音楽メディア・フリーマガジン

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第26回

このところ「マイクケーブルのおすすめは何ですか」という質問をプロ・アマ問わずいろいろな方からされるので、当スタジオで使用しているマイクケーブルの一部をご紹介します。

【Evidence Audio】

最低音から超高音まで、フラットなケーブル。

録音素材を選ばないリッチな質感を提供してくれる「最高レベルのマイクケーブルの1つ」と言っても過言ではない逸品です。

 

 

 

 

 

 

 

【Whirlwind】                          

 楽器用シールドの知名度もなかなかのメーカーで、このマイクケーブルも中音域が少々派手でアメリカンな質感が楽しめる。

意外にロープライスなのも魅力的です。

 

 

 

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今回の作業はVo.録りを3時間で。運よくNeumann U87AiとSE Electronic GeminiⅡの2本、TUBE TECH MP2A(2chマイクプリアンプ)といった高級機材を借りることが出来た。

 

マイクケーブルは KLOTZ M5とM2を使用。(写真はM2)

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まさに「セルフRECがプロREC水準に迫れそうな」機材を使い、残り3曲にチャレンジする。

【テンポチェンジ有レディオヘッド風オルタナロック】

AメロはBPM=126で淡々と→BメロはBPM=151にテンポチェンジ。音数も多く雰囲気もガラッと変わる。Aメロ①から録りはじめ、1stテイクを聴いてみると「ピッチ、リズム共に問題ないが面白味がない」と感じてしまう。ブース照明を落とし、Vo.が自分の世界観に入りこめる雰囲気を作り2テイク目へ。OKは3テイク目で出た。

続いてAメロ②へ。流れは良いのだがピッチ、リズムが甘い。テイクを重ね、3回目で自然に力を抜いたテイクが録れてAメロ録り終了。

休憩後、Bメロ録り。テンポも変わり、Aメロとは真逆の「エモっぽさ」が要求されるので、先程までのAメロの雰囲気からの切り替えに苦戦する。エモっぽさが出てきてもピッチとリズムが崩れ、テイクを重ねる。5テイク目でOK。

ピッチ修正をその場で行い、加えてダブリングも入れようということになりマイクから約1m離れて1曲通しで録った。

コーラスは後日にまわすことにして、次の曲【コールドプレイ風ミディアムテンポ】に移る。少しカオティックなこの曲、果たして録り切れるのだろうか。スタジオの残り時間は2時間弱である。


【今月のMV】 Omoinotake 「Hip It Up」

シティーポップの雄「Omoinotake」が放つ最強のキラーチューン。日本テレビ系金曜深夜の音楽番組「バズリズム」でも取り上げられた。


 

【今月のちょいレア】TUBE TECH MP2A

ハイエンド2chマイクプリアンプ。あらゆるマイクレベルの音素材を、高級感のあるラインレベルにまで引き上げる百戦錬磨な一台。

 

 

 

 

 

 

 

 


【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】

STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。

全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。

スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

 

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。

エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

 

virgin crab bandVirgin Crab Band 「Fleming」

中華圏最大級野外フェス『Spring Scream2016』に出演、セミ・ヘッドライナーに大抜擢された最新型ロックンロールブルースバンドのフルアルバム。今作はグローリー・ヒルのキーボーディスト

mitch sugihara氏もゲスト参加し、R&Rを現代風に昇華させている。2017年3月全国発売。

 

57pictures 「portrait」

ポストロック、シューゲイザーを通過したギターロックバンドのフルアルバム。 全国流通、全国ツア-をこなしてきた彼らの、10年目の区切りとなる記念碑的な作品。キャッチ―さとマニアックさが程よいバランスで混在しているところがおもしろい。

 

 

Spicy Ground Floor 「Flood」

80’sネオアコ、アノラックが90‘sシューゲイザーやアブストラクトを纏い、2000年代ブルックリン勢やUKオルタナ色の加味された秀逸なミニアルバム。フランスのMusea Recordsレーベルから2017年1月ヨーロッパ中心に発売された。まさに「逆輸入盤」である。

 

 

The MashThe Mash 「あの子の為に揺れるベッド」

80’s~90’sのニューウエーブやポストパンク色が漂う、女性Vo.R&Rバンドのシングル。ローリングストーンズ、ランナウエイズ、パティ―スミス、少年ナイフ、ゼルダ、Hole、SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HERあたりが好きな人にぜひ聴いていただきたい。

 

 

JASON國分& THE SOUL KITCHEN 「魂の宴」

ローリングストーンズ、ARBをベースに国内外のルーツミュージックを幅広く取り入れ、世代を問わない魅力的な一枚に仕上がったR&R、R&Bバンドのミニアルバム。ジェイソン國分氏のワン&オンリーなVo.が存在感やオリジナリティーを更にマッシュアップさせている。

 

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第25回

明けましておめでとうございます。この連載も3年目に突入、今年は内容をよりパワーアップさせていきたいと考えています。

先日、同業の友人が栃木県宇都宮市で経営する音楽スタジオ「BEAT CLUB STUDIO」を訪ねました。

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スタジオ代表兼レコーディングエンジニアである横須賀さんは非常にキャパシティーの広い方で、ポップス、ロックはもちろんの事、ジャズ、クロスオーバー、ブルース、EDM、ワールドミュージック、エスニックなどあらゆるジャンルに対応されています。

またレコーディングスタジオのみならず、リハーサルスタジオ、ライブホール、自社レーベル、PAなど幅広い業務展開もされており、CRT栃木放送の番組制作もこのスタジオで行っているとのこと。彼のスタジオで制作される番組の一つ「我ら音楽仲間たち」には、我がスタジオチャプターハウスとも縁の深いバンドやグループにも出演のお声掛けをいただき、S.H.Eをはじめ数グループが出演させていただきました。横須賀さん、パーソナリティーの斎藤どらみさん、その節は大変お世話になりました!


■大学生バンドのセルフRECの進行状況

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最初の1時間でマイクとギターアンプ(バッキング用)のセッティング、音決めを終わらせ、ヘッドフォンの返しバランスをチェックし、【4つ打ちダンスロック:BPM=170:同期3パート有:F-Dm7-Gm7-C7sus4】を録り始めた。バッキングギターを3テイク連続で録ってみたところ、普通のコードをかき鳴らす歪み系のバッキングは問題ないのだが、曲構成A部分のクランチ気味のアルペジオ演奏が粗い。(1回目A、2回目A共に。)

その部分のアルペジオ音色のみクリーン寄りにして、パンチインしてみるが、回数を重ねてもなかなか良い演奏にならない。数回弾いたうちの使えそうな部分を編集し、一本化してとりあえずOKとした。

休憩後は【アジカン風ギターロック:BPM=158:Dm7-G7】を録ることにした。

バッキングの音色は、先程の一曲目とほぼ同じ音作りで録ってみる。メインボーカルと中高音域が少々バッティングするので、ギターアンプ(MESA)のプレゼンスを多少削るとドンピシャにハマった。2テイク録ってOKとなり、3曲目の【4/4拍子-5/4拍子:ポストロック風:BPM=183:C-GonB-Am7-G7sus4】のバッキングを録ることになり、アンプをマーシャルJCM2000に変更。

マイクはBETA52、ゼンハイザー609、DPA4091、マイクケーブルはEvidenceAudio、マーシャル用電源ケーブルはオヤイデ ブラックマンバ、スピーカーケーブルはエレクトロハーモニクス、シールドはモンスター プロシリーズ。ギターはテレキャス。

 

1テイク録ってみて、歪みのイメージがかなり近いので低音のつまみを回し、低音成分を少し増やした状態で本番録り。(同期無しなのでラインは録らない)一発OKとなり、3曲分のバッキングギターを録り終えた。残り時間の3時間弱は、4曲目以降のVo.録音に費やすこととなった。

 


【今月のちょいレア】 Audix CX111

従来のコンデンサーマイクの繊細さに、ワイルドさが追加された守備範囲の広い一本。解像度の高い質感にUreiのコンプがさりげなくかかったような、パンチのある音が特徴的。Audix初期の名マイク。

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【今月のMV】 Cuicks 「honey bee,green time」

ジャングルライフ+ジョイサウンドのコラボ企画「うたスキポスト」にも入っている、Cuicks1stアルバムのリード曲。フリッパーズギターの2nd、3rdとコーネリアス1stに通じる、2010年代の渋谷系ど真ん中な1曲。


【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】

STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。

全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。

スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。

エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

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Omoinotake 「so far」

InterFMでシアターブルックの佐藤タイジとセッション、FM802をはじめ各地のFM局や日本テレビ系「バズリズム」にてPOWER PLAYに決定、ROJACKで最終選考まで選出など、話題に事欠かない彼ら。豪華なゲスト陣を含め、カラフルなシティーポップを奏でる1stフルアルバム。まさに今が旬である。2017年1月全国発売。

Junky Funk 「Jack in the BOX」

アメリカ バークリー音大卒のマルチインストルメンタリスト、松井秋彦率いるプログレッシブ・コンテンポラリーJAZZの決定盤。音川英二、嶋村一徳、立川智也といった国内一流ミュージシャンを従え、前例のないフューチャーJAZZを構築。ジャズライフをはじめ多数の有名メディアにも取り上げられている。全国発売中。

アスカゼ「喜怒哀楽を武器にして」

東京と福島在住のメンバーで成り立っているPOPロック系バンドのマキシシングル。一度聴いたら頭に残る、王道のメロディーラインと、歌詞・声質が特徴だ。路上ライブなどでも足を止めてしまう求心力のある、楽曲構成力も良い。

アンダースリープ 「ブルーコンパス」

アルペジオのギターフレーズと、疾走感のあるリズム隊が印象的なギターロックバンドのE.P。楽曲と声質の相性が抜群に良く、歌詞も耳に残る。定番J-ROCKが好きな人におすすめ。

Qualtet of Death 「Heavy Metal Strategy」

全世界20ヵ国同時発売のラウド系コンピレーションに参加経験もある、北欧系シンフォニックメタルバンドの1stシングル。既に発売になっている2ndよりも、ブラジルを中心とした南米メタル要素が色濃く出ているのがユニーク。Vo.KOZAWA氏のハイトーンも健在。

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第24回

先だって告知させていただいた「音楽プロデュースセミナー」、おかげさまで無事終了いたしました。
今回講師としてお招きした(株)クリエイティブマンプロダクション宣伝部長の平山善成氏からは、SUMMER SONICやパンクスプリング、electroxなど大型フェス制作サイドの貴重なお話を伺うことが出来ました。私もコメンテーターとしてかなり際どい質問もぶつけさせていただきましたが、非常に濃い内容の充実した二時間となりました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

 

■セルフRECに挑戦中の大学生バンドの進行状況は?

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エレキギターをアンプに通した音を、マイクで録音すると「目の前で鳴っているギターの音(特に歪み系)」と「マイクで録音した音」とのギャップに面くらった経験がある方もいらっしゃることでしょう。これはギターに限らず全てのパートにあり得ます。こういった事象についてギターで説明すると、まず「アンプを大音量で鳴らすため、数メートル離れて演奏する」ことで「アンプスピーカーから直接出る音」と「数メートル離れて聞く音」で違ってきます。それとマイクで拾う音はピンポイントであるため、本当の意味で楽器の音全てを拾うのは無理に近いのです。マイクの音域特性も関係しています。
プロ、アマ問わずセルフRECの悩みとして「マイク1~2本、2本の場合はオンマイクとオフマイクなど工夫して録音してみても、中低音域が薄くなりがちで納得いかない結果になる」という話を良く耳にします。レコスタなどでは、アンプを別ブースに入れて「敢えてアンプの音を聴かずに」マイクで拾う音だけを頼りに調整することもあります。しかしセルフRECではこのようなやり方はなかなか現実的ではありません。
スペースに限りのあるセルフRECでよりよい音を録る作戦の一つとして「マイク3本をオンマイクで録る」やり方があります。例えばSHURE Beta52を低音用、DPA4091を中低音~中音用、SHURE SM57を中音~高音用と、フルレンジで低音から高音まで「EQを使わずに」録ってみるということです。マイクプリアンプも、出来ればNeveやNeveのレプリカ系(Vintech AudioやBrentavrillなど)、Manley、Tubetech、Millenia、Amekクラスの物を3ch分は用意したいところです。パッチ系も含むシールド類、電源ケーブルも高級かつ曲のイメージに合う音質になるものを使用してください。(人に借りてでも、と力説しておきます!)
なおかつチューナーは間に挟まず、アンプのチューナーアウトから繋ぐことで音質の劣化を防げます。
たまにしか使わないエフェクターは基本的に外しておき、使うときに別トラックで録った方がイメージ通りになったりもします。(わざとチープな音を狙う場合は別)

そして一番重要なこととして「アンプ、ギター、エフェクター」の状態に注意する。意外と盲点になり得るのですが、状態の良いもので録らなければ意味がありません。プロミュージシャンは高い演奏力はもちろん、アンプや楽器類、エフェクターも改造したりしていますので録り音そのものが素晴らしく、ボリュームとパンニングだけで良い感じになってしまうものも少なくありません。

大学生バンドセルフRECの状況に戻りましょう。今回録る曲は同期が3パートあるので、ギターの録りの際アンプから録ることに加えラインパートも録ると、MIXのとき同期とギターが混ざりやすくなります。
つまりギターの一音色につき「マイクトラック3本分、3トラック」「ライン1トラック」の計4トラックを使用することになり、またEQは使用しない方がMIXの時ツブシが利きます。
これらの事を踏まえて、最初に録るバッキングパートはアンプから直の音で行こうということになった。アンプのMESA本体電源ケーブルは初期のAETを使用、シールドはエリクサ。電源を入れ、時間をおいてからスタンバイスイッチを入れ音作り開始。一発目の出音がアメリカンでファットな分離の良い音で、全員テンションが上がった。
仮に録ってみて、生音と録りのギャップをチェック。完全に一致はしないが、かなり目の前の出音に近い。アンプのつまみ、各トラックのブレンドをいじり理想に近づいていく。
キューボックスのモニターバランスも調整し、なかなか良い感じになってきた。

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【今月のちょいレア】DPA4091
見た目を良い意味で裏切る、無指向性のコンデンサーマイク。
洋楽ラウド系の「歪んでいても完全に輪郭が潰れにくい、
ハイファイな音」が録りやすい。アコギ録音にもぴったり。

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【今月のMV】 YU-DAI 「オーダーストップのないレストラン」
90’sUSAのHipHopをベースに、メロウなメロディーが堪能できる一曲。

 


【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

 

Cuicks 「WARP」

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2015年6月号SOUNDDESIGNER、2017年1月号SOUND&RECORDING MAGAZINEにも取り上げられた、ネオアコベースのアブストラクト・ポップミュージックの決定盤。ファンタジーワールドに引き込まれるような世界観は、コーネリアスの名盤「ファンタズマ」を彷彿とさせる。
2016年12月全国発売。

 

CANDELASTAR 「BLUESTELLA」

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Disclosure、Yeah Yeah Yeahs、ROYKOSOPP、CUT///COPY、The Naked And Famousあたりをイメージさせるエレクトロユニットのミニアルバム。NewOrderのようなチープさも踏襲している。FUJIROCK系が好きな人に特におすすめしたい一枚。

 

鵲 「水槽」

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90’sを通過したJロックに、キーボードを前面フィーチャーした上モノがとにかくゴージャスなロックバンドのシングル。ソフトV系風のVo.スタイルがほんのり漂い、2010年代邦楽ロックの新たなスタンダードをアピールするような意欲作。

 

少年タイチ 「サスライ」

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日本のアンダーグラウンド系フォークパンクと初期のニューヨークパンクの精神性が、自然に結実した「少年タイチ」の満を持しての自信作。独特な世界観を持つ歌詞と声質がインパクト大である。

 

Same As Before 「衝動的Speaker」

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例えるなら「ONE OK ROCKを独自に解釈、咀嚼して新たに生み出された」とでも言うべきスピード感全開のマキシシングル。立川在住ながら海外展開も視野に入れた、グローバル志向な彼らの動きに注目したい。全国発売中。

 

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第23回

最近、私の周りでグローバル、かつボーダーレスな活動展開をするバンドやアーティストが増えている気がします。今回ご紹介する「砂漠、爆発sabaku∞bakuhatsu」というサイケ・トランス・サイバーロックバンドも、今まさにそういう流れに乗ったグループです。毎年海外遠征を行うだけでなく、月イチペースで海外からのツアーバンドを招き、企画を組んだりと着実にワールドワイドなコミュニケーションを増やし続けています。11月には新譜をTシャツでリリース?という変わった取り組みも。興味のある方は彼らのホームページをチェックしてみてください。
http://www.sabakubakuhatsu.com

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ギター録りに突入した大学生バンド。セルフRECも3回目になり、録りのスケジュール決めも迷わず出来るようになってきた。

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ギターアンプはマーシャルJCM900、MESA Boogie TripleRecti、ローランドJC120。バッキングギター用にはテレキャスを使用、アンプはMESAで歪みチャンネルを作る。チューナーを間に挟むと音が細くなるので、アンプのチューナーアウトに接続し、いつでもチューニングが出来る体制をとった。

【4つ打ちダンスロック:BPM=170:F→Dm7→Gm7→C7sus4:同期は16ビートアルペジオのシーケンスフレーズ、ストリングス、シンセブラス、の3パート】
どの曲でもベーシック録りの時に仮ギターを2本(リード、バッキング)録っているので、今回のバッキング録りの際には仮バッキングをミュートしてモニターする。使用するマイクは3本。SHUREのSM57、Beta52、DPA4091を近づけてセッティング、いわゆる「オンマイク」である。この曲に関しては、同期が3パートあるのでアンプ裏からラインでも録音する。

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ディーゼルやMESAのようなハイゲインアンプに対してオンマイクだけで録ろうとすると、音がファットになりすぎて同期フレーズをなじみにくくなることもある。
そこで「ラインをアンプ裏から取り、DIなどを挟んで別トラックに録る」と、MIXの時に同期との混ざり具合が良くなりツブシが利きやすい。

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オンマイクの手法だが、マイク1本だけだと低音がスカスカになりやすい傾向がある。そこで低音用、中低音域用の2本を追加して、マイク3本でフルレンジで録るのが重要なポイントとなる。さらにオフマイクが必要な時は、4本目としてコンデンザーマイクを使用してみるのも良い。

今回使用するキャビネットには4つのスピーカーが搭載されており、耳を近くに寄せてじっくり聴いてみると、それぞれのスピーカーに音のバラツキが多いことに気づく。4つの中でも一番鳴りの良いスピーカーの、中心より少し下を狙ってセッティングするのがおすすめ。

また、オンマイク3本とライン1系統は、全部バラのトラックに独立させてRECしておくと、MIXとの時にEQに頼らなくても4つのトラックのブレンド量が変えられるので、ある程度の対応が出来る。アンプの下には吸音用にタオルやカーペットを敷いておくと、タイトでクリアな音を狙える。

試し録音用のモニターバランスは下図のとおり、少しずつ調整・変更しながら進める予定。

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出音と録り音のギャップがどれだけ埋められるか、気になる所である。


今月のちょいレア TL AUDIO【 DUAL PENTODE PRE-AMP】
中低音域から中音域にかけての音の粘り気と密度感がピカイチのマイクプリアンプ。Vo.はもちろん、真空管ギターアンプで歪みサウンドを録るのにも突出している。アナログライクな音作りにおいて、この機材より右に出るものはないように思える。

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今月のMV 川嶋志乃舞「City Shake」
東京藝大在学、4度の三味線日本一などの経歴を持つ川嶋志乃舞のMV。シティーポップと日本の伝統楽器三味線とが高次元で融合する心地よい一曲。本年11月3日にさいたまスーパーアリーナで開催された「ニコニコ超パーティー2016」で小林幸子のバックとして出演など、活躍の幅はますます広がっている。

 

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

 

YU-DAI 「Doo 4 Real」
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HIPHOP界の今後10年を示唆するインテリジェンス溢れる入魂作。豪華なゲスト陣、ルーツミュージックの押さえ方も素晴らしい。ニュ-ヨークのアンダーグラウンドシーンを90年代のフィルターを通し多方面においてブラッシュアップさせているのが特徴。2016年12月全国発売。

 

どろだるま「どろだるま」
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頭脳警察、村八分、初期のRCサクセション、70年代のローリングストーンズ、などを彷彿させる新進気鋭のロックバンド1stフルアルバム。硬派な体質の中に感じられる少し甘めのメランコリックな声質が好印象、ビジュアル面の存在感も圧倒的。2016年11月全国発売。

 

GLOWS「WAYS/HURT」
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仙台出身の5人組バンド、80年~90年代のビートロックを基調としたメロディアスな両A面シングル。KYOSUKEの声質や歌い回し、バンド全員でのステージングなど見せ場も多く、今後の活躍がますます期待できる。

 

バツクレ!!「バツクレ」
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一聴して誰もが魅かれるのは、歌の上手さと渋さと密度のある声質だろう。曲のアレンジ力やバリエーションも手伝って、アルバム全体がバランスよくデコレーションされている。典型的になりがちなJ-POPを、カラフルに彩る才能は見事としか言いようがない。

 

Gypsy of MAria「CLASSIC」
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70年代ロック、フォーク、パンク、R&Rと90年代ガレージロックをベースに、2010年代の要素をも加味されたニューオールドスクールロックバンドの新作。少々ハスキーなVo.の声質は一度聴いたら忘れられない。ワイルドさの中にも繊細さが感じられる処に味がある作品。

 

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第22回

音楽業界の第一線で活躍されている方々を講師にお迎えして、貴重なお話を伺う「音楽プロデュースセミナー」を今年も開催することになりました。今年の講師はSUMMER SONIC、ラウドパーク、パンクスプリング、electroxなどの大型音楽イベントの仕掛け人である(株)クリエイティブマンプロダクション 宣伝部部長の平山善成氏。私、樫村も加わり、平山氏とともに日本を代表する数々のフェスを作り上げる側からの視点、本音の話を深く探っていけたらと考えています。参加費は無料。音楽業界に興味のある方、大型フェスに出演したい!と思う方、音楽についての見聞を広めたい方、ご参加をお待ちしております!

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音楽プロデュースセミナー
講師:(株)クリエイティブマンプロダクション宣伝部部長 平山善成氏
聞き手:スタジオチャプターハウス代表 樫村治延
日時:2016年11月13日(日)13時~15時
会場:茨城音楽専門学校 http://www.i-music.ac.jp/
〒310-0844 茨城県水戸市住吉町269-3
参加費:無料(要予約)
予約は茨城音楽専門学校までお願いします。029-248-0521

今までのセミナーについては、チャプターハウスHPをご覧ください。
http://www.chapter-trax.com/
クリエイティブマンプロダクションHP
https://www.creativeman.co.jp/

 


 

大学生バンドのセルフRECは、ベーシック録りが予想以上に早く終わり、歌録りへと進行中。

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【変拍子ポストロック風:4/4拍子と5/4拍子が交互にくる:BPM=183:C→GonB→Am7→G7sus4】
歌録り3テイクのうち、1stテイクを採用。録音に費やせる時間は実質約100分ほど。最低あと1曲、出来れば2曲歌入れしたいところである。
今回のRECに際し、全員が進行を一目で把握するために細かい曲構成表を作成した。

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(注:この構成表は、実際当スタジオにRECにいらしたバンドさんが作成したものを、許可を得て例として使用しています。文中の曲とは関係ありません。)

次の歌入れは【4つ打ちダンスロック:BPM=170:F→Dm7→Gm7→C7sus4:同期あり】
同期パートは16ビートアルペジオシーケンス、ストリングス、シンセブラスの3パート。
周囲からはKANABOON、Telephones、ラプチャー風と言われている。
キューボックスのモニター設定は下図の通り。

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前回紹介した「歌をマイク2本で録る手法」をこの曲にも採用。

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最近の音源(特に洋楽)は、ジャンルを問わず薄くダブリングされているものが多い。一般的な手法として「同じ歌を2回歌う」か、「すでに録ってあるトラックをコピーして少しずらす」ことが定番とされているが、実はそのどちらでもない質感のものが結構存在している。マイクを2本セッティングし、10~20cmほど距離をずらし、2本目のマイクにコーラスやフランジャー、ビブラート、フェイザーなどを隠し味程度にかけ、アーリーリフレクションやショートディレイもさりげなく加えると「2000年代以降の音像」に近づくこともある。

当然2本のマイクは2トラックに独立させてRecし、後でツブシがきくようにしておく。必要がなければ2本目のマイクは使用しない。
モニターバランスを確認しながら1stテイクを録ってみる。先程の変拍子の曲とはタイプが違いすぎるため、曲の前半はモニターのつまみをグリグリいじり、後半からやっと少しずつ歌えるようになった。モニターバランスが取れ、歌っていくがまだ仕上がりが粗くテイク数を重ねていき、最終的に「前半部分は5テイク目、後半は4テイク目」とすることで終了した。

録音に使える時間は残り50分程度。
【アジカン風ギターロック:BPM=158:Dm7→G7】キューボックスのバランスは次の通り。

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得意な曲なのですぐ録り終わるだろうと予想し、モニターを少々いじりながら1stテイクを録る。ピッチもリズムも率なくいい感じだが声のツヤ感がなくなってきたので10分休憩を入れる。
休憩後2回3回とテイクを重ね、とりあえずOKが出たので撤収。
次回のセルフRECはバッキングギターの本録りと歌録りの予定。一週間後の日程で、8時間分のスタジオ予約を取った。

 


 

【今月のMV】 Kosmic 「Life in Cambodia」
カンボジアの今をリアルに描写するドキュメンタリー風PV。洋楽マエストロKosmicが、欧米と東南アジアをリンクさせる。

 


 

【今月のちょいレア】 JOEMEEK threeQ
少しアナログライクでブリティッシュな音が印象的なチャンネルストリップ。見た目は宅録仕様だが、レコスタでも十分使用できるなかなかのツワモノ。最初に買うべき一台としておすすめです。

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

 

the twenties 「3-4-22」

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LargeHouseSatisfactionとスプリット・ツアーを敢行、ソールドアウトを連発させている、人力サイバーディスコ・パンクバンドのシングル。最近では西日本の大型フェス「MINAMI WHEEL」「KOUBE CALLING」にも出演、ますます勢いづいている。

 

Pinkmoon Babies 「BOP ! STEP ! JUMP !」

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ヨーロッパからのツアーオファーも相変わらず多い、ガールズR&Rロカビリーバンドの3rdフルアルバム。名曲「監獄ロック」のカバーを含む最高傑作と言える本作は、歌謡曲フレーバーのメロディーラインをさらに掘り下げ、ジャンルにとらわれない深味がある。2016年10月全国発売。

 

川嶋志乃舞「ファンタスティック七変化」

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津軽三味線で日本一を4度獲得している現役東京芸大生が奏でる、古典芸能とハイソなポップミュージックの高次元な融合が素晴らしい。ヨーロッパをはじめ海外での演奏も多数経験し、際限なく溢れる才能から生まれるマスターピースアルバム、ついに完成。声質も最高です。

 

Sunday is Wednesday「8分間」

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西日本出身、神奈川在住のギターロックバンドのシングル。ポップから平凡に終わらない、新感覚なメロディーラインがGood。曲調も、特別なことをしている訳ではないのに、各楽器の音色やリズムパターンなどと相まって、最後まで一気に聴ける。不思議な魅力が心地よい。

 

Sonic Blew「Rock Your Brain」

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ハードロックテイストをまとった、クロスオーバーなインストバンドのシングル。SAXが主旋律を奏でながらも決してBGMにはならないワイルドな存在感が、攻めのインストロックを創り上げているのがユニークだ。

 

 

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第21回

digda只今、当スタジオで制作中のバンド「digda」をご紹介します。非常にユニーク、かつハイレベルなルーツ・ジャムバンドで、Dr.兼Vo.のSKMとアメリカ人女性Vo.のVictoriaを中心に結成され、インターナショナルな活動を展開。クロスオーバー、ジャズファンク、エレクトロニカ、テクノ、ダブ、ワールドミュージック、シューゲイザー、ベース・ミュージックなど多彩な要素をふんだんに取りこんでおり、メルティング・ポット的フューチャーミュージックを生み出しています。

 


 

セルフREC中の大学生バンドの話、前回からの続きです。
<セルフREC進行予定表>

jikanwari

3曲分の本録りと、仮Gt.×2(バッキングとリード)のベーシック録りが予想より早く進行。本録りしたDr.Ba.Key.については追加または差し替えもあり得るが、とりあえず残り時間でGt.またはVo.の本録りが出来るようになった。通常ならばGt.から進めるところだが、今回は敢えてVo.の本録りを決行。

*Vo.録りは、Vo.本人の体調や精神状態に左右されやすい。調子の良い時に録れるだけ録っておく。
*Gt.の音域はVo    .と近いことが多いので要注意。Vo.より先にGt.を録る場合はバッキングだけにしておくのが賢明。逆にリードギターは、Vo.を先に録ってからの方が歌との相性が見やすくなる。
*メインVo.を録っておくと曲の全体像がつかみやすくなる。コーラスワークのイメージも、より鮮明になる可能性が高い。(特に上ハモ、下ハモ両方入れる場合)

以上の理由に加え、このバンドのVo.は深夜から夜明けにかけてテンションが上がりやすいということもあって、この勢いなら相当いいテイクが録れるのではないか、と期待も込めてのVo.本録りとなった。
ベーシック録りのセッティング(特にDr.周辺)を片付けてVo.録りスペースを作り、歌詞カードを全員に配りいよいよ録音へ。当初は4つ打ちダンスロックから録ろうとしていたが、Vo.の「気分的に変拍子ポストロックからやりたい」との希望で変更。

【変拍子風ポストロック:BPM=183:4/4拍子と5/4拍子が交互にくる】
【コード進行:C→GonB→Am7→G7sus4】
【クリック:アクセントなしのカウベル系に変更】

Aメロとサビ(Bメロ)の2部構成、Aメロはシガーロスやジェームス・ブレイクのような淡々とした歌い方が続く。サビはカサビアンのように少しエモっぽく声を張り上げる。

全体的にヨーロピアンに仕上げたいので、参考になりそうな洋楽バンドのREC風景を収めた動画をチェックしていると、Vo.をマイク2本で録っているものが多いことに気づいた。

 

<マイク2本でVo.を録るセッティング例>
mic

そのセッティングに倣って、BLUEのDragonflyとエレクトロボイスのRE20(レディオヘッドのトム・ヨークがよく使用することで有名)の2本を使用し、どちらもオンマイクで録ってみることにした。
マイクプリアンプにはAMEK 9098DMAを選んだ。(デュアルチャンネル仕様でマイク2本録りにはぴったり)加えて、周りからの音の反射を抑えるためにリフレクションフィルターを使用。キューボックスのモニターバランスは以下のようにした。

 

<キューボックス モニターバランス図>

cue-box

2本のマイクからの距離は、ポップスクリーンを挟んで約20cm。とりあえずモニターバランスのチェックを兼ねて1コーラス歌ってみた。サビ部分を、声を張り上げて歌うと少々音割れしたので、マイクとの距離を微妙に変えながらつまみやモニターを調整して、良いバランスを探っていく。試しにフルコーラス録ってみると、なかなか良い雰囲気のテイクになった。
その後何テイクかチャレンジしてみたが、意識しすぎているのがバレてしまっている。結果、試しのつもりだった1テイク目を採用することになった。

 


 

【今月のちょいレア】CAD E-200

amek9098AMEK 9098DMA
本文中でも触れている本機は、中音域に不思議な粘り気を感じる。ルパート・ニーヴの傑作の1つ。

 

 

 

【今月のPV】 極悪いちご団 「祭りの華」

FUNKと下町歌謡が合体したワン&オンリーな色モノ・テクニシャンバンド、渾身のMV。

 

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

 

 Droog 「命題」
droog
サマソニ、ROCK IN JAPANをはじめとする有名フェスに複数回出演している、Droogの新作。グラムソフトロックとも言うべき独自のロックフィールドを開拓しているザ・キャプテンズの傷彦がVo.プロデュースしているのも話題の一つ。2016年8月全国発売。

 

KOSMIC 「Life in Cambodia」
kosmic
アメリカで活動していたこともあるKOSMICの新作。カンボジアのチャリティーも絡み、更にグローバルな活躍が期待される彼、この作品はトム・ペティー、ポリス、ベック、オアシス風のエッセンスがふんだんに感じられる。英詞のセンスも抜群。

 

RICKY TYPHOON 「World iD」
ricky-typhhon
アメリカでスタジオミュージシャンをしていたBoss率いる、ハードロックバンドのミニアルバム。完全海外志向の音作りは非常に素晴らしく、RickyのパワフルなVo.が有機的に交わりさらに印象深い仕上がりとなっている。2016年10月発売。

 

踊る上体 「白」
odorujoutai
4つ打ちを土台に練り上げた、ダンスオルタナロックの新定番。女性中心のバンド構成でありながらも、自然ないかつさを感じさせるところが面白い。声質や歌詞など、一度聴いたら耳に残る何とも言えない不思議な魅力がある。

 

Stockholm SeaSide「city EP」
stockholm-sea-side
北欧ベイエリアをイメージさせる、多摩地区の美大生からなるギターエモロックバンドの3曲入りシングル。脳裏に焼き付く独特な声質と、全パートの音色との絡みが好印象。全国ツアーも意欲的に展開中。

 

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第20回

cuicks

1980年代後半にNHK-BSで数年間放送されていた「TRANSMISSION」という、かなりレアな洋楽番組をご存知の方はいらっしゃるでしょうか?UK、USのメジャーアーティストよりも、中堅~大手インディーレーベルを中心とした個性的なアーティストを取り上げる非常にマニアックな内容で、洋楽通にはたまらない番組でした。当時私も、わざわざBSが見られる友人宅まで押しかけて毎回楽しみに見ていました。CREATION、ROUGH TRADE、el、Cherryred、4AD、MUTE、などの大手インディーレーベル所属のアーティストが多く紹介されており、その他にもモリッシー、コクトーツインズ、stone roses、808STATE、モーマス、マイブラなどのMVはもちろん、ライブ映像やレコーディング時のインタビューといった舞台裏まで、まさにマニア垂涎の内容でした。残念ながら当時の番組映像を探し当てるのは、なかなか難しそうです。もしお持ちの方がいらっしゃったら是非ご一報ください!

なぜ、今このような話題になったかと言いますと現在手掛けている「cuicks」というユニットが、上記番組で紹介されていたようなアーティストの雰囲気をまとっている気がしたからです。
他にもここ10年くらいのアーティストで言えばHer space Holidayのようなサンフランシスコ系と、ニューヨークのブルックリン勢を合わせたような、とでも言いましょうか。少しひねりの入った、ハイソなポップユニットです。只今当スタジオで1stアルバムを制作中。コーラスにはthe echodekのVo.野呂昌生氏も参加、年末に全国発売予定です。

 


 

セルフRECに挑戦中の大学生バンド「リハスタを借りての2回目のベーシック録り」その後です。
<セルフREC進行予定表>

jikanwari

先回の経験を活かして時間を組んだので準備も順調に進み、早速1曲目の録りを開始した。

*1曲目
【ポストロック風ギターロック】
【BPM=183:4/4拍子と4/5拍子が交互にくる】
【コード進行:C→GonB→Am7→G7sus4が中心】
【クリック:4分音符:電子音系:アクセントなし】

1回目の録音は変拍子が混じった曲の割にはノリも出て、大きなミスもなくいい感じの印象。メンバー全員が問題なし、と言っているが実はDr.のフィルインが普段と違っていた。これはフレーズの変更、と言いきってしまえば普通に聴けてしまうレベルではあった。
念のためこのテイクは保留にして、2テイク続けて録ってみる。緊張がゆるんだのか全員がちょこちょこミスをする。これ以上録音すると深みにはまりそうなので、保留した1stテイクを暫定的にOKにして次に進む。

*2曲目
【初期レディオ・ヘッド、ブラーに通じるブリットオルタナ色を感じる16ビートの曲】
【BPM=126→151→126のようにテンポチェンジあり】
【コード進行:Gm→C→F→E♭→F#→F】

早速通して録音したが、意外に良い感じでテンポチェンジも楽々クリアし、グル―ヴィーな出来。テンポチェンジ部分を集中練習したかいがあった。所々で、ほんの少しクリックより前後している部分があるが完全に「味」と言えるレベル。85点ぐらいではないだろうか、ということで深追いはせず、まさかの1テイク一発OK!

この時点で時間は午後10:30。予定より早く進んでいるので、ここで休憩を30分取る。この調子で緊張せずに録れば、早く作業が進むのではないか?と皆で盛り上がる。
次はバンド最大の難曲。

*3曲目
【keyboard中心、オアシス、サム・スミス系バラード】
【BPM=75】【クリック:電子音系:8分音符:アクセント1拍目と3拍目】【同期無し】
【コード進行:Em→G→D→A7sus4:Dr.のチューニングをコードスケールに合わせる】

特に難しいフィルインやリフはないが、音数が少ない分リズムキープがとにかく大変。1テイク目、普段よりクリックに合わずに、走る。2テイク、3テイク目も後半は合ってくるが前半が走る。編集でどうにかなるレベルでもない。しかしメンバー全員が、この曲は修正なしでいきたいと思っている。1曲目が早く終わった分時間に余裕があるはずなのに、どんどん時間が押してきている。
さらに3回録音し、最新テイクが一番ましなレベルだったので通して聴いてみた。点数は55点ぐらいと辛め。休憩を入れ、リラックスしたところでもう1テイク録る。ノリは出てきたが、前半の走りは相変わらずだ。前半・後半と区切って録る方法に切り替え、前半のみ集中して数テイク録音し最終テイクをギリギリOKラインに。さらに後半を数テイク、なかなか調子が出ず休憩をはさみ再挑戦。こちらもギリギリの出来のテイクが録れ、ようやく3曲分のベーシック録音を終える。

この時点で時刻は午前2時30分。ギターの本録りではなく、歌録りをしようということになりセッティングをする。仮ギターも2本入っており歌いやすく、ボーカル本人の喉の調子も良い、また明け方の時間帯が一番テンションがあがるので今のうちに歌っておきたいとのこと。
歌入れ残り3時間半、どこまで行けるのでしょうか?

 


 

 

【今月のちょいレア】CAD E-200

tyoi-rea
90年代後半に発売され、現在は中古品のみ。初期CADの名機中の名機と言えるコンデンサーマイク。当スタジオで所有の同機は、モディファイしたもの。恐ろしくフラット、かつ全音域の密度が濃い。

 

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

 

the twenties 「LET IT DIE」
the twenties
K&A所属の人力エレクトロパンクバンドの最新シングル。ガンホー・オンライン・エンターテイメントとグラスホッパー・マニファクチュアのPS4用新作アクション『LET IT DIE(レット・イット・ダイ)』の音楽コラボ企画の参加曲。ワン&オンリーな彼らの存在感をひしひしと感じる。

 

LiSLE 「GRACE IS GONE」
LiSLE
不思議な魅力が満載の女性Vo.ポップロックユニット。marigoldからバンド名を変更し、楽曲、演奏、歌詞、音色、そして世界観のすべてがパワーアップした。音楽と真摯に向き合うメンバーのさりげない熱量が、聴き手を釘付けにする。バンド形態だけでなく、弾き語りの形でも展開中。

 

Pygmalion 「The Suburban Minstrels」
Pygmalion
シューゲイザー、オルタナティブを基調とした2010年代ニューウエーブバンドのフルアルバム。洋の東西を飛び越えた、まさに音楽通に向けたの渾身の一枚。フジロック系が好きな人におすすめ。全国発売中。

 

ヒヨリノアメ 「空」
hiyorinoame
シンガソングライター「AKI」を中心とした、ギターロックバンドのシングル。10代の初々しさと大胆なアイディアが交差する、攻めのポップワーク。普遍的な声、歌詞、作曲アレンジが、ユニークなバランスを取りながらも、着実にオリジナリティーを生み出している。

 

YU-DAI 「REFERENCE」
YU-DAI
ヒップホップの大御所レーベル「TASTING HEADS」を運営しているYU-DAI氏のアナログミニアルバム。有名トラックメイカーも参加しており、ブラックミュージックの根幹を堪能できる1枚と言える。全国発売中(アナログ盤のみ)。

 

【今月のMV】 S.H.E(Struggle-Head,Emergence) 「hiria」
全国発売されたばかりの5枚目となるアルバム「BUBBLES」からのリード曲。10月からはJUNGLELIFEのWEB
コラムも連載予定、内容が非常に楽しみです。
*2016年8月号のJUNGLELIFE誌面にも、S.H.Eと私、樫村の対談が掲載されています。

 

 

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第19回

今、個人的に気になっているアーティストをご紹介します。
NEREUS
A BAND BEYOND THE BORDERS OF JAPAN & AUSTRALIA.
Producer BErgamot Velmail

NEREUS

http://www.nereusonline.com

 

 


 

セルフREC第1回目として「ドラム、ベース(ライン2系統)、キーボードの本番録り」と「仮ギター×2の録り」を行ったが、まずまずの出来で終了した。録り音、演奏ともに合格点ライン。ただ、3曲目(コールドプレイ風BPM103ミディアムテンポ)の落ちサビに、クリックが回り込んでいたことに気づく。幸いにも回り込んだのはボーカルとギターのみの部分だったので、ドラムトラックに回りこんでいたクリック音にボリュームカーブで対処し事なきを得た。
第2回目のセルフRECはこの点を反省し、クリック用のオーディオファイルを作る際ボリュームカーブも緻密に書きこんで対応。今回ベーシックを録音する3曲は先回分より難易度が高く、苦戦することが予想されるためリハスタも4時間多く12時間分を予約した。

今回の1曲目【4/4拍子と4/5拍子が交互にくるポストロック風ギターロック。BPM=183】
コード進行:C→GonB→Am7→G7sus4が中心
クリックとずれるところは少ないのだが、変拍子なので合わせるのがやっと。
クリックパターン:電子音系、アクセントなし、4分音符
又、Dメロで「ギター、キーボード、ボーカル」のみになるところがクリック回り込みが起きやすいので、ボリュームカーブをしっかり書いている。同期なし。

2曲目【4/4拍子、途中テンポチェンジあり、初期レディオ・ヘッド、ブラーなどオルタナ色を感じる16ビート。BPM=126→151→126】
コード進行:Gm→C→F→E♭→F#→F
テンポチェンジの前後がとにかくずれやすいので、その部分を最優先で練習。
ベースが曲中ほとんどオクターブを弾くフレーズなので、ノリをどこまで出せるかが最大のポイント。
クリックパターン:電子音系、アクセントなし、テンポチェンジに応じてオーディオファイルを作りこむ。

3曲目【6曲中、一番スローテンポ。キーボード中心のバラード、6分を超えるバンド最大の難曲。
オアシス、ミスチル、サムスミス風。BPM=75】
コード進行:Em→G→D→A7sus4
バンド全員が苦手とする曲だが、観客からは一番人気があるので録音することに。
クリックパターン:8分音符、アクセント1拍目・3拍目、電子音系、同期なし。
コーラスが全サビに上ハモ、下ハモびっちりと入る。これが大きな問題。

【セルフREC当日】開始時間30分前に集合。予約したリハスタは17畳、マイクスタンド10本とスネアもレンタル。前回と同じセッティングなので手際よく準備が出来て、予定より30分早くRECをスタート。今回はとにかく3曲分のベーシック3リズムを録り終えることが目標で、もし時間が余れば前回分の3曲のヴォーカルかギター録りにすすみたいところだ。

ヴォーカル担当は「体調が良い時に、できるだけ録っておきたい」「自分は、夜明け前に歌ったほうがテンションが上がり調子が良い」と言い、一刻も早く(今回の3リズムを録り終え)ヴォーカル録りにすすみたいらしい。

とにかく2回目となったベーシック録りは【4/4拍子と4/5拍子が交互にくるポストロック風ギターロック。BPM=183】から始まった。

 


 

【今月のちょいレア】JOEMEEK JM47

tyoi-rea

ロープライスながらワイドレンジの単一指向性コンデンサーマイク。高音域がややソリッドではあるが、あらゆるソースに対応しやすい優れモノ。少しブリティッシュな質感が欲しい時に大活躍する。

 

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】

STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

 

S.H.E(Struggle-Head,Emergence)「BUBBLES」

S.H.E

バンド結成10周年、フェス出演、タイアップなど、勢いづくS.H.Eの現時点での最高傑作とも言える通算5枚目となるフルアルバム。オルタナでエモーショナルなギターロックを、モラトリアムテイストでデコレイトした記念碑的作品。TastingHeadsProduction/Brittfordより2016年8月全国発売。

 

波山「我が街と共に」

hazan

北関東を代表する初期パンクバンドのフルアルバム。メンバーチェンジを経て、現在最強のメンバーで幅広く展開中。80’sから90’sのパンク全般と、ブリットポップが好きな人におすすめの1枚。2016年8月全国発売。

 

Rooky Babe’「Rooky Babe’」

Rooky Babe'

埼玉在住ロックバンドのシングル。邦楽ロックの真髄を追及した、10年代の新しいスタイルが垣間見える意欲作。ライブハウスだけでなく、キャパ1000人クラスの大箱でもライブを展開中。
今後の活躍が非常に期待できる。

 

Screw-Thred「HOWLING FROM BACKSTREET」

SCREW-THREAT

UKパンク、ニューヨークパンクを基調としたパンクロックの真骨頂とも言えるフルアルバム。とにかく密度が濃い。日本のオールドウエーブも取りこんだ、ワン&オンリーな作品。アナログ盤でも聴きたくなる、各楽器の厚い質感が心地よい。

 

OSRAIL「Please so that your way is peaceful」

OSRAILのコピー

男女全員でボーカル、コーラスをとるネオ・デスメタルバンドの渾身の1枚。非常に難易度の高いフレーズを演奏しながら、複雑なメロディーやコーラスを歌いこなしてしまうスキルは見事としか言いようがない。次世代ラウド型のお手本のような作品。

 

【今月のMV】 ステファニーズ「BIRTHDAY」

神奈川在住のガールズR&Rトリオバンド、必殺のMV。楽曲を引き立てる鮮やかな映像処理や斬新なアイデアが堪能できる作品。

 

 

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第18回

いきなりですが、皆さんはイギリスBBC(国営放送)で1991年から放送されている人気音楽番組『ジュールズ倶楽部』をご存知でしょうか?日本ではCS放送ミュージック・エアで視聴することが出来ます。

http://www.musicair.co.jp/timet/?rm=detail&id=189550

この番組は毎回世界のビッグネームが数組出演し、出演者ごとに組まれたステージセットで順番に生演奏を披露していきます。例えばレディオ・ヘッド→アークティック・モンキー→マルーン5→WEEZER→カサビアン→最後にポール・マッカートニーといった具合に。毎回フェス並みの内容の濃さにくらくらしますが、その豪華な番組をさらに盛り上げているのが司会のジュールズ・ホランド。元スクイーズのキーボーディストである彼は、番組内でゲストとのセッションも披露します。ポール・マッカートニー出演回では、名曲「レディ・マドンナ」をポールとグランドピアノ2台の連弾でさらりとやってのけ、コーラスパートまでもしっかりサポートする神業ぶり。レニー・クラビッツ、ストロークス、コールドプレイなどが出演した回でも、まるで正式メンバーかのように自然な、的を得たピアノ演奏で加わっていました。彼の確かな演奏力、そして巧みな話術は大物ミュージシャンをも魅了し、20年以上続く長寿音楽番組となるのもうなずけるものがあります。気になる方は是非チェックしてみてください。

 

―――さて、前回からの続きです。

1曲目(BPM=170)のモニターバランスと音色チェックがとりあえず終わり、本番に。録り音が最も重要なのは言うまでもないが、レンジを広めに録り、後でダブついた成分をカットしやすいようにしたいところ。MIX時には足し算でなく、引き算から始められるようにすることも目標だ。

 

非常に演奏し慣れた曲なので、まずは3テイク録音。どのテイクも80点台といったところで全体的に満足できる。雰囲気は1stテイクが一番はじけていて良い評価が集まったが、Aメロのリズムがクリックに対して突っ込み気味なのが気になり、保留。加えてもう3テイク録った計6テイクのうち、5番目が雰囲気もあり安定していて、これにOKを出す。

 

勢いにのって2曲目のベーシック録り。BPM=158、コードもDm7-G7の2コード進行の繰り返しで、ドラムのチューニングも1曲目とほとんど変えずに行えそう。スネアをブラスの6.5インチに替え、ヘッドはCSコーテッドに。音色チェック後、3テイク連続で録る。全員が得意なタイプの曲なので、勢いのある2テイク目をOKとした。

 

問題の3曲目、スタジオからメイプルの5インチスネアを借り、ヘッドはピンスト・コーテッドに替える。Em9-A7onE-AonE-EM7という変則的なコード進行なので、ドラムは無難に共通音に当ててチューニングし直す。試しに1テイク録ってみると、音色とチューニングは問題ないものの、テンポが遅い曲のため演奏にこなれた感じがしない。続けて何テイクか録ってみても、曲後半では安定してきても、1コーラス目が全員クリックより突っ込み気味かつバラバラ。編集でどうにかするレベルにも達していない。さらに何回か録っていくが、なかなかOKラインに達しない。リハスタの残り時間は50分。休憩をとり、さらに録ってみる。全員が苦手なAメロを、タイトに合わせるイメージを持って臨む。最後のテイクでドラムが90点と良い出来になったので、ベース、キーボードの数か所のミスはパンチインで修正ということにして、なんとか録り終わった。

 

最後に練習として、次回録音を予定している変拍子の曲を演奏。各自猛練習が必要なことを実感し、初日のレコーディングは終了した。

 


 

 

【今月のちょいレア】DBX576

tyoirea

1999年発売のチューブ式チャンネルストリップ。当時、定価14万円で発売されたが現在は生産完了。他メーカーを全く寄せ付けない音の厚さが売り。又、EQの効きも強烈で、生音はもちろん打ち込み物でも、この機材を使うと恐ろしくファットになる。足し算のMIXをしなくてはならない時に大活躍。現在は後継機にあたる376、386が現行品。

 

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】

STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。

全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。

スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

 

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。

エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

 

no wise「CLOCK UP」

no wise

パワーポップ、メロコアのエッセンスが随所に散りばめられたニュースタイルのギターロックバンドの1stフルアルバム。彼らのこれまでの経験をまんべんなく昇華させた、満を持した自信作。現在全国ツアーを行っており、動員も急上昇中。

 

ライトニングブリザード「OBLIVIOUS」

lightning

USラウド系がルーツにあるパワーポップバンドの渾身のミニアルバム。全く妥協をせず制作された今作は、良い意味で聴き手を選ばない。メロディーラインやVo.ケンノスケの歌声も聴きどころの一つ。

 

DUTCH DADDY「STARLET / MEMORIES」

dutchdaddy

彼らのこれまでの活動歴の中で、最高傑作とも言える名曲「STARLET」を含む、ライブ会場限定シングル。90年代の渋谷系要素と、最先端のギターロックとの融合がベリーグッド。

 

田中光 & MASAYA YONEYAMA「PROOF」

tanaka

オーセンティックかつワールドワイドなヒップホップの新定番。ワールドミュージック、R&B、トリップポップ、ティンバランド系、クールジャズ、ブラジリアンヒップホップなど、真にメルティングポット的な名盤。全国発売中。

 

BErgamot velmail sole「Post psychedelic cinema」

bergamot

ブルックリン勢、サンフランシスコ系サイケフォーク、チルウエーブ、UKオルタナ、OZアンビエントといった日本人とは思えない個性的な洋楽要素満載の一枚。全国発売中。

 

【今月のPV】COMezik「110番」

「ナゴム系」と「オーディオ・スレーブ、ヴァン・ヘイレンといった欧米ハードロック」の要素が合体したガールズ3ピースバンドの代表作。最近では打首獄門同好会、ギターウルフ、つしまみれ、TOMOVSKYなどとも共演を果たしており、勢いのある動向は今後とも見逃せない。

 


【今月のおまけ】
先日当スタジオでレコーディングを行ったDroogと、楽曲プロデュースのザ・キャプテンズ 傷彦からのメッセージ♥

CHAPTER H[aus]エンジニア 樫村治延の セルフRECはプロRECを越えられるか? 第17回

仮想バンドのセルフRECもいよいよ佳境に入ってきました。ここで設定のおさらいを。
*都内在住、大学の軽音部で1年前に結成。平均年齢20歳。
*Vo.&G、リードG&時々Key、Ba.&Cho、Dr.&Choの4人組バンド。Ba.のみ女性。
*ジャンルはUK要素を取り入れた邦楽ギターロック。
共通の好きなアーティストはアジカン、マルーン5、back number、MUSE、カサビアンなど。
*少し洋楽っぽいメロディー、コーラスワークを重視、16ビートメインのダンサブルな曲調が特徴。
*オリジナル曲は8曲。バンドのホームページはなく、動画サイトにライブ動画を数曲upしているのみ。
*月1~2回ペースでライブに出演。
バンド同士のつながりも増えはじめ、対バン相手や観客から「音源が欲しい」と言われるようになってきたので、初の音源制作に動き出したところ。

 

setting-kaitei

 

リハスタを借りてのセルフREC決行当日。開始時間30分前に皆集合し、予約の24時より楽器、機材の搬入。タイトな音が録れるように、ドラムセットの下にはカーペットを敷きこみ、使わないリハスタのアンプ類は壁側に移動させスペースを確保。今回のセルフRECにはMacProおよびProTools12を中心とした大掛かりなシステムを持ち込むため、セッティング、マイキングにも時間が掛かる。マイクスタンドも、手持ちのものに加えスタジオから10本ほどレンタルした。

一曲目に予定している曲(F-Dm7-Gm7-C7sus4の流れが基本)のキーに合わせて、ドラムのキック、タム、スネアをチューニングする。いろいろなバンドが利用するのが当然であるリハスタのドラムセットなので、一からチューニングするのに非常に苦労した。この時点で予定より30分押している。

一曲目は8ビートと4つ打ちが混じったダンスロック/BPM170。
同期も使用(16ビートアルペジオシーケンス/ストリングス/シンセブラス)ProTools12内に仕込み済み。
クリックは4分音符の電子音系で、一拍目にアクセント有。

まず1テイク目。FURMANキューボックスのモニターバランスを取りながら、ラフに演奏して録音。
ドラム、ベース(本チャン)、キーボード(出来次第により本チャン)、ギター×2(仮、アンプシミュレーター)手が足りないパートは後輩に演奏をお願いした。録音後、各音色を全員で確認する。

ドラムキックの低音が、録ってみると意外に少なく感じるので「イコライザーをかけ低音部分をブーストさせて録る」という話が出る。先輩からは「なるべくMIXまではイコライザーを使用しないほうが良い」というアドバイスがあり、キックのチューニングを少し変更+ビーターをキタノのチタニウムビーターに替える。

 

beater←【キタノ チタニウムビーター】
通常のビーターより、バスドラのアタックや胴鳴りとの一体感がくっきりと出て、 立体感のある音像になりやすい。

 

 

 

 

 

 

 

 

また、キック用マイクAudioTechnica AE2500(ダイナミック、コンデンサー2ch分のデュアルマイク)のコンデンサー部分の割合も増やした。以上の作戦により、イメージの8割以上の音にはなったのではないか、と全員が納得。
スネアは、5インチのブラスのスネアと6.5インチのメイプルのスネア、ヘッドは共にパワーストローク。曲中の叩き方がオープンリムショットということもあってか、5インチのスネアでは胴鳴りが薄く「もうちょっと胴鳴りが欲しい」という意見が出る。スネア用マイクはTOP:SHURE SM57、AudioTechnica AM25、Bottom:SHURE SM57。各マイクの角度や距離を変えて出音の検証をした。結果、BottomのSM57をSHURE Beta52に変更、TOPの2本のマイクの割合をSM57→3割、AM25→7割にすると結構胴鳴り感が出てきたようだ。

ベースについては、音は素直で聴きやすいが100Hz以下の低音がスッキリしすぎていて物足りない、イメージと違うという意見で一致した。DI(AVALON U5)の電源ケーブルを、付属の物からオヤイデのTSUNAMIに、シールドもWhirlwindに替えてみた。レンジがぐっと広がり先程よりもベース本来の音が出てくるようになった。

確認が終わり、キューボックスのモニターバランスを各自調整しながら2テイク目の作業に移った。

 


 

【今月のちょいレア】 Joemeek JM27

jm27グリーンボディーが非常に目を引く、ペンシル型コンデンサーマイク。シンバル系の録りに一番向いている。同タイプの他の製品と比べると、きらびやかな印象の音が録れる。

 

 

 

 

 

 

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【樫村 治延(かしむら はるのぶ)】
STUDIO CHAPTER H[aus](スタジオチャプターハウス)代表・レコーディングエンジニア・サウンドクリエーターWhirlpool Records/brittford主宰。専門学校非常勤講師、音楽雑誌ライターとしても活動。
全国流通レベルのレコーディング、ミックス、マスタリング、楽曲制作を年間平均250曲以上手掛ける。
スタジオについての詳細は http://www.chapter-trax.com/ をご覧ください。

当スタジオで一貫して制作されたアーティスト作品の一部をご紹介します。
エンジニアといたしましては、webや動画ではなく是非「CDで」音質をチェックしてほしい!!!

 

Coo「渋谷のあの子」

Coo
Coo渾身の両A面シングル。MV、楽曲、アレンジ、演奏、どれをとっても、以前より高次元で昇華しており、今後のフルアルバムが相当期待できる。純ギターロックの名盤とも言うべきキラーチューンを、是非チェックしてほしい。

 

Omoinotake「InSnumber」

omoinotake
山下達郎、小田和正、ネット・ドヒニー、クリス・レインボウ、アラン・パーソンズ等を彷彿とさせるシティーポップ、AORの決定盤。リズムアレンジやコードのボイシングが前作よりもさりげなく洗練されている。SHAKARABBITS、The Twentiesも所属のK&A期待のア-ティスト。

 

蒼鷺は死なない「カンショウ」

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あらゆる面からエモーショナルな質感を醸し出す女性Vo.ロックバンドのマキシシングル。定番R&Rの要素を含みオールドスクールとニュースクールの狭間を常に邁進しているスタンスには目を見張るものがある。いろいろなアイデアが満載で、聴き手を選ばない存在感がある。

 

少年パンチ「少年パンチ」

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ラモーンズ、テレビジョンあたりのニューヨークパンクを基調とした過激な日本語詞が飛び交う、初期パンクバンドのマキシシングル。硬派で潔い曲調が好印象。ベーシックな音なのに、常にリアルタイムのロックテイストを感じる不思議な魅力の一枚。

 

レトライター「明星のおとづれ」

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サカナクション、テレフォンズをベースに、チャーチズやグライムズの要素も感じられる、エレクトロギターロックトリオのミニアルバム。定番から少し外したエフェクトのかけ方が特徴的。オリエンタルな雰囲気と西洋のエレポップの融合が聴いていて楽しい気分にさせる。全国発売中。

 

 

【今月のMV】 The Echo Dek 「She Got High At Night」
もしもプライマル・スクリームが、ドリームポップを作ったら?というような曲。大人気劇団、キャラメルボックスの公演『時をかける少女』(原作:筒井康隆)告知CMのBGMとしても採用された。

 

 

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