音楽メディア・フリーマガジン

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第 62回

【ペンシル型コンデンサーマイク考:TASCAM TM-50C】
このマイクは単体での販売はなく、Kick用TM50 DB、Snare用TM-50 DSと4本セットで価格は一万円台後半、現行商品として販売されています。

TM50 DB(Kick用)

TM-50 DS(Snare用)

TM-50C(クラッシュシンバルにおすすめ)

TM-50Cは、この価格帯にありがちな「高音がシャリシャリして低音が薄い」といった印象はほとんどなく、フラットでタイトな感じがします。
特に、クラッシュシンバルを録るにはうってつけのマイクと言えるでしょう。
クラッシュシンバルの録りにありがちな「きらびやか過ぎ、エッジが立ち過ぎ」てしまうこともなく、本当に必要な成分だけをチョイスしてくれる音楽的な名マイクです。


【大学生バンドのセルフREC:コンプ編】
<ボーカル・コーラス>
ほとんどのジャンルでボーカルは主役であり、コンプのかけ方のバリエーションも多種多様です。

まず「男性ボーカル・女性ボーカル」と大きく区別するだけではなく、声質も多々あるので、1つのコンプで一気にかけるのではなく「2段3段といった多段がけ」から様子をみて「スレッショルド、レシオ、アウトプットゲインを少しずついじる」のがコツです。
音量の落差がありずぎるときには、ボリュームカーブを細かく書くと良いでしょう。

コーラスも、注意すべき点はボーカル同様ですが、メインボーカルよりは前に出さないことが多いので、音量が決まれば後は「パンをどのくらい振るか」が重要になってきます。

コーラスにリバーブをかける時は、ボーカルと同じ種類のリバーブを使い、リバーブをかける量を調整していきたいところです。

<キーボード・同期系>
キーボードや同期はライン系の音なので、他のパートより音量が既に決まっていることが多いと思います。まずは無難なコンプを選んで程々にかけ、必要に応じてかける量を増やしましょう。

<トラック全体のトータルコンプ>
最後に、トラック全体にかけるトータルコンプですが、マキシマイザー系ではなく本当にフラットなコンプを、ゆるくかけるのがポイントです。


【今月のちょいレア】 STUDIO PROJECTS B1

フラットかつ線も太いコンデンサーマイク。ボーカル録りならどんなジャンルでも対応できるであろう、守備範囲の広い名マイクです。現在はメーカーごとディスコンとなってしまい、手に入れるには中古を探すのみとなっています。


【今月のMV】日々かりめろ「あなたのうた」Short Version

フォークソングとパワーポップに蜜月的コンビネーションが、彩りと力強さを与えてくれる曲。圧倒的な存在感が全方向から感じられる。


 
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

magenta「 precious 」

ギターレス3ピースポストロックバンドの最新シングル。日本語詞でありながら、サウンドは回を重ねるごとに洋楽テイストが占有してきている。少しずつ変化を続けているオルタナティブさが心地よい。

CHIERI SUZUKI 「 -TONE 003- 」

SAX、ピアノの講師として活動しながら作編曲もマルチにこなす鈴木 千絵里の新作。今回はジブリ系だけでなく、アシッドジャズ風インストも取り入れ、楽曲のバリエーションが一気に広がった。

カカシカシカカ 「 ひとりぼっちのスノーマン 」

一聴すると今風のクリスマスソングと思われがちだが、じっくり分析するとセミスタンダードなポップスであることに気づく。常にタイプの違う、良質なポップスを着実に制作している点に才能を感じる。

美元 智衣 「 7th Avenue 」

ソニーミュージックエンタテインメント、ビーイングといった大手に長年所属してきた美元 智衣の最新作。当スタジオではマスタリングを担当。アルバムバージョンとは一味違った仕上がりとなった。

脳ジャズ 「 LOVELY LADY FEAT. NICK KUROSAWA 」

1977年に『SPI』というマイナーレーベルからリリースされたRobert Johnson「Lovely Lady」をカバー、ボーカルにハワイ出身のNick Kurosawa(Aloha Got Soul)を迎えた7インチアナログ盤。トランス的なドーパミンが全身から発動しそうなインパクト大、の秀作。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第61回

【ペンシル型コンデンサーマイク考】
Joemeek JM27

ボディーカラーはシルバーとグリーンの二色展開、色は違っても中身の音質は全く同じです。
10年くらい前に発売されており、当時は15,000円くらいだったでしょうか。

Joemeekはアウトボードメーカーとしてのイメージが強く、マイクのキャラクターはどうなのか?と疑問はありました。Joemeek JM27をペンシル型コンデンサーマイク定番のAKG451と比較すると、サスティンはやや短く少し荒い音といった印象。AKG451があればあまり必要ないのかな?とも思いましたが、JoemeekのアウトボードTWIN Q2’などとセットで使用すると、音がリッチになり高級感が出ました。

現在は生産完了となったJM27ですが、中古品でごくたまに見かけることもあります。(5~6千円台)
このマイクとの組み合わせとして、Joemeekのハーフラックチャンネルストリップ Three Qや、VC3Qとセットで使用することをおすすめします。(一万円台後半~)

おまけ情報:以前ご紹介したこともあるJM47(Vo.Pf.Ag録りにおすすめ)と、JM37(日本未発売品、オールマイティー)も、ごくたまにですが中古市場に出回っているようです。(一万円前後)興味のある方は是非チェックしてみてください。


【大学生バンドのセルフREC:コンプ編】
今回はベースとギターのコンプについて。

ベースは、コンプをREC時に「ライントラックとマイクトラックの両方に弱く2段がけ」してあるので、ある程度音量が揃っている。
MIX時にダメ押しで、さらにコンプをうっすらとかけて「勢いを残したまま平均化」したかったのだが、ベースの4弦部分の演奏だけ低音がダブついてしまう。
コンプをがっつりかけるとノリがなくなるので、ボリュームカーブで4弦を演奏している部分の大きな波形部分だけ抑えてみた結果、グルーヴを残しつつボリュームが平均化され、かなり良い感じになった。

クリーンギターはフレーズのバリエーションが豊富なので、
*スレッショルド → -2bから-3bぐらい
*レシオ → 2:1もしくは2.5:1ぐらい
*Knee → 中間
*アタック → 35msecから55msecぐらい
*リリース → 80msecから150msecぐらい
と、オーソドックスにかけておく。

歪みギターは、歪ませることにより原理的に音粒がそろうので、コンプはごくうっすらとかけるか、場合によってはかけなくて良いこともある。


【今月のMV】THE FREE MAN 「ピアニッシモのサラリーマン」

R&B、ロックンロールを土台に、サイケフォーク、ブルーアイドソウル、NewYorkパンクなどの世界観が縦横無尽に交差するハイテンションロックバンドの代表作。


【今月のちょいレア】MindPrint EN-VOICE

前回で紹介したEN-VOICE MKⅡの弟分にあたるチャンネルストリップ。この機種も、NEVE、DRAWMERといった上位機種と比較しても全く遜色のない逸品だ。


 
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

THE FREE MAN 「ピアニッシモのサラリーマン」

ローリングストーンズ、レイナード・スキナード、グレイトフルデッドあたりにルーツを感じるロックバンドの新作。Vo.のLITTLE KING TAKUYAが発するリアルなロック感はOne&Onlyで、聴くものをいつの間にか引き込んでしまう。


THE JIVES 「Audrey」


R&Rを奥深くまで掘り下げ、本質を追求したフルアルバム。オールドスクールのロックが好きな人、欧米の若手が奏でるネオヴィンテージロックに興味のある人におすすめの一枚。


OVER RAZE 「Reach The Sky」


90年代から現在に至るまでのメロディックパンクのエッセンスをいいとこどりしたような、ロックバンドの最新作。パワーポップ、グランジ、ヘビーオルタナ好きにも聴いてほしい力作。

maruiro 「バッドエンドは手をつないで」

SILENT SIREN主催「サイサイフェス」でオープニングアクトを務めたバンドHelloMusicが、バンド名を「maruiro」と改名し記念すべき最初の作品をリリース。Vo.ちい太のスウィートボイスがさらに冴えわたる。


GENSEKI 「Polish up change」


様々な要素が音楽的にクロスオーバーし、確立されたComplicated Rockの立役者、GENSEKI。彼らの新作は、複雑とシンプルが心地よく同居し、2020年代ロックの新たな方向性を導きそうだ。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第60回

前回から取り上げている「ペンシル型コンデンサーマイク」について、今回は実践的な事例に触れてみます。

【AKG C480】

ペンシル型マイクの定番、AKG C451の上位モデルに位置する製品です。
C451と比較するとワイドレンジで、シンバルなどのサスティンも余すことなく収録することが出来る高品位なマイクです。

ギラギラしたシンバルを録音しようとすると倍音が録れすぎてしまうこともありますが、ビンテージなシンバルを録音するには打ってつけです。
同価格帯のマイクに比べて、マイクケーブルやプリアンプとの組み合わせで音質の変化も楽しめるのもポイントです。

【CAD GLX1200】

CADといえば「リーズナブルな価格帯でありながら、1ランク2ランク上のクオリティーを提供してくれるブランド」だと思います。このGLX1200は「等身大」という言葉がぴったりのマイクです。マイクケーブルはKLOTZまたはWhirlwindあたりが良く、プリアンプはTUBE式のものがベストでしょう。価格もお手頃なので是非ペアでの購入をおすすめします。


【大学生バンドのセルフREC:コンプ実践編】
前回ではキック、スネアのコンプ設定を検証しました。
今回はタム、シンバル系です。

【タム、フロアタム】
「4つ打ちダンスロック」はワンタム、ワンフロアなので、タイト&ファットなキャラクターを狙っていきます。
『スレッショルド』
-2dBから-4dBくらいをさまようくらいにしておく
『レシオ』
2:1から3:1でとりあえずステイ
『Knee』
最小と最大の中間に設定
『アタック』
ある程度アタックを残しておきたいので、35m sec~55m secで様子を見る
『リリース』
アタックタイムより30m sec~50m sec分多めにかける

【シンバル:オーバートップL 、オーバートップR】
『スレッショルド』
-2dB~-3dBくらいで軽く揺れる程度
『レシオ』
2:1から2.5:1くらいで様子を見る
『Knee』
中間~最大値の間からスタート、状況に応じて少しずつ変える
『アタック』
比較的遅め~だんだん早くしていき、イメージに近いところで止めておく
『リリース』
比較的長め~少しずつ短くする

もちろんこれらの設定はあくまでも目安の一例に過ぎませんのでご了承ください。


【今月のちょいレア】MindPrint EN-Voice MKⅡ

2000年初頭から5~6年販売されていた、ドイツ製のチューブ式チャンネルストリップ。MANLEYやTUBE-TECHクラスのハイエンドアウトボードともいい勝負の、隠れた名機だ。


【今月のMV】WORSTRASH 「Draw up my emotions」

90年代ウエストコーストラウド系を彷彿とさせる意欲作。トリプルギターサウンドを前面に出していて、頼もしさ全開である。


 
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!


日々かりめろ 「バラエティ大作戦」


年間平均300本ものライブをこなす、ロッキンフォークデュオの最新作。バックトラックの精度もこれまで以上に上がり、楽曲のストーリー性も充実している。東京国際フォーラムでのワンマンライブも、短期間のうちにソールドアウトするなど話題に事欠かない。


DEAD STOCK 「Workout,Hangout」


青森から東京に活動拠点を移し数年の彼ら。前作で築き上げた「レトロフューチャーパンク」ともいうべき独自のジャンルを掘り下げて、濃密な世界観が形成されつつある。

セブンマイルズ「幽霊船」

洋楽に影響を受けながらも、あえてダイレクトに反映しないところに彼らの音楽性の原点が垣間見える。初期の細野晴臣にも通じる精神性が、玄人受けしそうだ。


毒島小百合「HA・DA・KAの大将」 (悲観レーベルオムニバスVol.2.収録)


掟ポルシェ氏(ロマンポルシェ。)が曲を提供した、NewWave80年代オルタナポップの再構築曲。なつかしさの中にもヒリヒリした緊張感がまん延している。


カカシカシカカ 「マイロード」


かのジョン・デンバーの名曲を、ななめ45度からオマージュしたような作品。スタンダードな性質をスタンダードに感じさせない、ハイソなセンスを十二分に評価したい。

ジャングルライフ本誌にて、隔月で半ページの連載をさせていただくことになりました。「PAST & POST MASTERS」
今月号(265号)からスタートです。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第59回

前回まで「低音を中心としたマイクの実用例」を挙げてきました。今回からは「ペンシル型コンデンサーマイク」を取り上げます。

ペンシル型コンデンサーマイクは、ドラムのオーバートップにペアで使用することが一般的ですが、アコギやピアノ、ブラス、ストリングス系にも使えます。

【AKG C480】
スタンダードモデルAKG C451の上位機種に当たります。

【CAD GLX1200】

【Joemeek JM27】

【TASCAM TH-50M】

次回から以上の4機種の比較をしていきたいと思います。


【大学生バンドのセルフREC】

セルフRECのMIXについて、前回はコンプの基礎をご紹介しました。
今回はコンプの実践的な使い方です。

キックは、ベースとの絡みを考慮しつつ作業を進めます。
【スレッショルド】最初は深めに設定。様子を見ながら浅くしていく。

【レシオ】レシオは割合なので、まず2:1でかけてその後3:1、4:1を試す。

【knee(ニー)】最小と最大の中間に設定。他のパラメーターとの兼ね合いを考えて上下させる。

【アタック】まずは最速に設定、少しずつ数値を上げていく。イメージの音が出てきたら一旦ホールド。

【リリース】タイトにしたい時は、アタックより少し大きい値に設定。

スネアの設定は以下の通りです。
【スレッショルド】キックと同じ。

【レシオ】キックと同じ。

【Knee(ニー)】硬くしたいときは値を最小に。それ以外は少しずつ値を上げ様子を見る。

【アタック】ある程度数値を上げておき、アタックがつぶれないようにする。

【リリース】サスティンが欲しい時はタイムをやや長めに設定。


【今月のちょいレア】CAD E300S
比較的ロープライスでありながら、ハイエンド機種ブランドともいい勝負をする。CADのコンデンサーマイクの中では上位に位置する、万能型の名マイクだ。


【今月のMV】川嶋志乃舞「Jump up!!!」

日本テレビの音楽番組「バズリズム02」でもオンエアーされた、瞬発力全開のMV。軽やかで弾けたダンスビートと三味線の真髄が絶妙にリンクする。


 
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。
当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

WORSTRASH 「Draw up my emotions」

パンク、メロコアの期待のニューカマーバンドの新作。ボーカルSweeney Lenの放つエネルギッシュなパワーボイスと、さわやかでアグレッシブな楽器隊が織りなす強烈なステージングも圧巻だ。


MILF 「DESERT OF CLOUD」


ロカビリー、リズム&ブルース、R&R、初期パンクのいいとこどりのロックアルバム。古きを温めてから、あえて再度冷ましたようなインパクトのある存在感が存分に味わえる作品。


川嶋志乃舞 「光櫻」


ハイパーシャミセニスト川嶋志乃舞の本質をすべて詰め込んだ「伝統芸能盤」が、満を持しての全国リリース。ポップな面だけではない、彼女のこれまでの三味線キャリアが思う存分に堪能できる。

Cuicks 「neo teenagers」

フューチャーEDMの決定盤。渋谷系の流れが現代風にマッシュアップされており、メロウなメロディーと浮遊感のあるサウンドスケープの融合が好印象だ。ネクストフェーズを感じさせるインテリジェンスなポップネスが満載。

Amtika 「Remenbrance」

フュージョン、ジャズをベースに、リアルタイムのルーツミュージックを貪欲に取り込んだ、インストの黄金律的アルバム。フレージングの組み合わせの妙が素晴らしく、一気に最後まで聴けてしまう。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第58回

【超低音収録マイク&低音系デュアルマイク対決】
組み合わせその① YAMAHA SUBKICK & LEWITT DTP640REX

組み合わせその② SOLOMON MICS LFRQBLK & audio technical AE2500

Super LOW(50Hz以下を目安)は、①YAMAHA SUBKICKより②SOLOMON MICSの方が
伸びていますが、上の音域はSUBKICKの方が少し伸びている気がします。

又、①LEWITTと②audio technicaを比べてみると、LEWITTの方が低域が伸びています。
なので、あえてaudio techinicaはSOLOMON MICSと組み合わせてみました。
(ただし、あくまでも一つの目安と思ってください。)


【大学生バンドのセルフREC】
「4つ打ちダンスロック」は、リバーブのかけ方を細かく工夫してドライながらもリッチな音像が出来てきました。次はダイナミックス系(コンプ、リミッター、エキスパンダーなど)について考えてみます。

「EQとコンプ、どちらから手をつけたら良いのか?」と聞かれることがあります。
曲調やコンセプトで、リバーブ含め臨機応変に変えていくのが一般的ではないか?と思います。

とりあえずこの曲は、「キックの4つ打ちが揃っている存在感」がキモなので、コンプを使っていきます。

RECの際にもコンプを2段がけで使用して、ある程度音量を揃えていますが、より「人間が演奏している感じ」を残しつつ音粒を揃えていきたいところです。

ここでコンプの基礎知識に触れてみましょう。

コンプレッサー、通称コンプは「音量を揃えるエフェクター」です。

スレッショルド(ある一線)を超えた音量を、どれくらいの割合で抑えるか調整するのがレシオです。図の右側ではレシオが2:1になっているので、スレッショルドを超えた音量が半分に圧縮されているということです。

レシオはパラメーター値が1:1から1:∞(無限大)まで存在することが多いのですが、レシオが1:1の場合は、スレッショルドをいくら低く設定しても全く圧縮はされません。


【今月のちょいレア】CAD EQUITEK E350

今やレジェンドになりつつある、ビンテージコンデンサーマイクの雄、E350。当時は欧米エリアのみで販売されていた。定番のビンテージマイクよりも密度が濃く、ワイドレンジな優れものだ。


【今月のMV】みるきーはぼくの味「夜が明けるまで」

ゲスの極み乙女。やindigo la Endの影響を多大に受けつつも、少し違った切り口でアウトプットしている。上モノのリフとリズム隊の絡み具合が良い。


【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

De怪!「Burn out」

アメリカでの活動経験もあるBOSS率いる、ボンテージメタルバンドのミニアルバム。専門学校講師でもあるTOMO氏のハイトーンボイスが冴えわたる。ハードロックのニュームーブメントを起こしそうな予感。

The Echo Dek 「アイ ブレイク ユア ハート」

2020年代のブルーアイドソウルとオルタナティブが、蜜月のように融合した作品。The futureOf Motownとも呼べそうだ。日本語バージョン、英語バージョンの分け方にもきめ細かなセンスを感じる。

sunday melanchory afternoon 「春の知らせ」

全曲サビ頭、というインパクト全開のマキシシングル。一聴すると定番のようだが、聴きこむうちに軽やかなオリジナリティーがまん延した世界観に気づく。


経血(EYESCREAM、NO NO NO とのスプリット盤)/ Croon A Lullaby


80年代ニューウエーブと初期パンクが融合したロックバンドのスプリット作品。伝説の雑誌「DOLL MAGAZINE」の雰囲気を思い出す。全国発売中。

ザ・ビートモーターズ「土手」

イオンCMソングVo.にも起用経験のある秋葉正志氏の歌声が、いつまでも耳に残るデジタルシングル。エレファントカシマシや奥田民生などが好きな人はドはまり間違いない。
             
【お詫び】先回掲載したザ・ビートモーターズ「FGTSL」の画像が間違っておりました。お詫びいたしますとともに、正しい画像を再掲載させていただきます。

ザ・ビートモーターズ 「FGTSL」

ROCK IN JAPANやCOUNTDOWN JAPANにも出演経験のあるロックバンドのデジタルシングル。フォーキーでメロウなメロディーラインと歌声、そして定番を少し外した楽曲の三位一体のバランスがとても良い。

 

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第57回

【超低音収録マイク対決】
前回ご紹介した「低音系デュアルマイク」と今回取り上げる「超低音マイク」を組み合わせて、ドラムのキックを録りくらべてみようという企画です。

超低音マイクその1 【YAMAHA SUBKICK】*生産完了品

読んで字の如し、スーパーLOWからLOWまでの収録に特化したマイク。中音以上のレンジは、ほとんど録れないので、他の低音マイクと組み合わせて使用するのが前提です。

超低音マイクその2 【SOLOMON MICS LFRQBLK】

前述のSubkickと役割は似ていますが、違う点は「本体の形状がそこまで大きくないので、大抵のマイクスタンドにセッティング可能」なこと。SubkickよりスーパーLOWが伸びてしまう気がします。

次回、これらの低音マイクと低音デュアルマイクを組み合わせ、実際にドラムキックを収録し検証します。

組み合わせその① audio technical AE2500 + SOLOMON MICS LFRQBLK


組み合わせその② LEWITT DTP640REX + YAMAHA SUBKICK


【大学生バンドのセルフREC:MIX編】
4つ打ちダンスロック(仮称)のMIXに取り組んでいる彼ら、セミドライな音像を作り出し「タイト」と「リッチ」の両方を演出するため、前回触れた「ドライな感じのリバーブ」を試みようとしている。

ミックスの定位はRide→L、Hi-Hat→R1、Floor Tom→L、Mid Tom→L、Hi Tom→ややR。
(注:サウスポーのドラマーの場合はこの逆になる)

リバーブをかける対象となるパートは
① Snare Top1(アタック用)
ゲートリバーブをモノラルで少なめにかけ、その後リバーブタイムを短くしたホールリバーブ
をステレオでかける。
② Snare Top2(胴鳴り用)
Top1と同じ。様子を見ながらタイム、量を少し調節。
③ Snare Bottom(スナッピー)
ゲートリバーブはTop2と同じくらいだが、タイムの短いホールリバーブを少し多めにかける。
④ Floor Tom
PANがL寄りなら、Lだけにリバーブタイムの短いホールリバーブをかける。R寄りならRだけに。
⑤ Mid Tom
Floor Tomと同じ。
⑥ Hi Tom
Floor Tomと同じ。
⑦ Over Top L
ホールリバーブをLだけにかける。Tomより少し多めの量で。
⑧ Over Top R
Over Top Lと同じく、Rだけにかける。
⑨ Hi Hat
ホールリバーブを、Rにかなり少量でかける。
⑩ Ride
ホールリバーブを、Lに平均より少なめ程度に。
⑪ Ambient
ドラム全体に、リバーブはかけずコンプをやや深くかけてサスティンを伸ばして入れ、様子を見る。
⑫ ギターバッキング
ステージでいうと下手(客から見て左)側になるので、L側のホールリバーブをほんのりかける。さらにアーリーリフレクションを別のAuxでステレオでかける。
⑬ ギターリード
ステージ上手(客から見て右)側になるので、R側のホールリバーブをかける。バッキングにかけた分より少し多めに。L側のホールリバーブもほんのりとかけて、更にアーリーリフレクションを別のAuxで、ステレオである程度かける。
⑭ キーボード
キーボードはステレオファイルなので、PANを3時、9時に振って、Lだけ、Rだけのホールリバーブを少しかける。
⑮ ボーカル
リバーブタイムの短いホールリバーブを、ステレオで少しかける。歌とバックのなじみ具合を確認しながら、プリディレイタイムを調整する。
⑯ 同期(ストリングス)
ストリングスはあえてモノラルファイルにしてセンターより少し左、または右に配置する。タイムの短いホールリバーブをL、Rプリフェーダーにしてかけて立体感を出す。この時リバーブタイムもしくはプリディレイの値を少しずらし、ステレオ感を斜め奥で出す。
⑰ コーラス
元々のPANがLであれば、Lだけのホールリバーブを控えめにかけていく。

リバーブはそのままだとダブつくポイントが出てくるので、低音と高音をEQで削り、リバーブのリリース音が次の音にかぶらないようエキスパンダーやノイズゲートで調整する。ポイントは、安易にステレオリバーブをかけない、ということだ。

又、ベースやキックのような低音パートにリバーブをかけると曲の低音域がぼやけるので、基本はかけない。
(シューゲイザーやブルックリン勢などのジャンルでは、リバーブのプリディレイを遅くして原音が沈まないようにするかけ方もある。)


【今月のちょいレア】SHINANO GP1500(modify品)

ピュア電源整合器のパイオニア、SHINANOが放つディストリビューター。アースを除去し、プレーンな電源を供給する。現在はVoltAmpere社がその流れを引き継いでいる。



【今月のMV】クラウディールーム「walk home (27km)」


リラックスした雰囲気の中にも心地よい緊張感が点在する、ギターロックの佳曲。音楽性の幅がナチュラルに広がり、バンドとしての伸びしろに期待が高まる。


 
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

スーパーアイラブユー 「WE ARE BEAUTIFUL DREAMERS」

ローリングストーンズ、エルビス・コステロといった洋楽ロックを根底にもち、それらに影響を受けた邦楽ロックのレジェンドたちの系譜とも言える、エッセンス満載のサウンド。2019年9月9日全国発売。

川嶋志乃舞 「SUKEROKU GIRL」

日本を代表する三味線マエストロが放つ、ハイパーポップアラカルトアルバム。ポップス・フィールドの隅から隅までのエクセレントなアイデアを昇華させた力作。2019年10月全国発売。

THE JIVES 「She Heard Out Usual Troubles」

国内外のロックンロールをベースに、現在のロックエッセンスをさりげなく斜めから取り入れた、セミ・現在進行形なロックアルバム。様々なアイデアがオルタナティブ的に交差し、有機的に化学反応を起こしている。

ザ・ビートモーターズ 「FGTSL」

ROCK IN JAPANやCOUNTDOWN JAPANにも出演経験のあるロックバンドのデジタルシングル。フォーキーでメロウなメロディーラインと歌声、そして定番を少し外した楽曲の三位一体のバランスがとても良い。

3tsuaru 「LAUGH BUG」

普遍的ミニマルミュージックと、先鋭的ポストロック、そしてポップなオルタナティブ・ロックが絶妙なバランスで絡む、フューチャーミュージックの決定盤。邦楽中心のリスナーでも自然に入り込むであろう、不思議な魅力にあふれている。

*ジャングルライフ262号28ページに、川嶋志乃舞さんと樫村の対談記事を掲載していただきました。是非お読みください*

WEB対談ページ
https://www.jungle.ne.jp/sp_post/kawashima-x-kasimura/

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第 56回

【低音用デュアルマイク対決②】
前回は、低音用デュアルマイク「audio-technica AE2500」と「LEWITT DTP640REX」を用いてバスドラを録音し、比較してみました。
今回も同じ2本のマイクを使用して、エレキギターの録音をしてみましょう。

一般的にエレキギターREC用の定番とされているSHURE SM57で中音~高音を録り、低音補強用として上記のデュアルマイクを加えます。
ギターアンプは定番中の定番であるMarshall JCM2000と1960のキャビのセット。
スピーカーのど真ん中を少し外したポイントを狙い、収録します。
シールド、マイクケーブル、電源ケーブルは全てオヤイデ。ストラットのギターを使用して、エフェクター系は一切使わず、アンプ直でオーソドックスな歪みのバッキングを録音します。

【audio-technica AE2500 + SHURE SM57】


中音~高音用のSM57は、予想通りソリッドでやや粘っこい音を拾いました。
AE2500の「ダイナミックマイク」チャンネルは中低音域のふくよかさがしっかりと、「コンデンサーマイク」チャンネルはクリアな低音からブライトな中高音までまんべんなく録音されており、SM57を含めた3つのチャンネルを普通に混ぜるだけで、目の前でギターアンプが鳴っているような音で録音できました。

【LEWITT DTP640REX + SHURE SM57】


SM57は前述の通り。DTP640REXの「ダイナミックマイク」チャンネルは、低音から中低音にかけてタイトでファットな音が、「コンデンサーマイク」チャンネルは締まりのある低音とリッチな中低音域が好印象を残しました。

AE2500、DTP640REXのどちらの組み合わせでも、アンプシミュレーターでは再現しにくい濃密な音像が実現できました。


【大学生バンドのセルフREC~MIX編】
今回はリバーブの実践的な使用例を挙げてみましょう。

大学生バンドの曲「4つ打ちダンスロック」は、一部のパートを除き全体的にタイトでドライな質感。それだけにメンバー全員が「リバーブはほとんど必要ないのでは?」と思っているようです。しかし、ノンリバーブにしてしまうと各パートの混じりがイマイチになったり、リッチな広がりや奥行き感が演出しにくくなりがちです。著名アーティストの音源でも、全体的にドライであっても1つ1つのパートには少しずつ緻密なリバーブがかけられている事が多いのです。

ドライでありながらリッチな音像を創り出すには?
① ステレオとモノラルが混在しているトラックで、モノラルでも良いものは極力モノラルにして→モノラルのリバーブをかける。不必要なにごりや残響をある程度カットできる。
② 初期反射(アーリーリフレクション *前月分を参照)のタイム、Difusion、密度(dense)の数値をある程度減らし、パンを意識しながら細かくリバーブをかける。
③ 一曲の中に数多くのリバーブを使わない。出来ればプレート系とルーム系といった2種類くらいに留め、リバーブの次にエキスパンダーやノイズゲートを緻密にかけて、減衰が自然になるよう細かくコントロールする。
④ リバーブの種類を意識しないかけ方を試みる。例えばホールリバーブのプリセットは2.5m secぐらいが一般的だが、極端に短くし(例:0.5~0.8m secぐらい)イコライザーで低音部と高音部をある程度削って、モノラルで控えめにリバーブをかける。


【今月のちょいレア】 TASCAM X48MKⅡ

96kHzで同時に48トラック録音可能な業務用ハードディスクレコーダー。音質もProtools HDXと同等か、それ以上のクオリティーだ。2015年ごろ生産完了。


【今月のMV】スーパーアイラブユー「FORGET ME NOT」

エレカシ、真心ブラザーズ、サニーデイサービスに通じる、フォーキーでメロウなナンバー。良質なポップスと呼べる佳曲だ。


 
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

クラウディールーム 「 LOSS 3.5 」

ギターロックの本質を少し斜めから解釈した、エモーショナルなロックバンドのミニアルバム。普遍性のある各パートのフレーズだが、バンド全体に混ざると化学反応をおこし、個性を発揮する。

迷い羊とノクチルカ 「 ロマンチカループ 」

インターナショナルな匂いのする、ポップな女性デュオのシングル。今作はクラウディールームのリズム隊をサポートに迎え、ポップワークスの枠を超えた、存在感のある熱い楽曲に仕上がっている。すばらしいコーラスワークも必聴だ。

海月ひかり 「 アーティスト 」

邦楽女性Vo.というカテゴライズでは括れない、実力派シンガーの渾身のマキシシングル。大人の女性をテーマとしつつも、メルヘンチックな雰囲気も漂う注目作だ。

カカシカシカカ 「 Jack Song 」

ポップマエストロ星野源を彷彿とさせる、セレブなセンスが光るポップチューン。随所に洋楽の黄金律が見え隠れし、聴き手を選ばない幅広い魅力がある。

Porcho

プリンスmeets レッドツェッペリン、VSレッチリといったような、欧米のオールドロックとブラックミュージック、オルタナが合体したような、とにかく濃いシングル。肩肘張らず聴ける英語詞の内容と発音がグッド。
配信も決定。https://linkco.re/6SBT97fB

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第 55回

【低音用デュアルマイク対決】
今回は、先回ご紹介した2つのマイク「audio-technica AE2500」と「LEWITT DTP640REX」を使用して、実際にバスドラを録ってみます。どちらも元々バスドラやベース用に開発された低音用の特殊なデュアルマイクです。

【audio-technica AE2500】

【LEWITT DTP640REX】

マイクプリにはTUBE-TECH MP1Aを使用します。

どちらのマイクもダイナミックとコンデンサーの2ch仕様になっており、低音用にチューニングされていますが各々キャラが違います。
バスドラのキックを録音してみました。

リリースされて15年以上経つaudio-technica AE2500から試してみましょう。
【ダイナミック部】
同社の名マイクATM25に近いキャラ。スーパーローより少し上の100~250Hzあたりのアタックは、やや硬め。オーソドックスな低音の質感が録れました。
【コンデンサー部】
同社のAE3000の重心が下がった感じ。クリアな低音が魅力的だ。

LEWITT DTP640REXも、同じくバスドラを録音してみます。
【ダイナミック部】
AE2500のダイナミックより重心が下で、スーパーローの上の方ぐらいから録れました。中音から中高音はAE2500ほどソリッドではなく、プレーンといった感じ。
【コンデンサー部】
低音にチューニングされていながらも、クリア&タイト。プライス的にはLEWITTの方が、少しリーズナブルです。

コンデンサーマイクで低音にチューニングされているマイクは、今回ご紹介したこの2つ以外はあまり見かけないので、どちらかを手に入れればキックだけでなく、ベース、スネア、ギターなど幅広く対応できると思います。


【大学生バンドのセルフREC】
前回に続きリバーブについてお話します。リバーブはディレイの集合体で成り立っています。効率的にコントロールするには、まず大本の残響の在り方を知るべきです。

残響音には、大きく分けると2種類あります。
①反射音が窓、床、壁などにぶつかり、ダイレクトに耳に入り込む「初期反射(アーリーリフレクション)」

②反射音が床、窓、壁などに何度もぶつかって耳に入ってくる残響

一般的なリバーブのパラメーターは、初期反射以外をコントロールして設定することがメインとなっています。


当然これにないパラメーターや、呼び方の違うもの、また省略されているものなど、プラグインやハードウエアには様々な仕様があります。上記の基本的なパラメーターがしっかり理解出来ていれば、大体は応用が利くと思います。



【今月のちょいレア】YAMAHA MT-120


現行機種の名機MT-8に通じる、ナチュラルなキャラクター。現在はディスコンであるが、もし中古で状態の良いものが出ていれば是非、ファースト・ヘッドホンにおすすめ。


【今月のMV】cruyff in the bedroom 「FUZZ ME!!!」

ブリットポップ的メロディーと、シューゲイザーの轟音がセンシティブにクロスオーバーする
cruyff in the bedroom代表曲の一つ。


 

【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】

STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

Sonic Blew 「 Masquerade 」

ハードロックテイストをフュージョンにぶち込んだ、セミ・ラウド系インストバンドのミニアルバム。卓越した演奏力と、計算されつくしたアレンジに注目。

水鏡 「 水鏡 」

国内を代表する、シンフォニック・プログレバンドの1stアルバム。フランスの大手インディーレーベル「MUSIA」からのリリース。和と洋のテイストの絡みがユニーク。逆輸入盤。

nikiie 「 The swirl of dust 」


ゲス極のベース、休日課長率いるバンドDadalayのボーカルとしても活躍するnikiieのデジタルシングル。エリカ・バドゥがポストロックに手を染めたような、意欲作だ。

RISKY 「 Reborn 」

仙台で活動する、ラウドでメロディアスな正統派ロックバンドのミニアルバム。90年代のアメリカンロックがベースになっており、深みあるボーカルサトルの声が印象的。全国発売中。

paroxtsm 「 paroxtsm 」


福島在住のヒップホップトラックメイカー、兼DJ。海外、特にアメリカでの評価があらゆる面から上がってきている。全国発売中。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第 54回

今回はドラムのキックやベースの録音で活躍する、少々特殊な低音マイクを2つご紹介します。

【 audio-technica AE2500 】

【 LEWITT DTP640 REX 】

どちらもダイナミックマイクとコンデンサーマイクの一体型仕様となっており、1本のマイクで2ch分収録出来るユニークな作りとなっています。
【 カバーを外したAE2500 】

【 カバーを外した DTP640 REX 】

バスドラ収録用に開発されているようですが、ベース、エレキギター、エスニック楽器全般など、守備範囲はからり広いと思います。
専用の2chマイクケーブルも同梱されています。
【 AE2500の同梱ケーブル 】

【 DTP640 REXの同梱ケーブル 】

次回はこの2本のマイクを使用し、実際にドラム、ベース、エレキギターを録音して比較検討してみたいと思います。


【 大学生バンドのセルフREC:MIX編 】
「レコーディングやミックスで使われる、一番身近なエフェクターは?」と尋ねると、大抵の人が
「EQ、コンプ、リバーブ、ディレイ」と答えるのではないかと思います。
今回は空間系エフェクターの代表格であるリバーブについて、考えていきます。

リバーブは「ディレイ」の集合体です。

リバーブ、といっても「ルームリバーブ」「プレートリバーブ」「ホールリバーブ」「スプリングリバーブ」「ゲートリバーブ」などかなりの種類があるのはご存じのとおりです。

その前に「なぜリバーブをかけるのか」という初歩的な疑問から考えてみましょう。
今まで当連載の中では「マイクの下にタオルや吸音材を敷き、部屋の反射を抑えて」比較的デッドな素材を収録する方法をご紹介しました。

なぜデッドにすることにこだわるのか?
音の反射が多い部屋で録音すると、音の素材がこもったり奥に行きがちになり、ミックス時に前に持ってこられないという状況に陥る可能性が高いからです。(シューゲイザーなど、音楽のジャンル的にわざと狙うこともありますが。)

音素材そのものはなるべくドライに録音し、ミックス時に状況に応じてリバーブをかけて、前後斜めの位置関係をコントロールするのが、昔から行われている常套手段と言えます。

今このコーナーで取り上げている大学生バンドの「4つ打ちダンスロック」は、比較的ドライな音像を狙っているので、リバーブは少なめながらも的確な量をかけていきたいところです。



【 今月のちょいレア: ENSONIQ MR-RACK 】


今や伝説的存在になりつつあるアメリカのシンセ・サンプラーメーカーENSONIQの、フラッグシップ音源モジュール。90年代後半にリリースされ、ファットでタフなサウンドキャラクターは現在でも世界中のトラックメーカーを魅了し続けている。


【今月のMV】S.H.E [ Struggle-Head,Emergence ] / Dear my sun.
ネオアコ調ギターから始まるイントロが特徴的な、オルタナバンドの代表曲。さわやかさと、いかつさがバランスよく同居している。


 
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

magenta 「 全てを許したら 」

Jオルタナから、洋楽寄りのポストロックに転身したキーボード・シューゲイザー・トリオバンドのデジタルシングル。良い意味でサブカル色が強化され、幅広い玄人受けが期待できそうだ。

Rooky Babe’ 「 Smells like ika spirit 」

パロディーを真っ向からアピールする、まじめなエレクトロ・ファンクバンドのミニアルバム。
Zepp東京や新宿BLAZEといった大きな会場でのライブを多数経験し、ライブパフォーマンスもピカイチ。

眠らない兎 「 今宵もランデヴー 」

タイトなリズム隊と豪華絢爛な上モノが有機的に絡む、女性Vo・ギターロックバンドのシングル。独自の世界観を持つ歌声と歌詞との融合が素晴らしい。

合格4号ズ 「 ビューティフルを追いかけろ 」

古くは「RCサクセション、村八分、泉谷しげる」あたりと、最近では「エレカシ、コレクターズ」にも通じるR&Rバンドのシングル。懐かしさの中にも密かなオリジナリティーを感じる。


三日月ゴシップ


青山学院大の軽音部で結成された、セミ渋谷系バンドのシングル。アンニュイさとタイトさが高次元でリンクする、センシティブな雰囲気が感じられる。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第53回

毎回セルフRECに関する話題を様々な方向から取り上げるこのコラムですが、今回は「レコード会社などの現場から見たデモ音源」にまつわる話を取り上げます。

先日、(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングスの石田裕一氏とお会いする機会がありました。石田氏は現在、同社音楽出版部 営業グループに所属され、ディレクターはもとより大規模イベントの総括プロデューサーなど多方面で活躍されています。

石田裕一(いしだひろかず)氏
略歴:
矢井田瞳の制作ディレクターとしてアルバムやシングルの制作、ライブツアーや各種TV収録などの現場。手嶌葵の出版コーディネイトとして、スタジオジブリアニメ「コクリコ坂からの」アルバム制作に参加。現在は作家チームを取りまとめ、アーティストへの楽曲提供、アニメなどの劇版制作、CM楽曲制作などを取り仕切るとともに、2016年8月よりヤマハがスタートさせたYamaha Music Auditionにおいて、新人発掘及び育成も担当する。


樫村(以下、樫)お久しぶりです、2017年のセミナー講師(注:樫村が講師を務める茨城音楽専門学校で開催したミュージックプロデュースセミナー)をお願いした以来ですよね。

石田(以下、石)約一年半ぶりですね。

樫)ヤマハさんには、毎月ものすごい数のデモ音源が送られてくると思うのですが、それらの音質ってどんな感じなんでしょうか。

石)10年前と比べれば、機材の進歩も手伝って音質のクオリティーは全体的に上がっていると思います。これは他のレコード会社にも共通したことだと思います。

樫)確かに数十年前のカセットMTR時代に比べたら機材の進歩は目まぐるしいし、これからもっと進化が加速するでしょうね。ちなみに送られてくる物で「デモ音源をそのままリリース出来てしまう」みたいなハイクオリティーな物ってありますか?

石)音質面だけで言えば少しはあるかと思いますが…。今は例えば「マキシマイザー(注:別名ブリック・ウォール・リミッター。通常のリミッターとは違い、音声のピークを先読みし音が歪まないようにするエフェクター。)でパツンパツンに音圧を上げて送ってくる人」と「そういった物の存在を知らず、純粋なミックスダウンだけで送ってくる人」の真っ二つに分かれているという感じです。

樫)なるほど。ある程度宅録をやっている人たちであれば、マキシマイザーの多段がけは当たり前になっているんでしょうね。ただ、パソコン内部だけでミックスをやってプラグインに頼りまくっていると、有名なバンドの音源、特に洋楽トップクラスの質感には届きづらいと思います。

石)そうですね。僕も今まで、いろんなレコスタで「洋楽っぽい質感にしてほしい」と言っても、今一つ届かなかった経験の方が圧倒的に多いです。国内のメジャーっぽい音にはなりやすいんですけど。

樫)思うに、例えばマルーン5やチェーンスモーカーズのような洋楽トップクラスの音は、日本人がやっているセルフREC とは真逆の質感であるような気がします。特にスリップ・ノットのようなラウド系は、より格差を感じますよね。

石)確かに、あのナチュラルな立体感とか濃密で豊潤な音は、日本では簡単には出せない。

樫)日本は欧米と比べると電圧が低いから、電源周りから「的を得た強化」を促していかないと、いくら良い機材を導入しても本領発揮出来ないんです。

石)プロが利用するレコスタは、電源を始めとする周辺機器には相当こだわっていると感じます。

樫)完全業務用のスタジオであれば、当たり前の話ですね。しかし僕の視点から見ると、マイクからメイン卓やADコンバーターまでの距離が長すぎたり、パッチベイを含む接点が多すぎて、ProToolsHDXに入るまでに相当なロスが多くなるのでは?と感じています。

樫)この「距離が長すぎたり、接点が多すぎるが故にロスも増える」部分を逆に捉えれば、セルフRECの強みになるとも思うんです。

石)強みとは?

樫)セルフRECならではのコンパクトな環境です。例えばマイクプリ等のアウトボードをすべてブース内に設置して、ブースの中でマイクレベルからラインレベルに引き上げてやる。するとノイズが乗りにくいだけでなく、音質も限りなくワイドレンジになります。さらにマイクケーブルやタップ、電源のパワーケーブルなんかもハイエンドな物を使用して狙い通りのRECが出来れば、目の前で鳴っているようなリッチなサウンドに近づけるんじゃないかな。

石)なるほど(笑)

樫)これからデモ音源をヤマハさんに送ろうと思っている人は、送る前にこの対談を読んで欲しいですね(笑)


【今月のちょいレア】APHEX CHANNEL

真空管マイクプリアンプを搭載したチャンネルストリップ。コンプ、EQはもとより、APHEXのお家芸とも言えるエンハンサーの効き方が素晴らしい。派手な音、アメリカンな感じの音が好きな人は是非チェック。


【今月のMV】 Mr.WANT 「グルーヴィングアドバイザー」
「テクニシャン揃いのレッチリが、シティーポップを奏でている」かのような、ファンキーでおしゃれなナンバー。


 
【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

CANDELASTER 「RAINBOW BEAM WAVE」


リアルタイムのエレクトロサウンドを、一度MIX UPした上で独自の感性で再編しているニューエイジ・エレクトロニカユニットのシングル。良い意味で元ネタがわかりにくく、EDMヘビーリスナーにもおすすめ。

天邪鬼 「Late Show」

その名が示す通り、クロスオーバーロックを斜めから解釈した2010年代のニューロックバンドのマキシシングル。ルーツを感じさせながらも、次の展開では全く違うネタで切り込んでくる大胆さが心地よい。

fusen 「夜更かし」

栃木在住ギターロックバンドのシングル。ティーンズバンドとは思えない楽曲の構成力や、音色セレクトのセンスに光るものが多大にある。

V.A 「ULTRA HIGH BEAM」

インディーズ大手レーベル「HIGH BEAM RECORDS」が放つスーパーコンピレーション。当スタジオではフラスコテーションのRECを担当。全国発売中。

Jam en drop 「Be crazy」


80年代アメリカンハードロックに、アルトサックスとバリトンサックスが真っ向から対峙するニュータイプロックバンドの配信シングル。キレのあるVo.に加え、ドラム、ギターもよりソリッドになり、彼ら独自の世界観を作り上げている。

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