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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第60回

前回から取り上げている「ペンシル型コンデンサーマイク」について、今回は実践的な事例に触れてみます。

【AKG C480】

ペンシル型マイクの定番、AKG C451の上位モデルに位置する製品です。
C451と比較するとワイドレンジで、シンバルなどのサスティンも余すことなく収録することが出来る高品位なマイクです。

ギラギラしたシンバルを録音しようとすると倍音が録れすぎてしまうこともありますが、ビンテージなシンバルを録音するには打ってつけです。
同価格帯のマイクに比べて、マイクケーブルやプリアンプとの組み合わせで音質の変化も楽しめるのもポイントです。

【CAD GLX1200】

CADといえば「リーズナブルな価格帯でありながら、1ランク2ランク上のクオリティーを提供してくれるブランド」だと思います。このGLX1200は「等身大」という言葉がぴったりのマイクです。マイクケーブルはKLOTZまたはWhirlwindあたりが良く、プリアンプはTUBE式のものがベストでしょう。価格もお手頃なので是非ペアでの購入をおすすめします。


【大学生バンドのセルフREC:コンプ実践編】
前回ではキック、スネアのコンプ設定を検証しました。
今回はタム、シンバル系です。

【タム、フロアタム】
「4つ打ちダンスロック」はワンタム、ワンフロアなので、タイト&ファットなキャラクターを狙っていきます。
『スレッショルド』
-2dBから-4dBくらいをさまようくらいにしておく
『レシオ』
2:1から3:1でとりあえずステイ
『Knee』
最小と最大の中間に設定
『アタック』
ある程度アタックを残しておきたいので、35m sec~55m secで様子を見る
『リリース』
アタックタイムより30m sec~50m sec分多めにかける

【シンバル:オーバートップL 、オーバートップR】
『スレッショルド』
-2dB~-3dBくらいで軽く揺れる程度
『レシオ』
2:1から2.5:1くらいで様子を見る
『Knee』
中間~最大値の間からスタート、状況に応じて少しずつ変える
『アタック』
比較的遅め~だんだん早くしていき、イメージに近いところで止めておく
『リリース』
比較的長め~少しずつ短くする

もちろんこれらの設定はあくまでも目安の一例に過ぎませんのでご了承ください。


【今月のちょいレア】MindPrint EN-Voice MKⅡ

2000年初頭から5~6年販売されていた、ドイツ製のチューブ式チャンネルストリップ。MANLEYやTUBE-TECHクラスのハイエンドアウトボードともいい勝負の、隠れた名機だ。


【今月のMV】WORSTRASH 「Draw up my emotions」

90年代ウエストコーストラウド系を彷彿とさせる意欲作。トリプルギターサウンドを前面に出していて、頼もしさ全開である。


 
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!


日々かりめろ 「バラエティ大作戦」


年間平均300本ものライブをこなす、ロッキンフォークデュオの最新作。バックトラックの精度もこれまで以上に上がり、楽曲のストーリー性も充実している。東京国際フォーラムでのワンマンライブも、短期間のうちにソールドアウトするなど話題に事欠かない。


DEAD STOCK 「Workout,Hangout」


青森から東京に活動拠点を移し数年の彼ら。前作で築き上げた「レトロフューチャーパンク」ともいうべき独自のジャンルを掘り下げて、濃密な世界観が形成されつつある。

セブンマイルズ「幽霊船」

洋楽に影響を受けながらも、あえてダイレクトに反映しないところに彼らの音楽性の原点が垣間見える。初期の細野晴臣にも通じる精神性が、玄人受けしそうだ。


毒島小百合「HA・DA・KAの大将」 (悲観レーベルオムニバスVol.2.収録)


掟ポルシェ氏(ロマンポルシェ。)が曲を提供した、NewWave80年代オルタナポップの再構築曲。なつかしさの中にもヒリヒリした緊張感がまん延している。


カカシカシカカ 「マイロード」


かのジョン・デンバーの名曲を、ななめ45度からオマージュしたような作品。スタンダードな性質をスタンダードに感じさせない、ハイソなセンスを十二分に評価したい。

ジャングルライフ本誌にて、隔月で半ページの連載をさせていただくことになりました。「PAST & POST MASTERS」
今月号(265号)からスタートです。

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