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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第35回

前回掲載した「ライブでも埋もれにくい同期音源の制作法」に、予想以上の反響をいただき驚いています。今回はユニットにおける同期音源について考えてみたいと思います。

いわゆるユニットと呼ばれる活動形態は「ドラム奏者がいない」「ドラム奏者もベース奏者もいない」など、そのユニットごとに「どのパートを同期に任せるか」が変わります。

「同期は単なる打ち込み音源」ではなく「同期も重要なメンバーの一人」として、生演奏に溶け込ませ、しかも埋もれない工夫をしたいものです。

どのパートを打ちこむにしても、同期音源の作り方は基本的には前回と一緒です。
【ソフトの内部でオーディオ化せず】

【一度インターフェースのアナログアウトから、ラインケーブルで同期のオーディオ信号を出し】

【DI付きのマイクプリやチャンネルストリップを通して、DAWのオーディオトラックに録音する】

ドラムがいないユニットにとって、打ち込みドラムの音は、同期パートの中でも一番重要視される部分です。そして、こだわりの同期音源を制作するのと同じくらい「アウトプット」にこだわりましょう。PA側のミキサーチャンネル数が許す限りメインOUTに加えて、パラレルOUTを出来れば2~4系統欲しいところです。

OUTPUTの接続方法を2例示します。


YAMAHA AW2400(ハイエンドMTR)

【裏】

MTRを使用する場合は、出来れば24トラック以上の物か、16トラック×2台を同期させて使用したいところ。とりあえずパラアウトが4パート出せれば問題なし。

また、OUTPUT数が少ない機種(オーディオインターフェース、MTRに関わらず)の場合は、以下のような方法で出力します。


もちろんラインケーブルは、ベルデン、モンスタークラス以上のものを使用してください。


【大学生バンドのセルフREC】
6曲目 ミスチル風バラード ♩=75

こだわりが少しずつ増しながらも、セルフRECは進んで行く。

使用ギターは前回と同じくレスポール

アンプ / Diezel

マイクプリ / Neve5024

アンプのTREBLEを少々下げて音色を丸くし、1B、2B、3Bにチャレンジ。
1テイク録ってみると、音色が少し丸すぎたので、ギター本体のトーンを少々上げ再チャレンジ。音色は良くなったのだが演奏がよれる。その後も前半が走り気味だったりで、なかなか通してOKにならず。結果2テイク目後半と5テイク目前半をつなぐことにしてOKとした。
2B、3Bも同じフレーズなのでこれをコピペする。

サビはクランチ気味の音色にしたいので、Diezelのクランチチャンネルにして対応。ギター本体の音色はそのままに、とりあえず録ってみた。音色は良いがまだまだ粗い。テイクを重ねるも前半後半通しての良いテイクが出ない。前半、後半の良いテイクをつないだが、クロスフェードがうまくいかず納得がいかない。ようやく8テイク目をぎりぎりOKとし、2サビ3サビもこれをコピペした。休憩の後、アウトロ録りへ。


【今月のMV】 Cuicks 「The Pastel Song」
ポスト・コーネリアスと呼べそうなフレンチNewWave色漂う、ダンサブルなフューチャーポップ。音楽制作誌SOUND DESIGNER 2015年6月号の特集「音を大きくする 曲の仕上げ方」の課題曲としても取り上げられた。


【今月のちょいレア】 Roland MV8800
名機MV8000をグレードアップさせた後継機種としてリリースされた。音質、操作性に優れ、非常に創作意欲を掻き立てる。


 

【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!


The Mash 「 ファースト 」
60年代から現在に至るまでのR&Rを広義に解釈したThe Mashを、総結集させた
フルアルバム。リズム&ブルース、アシッド・フォーク、オルタナ、NewWave的エッセンスが
炸裂する攻めの一枚。2017年12月全国発売。



OKAZAKI QUINTET 「 After – glow 」

モダンジャズの新気鋭TERUKO OKAZAKIが率いる、ハイレベルなクインテットの1st
アルバム。全曲オリジナルで演奏のテンションも高く、ライブ感100%で聴きどころが満載
だ。


Heretique Aventure 「 Episode.1~独裁への道 」
Gothic Horrorを中心に、エレクトロ、NewWaveなどが多次元にクロスオーバーする佳
曲ぞろいのアルバム。2人の少年が交差する、未来都市を舞台に繰り広げられるストー
リーがテーマになっている。


ギミックバニージャンクション 「 ロンリークレイジータンバリン 」
ローリングストーンズ、フェイセズ、レイナード・スキナードなどのR&Rを土台にしたロックバ
ンドのアルバム。リズム&ブルースのルーツを探るには最適の一枚。全国発売中。

NUTS 「 Not Urban The Stick 」
カナダ、北欧、オーストラリアのモダンへヴィネス系と、90年代のニューヨークハードコア、ス
クリーモの融合系ともいえる。ラウド系新機軸とも呼べる新たなアイデアが堪能できる。


 
【お知らせ】

☆SOUND & RECORDING MAGAZINE2017年12月号「音響設備ファイル(P136~)」に当スタジオを取り上げて頂きました、是非ご一読ください。
https://www.rittor-music.co.jp/magazine/detail/3117121007/
☆2017年11月19日(日)13時~15時 茨城県水戸市の茨城音楽専門学校にて、毎年恒例の音楽プロデュースセミナーを開催!参加は無料ですが、電話で予約をお願いします。予約・お問い合わせ 029-248-0521 茨城音楽専門学校まで!

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