳裏に焼き付くこと請け合いのライブパフォーマンスも圧巻。
 
GLEAM GARDEN
GLEAM GARDEN『Brillant Nightmare』
「神聖かまってちゃん」も所属する大御所レーベル「パーフェクトミュージック」が放つパンクバンドの1stフルアルバム。オールド、ニュースクールの垣根を飛び超えた深い精神性の中に衝撃が満載。
 
国吉亜耶子and西川真吾Duo
国吉亜耶子and西川真吾Duo『antenna』
かつて(株)ユーキャンのCMで使用された「path」を含む音源第一弾。国吉のケルティックなVo.、透明感かつエネルギッシュなピアノ、そしてスタイリッシュかつタイトなドラムワークが高次元で融合しています。
 
QS HumBramar
QS HumBramar『Under the Bark』
荒削りな演奏の延長線上に、初期のイギーポップ&ストゥージズ風の歌声と、NWパンクやオルタナ、グランジを連想させる全パートの音色が、オーバーグラウンドでせめぎ合う新感覚ロックバンドのミニアルバム。ブレない独自の世界観は彼らの最大の武器と言える。
 
THE CREATOR OF
THE CREATOR OF『LIGHT』
ソニー在籍時、スリップ・ノットとマリリン・マンソンのオープニングを務めたこともある、ラウド系ポストロックバンド11年ぶりのアルバム。TOOLやモグワイ、シガーロスあたりが好きな人におすすめの一枚。
 
CREEM
CREEM『BLACK RIVER』
ヴィンテージなロックンロールと90年代ガレージロックを通過した、2010年代3ピースバンドのシングル。他のルーツミュージックも有機的に昇華した、全パートの音の切迫感が聴き手に持続性のスリルを与える。
 
DUTCH DADDY
DUTCH DADDY『I’m your DADDY』
日本のギターロックとUKロックの関連性をさらに強化した意欲作。新曲に加え過去の曲をリメイクしたことで、一曲一曲の粒立ちが鮮明になり、演奏力の向上も手伝ってアルバム全体にストーリーが見えてきた。特別なギミックなしでも堅実に何度でも聴ける名作。2015年6月全国発売。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? -第5回-

 毎度マニアックな方向に進んでいるこの連載、今回はバンドマンからよく尋ねられる質問から話を進めてみたいと思います。それは「DAW内でMixやマスタリングをする際、Mix中プレイバックした時と、バウンスして2Mixにした時の音やバランスが結構変わってしまうのだが、何故なのか」ということです。
 
 バウンスというのは「データの書き換え」なので、たとえ等倍速で処理したとしても100%同じ音やバランスにはならないのです。等倍速の場合は、環境によってはさほど気にならないケースもあるのですが…等倍速以外、数倍速(4倍、8倍など)でバウンスすると、良くない方に変化することがほとんどです。
 
 次に多い質問が「バウンスしたデータをCD-Rに焼く際に、内臓ドライブや外付けドライブで焼いたらなんだか音が変わった」ということ。思い当たる方もいらっしゃるでしょうか?
 
 内臓、外付けに関わらずパソコン関連メーカー製のドライブは、CD-RだけでなくBlu-rayやDVDまで作成できるハイブリットドライブが普通なので、音響メーカー製CD-R専用ドライブと比べるとパーツや内部の設計から明らかに違う場合が多いのです。また「焼く速度が上がると反比例して音質が下がる」傾向にあるので、出来れば等倍速で焼きたいところですが、パソコン関連は残念ながら4倍速以上のドライブが主流…これではますます音が悪くなるばかりです。
 
 さらに、電源アダプターにも原因があります。デジタルと言えども、ドライブやパソコン本体に付属する電源アダプターにより音の質感が左右されます。断言しましょう、アダプターも含む電源で音質は変わります。当スタジオで電源がアダプター形式の外付けドライブを使用する場合は、付属のアダプターを使わず特別に制作した電源ボックスを使って、質感の変化を最小限に食い止める努力をしています。
 

これがチャプターハウスの秘密兵器、特注の電源ボックス!

これがチャプターハウスの秘密兵器、特注の電源ボックス!


 
 音響メーカーの作るCD-R専用ドライブやマスターレコーダーが、なぜ音質・質感の変化が少ないのか。それは専門メーカーならではのノウハウを投入した回路設計と、高品位なパーツを使用しているからではないでしょうか。PC内臓ドライブ(特にノートパソコン)とは明らかにクオリティーが違います!ちなみに前回の連載で触れたKORGの最高峰デジタルMTRであるD32XDには、ハイクオリティ―なCD-Rドライブが搭載されていました。さすがKORG!
 
 当スタジオではTEACのCD-Rドライブに加え、先日中古でYAMAHAから十数年前に発売された外付け業務用CD-R/RWドライブ(CDW-F1DX)を購入しました。この最強の音質を誇るドライブと、先程の特製電源ボックスを組み合わせて等倍速でマスターCD-Rを作成すると(当スタジオの環境においては)DDPファイルにするよりも音が良い気がします。ただ、現行商品ではこのような音響メーカー製のCD-Rドライブは生産終了になっているものがほとんどで、わずかに出回る中古品を狙うしかないのが現状です。
 
 「Mix中のプレイバック時の音と、バウンス2Mixデータの音質の差」「そのバウンスした2MixをCD-Rに焼くときの音質の変化」この2つの悩みを同時に解決する方法は1つあります。プロユースのマスターレコーダーを使用することです。おすすめはFOSTEXのCR500やTASCAMのDA3000あたりでしょうか。オーディオインターフェイスやハイエンドのデジタルMTRのマスターアウトから、出来ればDIGITALでマスターレコーダーのインプットにプログレードのケーブルを接続し、録音レベルを見ながらアウトプットの音を聴きMixをするのです。この方法であれば「データの書き換え」ではなく「ハイグレードな録音」なので、音質の誤差はなくなります。モニタースピーカーの設置のノウハウと、音質の差を聴きとる良い耳とセンスも必要です。
 
 余談になりますが、USBスティックも品物によりいろいろ質感が変わります。そして、音楽データがバウンスの際やCD-Rドライブに焼くと音が変わる、ということは写真、デザイン、映像のデータも当然変化するのです。良い音・良い作品を追求したければ、ポイントを押さえた機材・周辺機器購入は必要不可欠です。そして、それらを使いこなすための努力と工夫、良い耳、良いセンスを磨きましょう!
 
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チャプターハウス 樫村

【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオ チャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records(ワールプールレコード)主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
音楽制作専門誌SOUND DESIGNERにてCDレビュー執筆中。同誌2015年2月号に、コンプレッサーについての記事が掲載されています。
http://www.sounddesigner.jp/contents/2015/02/01/index.shtml
 
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましてはweb上の音源や動画ではなく、是非「CDで」こだわりの音質をチェックしてほしい!!!
 
雨ニモ負ケズ
雨ニモ負ケズ「暁光」
アラバキロックフェスにも出場経験のある、東北を代表する女性Vo.ピアノオルタナロックバンドのマキシシングル。ギターレスとは思えないワイルドさの中に、抒情性と文学的要素が垣間見える。
 
ゴッサム団長
ゴッサム団長「ONE MORE TIME,KISS ME
ウッドベース担当兼Vo.の団長率いる、80’s J-ロカビリーバンドのミニアルバム。中音域に特徴がある歌声と各曲とのマッチングが素晴らしい。
 
The Stephanies
THE STEPHANIES「BIRTHDAY
女性三人組のR&Rバンドミニアルバム。Vo.Gのシロを中心にメンバー全員が曲によってメインVo.を務めるバリエーションがおもしろい。絶妙なコーラスワークにも注目。
 
LITTLE RED PUZZLE
LITTLE RED PUZZLE「TRINITAS」
G.Vo.のユウを中心としたR&R、ガレージロックバンドのアルバム。中低音域に響くハスキーボイスが特徴的。全国発売中。
 
STAING INDOORS
STAING INDOORS「ゲンダイ・トーキョータワー」
盛岡出身のギターロックバンドのマキシシングル。トーキョータワーをキーワードにしたシティーポップ調の楽曲群と、甘い歌声の共存が魅力的。
 
Yummy
Yummy「テトラト」
埼玉在住の男女二人組ユニットのマキシシングル。渋谷系にも通じるオシャレな曲調とボイストレーナーも務めるVo.SUZUの歌唱力が堪能できる作品。
 
TEEN’S CIRCUIT
コンピレーションアルバム「TEEN’S CIRCUIT」
水戸・いわきのライブハウスSONIC企画の、ティーンズ6グループによるコンピレーションミニアルバム。ギター弾き語りから青春パンク、ギターロック、パワーポップ寄りのへヴィネス系まで幅広い内容が素直に楽しめる一枚。2015年5月全国発売。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? -第4回-

先日、楽曲制作用メイン機材のモンスターワークステーションを下取りに出し、新たにRoland FA08という88鍵ワークステーションシンセを購入しました! 楽曲制作の際は当然ソフト音源も多用していますが、やはり一つ一つの音の存在感、リアルタイムの操作性、マスターキーボードにも成り得る鍵盤の弾きやすさなど、ハードウエアの機材はいいなあと改めて実感しています。

さて、前回はネイティブ環境の音楽ソフトに起こりがちな「レイテンシー」について触れてみましたが、今回はハードウエアのデジタルMTR(特に24トラック以上の上位機種)に焦点を当ててみます。

2015年4月の時点で24トラック以上の現行品MTRは、ZOOM R24とTASCAM DP-32SD、X48MKⅡの三機種(X48MKⅡは定価50万以上で、どちらかといえば完全業務用モデル)ですが、生産終了品の中古まで考えると選択肢は多少増えるかと思います。

例えばKORGのヒット商品D3200の上位機種であるD32XDは、発売当時の定価が40万近く(!)オプションのアナログカードを使えば16bit 48KHZまで16トラック同時録音出来て、32トラックまで再生できるというフラッグシップモデルです。内臓エフェクトも高品位で、へたなプラグインより密度が濃いものが多く存在感もあります。24bit96kにも対応していますが、やり方次第で16bit48kでも相当なところまでいけます。ムービング・フェーダーや高音質のCDドライブ、USBによるPCとの連携だけでなくプリアンプ、ADコンバーター、回路設計などこだわり満載。音質も下位機種のD3200より高級感があるように感じます。当然レイテンシーはほとんどなくAUX OUTも4系統あるので、FURMANなどのキューボックスの本格的なモニター返し(メイン1系統、パラ4系統)にも対応しています。録りだけならば「ノートパソコン+DAW+オーディオインターフェイス」の組み合わせよりも作業しやすいかも知れません。

例えば3ピースのバンドなら、リハスタにこのD32XDを持ち込んで
【仮ギター(ライン)×1】
【ベース×2(例:DIとアンプのラインアウトの2系統)】
【残り13トラックをドラム】
という割り当てが簡単にできます。加えてオヤイデ、モンスタークラスのパワーケーブル、マイクケーブル、シールドと中級クラスのマイクセット、マイクプリがあれば、ある程度以上のクオリティを保ったセルフRECが出来ます。ただし、モニターバランスはしっかりとってくださいね。使用するリハスタの広さや響き、楽器の状態でも状況は左右されますが…あとは演奏力と楽曲次第!!
D32XDは、たまに中古市場でも見かけますので(価格は新品16ch同時録音可能なインターフェイスと同じくらいか?)興味のある方はがんばって探してみてください。状態のチェックもお忘れなく。

次回は、他メーカーのハイエンド機材に触れてみたいと思います。

川嶋志乃舞
キラキラシャミセニスト 川嶋志乃舞
三味線にピアノ、チェロ、バイオリンを加えた楽曲のレコーディング
風景。東京芸大邦楽科在学中のプロ津軽三味線奏者で、4度の全国大会優勝を誇る彼女、今年2月には武道館で行われた「みんなの夢AWARD2015」オープニングアクトも務めました。

しまほっけハーフ
しまほっけハーフ
FUNKやSOULを基調としたJロックバンド。
様々なパーカッション類を持ち込んでのレコーディングを
行いました。

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樫村 治延
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオ チャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター。1998年、地元茨城県日立市にレコーディングスタジオ「チャプターハウス」を設立。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。Whirlpool Records(ワールプールレコード)主宰。音楽制作専門誌SOUND DESIGNER 2015年2月号に、コンプレッサーについての記事が掲載されています。
http://www.sounddesigner.jp/contents/2015/02/01/index.shtml
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

 『BLEEDING ON THE COAST』
BOTC 『BLEEDING ON THE COAST』
80年代〜90年代前半のNew Yorkハードコアを継承するイカツイ五人組の1stシングル。敢えてオールドスクールにこだわる硬派なこの音源、一聴の価値あり。

pinkmoon
PINK MOON BABIES 『MOON PARTY』
80年代歌謡曲とロカビリー、R&Rがカラフルにクロスオーバーする女子3人組バンドの全国発売中1stアルバム。今年春〜夏にかけてベルギーを中心にヨーロッパツアーを敢行する。

synchronicity
シンクロニシティ『タイムリミット』
キーボードもフィーチャーしたガールズギターロックバンドのシングル。Vo.朋香の声質、一曲一曲の存在感と味のある演奏力が有機的に絡む。時代とシンクロした次世代Jロック注目株。

gokuaku
極悪いちご団『祭の華』
ハイレベルな演奏力とイロモノネタがハイパーに炸裂する下町FUNK歌謡ロックバンドのフルアルバム。一度見たら脳裏から離れない強烈なライブパフォーマンスも最高です。全国発売中。

『A Journey from JonasLane』
DUTCH DADDY『A Journey from JonasLane』
ちょっとアナログライクなJロックと、ブリットポップの中間的なギターロックバンドのミニアルバム。 西洋からのルーツをさりげなく取り入れながらも邦楽の深いところを追及しており、オリジナリティーを感じとれる。現在2015年6月全国発売のフルアルバムを制作中。

hoshino
星野由美子『ソレイユ』
ジャズ専門誌「JAZZLIFE」をはじめ、関東圏のFM、AMラジオ局からも大きくPUSHされたJAZZ、ボサノバのニュースタンダードアルバム。オルケスタ・デル・ソルや熱帯JAZZ楽団のメンバーも参加した話題作。全国発売中。

yuge
ゆげ『ゆげ見る少女じゃいられない』
ラジオパーソナリティーでもある「ゆげ☆すずき」氏率いるコミックダンスロックバンドの新作。活動歴10年を超え、渋谷クワトロから始まった全国ツアーも絶好調。バンドのコンセプトも振り切っており万人受け間違いなし。全国発売中。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延のセルフRECはプロRECを越えられるか?-第3回-

暑さ寒さも彼岸まで、と申しますが、まだまだ寒さが勝るこの頃、いかがお過ごしですか? 寒い日こそ、インドア派! じっくり楽曲制作やセルフRECに専念してはいかがでしょう(笑)。
さて、前回はパソコン、ソフト、オーディオインターフェイスなどの「セルフRECの必需品」についてざっくりと説明しました。今回は、それらについて「さらに
掘り下げてみます。

パソコン、ソフト、オーディオインターフェイスの組み合わせは、昨今かなり自由自在になってきています。価格に比例して音質、インプット・アウトプット数、付属するエフェクトの種類が増減します。レイテンシーも、価格に応じて差が出る部分の一つと言えます。

【レイテンシーとは??? 】
パソコンやデジタル機器でオーディオデータを扱う際に起こる、生演奏とモニターのズレ“音の遅れ”です。
リアルタイムの演奏に対して、返ってくるモニターの音が遅れるので演奏がしづらいという現象が起きます。

ProtoolsHD/HDXや、ハードウエアのデジタルミキサー、デジタルMTRなどにも、当然ほんのわずかですがレイテンシーが存在します。ただ本当にわずかなので、気にする人があまり多くありません(プロも含め)。
少し問題になるのがネイティブ環境のソフトです。

【例】
CUBASE PRO8、Logic ProX、SONAR X3、Studio One、Protools11(ネイティブ)など。

一昔前のソフトのような「ワンテンポ遅れる」くらい露骨なズレはなくなってきているものの、プロをはじめ経験値の高いユーザーはレイテンシーについていろいろな工夫をしています。

●バッファー、サイズの量を加減してレイテンシーを調整
↓↓↓
少ないトラック数には有効な方法

●各ソフトのダイレクトモニター機能を使う
↓↓↓
よく知られた手法だがエフェクトが使えなくなるケースもあり

エフェクトが使えなくなる問題を解消するには、DAWの前にミキサー(エフェクト内臓タイプ)を接続し、直接ミキサーのモニター音を聞きながらミキサーのエフェクトを代用という方法もあります。これならば、3ピースバンド程度のパート数を一発録りしても、さほどレイテンシーに神経質にならずに済むと思います。この方法でしたらトラック数の多い録音にも対応しやすくなります。
セルフRECに手慣れた方々は、レイテンシー対策として「ちょっと高価だけどドライバーが優秀なインターフェイスを使用する(例:RMEシリーズなど)」などして、ズレが許容範囲になるよう調整していることも多いと思います。

他にもいろいろな手法がありますが、「各プレーヤーが気持ちよく演奏できて、生き生きとしたテイクが録りやすい環境を構築すること」を忘れないように心がけましょう、ではまた次回。

[写真上]先日当スタジオでレコーディングを行った57pictures。UK/ポストロック/シューゲイザーを基調とした邦オルタナバンドです。

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
kashimura_web
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオ チャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター。1998年、地元茨城県日立市にレコーディングスタジオ「チャプターハウス」を設立。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。Whirlpool Records(ワールプールレコード)主宰。音楽制作専門誌SOUND DESIGNER 2015年2月号に、コンプレッサーについての記事が掲載されています。
http://www.sounddesigner.jp/contents/2015/02/01/index.shtml
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

The Echo Dek

The Echo Dek『Some Glastonbury』
これぞUKロックな曲から、初期NWの香りを残す曲、上質なソウルの趣ある曲ありと、どれをとっても高い音楽センスを感じさせる。TAMTAMなどを輩出しているmaoと、チャプターハウスレーベルであるwhirlpool Recordsのダブルネームで、2015年4月1日全国発売。

COMezik

COMezik『他人』
千葉が生んだ型破りなモンスターガールズバンドの3rdミニアルバム。US、カナダのラウドロックをベースに、イカ天的イロモノネタが魑魅魍魎にハングアップする。MVも強烈! 一見の価値あり。2015年3月25日全国発売。

falls from the skies

Falls from the skies『Unseal』
ギターロックとエモロックの中間の立ち位置にある3ピースバンド3rdミニアルバム。内省的な歌詞の中にも明るさを感じるアンバランスさが魅力的。流行に左右されない佳曲揃い、じっくり聴きこんでほしい。

tsubamellia

Tsubamellia 『my mood』
さわやか、且つ優等生的ギターロックバンドのマキシシングル。決して派手さはないが、音楽性の幅の広さ、懐の深さを感じさせる。何度も聴きたくなる充実した1枚。

Loa Chestnuts

LoaChestnuts 『Make it one's one 』
良い意味での「荒削り」さが魅力のメロコアバンド1stマキシシングル。1つのイメージに固まらない様々なカラーを持ち、18歳らしい勢いと、年齢らしからぬアイディアが共存したユニークさが魅力。

mash

mash『mash』
西海岸系とカナディアンメロコアの雰囲気を感じるパンクバンドのシングル。1曲1曲のドラマティックな展開と疾走感が素晴らしい。

return trip

return trip『橋の向こう』
男女のツインボーカルギターロックバンドのシングル。ボーカル2人の声質の組み合わせがさまざまなバリエーションを見せており絶妙な味となっている。ぜひアルバム単位でも聴いてみたいものです。

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