イコライザー検証その②【EQの基本は引き算?】
エフェクターの中でもイコライザーは、特に楽器をやっていない人にも馴染み深いものではないでしょうか。例えばパソコンやスマホ、CDコンポ、スマートスピーカー、カーステレオなどで普段耳にする音楽を、イコライザーの設定を変えて自分好みの音にするなど。
好みの設定にする=各帯域をブーストして好みに近づける、と思っている人が多いかと思います。
レコーディングにおいては、その考え方は一変します。
レコーディングでは「録りにはなるべくイコライザーを使用せず」「MIXの時にカットして使う」のが基本だからです。
例えばMIX時に「ブーストしたいパートが全トラックの半分以上」あったとします。
それは録り音が不十分=フルレンジで録れていない、ということになります。
特に低音部(キック、ベース、ギターやスネアの低音部分など)がスカスカのままMIXに突入してしまい、プラグインをいくつも駆使して無理やり低音をブーストし太くしようとしている例を多く見かけます。
ひと昔前よりはプラグインの種類やクオリティーが上がっていますから、何とか理想形に近づける場合もありますが、出来ればレコーディング時に「最終形のイメージの音」をフルレンジで録っておきたいところです。
今まで文中に登場している「大学生バンドのセルフREC」では、素材が実際のイメージより10%ほど情報量多めで収録されているので、MIX時は2~3割ブースト、7~8割カットでいけそうです。
カットすると音の分離は良くなりますがパンチがなくなることもあるので、不必要な成分のみをカットすることが近道と言えそうです。
低音部分のキックとベースのカットは、素材が良く録れていればベース:EQを使用せずボリュームで調整→コンプ・EQを使用また、キック、ベース両者の低音部のダブつくポイントをカットしてから、アタック音を出すためにブーストします。
【今月のMV】Bonnet Monkey「ボンネットに乗って」
楽曲だけでなく、映像からも軽快な疾走感が楽しめる作品。
【今月のちょいレア】Forcusrite TRACK MASTER Pro
アウトボードブランドの雄Forcusriteが約20年前に放ったチャンネルストリップ。
プリアンプ、EQ、コンプ、どれをとっても上位機種に引けをとらない実力機。
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!
例えばあなたと私の関係について 「 City Funk 」
90年代R&Bをベースに、現在進行形ブラックミュージックが華麗にクロスオーバーしているバンドのシングル。
洋楽好きにもおススメの作品。
COLLAPSE 「 DROWN 」
4AD色を随所から感じ取れるシューゲイザーバンドのデジタルシングル。不思議な透明感が心地よい。
Cruiff in the bedroomが主催するレーベル、Only Feedbackからリリース。
ASUCA 「 SuperStar 」
ブライトな歌声と、ストロングポイントをやんわり伝えるリリック、定番の中にも偶発的なアイデアがまん延する楽曲。どこから聴いてもブリリアントなポップミュージックだ。
各自の宿題 「 PINK 」
80‘sハードロックを基調に、メロディアスな展開が響くロックバンドのシングル。欧米、特にアメリカ色が強く、聴き手を選ばない守備範囲の広さが魅力だ。
Opus.0 「 PRIMA 」
クラシックと定番ポップスがすんなり融合したニューエイジミュージック、とも呼べそうな作風が連なる、ボーカルとピアノの女性デュオの作品。音楽大学出身という技術の確かさもあり、表現力が最大限に発揮されている。