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CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第33回

先日、三味線奏者 川嶋志乃舞さんのレコーディングを行いました。日本が世界に誇るエスニック楽器の一つである三味線ですが、ボディーの小さな弦楽器(中国の胡弓などもその一つ)をフルレンジで収録するにはプロのエンジニアでも大変苦戦します。

この写真は、先日のレコーディング風景を収めたものです。三味線の周りにマイクを6本立てています。目の前で鳴っている音に近づけようとすると、このような工夫が必要になります。
また、マイクと共に重要なのがマイクプリのチョイスです。
今回はRupert Neve 5024、MANLEY DUAL MONO、TUBE TECH MP1A、AVALON 737、DBX 676の5台のマイクプリ、チャンネルストリップを使用しました。

三味線だけでなくボーカル、作詞作曲もこなす川嶋志乃舞さんは、東京藝大卒で三味線日本一の座を4度獲得、海外での演奏経験も豊富なマルチアーティストです。
この時収録された音源は2017年10月8日発売されます。是非、CDをお手に取って聴いていただければと思います。

タイトル:花とネオンep
価格:¥1,000 + 税
品番:HART-1004
曲目:
1.キツネ倶楽部
2.津軽よされ節
3.秋田大黒舞
4.花千鳥(「大相撲ODAIBA場所2017」テーマソング)
(ライブ会場&通販限定)



【大学生バンドのセルフREC】

モディファイ済みのMUSIC MANシルエットスペシャルを使用して、バッキング録り時のハムバッカーから、シングルコイルにピックアップを変更してリードを録ろう、ということになった。

基本はアンプ直、ギターアンプは前回同様Fender TWIN AMPを使用し、マイクもバッキング時と同じLUWITT DTP640RX(コンデンサー&ダイナミックのデュアル2chマイク)、LUWITT MTP440DMの2本を使って3ch分録ることにした。

様子見で最初から最後まで録ってみた。演奏自体は良いのだが、少しクランチ気味のクリーンの音色がソリッドすぎるのでプレゼンスを押さえて再度チャレンジ。音色と演奏がマッチするまで録り、イントロと静かなサビ部分のリズムが惜しかったので、これはパンチインすることでOKとした。
Dメロにあたる部分はトレモロ(モディファイ済み)をかけたいので、こちらを使用。

イメージ通りで、一発OKとなった。最初に通してクリーンで録ったDメロ部分をデリートし、この別トラで録ったトレモロギターを差し込んでこの曲は全パート終了。

 


【今月のちょいレア】 T.C.electronic Finalizer 96k

ハードウエアマルチバンドコンプの最高峰。最新のプラグインでも表現しにくい「密度の濃い立体感」が容易に出せる優れモノだ。ADコンバーターとしても秀逸。現在は生産完了。


【今月のMV】 The echodek 「CityLight」
オルタナシティーポップ、サイケAORとも呼べそうな新感覚のキラーチューン。聴き手を選ばない守備範囲の広い秀作。



樫村 治延(かしむら はるのぶ)】

STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

OSRAIL 「 Rebenant 」
北欧、フランス、カナダ、南米のモダンへヴィネスの系譜をたどる、2017年代のネオ・ラウドネス・スタイル。いかついバンドサウンドと、クリアで重厚なコーラスワークの絡みが聴きどころ。



CHIERI SUZUKI 「 TONE 001 」

SAX、ピアノを中心に、自ら全パートを演奏し完成させた、シックなコンテンポラリージャズをベースとしたインストサウンド。生演奏とは思えない、高度な演奏力と最新のサントラに採用されそうなハイレベルな楽曲群が漂っている。

GENSEKI 「 Naked 」
エモと、ギターロックと、少しのハードロックが融合した、密度の濃いロックバンドのシングル。前面に押し出されているVo.と、せめぎ合う楽器陣との絡みが心地よい。赤坂BLITZなど大バコにも出演し始めている期待のバンド。

サリドマイド
若手ながら、80年代初期パンク、ハードコアを真っ向から取り入れつつ、現在のパンク要素も結合したバンドのソノシート。ディスクユニオンの9/6付週刊パンクチャートで4位を獲得。全国発売中。


 
【お知らせ】
2017年11月19日(日)13:00~15:00茨城音楽専門学校(茨城県水戸市)にて「音楽プロデュースセミナー」
を開催します。今回のゲストはヤマハミュージックエンタテインメントホールディングスの石田裕一氏です。

【石田氏プロフィール】
矢井田瞳の制作ディレクターとしてアルバムやシングルの制作、ライブツアーや各種TV収録などの現場。手嶌葵の出版コーディネイトとして、スタジオジブリアニメ「コクリコ坂からの」アルバム制作に参加。現在は作家チームを取りまとめ、アーティストへの楽曲提供、アニメなどの劇版制作、CM楽曲制作などを取り仕切るとともに、2016年8月よりヤマハがスタートさせたYamaha Music Auditionにおいて、新人発掘及び育成も担当する。

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