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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第14回

この度、当スタジオにAvid Protools HDXとHD I/O 16×16 Digital×3を導入しました。Pro Tools HDとは質感が違うな、と改めて実感しているところです。

――さて、前回からの続きです。
サークル部室でのセルフREC初挑戦は、上手くいかなかったものの学ぶべき点も多かった模様。機材マニアの先輩も交え、1ランク上のセルフRECに向けミーティングに余念がない。先輩はプロ顔負けの様々なREC機材を所有しており、自らのスキルを上げるためボランティアでいろいろなバンドのセルフRECに立ち合い、手伝っている。セルフREC初心者の彼らには大変頼もしい存在だ。

2回目のRECは、それなりに機材のそろっているリハスタを借りようということに。スタジオ選びにあたっては「部屋数、パック料金の有無、常設機材、オプションの内容」そして利用経験から「部屋鳴り、機材メンテナンス具合(特にバスドラ、タムなどのヘッドの種類と消耗度)両隣及び上下階スタジオからの音漏れの度合い」など細部にわたって意見を交わす。結果、通い慣れたスタジオの深夜パック6時間(¥9,800)に2時間プラス(¥4,200)、計8時間で17畳のスタジオを予約することに決定した。「都心の場合、深夜の方が電力供給の関係で音が良い」という話や「深夜帯はスタジオ利用者も少なく、他スタジオからの音漏れも避けられるのでは」ということも考慮したようだ。もちろん、バンドメンバー全員の学校やバイトの都合がつけられることも重要。

前回の失敗を充分に踏まえ、RECスケジュールも時間に余裕を持たせるよう考慮した。

本文_schedule

ドラム、ベース、仮ギターを同時に録音し(仮Gt.はLine6などのハードウエアアンプシミュレーターを使用)クリックは内臓のものを使う。仮Vo.は入れない。作業できるのは実質4時間とみて、ドラム、ベースを最低3曲出来れば5-6曲録り終わることを目標にする。
RECに使用する機材は2通り用意しておき、当日の流れでどちらにするか決定する。
■機材①:Mac book Pro + STUDIO ONE(Ver.3) + TASCAM Celesonic US-20×20(オーディオインターフェース)を2台カスケードで同時16トラックREC可能にする。
■機材②:TASCAM DP32(デジタルMTR)を2台同期させ、同時に16トラックREC可能にする。

■マイク:キック→AKG D112もしくはSHURE BETA52、スネア→TOP:SHURE AM57&Audio-Technica ATM23、ボトム→SHURE SM57もしくはBETA 52、タム→ゼンハイザーMD421、フロアタム→ゼンハイザーMD421、オーバートップ→AKG C391B×2、ハイハット→Audio Technica AT4021、ライド→AE3000、アンビエントマイク→AT4050。前回からは比べ物にならないほどグレードアップさせた。

■マイクケーブル:プロヴィデンス、モンスターなどの高級ケーブルを使用。

■電源ケーブル:オヤイデシリーズ。

■アウトボード:Mind Print DTC、TL AUDIO 5052、Joemeek TWIN Qの3台の2chチャンネル・ストリップ(注①参照)で6ch分。残りのchはオーディオインターフェース、もしくはMTRのマイクプリを使用する予定。
*注①:チャンネル・ストリップとは?→微弱なマイクレベルをラインレベルに引き上げるマイクプリアンプと、イコライザー、コンプレッサーが一体化した機材。中にはエキスパンダー、ノイズゲート、ディエッサーまでついている物も。

■ベースREC:ライン録りでAVALON U5を使用、ベースアンプは使わない。

■ヘッドホン:音漏れの少ないAudio Technica ATX900Hを数台。

■その他:リハスタのオプションでFurmanキューボックスをレンタル。

スケジュール、録音環境、そして使用機材も前回とは比べ物にならないくらい厳選し、今回はかなりいけるのではないかとバンドメンバー全員が思い始めたその時、先輩から「ここでもう一度、RECの心構えを再確認したほうがいい」とのアドバイスが。
――――次回に続きます。

 

【今月のちょいレア:Radial KickStandバスドラムマイク用アイソレーション・マイクスタンド】

レア_kickstand-1先月紹介したトライポッドなど、ユニークで実用的な商品を放つRadialの自信作「kickStand」
(注:画像の赤で囲んだ部分がKickStand)
マイクスタンドの土台部分が商品で特殊スポンジになっており、低音など床からの振動成分全般を分散させ、普通のマイクスタンドを使用するよりもピントの合った音作りが可能。バスドラム用と銘打ってはいるが、ギターアンプ、ベースアンプの音録りにも底力を発揮する頼もしいアイテムです。

 

 

 

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター。Whirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

 

Palalaika「Palalaika」
CD1_palalaika
レッチリを軸とし、レッド・ツェッペリン、スライ・ストーン、P-ファンク、ストーンローゼス、ダイナソーJr.など、洋楽のおいしい成分が堪能できる「日本人によるボーダーレスロック」決定盤。ネイティブに近い英語詞の表現力やアレンジ力が秀逸。

 

あぽろん「あぽろんが咲きました」
CD2_aporon
マルチプレイヤー兼シンガーソングライターの三田結菜率いるキーボードトリオバンドの最新作。ポップスのつぼを見事に押さえた作編曲力はさすが。スタンダードなJ-POPにカテゴライズされながらも同時のポップ路線を昇華させている。

 

水鏡「夕掛け」
CD3_mizukagami
フランスの名門レーベル「MUSEA」からリリースされた和風プログレとヨーロッパのシンフォニックロックが激しく交差する、水鏡の2ndアルバム。雅なる音の流転とも言うべき丹精に積み上げられた様々な楽器に、少し神秘的な女性Vo.が装飾されたような不思議な世界観を感じて欲しい。日・仏同時発売中。

 

根木マリサトリオ「Elegance」
EPSON MFP image
真に「エレガント」とも言うべきリアルタイムのJAZZを奏でる、プロジャズピアニスト「根木マリサ」トリオでの1stミニアルバム。カフェのオープンデッキが似合いそうな雰囲気を感じさせながらも、決してBGMにはならない優れた存在感が随所にみなぎる意欲作。肩の力を抜いて聴いてほしい。

 

Key-m.「SOUL CONNECTION」
CD5_Key-m.
国内はもとより海外のプロデューサー、トラックメイカー、MC、DJが深く関わっているブラックミュージックを、幅広く凝縮させた入魂作。忘れかけられていたソウルミュージックの原点が、今ここに存在する。HipHopの大御所レーベル、HEAD PHONE JACK RECORDSから全国発売中。

 
【PV】THE CREATOR OF「-LIGHT-」

スリップ・ノット、マリリン・マンソン、のオープニングアクトを務めた実績もあるTHE CREATOR OFの真髄を垣間見
ることが出来る作品。

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