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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第63回

今回取り上げるのは「イコライザー」です。数あるエフェクターの中でも一番身近で奥の深いものではないでしょうか。

ベーシックのルーティングは「コンプ→EQ」の順番につなぐのが定番です。コンプで音の粒を揃えてからEQをかけるパターンが、狙っている質感に一番近づけることが多いのです。
(もちろん場合により、逆パターンもあり)

イコライザーと言ってもかなり幅広く、大きく分けると
①パラメトリック・イコライザー
②グラフィック・イコライザー
の二つに分けられます。
レコーディングで多く使用されるのは、圧倒的に①のパラメトリック・イコライザー(通称パライコ)です。

<パラメトリック・イコライザー>

各バンド周波数が3~10バンドあるのが一般的で、周波数をいろいろいじる事が出来るのが特徴です。

*GAIN…各周波数ごとに、どれくらいブースト(加える)か、カット(抑える)かを調整する

イコライザーは音色をいろいろといじる事が出来ますが、本来はブーストよりもカットを中心に使用した方が、ナチュラルになる傾向があります。
次回からは実例を元に検証していきたいと思います。


<今月のちょいレア> CAD E100・2

ビンテージ感が漂いながらも、音のディテールをはっきりと捉える秀逸な機材。ハイエンドブランドのコンデンサーマイクとも良い勝負をする名マイク。現在はディスコンだが、後継機種としてE100・Sが発売されている。


<今月のMV> twopack milk 「沈黙」

DUTCHDADDYのG.ネイ氏が率いる、ポストエモ・ロックバンドの自信作。鮮やかな静と動の対比が魅力であり、リスナーを独自の世界観に引きずり込む。


【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

Bonnet Monkey 「ボンネットに乗って」

陽気でハイテンションなギターロックバンドのシングル。海辺のハイウエイをオープンカーで疾走する情景がありありと浮かぶ、ハッピー感あふれる作品。

ASUCA 「WOMAN」

存在感の強い女性をテーマにした、アコースティックロックのシングル。アジア人離れしたASUCAの、耳に残るハイトーンボイスが特徴的だ。

Lily’s Lyric 「Who’s Lily」

洋楽ヘビーリスナーの高校生で結成されたロックバンドの1stフルアルバム。王道の中にも、少しひねくれたエッセンスがさりげなく飛び交うアレンジ力に注目したい。日本語詞でありながらも、洋楽の質感が感じられる点も高評価。

smily 「SMILY」

バンドのネーミングと実際のサウンドに多少のギャップが感じられる、エモ・ロックバンドのアルバム。楽曲バリエーションの豊富さと、ディテールへのこだわりを堪能してほしい。

Nervous Cat Flow 「Day Break」

女性Vo.でありながらポップではなくロックフィールドに長く滞在している、エモ・ロックバンドの新譜。メンバーの年齢構成が広いおかげで、様々な時代のロック要素が自然に溶け合い相乗効果を生み出している。

<お知らせ>
*ジャングルライフ本誌268号に連載を掲載していただきました。
*サウンドデザイナー2020年4月号の特集「コンプ&EQが上達する26の格言」コーナーを執筆させていただきました。(P31・32)

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