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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第43回

<dbx特集 第3弾>
今までシルバーシリーズと呼ばれるdbx3シリーズと5シリーズについて取り上げてきました。


今回は最新機種dbx676についてです。
<dbx676フロント面>

<リア面>

ブラックボディーが高級感を醸し出す676は、1chのチャンネルストリップです。
シルバーシリーズと比べ、マイクプリアンプ部はワイルドさが少し治まり、レンジが広くなってより幅広いソースに対応できるようになりました。
コンプ部はガッツ具合も少々残しつつ、よりナチュラルになりオールマイティーに使えます。
特にEQの音楽的な派手なかかり具合は特筆ものです。さすがは上位機種、と言えるでしょう。
DI部も秀逸で、特にベースRECに大活躍します。

一生使える手頃なチャンネルストリップは何か?と聞かれたら、迷いなくこの676をお勧めします。Neveをはじめとする最上位機種と肩を並べる実力機です。実機だからこそ出るこのキャラクターは、プラグインでは無理なのでは?と思います。

2018年7月上旬現在の実売価格は11万円前後といったところです。興味のある方はぜひ探してみてください。


<大学生バンドのセルフREC>
勢いにのってきたセルフRECのコーラス録りは、2曲分が終わり、次はテンポチェンジ有りのオルタナロックのコーラスだ。
サビのみのハモリだが上ハモ下ハモがあり、コーラスを担当するのはVo.ではなくギターとベースのメンバーだ。歌詞が違うのでコピペは使えず、テンポチェンジもあるのでリズムの変化にも気を付けなければならない。

使用する機材は前回と同じ。
<マイク:SE Electronics SE2200aⅡc>

<マイクケーブル:KLOTZ Titanium>

<チャンネルストリップ:TOFT Audio Designs EC-1>

<電源ケーブル:オヤイデ ブラックマンバ>

まず録りやすい3サビから、モニターチェックを兼ねて取り掛かる。
上ハモ2テイク目で、ピッチを少々直せば使えるレベルのものが録れた。保留して3テイク目で満足いく結果になりOKがでた。
次に2サビの上ハモ。歌詞に舌がもつれてあやふやに聴こえたり、歌詞を間違えたりで1テイク目と3テイク目のいいところ取りで解決する。
1サビの上ハモは調子が出てきて一回でOK。

1サビ下ハモに取り掛かる。すでに主旋律と上ハモで2声重なっているところに、3声目となる下ハモを加えることになるので、シビアにジャッジしなければならない。
モニターバランスも変更した。

とりあえず録ってみる。すでに録った2声と、下ハモのバランスがいまいちなので、さらにテストを重ねてバランスが出来上がった。

下ハモ録りの本番。1テイク目は主旋律のラインにつられ、2テイク目は上ハモのラインにつられなかなか満足いく出来にならない。3テイク目、前半はまあまあの出来なので残して修正し、後半はパンチイン。後半も修正してようやくOKとした。

2サビの下ハモ。録ってみたら後半はまあまあの出来だったので、前半のみ録り直し。ピッチを直せばなんとかなるテイクが録れたのでOK。

3サビの下ハモは一発OKが出て、この曲の全パートを録り終えることとなった。


<今月のMV> GREEN EYED MONSTER 「HELLO」
この秋ヨーロッパツアーを敢行するメロコアバンドの、一押しコンセプトMV。


<今月のちょいレア> Waves L2
マキシマイザーの代名詞ともいえるL2のハードウエア版。プラグインでは成し得ないリッチな音像を、いともたやすく演出できる逸品。約10年前にディスコンとなった名機である。


 


【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】

STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

Rina Hoshino feat.Shoya Kitagawa 「Attack!!」

ジャズギタリスト矢堀孝一のツアーにもレギュラーで参加している、プロベーシスト星野李奈の
初リーダー作。ハイクオリティーながらキャッチーでアカデミックなフュージョン系インストに仕上が
っている。Dezolveのギタリスト北川翔也が、G.に加えアレンジ、トラック制作で全面参加して
いる。

GENSEKI 「サイキッカー」


エモロックとラウド系の中間に位置するロックバンドのミニアルバム。セミハイトーン系Vo.と、ラウ
ドに振り切らないギター系の音色との紙一重なマッチングが素晴らしい。ラブソング的な歌詞
が少ないのが逆に新鮮なバンドだ。

キリマルカラー 「キミイロ」

仙台在住、少々渋谷系の匂いを感じさせる男女ポップスユニット。スウェイデッシュポップにも
影響を受けており、日本語詞でも洋楽っぽさを感じさせる洗練されたセンスに注目したい。


品川ユースフル 「poppin」


ファンク、ディスコパンクなどが根底にあり、ハイソな上モノが縦横無尽に飛び交うギターロック
バンドのマキシシングル。ダークなルーツミュージックと最先端ヨーロッパダンスミュージックのフレ
ーバーもさりげなくミックスされている。

新宿良音演奏会


新宿を中心に活動するハイレベルな26組のバンドによる、2枚組スーパーコンピ盤。人気バ
ンド 鶴をはじめ、R&R、エモ、フォーク、パワーポップ、UKロック、オルタナなどとにかく幅広く濃
い曲が満載。全国発売中。

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