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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? -第4回-

先日、楽曲制作用メイン機材のモンスターワークステーションを下取りに出し、新たにRoland FA08という88鍵ワークステーションシンセを購入しました! 楽曲制作の際は当然ソフト音源も多用していますが、やはり一つ一つの音の存在感、リアルタイムの操作性、マスターキーボードにも成り得る鍵盤の弾きやすさなど、ハードウエアの機材はいいなあと改めて実感しています。

さて、前回はネイティブ環境の音楽ソフトに起こりがちな「レイテンシー」について触れてみましたが、今回はハードウエアのデジタルMTR(特に24トラック以上の上位機種)に焦点を当ててみます。

2015年4月の時点で24トラック以上の現行品MTRは、ZOOM R24とTASCAM DP-32SD、X48MKⅡの三機種(X48MKⅡは定価50万以上で、どちらかといえば完全業務用モデル)ですが、生産終了品の中古まで考えると選択肢は多少増えるかと思います。

例えばKORGのヒット商品D3200の上位機種であるD32XDは、発売当時の定価が40万近く(!)オプションのアナログカードを使えば16bit 48KHZまで16トラック同時録音出来て、32トラックまで再生できるというフラッグシップモデルです。内臓エフェクトも高品位で、へたなプラグインより密度が濃いものが多く存在感もあります。24bit96kにも対応していますが、やり方次第で16bit48kでも相当なところまでいけます。ムービング・フェーダーや高音質のCDドライブ、USBによるPCとの連携だけでなくプリアンプ、ADコンバーター、回路設計などこだわり満載。音質も下位機種のD3200より高級感があるように感じます。当然レイテンシーはほとんどなくAUX OUTも4系統あるので、FURMANなどのキューボックスの本格的なモニター返し(メイン1系統、パラ4系統)にも対応しています。録りだけならば「ノートパソコン+DAW+オーディオインターフェイス」の組み合わせよりも作業しやすいかも知れません。

例えば3ピースのバンドなら、リハスタにこのD32XDを持ち込んで
【仮ギター(ライン)×1】
【ベース×2(例:DIとアンプのラインアウトの2系統)】
【残り13トラックをドラム】
という割り当てが簡単にできます。加えてオヤイデ、モンスタークラスのパワーケーブル、マイクケーブル、シールドと中級クラスのマイクセット、マイクプリがあれば、ある程度以上のクオリティを保ったセルフRECが出来ます。ただし、モニターバランスはしっかりとってくださいね。使用するリハスタの広さや響き、楽器の状態でも状況は左右されますが…あとは演奏力と楽曲次第!!
D32XDは、たまに中古市場でも見かけますので(価格は新品16ch同時録音可能なインターフェイスと同じくらいか?)興味のある方はがんばって探してみてください。状態のチェックもお忘れなく。

次回は、他メーカーのハイエンド機材に触れてみたいと思います。

川嶋志乃舞
キラキラシャミセニスト 川嶋志乃舞
三味線にピアノ、チェロ、バイオリンを加えた楽曲のレコーディング
風景。東京芸大邦楽科在学中のプロ津軽三味線奏者で、4度の全国大会優勝を誇る彼女、今年2月には武道館で行われた「みんなの夢AWARD2015」オープニングアクトも務めました。

しまほっけハーフ
しまほっけハーフ
FUNKやSOULを基調としたJロックバンド。
様々なパーカッション類を持ち込んでのレコーディングを
行いました。

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樫村 治延
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオ チャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター。1998年、地元茨城県日立市にレコーディングスタジオ「チャプターハウス」を設立。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。Whirlpool Records(ワールプールレコード)主宰。音楽制作専門誌SOUND DESIGNER 2015年2月号に、コンプレッサーについての記事が掲載されています。
http://www.sounddesigner.jp/contents/2015/02/01/index.shtml
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

 『BLEEDING ON THE COAST』
BOTC 『BLEEDING ON THE COAST』
80年代〜90年代前半のNew Yorkハードコアを継承するイカツイ五人組の1stシングル。敢えてオールドスクールにこだわる硬派なこの音源、一聴の価値あり。

pinkmoon
PINK MOON BABIES 『MOON PARTY』
80年代歌謡曲とロカビリー、R&Rがカラフルにクロスオーバーする女子3人組バンドの全国発売中1stアルバム。今年春〜夏にかけてベルギーを中心にヨーロッパツアーを敢行する。

synchronicity
シンクロニシティ『タイムリミット』
キーボードもフィーチャーしたガールズギターロックバンドのシングル。Vo.朋香の声質、一曲一曲の存在感と味のある演奏力が有機的に絡む。時代とシンクロした次世代Jロック注目株。

gokuaku
極悪いちご団『祭の華』
ハイレベルな演奏力とイロモノネタがハイパーに炸裂する下町FUNK歌謡ロックバンドのフルアルバム。一度見たら脳裏から離れない強烈なライブパフォーマンスも最高です。全国発売中。

『A Journey from JonasLane』
DUTCH DADDY『A Journey from JonasLane』
ちょっとアナログライクなJロックと、ブリットポップの中間的なギターロックバンドのミニアルバム。 西洋からのルーツをさりげなく取り入れながらも邦楽の深いところを追及しており、オリジナリティーを感じとれる。現在2015年6月全国発売のフルアルバムを制作中。

hoshino
星野由美子『ソレイユ』
ジャズ専門誌「JAZZLIFE」をはじめ、関東圏のFM、AMラジオ局からも大きくPUSHされたJAZZ、ボサノバのニュースタンダードアルバム。オルケスタ・デル・ソルや熱帯JAZZ楽団のメンバーも参加した話題作。全国発売中。

yuge
ゆげ『ゆげ見る少女じゃいられない』
ラジオパーソナリティーでもある「ゆげ☆すずき」氏率いるコミックダンスロックバンドの新作。活動歴10年を超え、渋谷クワトロから始まった全国ツアーも絶好調。バンドのコンセプトも振り切っており万人受け間違いなし。全国発売中。

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