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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延のセルフRECはプロRECを越えられるか? -第9回-

 自分の周りのミュージシャン、アレンジャー、エンジニアの間で、プレミアムオーディオインターフェイスを購入する人が増えています。具体的にはAPOGEE Ensemble、RME Fireface802、UNIVERSAL AUDIO Apollo8などで、価格帯は20~30万円台といったところでしょうか。見た目の高級感はもとより「インプット、アウトプットの充実度」「マイクプリやAD/DAのクオリティーの高さ」「レイテンシーの少なさ」などアナログ、デジタルを問わずどれをとってもプロレベルな内容です。
 
 先日、知り合いのサウンドクリエイターのプライベートスタジオで、ある検証をさせてもらいました。
題しまして

【ハイエンドMTR vsプレミアムオーディオインターフェイス!】

 彼のプライベートスタジオは約20畳のブースに加えて約10畳のコントロールルーム、そしてAKAIのハイエンドMTR DPS24(前回のコラムでも取り上げました)とAPOGEEのEnsemble+DAWの両方を所有しているというすばらしい環境です。今回はあえてこの20畳のブース内に録音機材を持ち込み、リハスタで録るのと同じような条件でドラム録りを決行しました。
ドラムのセッティングは1タム、1フロアタム。キックにSHURE Beta52、スネアの表・裏にSHURE SM57×2、タムにE/V 468、フロアタムにE/V 868、オーバートップにAKG 451×2、ハイハットにジョーミークJM27、
ライドシンバルにAudio Technica AE3000、アンビエントマイクにノイマンU87 Aiの合計マイク数10本で、マイクケーブルにはすべてWhirlwindを使用します。

 まずは【AKAI DPS24】と【APOGEE Ensemble+Protools12】でそれぞれ同じ曲を録ってみました。
両方とも24Bit 48Kという条件です。
【AKAI DPS24】はマイクプリが12ch分搭載されているので、本体だけでそのまま録音。【APOGEE Ensemble+Protools12】はマイクプリが8ch分なので残り2chはUNIVERSAL AUDIO 710を追加で使用しました。
モニターにクリックと仮ギター、仮ベースの音を返すので、キューボックスはコニシスを使用。ヘッドホンはCADのドラマー用ヘッドホンDH100を使いました。

 第一印象は「レイテンシーが双方ともほとんどない」ということ。演奏に協力してくれたドラマーも、キューボックスのバランスさえうまく取れれば非常に快適にプレイできると言っていました。

 気になる音質は【APOGEE Ensemble+Protools12】の方が低音から高音のレンジが広く、少し勝っている感がありました。中音域の密度の濃さや存在感は【AKAI DPS24】の方がロックぽくて好きかもというのが、現場にいた3名(樫村、スタジオ所有者であるサウンドクリエイター、演奏してくれたドラマー)の評価です。

 スネアとシンバル系のきらびやかさについては、キャラの違いはあれど双方ともに高級感がありました。このように、現行品におけるトップレベルのインターフェイスの【APOGEE Ensemble+Protools12】ともいい勝負をする【AKAI DPS24】は、ハードウエアMTRの完成形の一つである、と言ってもよいのかも。

 次回は「神聖かまってちゃん」や「オワリカラ」の制作に携わる、エンジニア萩谷 真起夫氏との対談を掲載予定です。

headphone

【今月の逸品】CAD DH100
 現存する録り専用ヘッドフォンの中では、イヤモニに匹敵するトップクラスの遮音率を誇る「次世代ヘッドフォン」。
ドラマー用にチューニングされており、低音がやや強めな設計となっている。MIX向きではないが、クリックの音漏れを気にせずプレイに専念できるのは非常にうれしいところ。価格帯も1万円を切るロープライス!ギターアンプ、ベースアンプを大音量で鳴らしても、音の回り込みが少なく演奏しやすいので、ギタリスト、ベーシストにもおすすめです。

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオ チャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records(ワールプールレコード)主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。

きゃりーぱみゅぱみゅ、perfume、capsuleなどを世に送り出したプロデューサー、中脇 雅裕氏をお迎えして「サウンドプロデュース&プロモーションセミナー」を開催します。
日時:2015年10月25日(日)13時~
会場:茨城音楽専門学校(茨城県水戸市)
参加料は無料です!
詳しくはスタジオチャプターハウス ホームページhttp://www.chapter-trax.com/をご覧下さい。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
 
カイザーストロングバーツ
カイザーストロングバーツ『ベアナックル』 
70年代を中心とした米・英国パワーポップへのオマージュが深く感じられる、現代版リアルロックの超推薦盤。ライブのテンションも最高。                
 
ライトニングブリザード          
ライトニングブリザード『Look Back Inside』
メロコア、スクリーモ、ハードコアの中間の立ち位置にいる、ラウド系バンドのマキシシングル。低音域から高音域までの各パートの音色と、音域の分け方が素晴らしい。メロディーラインの良さが楽曲全体のクオリティーを押し上げている。   
 
国吉亜耶子and西川真吾Duo 
国吉亜耶子and西川真吾Duo『momently』
超実力派アコースティックデュオのセカンドアルバム。フジテレビ「Non-Fix」のエンディングテーマになった(M)6を含む大作。前作に加えてエレクトロな要素も入っている。全国発売中。
 
水鏡
水鏡『夕掛け』
プログレを中心としたシンフォニックロックの決定盤。国内だけでなくフランスを中心とした欧米でも評価が高い。プログレの大物バンドとの対バンも数多い。日本、フランスで同時発売中。
 
Plat Home Nine
Plat Home Nine『adagietto』
ゆったりとした空間に激情的なサウンドスケープがさりげなく共存する、童謡オルタナティブロックバンドのマキシシングル。ジャケットデザインも含めてアート性の高いこの作品は、アンダーグラウンド系ロックバンドのちょっとした理想形かもしれない。全国発売中。
 
かげわたり
かげわたり『Light Behind the noise of night』
ドイツ人のミヒャエルをメンバーに含む、ポストロックバンドのアルバム。シガーロス、ヨラ・テンゴに通じるオーセンティックな雰囲気が実に心地よく、リピート聴きしたくなる。全国発売中。

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