CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の
セルフRECはプロRECを越えられるか? 第29回
最近「5万円以下で」「ボーカル、ピアノ、アコギなどに使えるコンデンサーマイク」を教えて欲しいという質問が多いので、2点ご紹介します。
【SE Electronics : SE2200aⅡc】
音の密度が濃く、ナチュラルでフラット、かつジェントルなファットさも兼ね備えています。またマルチパターンなので、コーラス録り・ドラム録りなどのアンビエントマイクとしての使用にも最適です。
【Aston : Origin】
2016年秋、遂に日本への本格上陸を果たした英国ブランドAstonのコンデンサーマイク。レンジが広く音の芯がしっかりしており、加えてきらびやかさもあり、大抵のVo.録りにハマると思います。単一指向性ですが、使用目的がはっきりしていれば充分。
マルチパターンが必要ならば、同ブランドの「Spirit」もおすすめです。こちらはトランスも搭載しており、より特徴のある音がします。
上記2本に共通しているのは「実勢3万円台」でありながら、低価格のコンデンサーマイクにありがちな「中高音域がシャリシャリして低音域が薄い」といったチープさが全くなく、上位ランクのマイクと比べても遜色なく、逆に勝っている点もあるというところです。
他にも【TASCAM : TM-280】【Lauten Audio : LA-220FET】【Lauten : LA-320VACUUM TUBE(チューブマイク)】【LEWITT : LCT240】などのマイクもおすすめです。
以上、敢えて超定番ではないが、ロープライスで優秀なマイクをご紹介しました。好みや感覚の違いはあると思いますが、どれも実力のある名機種です。展示してある楽器店もあると思いますので、興味のある方は是非チェックしてみてください。
仮想大学生バンドのセルフREC
【コールドプレイ風:♩=103ミディアムテンポ】の録音ギターアンプはモディファイしてあるJAZZ CHORUS
同じくモディファイしてあるレスポールは、通常のハムバッカーに加えシングルコイルのピックアップも搭載しているので、かなり広い幅で音作りが出来る。
エフェクトはJAZZ CHORUSのコーラスを薄くかけ、リバーブなどはMIXの時に後がけする予定。
マイクはSHURE:SM57、BETA52、BETA91(バウンダリーコンデンサーマイク)とTASCAM:TM50DBを使用。
マイクプリはMANLEY DUAL MONOとMillennia HV-3C。2ch×2の4ch分使える。
4本のマイク全てをほぼオンマイクでセッティングしているが、どうしてもBETA91とTM50DBの2ch分が逆相になるので、これらをフェイズスイッチが付いているMANLEYに接続。
これで、フルレンジでハイパーなクリーンギターの音色がいつでも録れる。
録り始めてみると、クリーンギターのアルペジオにごまかしが利かず粗が目立つ。ミディアムテンポは予想以上に難しい。このままではクリーンギターの録りだけで、全ての時間を費やしてしまいそうだ。
1番をクリアしてしまえば、後はコピー&ペーストで編集出来そうな部分が多いことに気づき、残り時間や状況に応じてコピペに頼ることも念頭に入れて進めることにした。
ミディアムテンポで今までの曲と比べてごまかしがきかない分、地道に8~16小節単位ずつコツコツと録っていくことにした。
イントロAのアルペジオフレーズのリズムが悪く、テイクを重ね、5テイク録ったところで一旦終了、後ほど録り直すことにした。
イントロBは、ドラムやベースが入っている分イントロAより進みが早く、5回録った中の最後2テイクのいいところ取りしてOKをだした。
その後、波に乗って1Bを一発OK。
1サビは1回目で前半はOK、後半だけパンチイン。
間奏~2サビは、録り終わったイントロB~1サビ最後をコピーペーストした。2サビ後半だけリズム隊とかみ合わないのでパンチイン。
残りはDメロ、3サビ、アウトロ、録り直し予定のイントロAだ。
【今月のちょいレア】CAD : TSM411
ギター、スネア、タムなどが、マイキング次第で絶妙に録れる名マイク。
【今月のMV】 cruyff in the bedroom 「HATE ME」
ネットニュースでも話題の、シューゲイザーの重鎮クライフインザベッドルームが放つキラーチューン。ギターポップ、ネオアコ風のメロディーに轟音ギターが鮮やかに絡む。
https://www.youtube.com/watch?v=6dtVtpPBVD0
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーター
Whirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
Nikiie 「 TRANSFER 」
大型フェスへの出演や数々のタイアップも記憶に新しい、Nikiie約3年ぶりのミニアルバム。
従来のヴァネッサ・カールトン系J-POPから、Bjork系オルタナポップに見事に「トランファー」した意欲作。2017年5月全国発売。
新村けんぞう 「 LET THE FUN BEGIN ! 」前作よりも音楽的・音響的にブラッシュアップされたド直球J-POP系歌詞を、「洋楽風に聴かせてしまう」センスに注目。90年代の質感が、逆にこれからの時代にマッチングしそうな気配を十二分に感じる。
TEEN‘S CIRCUIT Vol.2選りすぐりの現役高校生バンド6組によるコンピレーションアルバム。ティーンズとしては上位レベル、ギターロックを中心にバリエーション豊かな内容に仕上がっている。2017年5月全国発売。
未咲「 恋春日和 」シンガーソングライター未咲のマキシシングル。ライブでの人気曲「牛乳」も含まれている。独自のアルペジオスタイルと、中高音域の歌声とのマッチングにオリジナリティーを感じる。一聴して覚えやすい曲調も魅力的。
カイザーストロングバーツ 「 風を掴む 」従来のR&Rをさらに昇華させ、音楽的にもプロモーション的にも新局面が見え始めている彼らのマキシシングル。ガレージ、オルタナ要素が増えながらも、よりメロディアスになってきている点に注目してほしい。
【NEWS】当スタジオでレコーディングされた楽曲が、月刊SOUND DESIGNER 2017年6月号(2017/5/9発売)の特集記事用の課題曲・題材曲として取り上げられました!
Coo 「渋谷にて」→「SD‘sアレンジコンテスト」課題曲
Coo Twitter → https://twitter.com/Coo_official
DATCH DADDY 「スターレット」→「歌がうまく聴こえるボーカルトラック編集術」題材曲
DATCH DADDY Twitter → https://twitter.com/DUTCHDADDY_ROCK
コンテストや特集記事の詳細はサウンドデザイナー2017年6月号をご覧ください!