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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第67回

コロナ禍の中、定番になりつつある「ライブ配信」ですが、配信に対してのハードルが低くなってきている分、音質や演奏クオリティー、パフォーマンスなどがより重要になってきているのは言うまでもありません。

前々回からご紹介しているライブ用ハンドマイクも、今回は「音質」プラス「ルックス」も、より重視してご紹介します。

【LEWITT MTP250DM】

オーストリア発の新興ブランドLEWITTのダイナミックハンドマイク。
中音域もさることながら高音部の軽やかな伸びが特徴的で、バンドサウンドにも埋もれにくいパワフルな一体感が構築できます。他のマイクに比べるとマイクケーブルに左右されやすいので、マイクケーブルはベルデンクラスを推奨します。スタイリッシュなデザインが大人気で、様々なMVでこのマイクを使用しているのを目にするようになりました。

【SE Electronics V3】


値段はかなりリーズナブルですが、音質は同価格帯のものより1ランク上のクオリティーであり、さすが英国名門マイクブランドSE Electronicsの製品と言えます。ルックスも、トレンドを押さえたアウトラインと色合いでライブ映え間違いなし。上位機種のV7もおすすめです。


【大学生バンドのセルフREC】
前回は「生バスドラとトリガーしたエレクトロ系バスドラをダブルで出し、無機質な中にも有機的音像を作り出す」過程と、51回連載でも触れた「サイドチェーンコンプの技を使い、キックとベースの整合性を細かく調整する」過程を取り上げました。

今回は「低音パート(キック、ベース)と中高音パート(ギター、キーボード系などのコード楽器)
の音楽的、音響的な絡み」について検証します。

ギター、キーボード系パートが多数入っている場合は、まず優先するパートを決めてボリュームやパンをラフに設定します。

次に全パートを走らせ、狙ったイメージのバランスに近づいたら「コード楽器の中低音部を削る」か「低音パートの中音域を押さえる」かを、EQ等で試します。

質感が整ってきたら、ボーカルとスネアのような「音域の近いパート」を少しずつ調整し、更にコーラス、同期、パーカッションなども追い込みます。

ここまで進んだら、一旦データをバックアップして耳を休めましょう。

【イメージ図】

【解説1】
バッキングギター低音部(赤で塗りつぶした部分)とベース中低音域が重複します。どう処理するのかをいろいろ試して、自分の好みとセンスに近づけましょう。

【解説2】

キーボードや同期パートとリードギターの重複処理も、EQなどで少しずつ削りながら試します。



【今月のちょいレア】TL AUDIO 5021

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2000年頃発売の際、10万円を切る価格のプロフェッショナルコンプとして一部で話題になった、真空管ステレオコンプレッサー。TUBE TECHやMANLAYのようなハイエンド機と比較しても大差を感じない、秀逸なアウトボードだ。


【今月のMV】maruiro 「カセットテープ」
SILENT SIRENのライブオープニングアクトを務めたHelloMusicが、バンド名をmaruiroと改めリスタートした第一弾のMV。ポップかつアンニュイな雰囲気が全体に漂う、良質な空気感が充満している。


 

【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】

STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

フラスコテーション 「呼吸の景色」

神戸在住ギターロックバンドのフルアルバム。パワーポップ&オルタナロックのエッセンスを感じる従来の路線に、ポストロックやシューゲイザー的要素も自然に加味されて、より深い世界観が確立されてきた。大手インディーレーベルHIGH BEAM RECORDSより、2020年7月全国発売。当スタジオではアルバム中4曲を収録。


THE BLUE SCREAM 「 BLUE DREAM 」


80’s LAハードロックメタルをこよなく愛し、極限までアナライズしているTHE BLUE SCREAMのフルアルバム。彼らがリスペクトしているUSAの本家バンド以上に、オリジナリティーを感じる演奏力と、作編曲、音色が絡みまくっている。ボーカルの骨太ハイトーンも冴えわたる作品。

Baby Ever Rain 「Ever Rain小曲集」

国内を代表するシューゲイザーバンドPlant cellのボーカルErikoの別プロジェクト作品。曲中で見え隠れするリフやフレーズは、90年代洋楽、邦楽を問わない幅広いバックグラウンドと深いオリジナリティーを感じさせる。

LIMITICA 「one slow step」

懐かしさを感じさせるポストパンク、オルタナロックバンドのシングル。90‘s洋・邦楽フレーバーがバックグラウンドにありながらも、彼ら特有のオリジナルストラクチャーもしっかり確立されている。

marbh 「without saying anything(only me)」

ネオグランジシーンを語るには絶対に外せない最重要バンドのデジタルシングル。アメリカ・シアトル系とカナダ・トロント系、そして北欧オルタナ系が見事に融合した作品。

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